2015/06/19 のログ
鳴鳴 > 「ハハ、ハハハハ……」
石蒜の狼狽する様子を見て、石に腰かけた仙人は嗤う。
これが見たかったといわんばかりに、けらけらと嗤う。
すがりつくような、懇願するような、自分の顔色を窺うような。
絶望したような表情。それを見て嗤う。
果たしてその声は、石蒜に届いただろうか。

「まあ、待ちたまえよ。
 何故そんなに嘆く必要があるんだい?
 何故そんなに絶望する必要があるんだい?
 君は真人だろう? そんなことで、悲しんでいてはいけないよ。
 それすらも、遊びとするのが本当」
本来ならば、鳴鳴の叱責など気にしなければいい。
全ての束縛から離れて、自由の世界に遊べばいい。
だが、目の前の少女はそれをするにはあまりに一生懸命だった。

「……石蒜。安心するんだ。
 僕がいつ、君を捨てるなんていった?」
額を地面にこすり付ける石蒜の方へと歩き、その顎を下から掴んで、こちらの方を向かせようとする。
「そんなすぐに僕と同じところに来れるなんて思っていないさ。
 そんなにすぐにここまで来れるのなら、僕なんて必要ないだろう?
 君の行為は愚かだ。僕はそう言った。でもね、そう定義する価値観さえ忘れれば、そんなものはどうにでもなる。
 君が心の底からそれを望んで楽しめば、それでいい。
 君は九万里を翔ける鵬になればいい。
 心が揺れないようになって、本当にそれを楽しむことができるようになれば。
 僕は君を、褒めてあげる。
 ……愛してあげるよ」

歪んだ笑みを浮かべて言う。そして、おいでとばかりに彼女の前で腕を広げる。

「折角の玩具を、すぐに捨てたりはしない。
 僕は未だ、君で十分に遊んでいないんだから」

その苦しむ様を、まだまだ見切れていないのだから、と。

石蒜 > 笑った、かすかに耳に届いた笑い声。ご主人様が、笑ってくれた。嬉しい、良かった。
私が無様に動揺したからだろうか、きっとそうだ。
もしかしたらご主人様は私をからかって遊んでいるのかもしれない。
それなら良かった、私の苦悩がご主人様の楽しみになった。良かった。

私の顎にご主人様の手が触れる、肌と肌が触れる。それだけで丹念な愛撫を受けたような心地だ、気持ちいい。
「うぅ、ずびばぜん……ずるっ」声にからむ鼻水をすする。醜い声をご主人様に聞いてほしくない。
「石蒜はまだまだ……未熟でした。きっと……ええと……もっと、しょ、精進します……。」どこかズレた返答。自由になる、それは己を律し続けて来た少女には難しいことだったが。褒められる、愛されるとなれば、やらなければ、ご主人様を喜ばせたい、それだけは彼女の偽らざる本心であった。

そして、手を広げられれば。餌を前に待てを食らっていた飼い犬が、それを許された時のように、また明るい表情になる。涙を袖で拭い、その腕の中にゆっくりと飛び込んだ。抱きしめられれば、遠慮がちに、残った右腕だけで主人の背をだこうとする。

「はい、まだまだ遊んでください。ご主人様は石蒜の全て。どんなお遊びでも喜んでご一緒します……♥」母親の抱かれる赤子のような安らぎ、恋人に抱かれる女の喜び。それらを同時に味わい、恍惚とした顔になる。

鳴鳴 > 「君は縛られすぎた。そして、今も縛られている。
 かつての君に、そして僕に。君は縛られている。
 そんなものは必要ない。君は君のしたいことをすればいい。
 だけど……」

自らの胸に抱きついてくる石蒜を抱きしめる。
褐色の手が、石蒜の背を滑る。

「君はまだまだ自分を解放しきれていない。
 歪んでいない。いや、元に君に戻るというのならそれでもいい。
 それはそれで面白いことだ。
 だけど、僕の傍にいたいというのなら、僕の玩具になってくれないとだめだ」

鳴鳴は石蒜より少し小柄だ。その小柄な鳴鳴が石蒜を抱きつつ、その赤い舌で彼女のうなじを舐めようとしていく。
抱き、抱かれながら、肌を合わせる。

「だから僕が手伝ってあげる。君がこの世界から逸脱するほど、歪み切れていないから。
 あの時のように、僕が手伝ってあげる。君を僕で染めてあげる。
 ほんの少し、僕が後押ししてあげよう。君が、揺らがないために」

