2016/10/04 のログ
ご案内:「転移荒野」にルベールさんが現れました。
ルベール > 金属光沢のある木目調。不思議な素材で出来た粗悪な人型。
脚が3本、腕が2本。顔らしき部位もあるがつるりとした丸い何か。
何でつながっているのか、動いてもするすると、擦れる音すらしない。
それが、目の前の相手にじりじりと近づいている。

そんな化け物を目の前にして、唇を持ち上げる女。
ふへへ、と緩んだ笑みを浮かべるのは金髪の長身。

この、ピリピリと張り詰めた空気がたまらなく好きだ。
普通の学生でいる自分も、平和な空間も、好きなだけ好きなものを食べる時間も好きだが、この時間は特別だと思う。
プリンを食べている時の次に好きだ。


「なんだよ、この私とやろーってのか。
 いーぜ、来いよ。 リハビリにゃちょーどいい。」

ニィ、と悪役の笑みを浮かべながら指を擦れば、しゅぼ、っと炎が生み出される。
紅い紅い、いわゆる普通の炎は彼女の手首を覆い隠すほどに広がって。

ルベール > 「……よ、っこい、せぇっ!!」

その炎の中から取り出すのは、己の身長ほどもある大斧。
紅に金のラインが入ったそれは、イメージで具現化された炎属性の武器。
久々の術だったが綺麗に取り出すことができれば、ヒュゥ、と口笛を一つ吹く。

金色の髪を振り乱して、Tシャツとジーパンだけの女は、斧を天秤に抱えて。
唇をれろりと舐めて、笑う。

「………紅のルベール、久々に参る。
 聞いちゃいねーだろーけどさ。」

名乗り口上は昔はすごいしていた。
戦場一杯に響き渡る大音声で名乗っていた。
思い出すだけで恥ずかしいから思い出さないけど。

謎の材質で出来た、銀色のゴーレムの腕が迫れば、ワン、ツー、とバックステップをして斧を両手に構える。

「ぶった切れるか、まずは試してみるかね。
 ……っそ、ぉぉぉいやぁっ!!」

伸びてくるもう一本の腕の正面から、フルスイングのように叩きつけ。
ギィィンッ、と、強烈な金属音が荒野に響き渡る。

ご案内:「転移荒野」に暁 名無さんが現れました。
暁 名無 > 「──ったく、何だありゃあ。」

妙に荒野が騒がしいと、授業で使う植物を採集しに来た俺はその原因を探した。
その結果辿り着いたのが、金髪美人と得体の知れないゴーレムが今まさに一戦交えようって現場で。
今まで何度も転移荒野での戦闘を目撃してきた俺も、そのカードには些か場違いな物を感じてしまった。

「斧って……しかもあんなでっけえ斧。よく振り回せんなあ。」

対峙し合うどちらにも見つからないように、岩陰からこっそり様子を窺う。
俺が加勢に入ったところで何の足しにも成らないのは自明の理って奴だ。

と、そうこうしているうりにゴーレムの方が仕掛けた。
俺なんかが受けたら真っ二つに圧し折れそうなパンチを、女は軽々と躱し、斧を振り被って──

「……~っ!?!?」

ド派手な金属音に俺は思わず耳をふさぐ。

ルベール > 「……っつぅ……かってぇ……っ!」

周囲にいた小動物が逃げて行ってしまうほどの強烈過ぎる音に顔をしかめ、痺れが出てくる自分の腕をかばいながらも、口元はまだ笑みが浮かぶ。
硬いが、まったく効かないわけではなさそうだ。ゴーレムの掌に刻まれた深い傷に、クク、っと悪い笑みを漏らす。


「ふ、んっ!!」

気合と共に、斧を強制的に引っこ抜く。
ゴーレムの攻撃をひらり、ひらりとかわしているが、周囲に気を配る様子はほとんど見えない。

気を配らぬまま、今度は斧の柄……その端をぐい、っと握りしめて。

「さぁ………もーいっぱぁつっ!!」

大音声で怒鳴りながら、ぶぉんっ、ぶぉんっ、と斧を頭の上で振り回し始める。己の腕力に遠心力を加えれば、相手をぶった切れるという計算の元、豪快な行動をとり始め。

暁 名無 > 「かぁーっ、いてぇ~……こりゃしばらく耳の方はまともな使い物になんねえな。」

ぽんぽん、と耳を叩いてみるも頭の中では耳鳴り大合奏。
目の奥もチカチカとして視界もだいぶ不鮮明だ。
それでも目の奥の明滅はすぐに納まって、確認した戦況はというと、流石の一撃にゴーレムも手傷を負ったか。

「随分とまあ、豪快なちゃんねーだなオイ。」

頭上で斧をぶん回す姿に苦笑が漏れる。
だが気風の良い女は嫌いじゃないし、巨大武器って浪漫じゃねえの。
もっとも俺の目は得物の大きさもさることながら、こちらも豪快に揺れる胸へも目が向いてしまうのだけれど。
男のサガって奴なので、勘弁して貰いたい。ま、他に誰か居るわけでもねーしな。

