2015/07/11 のログ
ご案内:「転移荒野」に石蒜さんが現れました。
石蒜 > 転移荒野、異世界からの漂流物が数多くたどり着く地。それが良きものでも、悪しきものでも。
そこに、紛れも無い悪しきもの、漆黒に染まった白衣と、血のように赤い緋袴に身を包んだ少女、石蒜が居た。


石蒜は笑う。今日は、今日こそは決戦だ。既に風間と畝傍の二人は呼び出してある。
ご主人様も、もうすぐ来るだろう。二人を排除すれば、もう大丈夫。私はもう揺れることなくご主人様と一緒に居られるだろう。
もし、もし負けたら……。私は消えるだろう、サヤが私を許すとは思えない。それならそれでいい、もう何にも苦しまないで済む。

右手の刀を握り直す、意識が高揚している。決して助けへの期待ではないはずだ。きっと更に堕ちることの予感。そのはずだ。
そして、待っている。そろそろのはずだ。

ご案内:「転移荒野」に畝傍さんが現れました。
ご案内:「転移荒野」に風間蒼介さんが現れました。
ご案内:「転移荒野」に鳴鳴さんが現れました。
畝傍 > しばし後。橙色に身を包んだ少女――畝傍・クリスタ・ステンデルは、そこに現れた。
普段から彼女が身に纏っているそのボディスーツの上には、深緑色のコマンドベストが羽織られている。
各所に手榴弾とアーミーナイフ、両脚にはオートマチック拳銃の入ったホルスター、右手には上下二連式ショットガン、そして左手に箱型のロケットランチャー。
石蒜を混沌に堕とした黒幕――鳴鳴との決戦に備え、畝傍が未開拓地区において拠点としているロッジから調達していた武器類だ。
畝傍は石蒜のもとへ、ゆっくりと近寄ると。
「……きたよ。シーシュアン」
静かに、低い声で、囁くように。

風間蒼介 > (枯れた荒野を流れる風がスカーフをたなびかせ、ゆらり、と染み出すように気配を自ら放ち、ここに居ると言葉もなく高らかに宣言する
 着込んだ忍び装束はいつもの通り、一見無手に見せながら今までにないほど多数の武器を内に潜め
 呼吸を一つ、砂塵を避け細められていた瞳がゆるりと開かれ)

仕舞いに来たでござるよ、サヤ殿、石蒜
(胸のうちを押さえ、湖面のように静かな声で、二人の名を呼ぶ)

鳴鳴 > 「――さあ、いよいよだ」

虚空に声が響く。
この世と異界の境界が曖昧になるこの荒野に、声が響く。
ゆったりとした道服、黒い髪、褐色の肌。赤く輝く瞳。胸元の五芒星。
この世界の全てを嘲笑し、この世界の全てを否定し、この世界の全てを肯定し、この世界の全てを内包する混沌を自称するもの。
星々の彼方から来るもの、仙人を自称し九万里を翔けるものだと嘯くもの。
原初の混沌。陰陽の混ざり合った原初のもの。
うねり這い寄る混沌が、荒野に現れた。虚空を切り裂き、嗤いを携えて悠然と。

「この時を待っていた。全てに終止符を打ち、始まりを告げるこのときを。そうだろう?」
石蒜の後ろに現れた褐色の少女は、彼女を後ろから抱きしめようとしつつ言う。
その赤い瞳は目の前の少女と少年を見つめていた。

石蒜 > 「来ましたね、来ましたね。今日こそ決着ですね、ご主人様。石蒜は全力を尽くします。」自分を抱きしめる腕に、愛おしそうに、左手を重ねる。
ご主人様が居る、だから私は大丈夫、きっと勝つ。

「先に言っておきましょう。私は助けなんて、これっぽっちも望んでいません。もし、ご主人様が倒れたら……ありえないことですが、そのときは私を殺しなさい、それが慈悲というものです。」刀の切っ先を向ける。敵対と、殺意を示す。
ご主人様が居ないのに自分だけ生きているなんて、考えるのすら恐ろしい。だからその時は自害しよう、そう心に決めている。

