2016/05/04 のログ
ご案内:「常世大ホール」にラジェルさんが現れました。
ラジェル > 運動場として解放されたこの場所は、夜間学生や部活動のために遅くまで活動している者も少なからずいる。
夜に活動する闇の眷属らのためとはいえ、しかし今宵は誰もおらなんだ。
故に、こここそは我が時間、我が場所となり、勝手に占有しても良いということである。

「ギリギリで進級できたは良い。これで名実共に三年生。我が力を持ってすればこの程度のこと、容易いものよ」

ジャージを羽織り、体操着姿で腕を組む。臀部にかけてのラインがすっきりと収まった下部の布は大腿部もまた風に曝されてある種心地良さすら覚える。
なんということだ、これほど機能美に溢れた代物があったとは。

「我が魔道の力をより昇華するためには体力づくりは必須。我が虚弱なれど失踪を阻むことは誰であろうと許さん!
 いざ!!星よ、月よ、そして神よ!我が駆け抜ける様を見ているが良い!」

トラックに足を踏み入れ猛スピードで走り出す。
――要はあれだ、自主的な運動練習という奴だ。

ラジェル > 先ずは50メートル走。目標高校女子平均速度!魔術師としての平均タイム越え!
たかだか走る如き、我が魔術の前には無意味というものだ。

「ぜーはー、ぜーは……ごえっふ、えっふ……」

膝を揃えて手で押さえ、咳き込んでしゃがみ込む。我が肢体はいつも完璧なプロポーションを保っている。脚線美はさぞ美しかろう。クックック。
――ていうか、なんか。

「……死ぬ」

我が失踪を阻むものはいない。しかし自分自身という最大の壁、我がエゴとの戦いこそが真なる怨敵。向けるべきは恩讐とあらず、義を持ってこそ。己の悪と対峙しなければ何も出来まい。
50メートルを2セット走った段階で既に息切れなどしていない。我が清廉且つ繊細な魂を癒しているだけである。

ラジェル > 「いかん。こんな時こそ水分補給だ」

愛飲する甘きネクタルの香り響く飲料を水筒から口に含み、ゆっくり噛み締めるように歯をあわせる。
潤沢な甘さを舌先で転がした後に喉を潤す。蜜の香りは鼻腔を通り、熱に魘される我が肉体を冷やしてくれる。
はたしてこんなペースではすぐにネクタルも尽きそうと思わなくも無いが、元々そこまで努める必要は無い。
なぜなら自分は天才だからだ。
水筒をトラックの内側――芝生のほうへ投げ入れると再び短距離走の修練に励む。
クラウチングスタートの構えを取りながら、ゴール地点である線を白黒の眼が映した。

「カオスに堕ちたる我が身、喩えステラの彼方に目標の輝きがあろうと、光年を越える時間を以って――」

はたと、光年は時間だったか、距離だったか。

ラジェル > 何度か走っているうちに、走り方についての教科書や同輩の走り方を思い出す。
腕の振り、足の角度、顎の位置に眼が見据える先。効率の良い走り方。
幾重もの無駄を排除すればきっと早く走れるはず。

「げふ……」

倒れ臥した。うーとかあーとか。唸りながらゴールで倒れた。
最初に走った時よりも幾分かタイムは縮んだものの、かなり疲れ果てていた。

「……あー」

また後で走るとしよう。我が魔道の道のりは険しいものだ。
そうして起き上がるまであれやこれやと思考していた。
あぁ、それにしてもシャワーを浴びたい。

ご案内:「常世大ホール」からラジェルさんが去りました。