ルベール > 「……そんな鈍い動きじゃあ、捕まってはやれないねぇ!
 そいよっ……わぁん……とぅー……」
 
 ごうっ、と音が鳴るほどに振り回しながらも、慣れているのか相手の腕をよける。
 確かに女性らしい身体つきを隠そうともしない女だ。むしろ昔は誇示していたが、今は流石にそこまでは。軽装な格好だから、身体のラインなどはすっきりと分かるだろうけれども。
 カウントダウンをしながら、だん、っと地面を踏み切ると、ほぼ正対の状態から一回転をし。
 
「す、りぃぃぃいいいっ!!!!」

 更に激しい破裂音が響き渡る。金属で金属を断ち切る、耳障りな音。
 びりびりと空気が震えて、草が騒めく。

 残るのは、顔部分だけではなく、肩の半分から上、胸らしき部分から上を丸ごと、ばつん、っと断ち切られて棒立ちになったゴーレムと。
 その前で斧を振り切った態勢で立つ女。
 
「………ぁー……」

 流石に間近で聞いて、頭がくらくらしたらしい。
 頭を押さえて呻く。

暁 名無 > 「ひゅーっ、ありゃまるっきり戦い慣れした奴の動きだな。」

スタイルもさることながら、やっぱりでかい武器を振り回して戦う姿には男として胸が熱くなるものがある。
ましてや自分がもやしである自覚があれば尚更だ。
誰だって自分もあんな風にでけえ武器ぶん回してみてえと思うだろ。

「おわっとと、見とれてる場合じゃなかった……っ」

再び斧とゴーレムとがぶつかり合う前に耳を塞ぐ。
今度はしっかり、耳の穴に指を突っ込んで、その上からしっかりと押さえ込む。
お陰で耳鳴りの悪化は免れたし、目がチカつくこともない。

「ははっ、文字通り叩っ斬っちまいやがった。」

見事両断されたゴーレムを見て、思わず口笛を吹く。
流石にもう危険は無いだろうと、岩陰から身を出すと軽く拍手なんか送りつつ。

「よー、大した力技じゃあねえか。
 そんなデカブツ相手に、でっけー斧なんかで渡り合いやがってよぉ。」

ルベール > 「………ん、なんだよ、見てたのかよ。」

 耳を抑えてくらくらする頭を抑えていた女であったが。
 後ろから声がかかれば、抑えるのをやめて、ふふん、とどや顔をしながら振り向く。
 
 斧は手放すことにした。手はじんじんしているままで、まだ感覚は無い。
 けれども、どやってる以上、余裕っぽいフリをしなければならない。
 
「まー、この程度ならね。
 最近やりあってなかったから、リハビリって奴? まー、リハビリにもならなかったけどさ。
 ちょっとだけ硬かったけど、なぁに、こんなの全然。」
 
 どや顔のままどうよ、どうよ、と褒められると嬉しそうに尻尾を振る(ように見える)女。実際に尻尾はついていないけれど。
 褒められて伸びるタイプ。
 
「で、何しにきたのさ。
 私に挑戦? 別にいーけど。」
 
 にんまりと笑う女。

暁 名無 > 「はっはっは、悪いなコソコソするつもりは無かったんだけどよ。
 邪魔しちゃ悪いと思ってな、コトが済んでから声を掛けようと待ってたんだ。」

ひらひらと手を振りつつ、軽薄そうな笑みを顔に張り付けて俺は言う。
なんだかこう言うと詐欺師っぽい顔になっちまうんだが、言葉に虚偽は一切無い。誓って良い。

「なるほど大したもんだ。
 美人で巨乳で腕も立つたぁ、さぞや名の知れた戦士さんか何かかい。
 危うく惚れるとこだったぜ、危ないとこだな転移荒野ってのは。」

自分で言っててあまりにも軽薄な褒め言葉じゃないかと少し反省する。
とはいえ、あんなデカブツを両断するくらいなんだから腕前は相当なもんだろう。
だが俺のこの頃までの記憶にこんな女戦士の情報は無い。となると、異邦人か、と見当を付ける。

「なっはっは、君に挑戦か?
 生憎と俺は腕っ節はからっきしでね。口説くにしても袖にされんのは目に見えてるしな。」

俺は懐から煙草を取り出して銜えると、大きく首を振った。

ルベール > 「ん、まあ、あぶねーから正解。
 私の戦いを見てたならわかるだろ? 周りの配慮とか絶対できねーから。
 声かけられたとしても、周りにいたら一緒にこーなってる。」
 