畝傍 > 「……それはできないよ。ボクはぜったい、シーシュアンをころしたりなんかしない。やくそくしたから。シーシュアンが望んでなくても……ボクは、シーシュアンをたすけるって、決めたんだ」
一度は折れかけていた畝傍の決意は、側にいる協力者――蒼介や多くの人々の支えによって、再び確固たるものとなっていた。
畝傍は大きな声で、その決意を石蒜にぶつける。
そして――這い寄る混沌、鳴鳴の出現に呼応するように、その肉体は炎と化していく。
ブロンドの髪は色彩を変転させ、輝きながらなびき始める。さらに眼帯の裏の左目と、両の手首・足首からも、炎が溢れだしていた。
畝傍の異能――『炎鬼変化』<ファイアヴァンパイア>。その力を行使する代償は、彼女の『正気』である――

風間蒼介 > お初にお目にかかる、仙人殿
我が流派を遡れば仙道に行き着く、なかなか感慨深いでござるな
敵でなければ、でござるが
(ゆっくりと、深く長い呼吸を繰り返し体の中で力を練る
 彼女ならば判るだろう、蒼介の体内には彼らが丹術で整えるような経絡の流れが歪なほどの整然さで構築されていると
 武器は抜かない、術も練らない、動きの起こりを見せぬよう、ただ無色の力と意思を練り上げ、溜め込み
 構えは取らず自然に、意識のスイッチと脱力だけで即応出来るよう)

ああ、終わらせるでござるよ
さっさと終わらせて、テストでいい点取っただ補習だとつまらぬ日常に戻り……思い出話になるよう
(キリキリと弓の弦を引き絞るように目付きと意識を引き絞り、備える
 畝傍に一瞬視線を送れば、こくり、と一つ頷いて見せ)

鳴鳴 > 「……アハ、アハハ。大丈夫だよ、石蒜。全ては流れのままに、だ。
 僕たちはただ、全てを楽しめばいい。全てに享楽を見出せばいいだけだ。
 たとえどのような結果になろうとも、僕たちはそれを楽しむだけだ」
石蒜のうなじを舐めながら、石蒜に、そして畝傍と蒼介に語りかける。
「炎の君は久しぶり。そして、忍びの君は初めまして。僕は鳴鳴。ロストサインの元マスターの《腐条理(アクト・オブ・ゴッド)》さ。
 僕の仙術なんてほんとは大したものじゃない。僕が仙術と言っているだけでね。
 そしてそう、僕も仙人を自称しているだけ。陰と陽の二気を同じように保つ混沌が仙人、真人なのだとすれば、僕はまさに仙人ということになるという論理だね」
石蒜を抱きしめていた体を離し、石蒜の隣に立つ。

「――ああ、今日は良い日だ。とても楽しくなりそうだ。
 さあ、共に楽しもうじゃないか! この世の全ては享楽だ!
 君達の怒りも悲しみも、慈愛も友情も、大いなる「道」の前では全て無意味で無価値となる!
 だが、それでもなお君達の信じるものを、君達の求めるものを手に入れようとするのならば。
 僕を――殺してくれ」
狂った笑みを浮かべ、目の前の二人に話しかける。
刹那、転移荒野に異変が起こる。

「――開け! 鳴羅門! いや……!」
鳴鳴の口が吊り上る。
「全にして一なるものよ!」

鳴鳴が叫ぶ。狂った笑いと共に。
すると、鳴鳴の背後の空間が大きく歪み始める。
何かが出現しようとしていた。それはとても巨大な、アーチ状の門だった。

「我が身に喰らいしダゴンを贄として、混沌の力を、今こそ!!」
鳴鳴の体の半分が突如はじけ、弾けた部分から闇が、混沌が溢れ出していく。
そこから、何か巨大な名状しがたい巨大な魚人のようなものの一部が溢れ出して、門の中へと吸い込まれていく。
鳴鳴が悪魔の岩礁で喰らったダゴンなる神が「門」の中へと吸い込まれ、「門」が開き始める。
疑似的な窮極の門の一時的な解放。そして、その扉の向こう側から、混沌が溢れだし、鳴鳴と一つになっていく。
胸元の赤い五芒星が強く輝くも――それもまたはじけて消えていく。

「さあ! 今日は星辰が上古のものに戻る時だ! 星の彼方から来るというのなら、来てみるといい!」
混沌を溢れさせながら、鳴鳴は笑う。

石蒜 > 「アハ、アハハハハハ!」ご主人様の力があふれるほどに高まるのがわかる。私の中のご主人様が大きくなっていく。
ああ、これで安心だ。もうあとはいつもどおり、享楽を楽しもう。それが私の唯一の道。