恍惚とした表情の石蒜にそう囁く。
そして。

「……でも、それとは別に。
 君が揺らぐ姿、僕は面白くなかったな」

嘘である。何よりもそれを悦んでいた。

「暴力や殺戮が享楽の全てじゃない。君は安易に走ったのさ。
 だから、そうだな。ご褒美はまだあげられない。
 ……まだまだな君には、お仕置きしてあげなくちゃね」

耳元で甘く甘く囁く。

「地獄のような快楽の世界で、それすらも楽しめるように。
 一度、きちんと躾けておいてあげる。
 それで、もう一度染め直してあげるから」

石蒜 > 「お願いします、歪めてください、石蒜を……
サヤであったことを、忘れさせてください……。」
背中にご主人様の手を感じる、私は今ご主人様に抱かれている。
その事実だけで脳がとろけるようだ、足をぎゅっと閉じそうになって、こらえる。

「戻りたくありません……石蒜は、いつまでもご主人様の傍に居たいのです。
だから、玩具に……♥ んぅっ……♥して、くらさいぃ…♥」うなじを舐める舌に、声が震える。

「も、もう……揺らぎ…♥まひぇん…!石蒜はぁ…っ あふっ…♥ご主人様だけのおも…くんっ…♥玩具でふ……♥」燃え立つような快楽に、舌をもつれさせながら、必死に言葉を返す。

「もうしわけ……♥ありませ……んっ♥ 石…石蒜は、浅はかでしぃ……たぁっ…。
お仕置き…♥を…くだ、さいぃ♥♥ごし…ご主人様の好きに……躾けて……えぇっ…♥♥」
お仕置き、躾、何をされてしまうんだろう。きっと凄いことだ、二度と揺らがないように、しっかりと自分が誰かを仕込み直されるんだ。
その期待に、自分の一部に血流が集まっていくのがわかる。

鳴鳴 > 「ああ、楽しいな。人を歪めるのは、とてもたのしいよ。
 彼らにそんな能はない。彼らはそんな人間を面白がるようにできてはいない。
 でも僕は出来るんだ。彼らに出来ないことができる。
 人を、弄ぶことができるんだ」

石蒜への言葉ではない。遥か彼方、どこかの宇宙の中心にして最果てで狂い続ける何かへ向けていったのだ。
石蒜を抱きながら。彼女の体や口に接吻を落し、その手で肌を撫でながら。
黒い何かを、闇なる何かを、彼女に落とし込もうとしていく。

「悪い子だね、石蒜。お仕置きだって言ってるのに。
 心底嬉しそうじゃあないか。
 でも、赦してあげるよ。君は今、君のしたいことをしているんだ。
 それは君の享楽だ……ならば、それでいいんだ。
 君が誰であるかを。君が何であるかを。刻んであげよう。
 揺らがないように調教してあげる。
 そうすればきっと、君は僕を喜ばせてくれるような真人になれるはずだ。
 あらゆる世界を己の楽しみのために遊ぶ存在として。
 この僕の代わりに、この世界で遊んでくれるはず」

「……僕が飽きるその時まで」

そう石蒜に囁いた。
一人の少女を闇に染めていく。自分が何かをせずとも、彼女が何かをなしてくれるだろう。
そう鳴鳴は思うがゆえに、こうしていた。
そういう風に導いておきながら、彼女の自由にと、囁くのだ。
彼女の血流が集まるそこに足を向けて弄ぶ。

「じゃあ、僕の仙窟に帰ろうか。
 そこで地獄を見せてあげるよ。君は悪い子だからね。
 ……いつか、君も「門」の果てに行けることを願うよ。
 彼らがこの世界に帰ってくる、そのときに」

石蒜の着物のあわせを無理やり解きながら、世界が闇に染まっていく。
無数の名状し難い何かが蠢く場所への扉が開き、二人を飲み込んでいく。
鳴鳴の仙窟への入り口だ。
そこに、誘われていったのであった。

石蒜 > 快楽に溶けた脳で、話を聞いているのかいないのか。
話しかけられればかすかに頷くも、口から出るのは嬌声ばかり。

「はぁーっ♥はぁーっ……♥」息を弾ませ、ほんの数日前まで、性的知識などほとんどなかった少女は、淫靡な笑みを浮かべる。
「お仕置き……お仕置きぃ……♥♥」頭に浮かぶのはそれだけ、ご主人様が石蒜をお仕置きしてくれる。
揺らぐ私を塗りつぶしてくれる。私の中のサヤを殺してくれる。
ご主人様のためならなんだってしよう、「門」の果てがどこかわからないが、そこにも行こう。
私はご主人様のために生きているんだ。望むまま、何にでもなろう。
私が何かなんて些細な問題だ、私はご主人様の玩具。ただそれだけでいい、それだけで。

