2016/08/27 のログ
東雲七生 > 討伐数を報告するためにトンボの亡骸を数えはじめる。
折り重なるように積み重なったものも、見落とさないよう注意しつつ数えていく。
とはいえ岩の上に腰掛けたままで、正確である自信はちょっと無い。
かと言って優に20を超しそうな数の巨大トンボをいちいち並べて数えるのは倒すよりも骨が折れそうだ。

「……まあ、こういうのはおおざっぱで良いんだよおおざっぱで。
 どうせ一の位とか四捨五入したり平均にしたりするんだろーし!」

途中から面倒臭くなって数えるのを止めた七生は、言い訳がましくそんな事を口にする。

東雲七生 > 吹き抜ける風に肌を晒して、戦闘で暖まり過ぎた身体を冷ます。
一通りトンボを数え終え、あとでメールで報告すれば課題の提出は完了する。その前に少しクールダウンして行こうと岩に腰掛けたまま七生はじっとしていた。
脱いだシャツを転がっていた枝に引っ掛け、乾かしながら特に見るものも無い荒野を眺める。

「にしても、どっから沸いて来てるんだろうなこいつら。」

足元のトンボに目をやってから、再び荒野を見渡す。
巷の噂によれば《門》と呼ばれる経路で異世界から現れるらしいが、見たところその様な物は見つからない。
ただただ荒れた大地が広がっているだけである。

「……別の世界と繋がる門ねえ……。」

半信半疑だが、実際に化け物みたいな昆虫が現れているのだから認めざるを得ないのだろう。

東雲七生 > もしこの世界と、別の世界とを行き来できる手段があるとすれば興味も沸くが。
どうも現状を見る限り、その《門》とやらは一方通行に等しい手段に思える。
だとしたら駄目だ。それは駄目だ。
異世界に興味はあっても、この世界に関心が無い訳ではない。
むしろこっちの世界でもまだまだ知りたい事は山ほどある。

「……んん、腹減った。」

などと考えていたら、ぎゅるる、と七生の腹が鳴った。
そういえば朝飯を食べて今は昼、激しい戦闘もあってすっかり空腹になってしまったのだろう。
しかし、食べ物は特に持ち合わせていない。最寄りの飲食店まで最短でも10分ほどは走る事になるだろう。
他に食べられそうな物と言えば、

「………このトンボ、食えんのかな。」

じっ、と赤い双眸がこと切れた虫の死骸を見つめる。

東雲七生 > 気になったのと、空腹を我慢出来そうになかったので。
七生は岩から降りると、手近なトンボの骸の脚に手を掛ける。

「……まあ、物事は何でも経験、ってね。」

小さな棘のような毛に注意を払いつつ、間接を逆側に曲げるように腕に力を籠めれば。
パキリ、と枝でも折ったかのような音と共に容易くトンボの脚は折れた。

「あんまり美味そうじゃない……。」

しかしそれでも腹は減っている。
これを我慢して食堂まで走るか、それとも。
……食堂まで行くにしても燃料は必要だと、七生は意を決して、

東雲七生 > 結論から言ってしまうと、思ったほど不味くは無かった。
6本あったトンボの脚が4本になった辺りで七生は再び岩の上に戻る。
不味くは無かったが、好んで食べたいかと言われるとちょっと困る。
そんな味だった。エビフライの尻尾みたいな。

「……ま、これで少しはマシになるかな。」

ぎゅるる。少しだけ空腹を紛らわせたところで、シャツの乾き具合を確認する。
荒野特有の乾いた風のお陰でシャツの湿っぽさも無くなっていたが、少し汗臭い気もする。

「こりゃ飯食いに行く前にどっかで洗わなきゃかなー。」

東雲七生 > トンボ食べたんだし、翅とか生えないかな。
そんな事を思いつつ、岩の上で大きく伸びをしてからシャツを着こむ。
確かに近場に泉だか水たまりだか、そんな感じの水辺があった筈だと思い出して。

「これからも倒したついでに食ってみようかな、虫。」

他人に言ったらドン引きされそうだから、秘密裏に。
そんな事をぼんやり考えながら軽く膝の屈伸運動を初める。
いち、に、いち、に。それから大きくしゃがみこんで、すーっと息を吸い込むと。

全力で叩き付けたスーパーボールの勢いの如くに、跳躍してその場をあっという間に去っていった。

ご案内:「転移荒野」から東雲七生さんが去りました。