「さぁ、私を痛めつけて下さい、私も精一杯お返しします!!楽しみましょう!それが私の全て!私を楽しませて、悦ばせて、そして無惨に死んでください!!」その顔に浮かぶのは狂った笑み、狂人の笑み。腐った条理に従おうと精一杯それを受け入れる笑み。

その言葉が合図だったかのように、刀を構え、走る。
目標はまず畝傍、あの炎はご主人様の脅威になる、足に斥力を発生させて、一気に飛び込んで距離を詰める!銃は距離を詰めれば使えないと踏んでのことだった。飛び込みながら、大上段から刀を振り下ろす!

風間蒼介 > なに、拙者らも似たようなもの…外法を用いて偽りの太極に自分を置こうとする増長慢の末裔にござる
…が、意外とこれ便利でござってな
少なくとも、力が無いと嘆く必要が無いゆえ…
(こぅ……と細く長い息を吐く
 内にうずまき篭る熱を吐き出すエキゾーストのように鋭く)

なるほど、確かに視点をそこまで挙げれば拙者達の機微など無価値に等しいでござろうな
人の好悪に関わらず雨は降る…ああ、そう、ここで拙者達がどうあがこうとも天地の運行に影響など及ぼせるはずもござらん

ただまあ……拙者達、人にござるし…な?
そこんとこ忘れられては困るでござるよ
(変転した気配に風間の血がざわめく
 あれは良くないものだと
 あれはあってはいけない物だと
 外法の外にあり、外道を外れた窮極の異物であると)

煉精化気…起風発雷!
(その声をトリガーに全身に風雷の異能を纏い、弾けるように地を駆ける
 相手は圧倒的格上、様子見などして対応できるとは限らない
 鳴鳴を中心に円運動を行いながら緩急を付け、狙いを散らし、袖の中から手裏剣を滑り落とし両手に構えると電磁レールを生成
 電磁加速された手裏剣が亜音速で緩やかなカーブを描き鳴鳴へと放たれる)

畝傍 > 開かれた巨大な門、そしてそこから溢れ出し鳴鳴と同化してゆく混沌。
眼前で起こった事態を目の当たりにしても、炎と化した畝傍は動じない。
むしろ、より強大なものとなった混沌の力に対し、彼女の炎もまた、より激しく燃え上がっていた。
まずは迫りくる石蒜に対し、決断的戦闘態勢をとる!
今はまだロケットランチャーは温存すべき時だ。そう判断しロケットランチャーを肩に掛け、背負ったフライトパックを脳波操作で機動。
円形の中心ユニットから板状の羽が伸び、その先端に備わった卵型の噴射装置がエンジン音を響かせ、畝傍の体は徐々に空へ飛び出さんとする。
しかし、そこに石蒜の刀が振り下ろされる!畝傍はショットガンの銃身に自らの炎を纏わせることで、これを咄嗟に防御せんとした!
「ぐ…………っ!」
どうにか刀身をそらすことには成功するも、切先で胴体をわずかに負傷。そこから流れる鮮血もまた炎と化し、燃えていた。
飛行姿勢がふらつくも、すぐさま立て直して距離を置くように後退、ショットガンを構え発砲!BRAKKA!銃撃音が響き、炎を纏った散弾が撃ち出される!

鳴鳴 > 「ハハ、アハハ、アハハハハハハハ!!!」

声が何重にも反響する。門の向こう側ははっきりとはしていないものの、明らかによくない何かが蠢いているようであった。
「さあ、僕を止めてみてくれ! 僕を殺してみてくれ!
 「道」の前にあまりにはかなく無意味な君達が! 僕達をどうしてくれるのか!
 それが、僕は、僕はとても楽しみなのさ!」
混沌を纏いながら鳴鳴は言う。そして一つの構えを取った。
大極を描くようにして腕を回す。
蒼介の放った高速の手裏剣が鳴鳴に迫る。
鳴鳴はその手裏剣目がけて駆けると、その手裏剣が身に突き刺さる刹那、手裏剣に手を添え、身を削られながら、流れを変えるかのように身を回転させ、その勢いのまま、蒼介のほうに手裏剣を弾き返した。

