2016/06/12 のログ
ご案内:「転移荒野」に東雲七生さんが現れました。
■東雲七生 > 転移荒野と呼ばれる広大な荒野と、青垣山を筆頭とする新緑地帯の境。
鬱蒼と木々が生い茂る地帯に、巨大な熊が居た。
その巨体たるや3階建ての一軒家ほどで、一目見て此方の世界の存在で無い事は見て取れるだろう。
何せ、角がある。
額に一際大きなものが一本。そして両肩に一本ずつ。
さらには背骨に沿う様にして数本縦に並んで生えていた。
そして巨大な鉤爪を備えた腕。大人数人束になってようやく比肩し得る太さである。
そんな巨熊が、森の中でごうごうと寝息を立てていた。
寝息一つ一つが腹に響く様な重低音を発している。
その熊の背に、七生はあぐらをかいて座っていた。
「交流会だか、立食会だかってのは──もう終わる頃かなあ。」
ぽつりと、寝入っている熊以外には聞こえないくらいの呟きを。
■東雲七生 > 遠く、会場である常世大ホールのある実習区へと目を向ける。
交流会があるという話はしっていたのだが、あんまり人の多い所に行きたくないという我儘によって七生は参加を自主的に辞退していた。
それでも少しだけ羨む気持ちが残っていたので、
その気分を吹っ切るべく、こうして未開拓地区まで出向いてついさっきまで今は寝こけている巨熊と一戦交えていたのである。
「こいつともすっかり顔馴染になっちまったなあ。」
自分が腰を下ろしている熊を見下ろして、やれやれと肩を竦める。
初めて遭遇した時は、半ば本気で死を覚悟した。
それから数ヶ月、挑んでは敗走、挑んでは敗走、挑んでは敗走を繰り返すたびに、変な友情を築いてしまったのである。
最近ではすっかり“手合わせ”の気分で来るようになってしまっていたが、そこは相手は正真正銘の獣。いざ戦闘となったら一切手加減してくれない。
一発貰えば即死と言える攻撃を平然と仕掛けてくる。
「……まあ、だからこそ挑み甲斐があるけど。」
人間相手に全力を出しづらい七生にとって、この熊は格好の修行相手だった。
■東雲七生 > 「なーくまきちー なー 次の機会があったらお前も行くかー?」
ぼふぼふ、とソファ代わりの熊の背を手でたたく。
ついさっきまでこちらを殺す気で攻撃を仕掛けてきた相手にするような態度では無い様に思えるが、熊の方もいっさいに気にしていない。
「行くわけねえよな。狩られちゃうもんな。」
うんうん、と頷いて相手の返答も無く問答を終わらせる。
そもそも相手は寝ているのだ。返答なんてあるはずもない。
だから全て七生の独り言であるのだが。七生自身そんな事はまったく気にしていない。
「でもさー、もっとこう、先生と生徒だけじゃなくって、何でもかんでも一緒くたに大騒ぎしたら、楽しいかもな。」
熊の背に生えた、柱の様な角に背を預けて、ぼんやりとそんな事を呟いたり。
■東雲七生 > 「やっぱちょっと、行きたかったかなー。」
ぽつりと呟いて、それを欠伸で掻き消す。
何せ七生の方も殺されてなるものかと全力で巨熊の猛攻を躱し切ったばかりだ。
正直、意識を保ってるのが奇跡なくらいに疲労困憊である。ちょっとでも気を緩めればすぐにでも寝てしまいかねない。
でも、もうちょっとだけ起きていたいのは、心残りがあったから……なのだろうか。
「背ぇ、伸びねえかなー」
風にそよぐ前髪を眺めながら、ぼんやりと呟いて。
もう一度、獣の様に欠伸をしてから眠たげに目を擦った。
ご案内:「転移荒野」に迦具楽さんが現れました。
■迦具楽 >
「身長ってどうやったら伸びるのかしらねー」
【そうやって猛獣らしき何かの上で寝転がる少年の上に影が落ちる】
「こんばんは、七生。
そんなところで寝ると、食べられちゃうわよ」
【少年が声を見上げれば、赤いジャージ姿の迦具楽が宙に浮いているのが見えるだろう。
迦具楽は少年を見つけると、やわらかく微笑みつつ高度を下げ近づいていく】
■東雲七生 > 「んぁ。」
僅かに尻の下の熊が身動ぎした。
接近する何者かに反応を見せた様で、その正体を確認した七生に宥められて再び寝息を立て始める。
「迦具楽。
……だいじょーぶ、一応、ダチだから。」
戦り合う時以外、と注釈を添えつつ。
眠たげな眼をジャージ姿の少女へと向け、眠たげにもう一つ欠伸をした。
「それに、食われるとしても、俺食うトコあんまないし。」
少女が飛んでいる事には何らリアクションを見せない。
まあ、迦具楽なら飛ぶかなー、くらいの認識である。もう完全に色々麻痺している。
■迦具楽 >
「別にその子に食べられるとは限らないでしょ?