狂信に似た陶酔状態のまま、扉の向こうへと消えていった。

ご案内:「転移荒野」から鳴鳴さんが去りました。
ご案内:「転移荒野」から石蒜さんが去りました。
ご案内:「転移荒野」に畝傍・クリスタ・ステンデルさんが現れました。
畝傍・クリスタ・ステンデル > 夕刻、転移荒野。異世界からさまざまな魔物や怪異が転移し現れるこの場所は、少女の日課――『狩り』の場となっている。
橙色のボディスーツに身を包み、狙撃銃を構えたその少女の名は、畝傍(ウネビ)・クリスタ・ステンデル。
畝傍は岩の上に伏せてスコープを覗き、じっくりと目標を狙う。
スコープに映るのは、大型の甲虫のような魔物。だが脚は四本しかなく、そしてそれは「虫」と見做すにはあまりに巨大だった。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 距離は離れている。スコープの向こうの魔物はまだこちらに気付いていない。
魔物を撃つ際の基本に忠実に、二本の角を持ち妖しげな光沢を放つその魔物の頭部へと狙いを定め、引鉄を引く。BLAM!響く発砲音。
――手応えあり。魔物の頭部に穴が開く。だが倒れていない。
畝傍の姿は魔物の視界の外だ。魔物は何が起きたか判断できず、暴れだす。狙いが狂う。
だが畝傍は動じない。頭が駄目なら――首の繋ぎ目を狙う!BLAM!再び発砲音!

畝傍・クリスタ・ステンデル > 畝傍の放った弾丸は魔物の首の節目を貫く!成功だ!
甲虫のような魔物の首は、その外見に似合わず呆気なく落ちる。
「ハァー、ハァー……❤堪んないッ……❤」
畝傍が他人に対して自らの異能であると嘯く能力、『狙撃快楽』<スナイプハッピー>。
その名がごとく、狙撃行為を成功させることで、彼女は心身ともに快楽を得られる。彼女は狂っていた。
――だが、油断は禁物である。昆虫は首を切り離されても生きていることがある。
それは地球上の昆虫のみならず、異世界由来の昆虫型の魔物とて例外ではない。
畝傍はすかさず次弾を装填、まずは残された魔物の胴体を狙撃!BLAM!……着弾!

畝傍・クリスタ・ステンデル > 胴体と脚だけでしばらく動いていた魔物は、やがて左前脚からゆっくりと崩れ落ち――完全に沈黙した。
それを確認した瞬間、畝傍の全身が電気を流されたかのように軽く痙攣する。
「あハァー……ッ❤」
先程にもまして強い快感。そして恍惚。
齢十五の少女には似合わぬ蠱惑的な表情で、それを享受する。
彼女は――狂っていた!

畝傍・クリスタ・ステンデル > 「……ふぅ」
しばし後。自らに一日のノルマとして課している『狩り』を終えた畝傍は、狙撃銃を抱え、その場を後にしようとしていた。
今回は依頼による狙撃ではないため、依頼主はいない。よって『おひねり』も無しだ。
「きょうは、これでおしまい」
先程までとは異なり、実年齢よりもさらに幼く見える無邪気な笑顔。
「女神さま……ボクのこと、ほめてくれるかな」

畝傍・クリスタ・ステンデル > 『女神さま』とは、畝傍が信仰する架空の神性である。
過去に某国において狙撃兵として活動していた際、畝傍は暴行を受け死の淵に瀕していた。
奇跡的に一命は取り留めたものの、彼女の肉体と精神には大きな傷が残されることとなった。
その狂気の一部として生じたのが『女神さま』と、それに対する信仰である。
畝傍は『門』を通じてこの世界へと現れる魔物を狩ることが『女神さま』に与えられた試練であると考えており、
その試練を乗り越え、『女神さま』に認められることを目標としている。
無論、これはすべて畝傍の妄想である。彼女は狂人なのだ。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 「~♪」
鼻歌を歌いながらスキップで駆ける。やはり、実年齢よりは幼い印象だ。
畝傍は身体能力を強化されており、狙撃銃を抱えながらスキップすることも苦ではない。
かくして、狂気に満ちた幼き狙撃手の姿は夕陽に消えていった――

ご案内:「転移荒野」から畝傍・クリスタ・ステンデルさんが去りました。