「人間であるとかそうでないとか、そんなことは意味がないんだよ。無意味なんだよ。
 「道」の前には万物斉同、絶対無差別なのだから! 僕は君であり、君は僕だ!」
鳴鳴は手裏剣を追うように走りだし、その混沌を纏った腕で、蒼介に殴りかからんとする。

石蒜 > 散弾、という言葉を石蒜は知らなかったが、あの銃から放たれた弾が散らばるのは知っていた。
散らばりきった弾は防げない、だから、左手を前に突き出して、拡散しきる前の弾を受ける!
運動エネルギーの全てを受け止めて、左手の肉はえぐられ、全身の骨に衝撃が走る。そして、超常の炎が左手を燃やす。
「くふッ……♥」熱と衝撃は即座に快感へと変わる。ああ、気持ち良い、これこそが私の享楽。

さらに後退しようとする相手に合わせて、斥力を使って飛び込み、至近距離を保とうとする。
「逃げないでくださいよ畝傍!私と一緒に居て下さい!アハ、アハハハ!!」
嘲るように笑いながら、上半身をひねって、刀による渾身の突き、狙いは胴体、急所を狙っては面白く無い、もっと引き延ばしたい。

風間蒼介 > くっ……ふざけた規模の力のクセに緻密な技とか反則にござるなあ!
(享楽を歌うようになるほど、これは遊びなのだろう
 自分の放った技を返されればそれに自信があればあるほど心に受ける衝撃は大きい
 しかし、今の投擲は所詮相手の反応を見るための牽制
 返されようとも揺らぐはずもない
 風圧を感じるほどのギリギリをすり抜け、交差しながら回避し…左右三本、計六本のクナイを袖の下から滑り落とし、指で挟むようにして構える
 バヂリと紫電が刃に走り…)

無意味であろうがなんであろうが、そこに意味を見出すモノが居る以上は…
たとえ誰が嗤おうと、そこに価値はあるでござる!命を賭けるに値するほどに!
(六本のクナイが放射状に電磁投射され……
 その付け根には鋼線が結び付けられており…そこを雷撃が伝い、グン、と軌道を有機的に変化させる
 二本がまっすぐに鳴鳴へと向かい、二本が軌道を細かく変えながら刺客を狙い、二本が複雑な動きでかく乱に徹する
 風間神伝流、有線誘導電磁投射手裏剣・群狼陣)

畝傍 > 斥力を用い高速で迫りくる石蒜に対して、畝傍はすかさず左方向への移動による回避を試みた。
狙いが逸れ致命傷は免れるも、脇腹を刃が抉り、出血!血飛沫は火の粉へと変わり、やがて大気中に消える。
「ボクだって、シーシュアンといっしょにいたい……けれど。それは……」
あの世でではない。畝傍の目的は石蒜を、サヤを救い――何より大切なのは、生きて戻ることだ。
そして急加速で石蒜の真横へ移動すると、ショットガンを一旦右肩に下げ、先程まで左肩に下がっていたロケットランチャーを構えた!
なるべくなら温存していたかったが、相手も本気である以上形振り構ってはいられない。
まずは一発、ロケット弾を発射する!BOOOOM!

鳴鳴 > 「すぐに壊しちゃったら面白くないじゃないか。僕はね、君達と遊びに来たんだ。
 己の存在を賭けて、遊ぶんだ! これほど面白いことはない!」
自分の胸に手を突き刺し、何かを抜き出していく。
鳴鳴の胸から、一振りの刀が抜き出されていく。九つの小さな灯籠のついた刀。
九蓮宝刀である。

「ほう、じゃあその君のやろうとしていることは本当に望まれていることなのかな?
 君達は、僕が彼女を、サヤを歪めたと思っているらしい。確かに、間違ってはいない。
 だけど、僕は彼女の望むままに、彼女の命を繋いであげたのさ!
 君達はできるのかい? 彼女を幸せに、普通の生活に戻すことなんて。
 君達の世界の価値観にある限り、彼女は人殺しだ。永遠にね。
 全てが無意味で無価値であるとする僕は彼女を赦した。そもそも僕の世界には善悪なんて存在しないんだ。だから。
 彼女は僕と居たほうが幸せだと思わないかい?」

クナイが電磁投射される。二本のクナイが鳴鳴に向かう。それを刀で弾きながら、そのまま蒼介に向かう。
「あ、は、アハハ……! 九蓮宝刀ォッ……!」
鳴鳴の体が不意に宙に舞いあがる。そしてそのまま、重力に任せて蒼介に向かって落ちていく。
刀が振り上げられる。混沌のまとわりついた刀だ。
恐らくまともに喰らえばただでは済まない。