私がお腹すいてたら、間違えて七生ごと食べちゃうかもしれないし」
【熊が暴れないところを確認すると、目の前まで近づいていく。
熊肉も美味しそうだしなあ、なんて内心では思いつつ】
「そんな事ないわよ?
七生は凄く美味しそうだから、食欲に負けたらつい食べちゃうかも知れないもの」
【勿論『私が』と付け足して。
眠たそうな少年を見ると、くすりと笑った】
「だから、眠いならちゃんと帰って寝た方がいいわ。
私もちょうど帰るところだったし、一緒に帰る?
今なら空中散歩にも連れてってあげられるけど」
【飛ぶことにも随分慣れつつあるので、人一人くらいなら抱えてか背負ってか飛べそうだった。
さすがに断られるかなあ、なんて思いつつも手を差し出してみる】
■東雲七生 > 「んー……でも強いよ、俺も、くまきちも。」
だから大丈夫、と全く根拠のない自信を込めて答える。
傍から見ても根拠が無い事は丸わかりなのだが、何故かその一言でそうなりそうな予感がするのは七生の人間性故だろうか。
「それに、迦具楽そんなことしないもん。
……ん、に。帰る……。」
異邦人街まで送って貰えるのならそれに越したことは無い。
まだ一歩たりと歩けないほど披露している。ここで一時間ほど寝れば、心配される前には帰れるほど回復しそうだとは思って居たのだが。
折角の申し出を無下にするわけにもいかない、と、思ったかどうかは定かではないが。
こくり、と一つ頷いてとろーんと眠たげな表情のまま両腕を広げた。
■迦具楽 >
「そうね、今のところはそんなつもりはないわね。
うん、それじゃあ――」
【『帰ろっか』と言うつもりだった迦具楽の口は、『か』を発音できないまま固まっていた。
具体的には少年が両腕を広げたあたりで硬直していた】
「――う、うん、そうね。
さすがにその様子じゃ歩いて帰れなさそうだものね!」
【一体これはなんの試練なんだろう。
そんな事を思いつつ、少年に近づいて抱き上げる。
正面から抱き上げればそれはもちろん、背中と足に手を回すような形になるわけで。
そう、抱えて飛ぶのだからこの姿勢が比較的安定しそうだと、それだけの事】
「そ、それじゃあ七生、ちゃんと掴まっててね!」
【しかし抱き上げれば、必然的に距離は近い。
いや、近いだけなら普段から密着だってしてるのだけれど、さすがに今の状況と状態は、普段とはどう考えても違うわけで】
「……連れて帰りたい」
【ぽつり、と本音が漏れ。
けれど頭を振って、寝息すら立てそうな少年を抱えて飛び上がった。
少年を抱えて異邦人街へ向かう迦具楽の顔は。
夜空に描かれる飛行機雲よりも、赤くなっていた】
ご案内:「転移荒野」から迦具楽さんが去りました。
■東雲七生 > 「……んぅー。」
子猫の様な鼻声を漏らしながら、迦具楽の首に腕を回して。
そのまま頭を彼女の肩に載せ、すぅすぅ寝息を立てながら異邦人街まで空路で運ばれていったそうな。
ご案内:「転移荒野」から東雲七生さんが去りました。