2016/01/10 のログ
ご案内:「転移荒野」に大徳寺・E・亜里沙さんが現れました。
■大徳寺・E・亜里沙 > 『亜里沙さん、本当にやるおつもりでございます? これに意味があるとは思えませんわ』
『そうですわ、勝てるわけございませんもの。それに優雅でもありません』
「お黙りなさい! 貴女方も賛同したでしょう。古き良き優雅な文化をこの学園に知らしめるのだと!
全部活を打ち負かす優雅にして高貴な戦いは始まったばかりですのよ!」
常世島西部の転移荒野。そこで二つの巨影が睨み合いを続けていた。
一つは『第一異能・魔術工学研究会』が有する魔術・異能・科学の粋を集めた最新型の機動兵器。
一つは、大徳寺・E・亜里沙とその取り巻きが作り出した、旧世紀の技術のみを用いて作り上げた、彼女たち曰く「典雅にして高貴なるワルキューレ」なる小型機動兵器である
■大徳寺・E・亜里沙 > これらのものは共に競技用であり、危険はない。
旧世紀の頃より科学は大いに進歩した。異能や魔術のおかげだ。
それにより様々な文化が生まれ、娯楽が生まれた。
その一つがこの『現代的騎馬戦』である。
互いに作り上げた機械の騎馬(その形状は基本的に自由)に乗って戦い、相手を打ち負かしたほうが勝利というものだ。
色々なルールなどもあるが個々では割愛する。
兎にも角にも、『第一異能・魔術工学研究会』はその騎馬戦のチームを持っていた。
魔術と異能で強化することは認められている。
そんなチームに突如戦いを挑んだのが、亜里沙たちであった。
「では始めさせていただきますわ。こてんぱんにしてさしあげますから怪我には注意してくださいまし。
お覚悟宜しくて!」
『ワルキューレ』のハッチから顔をだした亜里沙が相手の機動兵器に向かって叫ぶと、ハッチを閉める。
■大徳寺・E・亜里沙 > 『亜里沙さん、使い方がやっぱりよくわかりませんわ。もうやめてお茶にしませんこと?』
『そうですわ、せめてもう少し優雅なスポーツで……テニスとか色々ありますわよ?
亜里沙さんのお家は機械とか得意でしょうけど私たちは……』
「私は何でも一番でなくては気が済みませんの。
異能や魔術などの文化よりも、わたくしたちにはかつて育んできた高貴な文化があるのですわ。
その高貴な文化をあの誇りを忘れた者達にぶつけますのよ」
機動兵器のエンジンに火がはいる。ひどくロートルな技術だ。
ズドドドと音が上がり、キャタピラが回り始める。
「さあ、異能や魔術など使わずとも、かつての高貴な文化が一番だということを見せてさしあげましょう!」
敵の機動兵器、『プロメテウス』は人型である。
エンジン音もさしてなく、非常にスムーズに動いていた。
最新の魔術・異能学を駆使した機体――間違いなく最強の敵である。
そして、その相手に向かって無謀にも『ワルキューレ』が突撃をかけ始めた。
■大徳寺・E・亜里沙 > 典雅にして高貴、人類文化の粋を結集した精神的貴族のための現代的拘束馬車――つまるところ、戦車である。
大徳寺家の家紋を正面に頂いた金色に輝く騎馬は疾走する。
「Glory, glory, hallelujah……Glory, glory, hallelujah
Glory, glory, hallelujah……His truth is marching on」
『亜里沙さん、いつもこの歌を歌ってらっしゃいますわよね。
何の歌かご存知?』
『聞いたことがありますわ、なんでしたっけ……ごんべさんの赤ちゃんが』
「違いますわよ! ああもう、操縦に集中してくださいまし!」
鉄の塊の中で囁き合う取り巻きの二人を亜里沙は然りつけながら、ハッチから顔を出して相手を見る。
異能により炎をまとい、魔術機関を搭載して無限に等しい動力を得た『プロメテウス』である。
三人が乗る現代的騎馬よりも三倍以上の大きさがある。
当然ながら向こうはいきなり売られた喧嘩であり、さしてやる気も無いためか亜里沙たちの動きを伺っていた。
■大徳寺・E・亜里沙 > 「ワット蒸気機関にエジソンやテスラの電気モーター・コイルをも用いた最新式の現代騎馬!
異能や魔術といったよくわからないものには負けませんわ!!」
『蒸気機関? モーター? なんだかよくわかりませんわね』
『それって最新式でもないと思いますの……きゃああっ!?」
「ちょっと、まっすぐ走ってくださいまし!!」
金色の騎馬は爆走するが、昨日今日で操縦が覚えられるわけもない。
騎馬は右に左に揺れ、車体が大きく傾いていく。
「くっ……!! ならさっさと勝負をつけますわよ!!
この、大徳寺家が編み出した伝統の機械工学の粋を集めた騎馬――
『ワルキューレ』の一撃によってあんな化物は吹き飛ばしてしまいますわ!
超電磁――!!」
ねずみ花火のように爆走しながら、なんとか相手の機体に近づき、砲身を向ける。
亜里沙が自身の操縦席に備えていたスイッチを押せば、砲身がバチバチと輝き始め――
「きゃああっ!? えっ、ちょっと何が!?」
『け、蹴られ、蹴られましたのよーっ!!』
「な、なんと無礼な!! お返し……ま、また揺れ!? いやああああ!!」
超電磁砲を打ち出そうとした時である。
がこんと大きく車体が揺れた。瞬時に移動した『プロメテウス』がこん、と『ワルキューレ』を蹴飛ばしたのだ。
さらに、その車体をつままれて放り投げられ、遠くへと投げ飛ばされていく。
『ああ~~すみません。今回はうちの勝ちでいいですよね? それじゃあ~』
プロメテウス側からやる気のない通信が入ったかと思えば、彼らは既に撤収準備を始めていた。
「ちょ、ちょっと!! お待ちなさい! 勝負はまだ……きぃぃ、覚えてらっしゃい!!」
宙を舞う金色の戦車が爆裂し、空の彼方に崩壊の音を上げる。
機体が破壊され、行動不能になった場合は敗北である。
亜里沙達は脱出装置によって宙に吹き飛ばされ、転移荒野の土塊と友人になったのであった。
――敗北。
ご案内:「転移荒野」から大徳寺・E・亜里沙さんが去りました。