石蒜 > 「そうですか、そうですか、私と一緒に。でも、駄目なんですよ、それは出来ない。私はもう誰も受け入れないし、誰も私を受け入れない。ただ一人ご主人様を除いて!」
「認めましょうよ!私なんか本当はどうでもいいんでしょう?私じゃなくて、自分が助けられるのなら誰でもいいんでしょう!?あなたはただ恩を着せたいだけ!!きっとそうだ!」
相手の想いを否定する、違うとわかっているのに。誰からも疎まれていると思い込む、その方が楽だから、そうじゃないと辛いから。だがそれに石蒜自身は気付いていない。

何か、四角い箱を構えた、それから発射された何かは、大きくて遅い。だがこれを受けるのはまずい気がした、畝傍の目がこれは切り札だと言っている。
素早く足を振り上げて、回し蹴り。ロケット弾には触れず、斥力を使って軌道をずらした。
ずれたロケット弾は地面にぶつかって爆発を起こす。
「アハ、ハハハ。なんですかそれは、殺すつもりじゃないですか、そんなもの持ちだして。」炎を背負って、笑う。やっぱり、本当は私なんか助けたくないんだ。
「わかりましたよ、あなたの本心がね!!」怒りに、殺意が膨らんだ。
追うのをやめ、力場を右腕にうつす、そして大きく振りかぶり、斥力で加速させながら刀を投げつけた。猛烈な勢いで、回転させながら畝傍に向かう、狙いは首。

畝傍 > 「……ちがうよ。シーシュアンが、受け入れなくても……シーシュアンのことを受け入れてくれるヒトは……いるんだよ。いるんだ」
誰も私を受け入れない――その石蒜の言葉を、畝傍は否定せんとした。
しかし――畝傍がロケットランチャーを用いたことで、石蒜を刺激してしまった。相手の本気に本気で答えようとした行為が、かえって裏目に出てしまった。
以前の畝傍ならば、その選択を後悔し、悩み、苦しんでいたことだろう。
だが、もはや迷いはない。石蒜にどれだけ嫌われようと、怒りや殺意まで向けられようと――最終的に彼女を救えるのであれば、それでいい。
投げられた刀は畝傍の首を狩らんと向かってくる。ならば――
畝傍はまだ残弾の残っているロケットランチャーを、躊躇なく投擲!そしてショットガンを構え直しつつ、斜め右下方向へ逃れるように急加速飛行!
もし刀がロケット弾の信管に突き刺されば、爆発は免れない。
たとえ信管に突き刺さらなかったり刀の軌道が逸れても、畝傍の異能によってロケットランチャーは残弾ごと爆破されるであろう。

風間蒼介 > 自分の力を存分に振るい試すのが楽しいのは判るでござるが…ね…!
(電磁投射手裏剣は速度と柔軟性をかねそろえた必殺の技である
 が、しかし三次元空間上では線の攻撃でしかない
 するりとその間をすり抜ける鳴鳴に舌打ちしたい気分で鋼線を開放し無手に戻り)

助けて…と言ったんでござるよ、サヤ殿は
それに心得たと応えた、それ以上の理由など知った事ないでござるなあ!
(あれはヤバい…と、鳴鳴の取り出した宝刀とそれの纏う力に血が悲鳴に近い最大級の警告を放つ
 それに従い、腰の後ろから刃渡り60cmほどの飾り気の無い直刀…霊刀風切り羽を抜く
 刀としての格では劣ろうが霊性を帯び、風間の異能に馴染んだこれ以上の武器は持ち合わせていない)

彼女に罪は無いとは言わんでござるよ
サヤ殿は人を傷つけた、それは紛れもない事実
それを開き直るならばそれは彼女の選んだ道でござろう
しかし罪の意識を覚えながらそれを押し込めるのは歪みに他ならぬ
そこに救いは無く歪みを得た刃金はいずれは折れ砕ける…
それに、一つ勘違いしてござるな?
(自分の防護を捨て、風雷の力を刀身に集め、圧縮
 打ち込まれる宝刀に刃を合わせ…ぐるり、と内臓の裏返るような不快感が全身を駆け巡る
 凝縮された異能の力は一瞬混沌の力と拮抗し、犯し侵され…霊刀の神性を帯びた刃がぎちりと軋みをあげる
 受け止めるのは不可能、受け流すには技量が底知れぬ
 ゆえに刃は添えるだけ…そこを支点に自分の体を押し流し、殺傷圏内から滑るように体を投げ出し、抜け出す
 即座に足裏に電界を生み出し、電磁レールを生み出しスラロームしながら間合いを外し)

彼女が望もうが、望むまいが…知った事ではござらぬ!
現に石蒜には拒絶されてござるからな!
だがそれがどうした!元より武力を用いての説得など強引な押し付けでしかござらぬ
傲慢勝手は承知の上、あえていうならば…拙者らはやりたいと思った事をやっている!
善悪?正しさ?そんな大義名分、知った事か!
(そのまま電磁反発に風の勢いを乗せて跳躍、宙に電磁レールを走らせムーンサルトを切りながら上昇し
 無数ともいえる大量の棒手裏剣…それも表面に細かく術式を刻み雷力を乗りやすくした物を雨のように、放射状に降らし、面の攻撃力を生む
 風間神伝流 電磁投射手裏剣・鳳仙花の陣)

石蒜 > 「いいえ、もうどうでもいい。ただ今を楽しみましょう、それだけが真実です、それだけが本物です。他は何もかもが紛い物、言葉も想いも、何もかも。」そうだ、私は九万里の空を行かなくちゃならない、そこには誰も居ない、地上から誰がどれほど叫ぼうと、声も光も届かない。全てが漆黒に染まっている、それが私の生きる道だ。それだけしかない。

刀はロケットランチャーに突き刺さり、残弾が爆発。
右手を人差し指と中指だけ立てた剣指の形に、それを振るって吹き飛んだ刀の軌道を操り、畝傍の背後から襲わせる。
同時に自分も駆け出す、力場は左手にまとわせているので、少し遅くなっているが、それでも俊足だ。背後からの刀を避けられれば、そのまま刀をキャッチして斬りかかる、そういう算段で、駆ける。

畝傍 > 首を狙う刀はどうにか回避できた。爆発に紛れ、刀は畝傍の眼前から消えていた――が。
「…………!」
背後か――そう確信するまで、一寸遅かった。軌道が読めなかった。
回避しようとするが、先程まで急加速していたために飛行の制御が難しい。
「かは…………っ」
刀の直撃こそ免れるも、刃によって脇腹をさらに負傷した上、地面に叩きつけられ吐血。
まだ武器はある。立ち上がらんとするが――叩きつけられた衝撃のためか、うまく身体を動かせない。絶体絶命の状況であった。

鳴鳴 > 「僕も彼女を救ってあげたのさ。まあ、玩具でもあったけどね。
 一度は君達に絆されて僕を裏切りに来たんだけどね。僕がもう一度救ってあげたんだ!
 彼女を本当に救ってあげられるのは僕だけだ。この世界の価値観に絶対性なんてない。
 別に彼女が罪に思う必要なんて何もないのさ! 僕がそう教えてあげたんだ!
 罪を押し込めてなんていないさ。僕が彼女を赦し、罪から解放してあげた! アハ、アハハ! 石蒜は僕のものなんだ!
 だって、僕が名づけてあげたんだからね!」
刀を蒼介に打ち込む。火花が散る。
混沌がしみこむようにして、蒼介の直刀に、黒々とした混沌が迫る。
鳴鳴はかなりの勢いで彼に切りかかっていた。彼が流れるようにして自分の体を押し流したため、鳴鳴は勢いよくその場を駆け抜けていく。

「――素晴らしい!!」
眼を見開いて、蒼介の言葉を賞賛する。
「そう、そうだ、そのとおりだ!!! 君は僕と同じなんだ!
 君は真理に近づいている! そう、全ての価値は無意味だ。何故ならば絶対的ではないからだ!
 君はそう、自分の享楽のために、欲望のために、やりたいことをやっているんだ!
 アハ、アハハ、アハハハハハハ!!!!
 なあんだ、わかっているじゃないか! ならば君は僕と同じだ!
 君は僕なんだ!」
降り注ぐ大量の手裏剣を前に、狂ったように嗤い、拍手までして見せる。
雷を纏った手裏剣が面で迫ってくる。鳴鳴は刀を器用に回転させ、一部は防ぐものの、全てを防げるわけではない。

「あひ、あ、は、ひゃああ!!」
嗤いながら、棒手裏剣が次々と鳴鳴の体に突き刺さっていく。
ぐさり、ぐさりと何本も。しかし鳴鳴の体から溢れるのは血ではなく、混沌である。

石蒜 > 「アハ、アハハハハハ。」かかった、笑いながら、倒れた畝傍に歩み寄る。刀はまた軌道を変えて、石蒜の右手に収まった。
「ねぇ畝傍、私もあなたにはそれなりに思い入れがあるんです。出来れば殺したくない、あなたも死にたくないでしょう?」勝ち誇った笑み、生殺与奪権を握って、圧倒的優位に立っている。それが楽しい。

「だから、あなたも私と同じになりましょうよ。ご主人様に歪めてもらいましょう、どうです?そうしたら私の仲間です、ずっと一緒ですよ?」
きっと断られるだろう、わかっている。畝傍は私の現状をよく思っていない、ご主人様も憎んでいる。受けるはずがない。
それでも石蒜は聞かずには居られなかった、何も聞かなければ殺さなくてはならないから。時間稼ぎのようなものだが、それに気づいていない。親切心から聞いていると思っている。

「一緒に、なりましょう?」屈みこんで、その頬に優しく手を伸ばす。散弾でボロボロになった左手を。

畝傍 > 頬に添えられる、ボロボロになった石蒜の左手。
それでもなお、畝傍の炎は衰えることはない。その右目からは、わずかに炎の涙が溢れていた。
「……いや、だよ。ボクは……混沌に染まるわけにはいかないんだ。シーシュアンをたすけるって、きめたんだから。ボクはきらわれてもいい……だけど。シーシュアンがどれだけ、ゆがめられたって。かならずたすけるって、やくそくしたから。だって、シーシュアンはボクのいちばんだもの」
畝傍を今もなお突き動かし続けている、ただ一つの約束。
最初に出会ったとき、彼女と交わしたその約束を守り通すためであった。
「ねえ、シーシュアン。きいてほしいことがあるんだ」
体勢はそのままに、畝傍は石蒜へ話を切り出す。
「ボクも……ボクもね。ひとごろしなんだよ。ボクは、ボクのうまれた国で……銃を持って、いっぱいヒトを撃った。撃って、ころしたんだ。だから、おんなじだよ。ボクもシーシュアンとおなじ、ひとごろしだ。だから……ひとりじゃ、ないんだよ」

風間蒼介 > (鳴鳴の言葉を噛み締める、痛いほどに噛み締める
 ああなるほど、自分勝手な理屈を以ってして彼女を自分の理想へと引っ張り込みたいという点においては同じだ
 善悪倫理を放り投げ、彼女が真に望むかどうかという願望を横に置けばその通りだ
 認めよう、その言葉を
 認めよう、これは祝福されるべき正義などではない)

そう、すべてに置いて絶対はござらん
善も悪も時と場合による、見る者、聞く者、決める者によってそれはうつろい揺らぐ
拙者の行動も人によっては余計な事をと唾棄される行動でござろうな
(駆ける、駆ける、空を翔る
 足裏に生み出した雷球を蹴りつけ、炸裂した反動で弾かれるように加速
 鳴鳴を中心にした円運動は代わらず、しかし螺旋の軌道で空へと駆け上がり)

そう、価値など人それぞれ…ゆえにその全てに価値など無く
だがそれでもと自分の全てを賭けられる熱を持てるからこそ…森羅万象一切合財!全てに意味はあり価値はあるんでござろうが!
(熱い、熱い、熱が渦を巻く、グルグルと冷えた激情が荒れ狂う
 それに指向性を与えるのは理想、自分はこうしたい、こうありたいという理想が淡い像を結ぶ
 深奥に眠る心が像を結び…形を得た異能が力を生む)

蒼炎鈞昊玄 変幽朱陽 以って九天と為す
(印を結び、地面に刺さった棒手裏剣に刻まれた術式が光を放ち、大地より気脈を引き出し紫電を放ち)

九天応元!雷声よ響け!煉気化神・大周天 雷哮爆華陣
(棒手裏剣の一つ一つが紫電の線で結ばれ、鳴鳴を中心とし陣を描き、逆さのイカズチを天へと放つ)