 親指で自分の背後のそれを指さしながら、ふん、っと鼻を鳴らして格好をつける。
 どやぁ……ってまだオーラを出してる。
 
「………ぇ、あ、いや。
 なぁに言ってるのさ。誉めたってなんにも出ないっての!」
 
 美人と言われて顔が赤くなり、胸のことを言われて言葉が早くなる。
 流石に腕で隠そうとはしないけれど、ぇうあうと喉に言葉が詰まったかのよう。
 
「……まあ、こっちの世界にゃあ最近来たばっかりだけどね。
 ちょっとは名前の知られた戦士だったさ。
 紅のルベール、っていやあ、大陸で知らない奴はいないからね。」
 
 どや顔のまま、話を多少盛る。本当はそこそこ有名程度だ。
 でも相手に感心されていると、どんどん調子に乗るのだ。木に登りに登っていく女戦士。
 
「ま、まー……まーね。
 私はそんな安くないってことよ。」
 
 明白な動揺をみせながら、胸に手を当ててえへん、と威張る。
 
 そんな威張る女の後ろで、ゴーレムが僅かに動く。

暁 名無 > 「だろーな。
 ま、お陰で良いもん見れたし危ないとこでも来てみるもんだな。
 ……ところで、お前さん学生かい?」

俺はそれとなく訊ねてみる。
まだ新任とはいえ、立場上確認しなきゃいけないこと、言っておかなきゃならないことってのはあるもんだ。
特に相手が生徒なら尚更、な。

「なっはっは、悪い悪い、思った事しか言ってねえんだがなあ。
 おっさんになると遠慮ってもんが無くなっちまってよ。まあ失うもんが無いからかね。」

すっかり顔に火が付いた様になったのを見て俺は笑う。
どうやら見た目に似合わず結構な初であるらしい。いや、見た目通りにというべきか。うーむ。

「ほう、やっぱり異世界の出かい。
 紅のルベール……ふんふん、そういやそんな名前を聞いた事があるような。」

ただし、未来の世界で、だ。
あまりにもうろ覚えなのが少し悪い気もしたが、まあそんな事を気にするタマには見えないから良いか。

「はっ、そう言われると少しは挑戦意欲が沸いてくるかもな。
 案外男心ってのを解ってるねえ。さっき照れたのもブラフかい……と。」

軽口の最中に女の肩越しに、ゴーレムが動くのが見えた。
分断されてまだ動くとすりゃあ厄介だな、と俺は僅かな魔力を集中させてゴーレムの動きを注視する。

ルベール > 「…ん? ぁあ、そーなるかな。
 異邦人が集まる場所って聞いてさ。元の世界に戻る方法も集まってくるんじゃないかなって思ったわけ。
 ほら、戦争中だし? 戻ったら平和ボケしてましたーってわけに行かないじゃん。」
 
 からから、っと笑って腰に手を当てる。
 悲壮感は一切無い。
 
「そんな世辞言われても、別に気にしないし。」

 褒められると伸びるタイプ。
 身体つきとかをほめられても、恥ずかしいけど伸びるタイプ。
 恥ずかしがりつつも、満更でもない様子で。
 
「ほんとに!?
 ………いや、ええと、まあ、………それは気のせいじゃねーかな。うん。」
 
 愛用の身体にぴっちりのバトルスーツレオタードに数多の通り名(自作)を持つ彼女の闇は深い。
 思い出すだけで顔が赤くなって視線を逸らす。
 まさかその話題がここまで飛び火しているのなら、恥ずかしくて悶え死ぬ。
 
「………そ、そーいうこと。
 挑戦するときゃ、命を賭けるくらいでなきゃ………」
 
 軽口で顔を赤くしながらも、負けず嫌いなのかそれに乗っかって言葉を続ける彼女の後ろで、ずずず、とちぎれかけた腕が動いて持ち上がる。
 
 顔を赤くしてドヤ顔のままテンパる、という器用なことをしている女は、気が付かない。

暁 名無 > 「ほぉ、戦争中の世界から飛んでくるたぁまた難儀じゃねえの。
 ま、精々頑張って帰り道を見つけてくれや。
 同じよーに異世界から来た先生ってのも居るし、同じような境遇の生徒もわんさか居るからな。
 それはそれとして、だ。一応この辺は危険区域でな不用意な生徒の立ち入りは一応注意しとかね―となんでな?」

めっ、と鼻先に人差し指を突き付ける。
これだけ。これで終わり。まあ最初の注意勧告みたいなもんだからな。

「そーかいそーかい、それならこっちも気を張らなくて済むんでありがてえなあ。
 顔も体もおっさん好みだしな。はっは。」

流石にこれ以上からかうと一周回って怒られる気もするし、そもそも教員が生徒にセクハラを働くのはよくない。
……って確か契約時に注意された気がするけど知ったこっちゃねえや。

「あー、まー、何を恥じらってんのか知らねえが。
 名前は聞いた事がある、ってだけだぜ。もしかしたら転入手続きの書類かもな。」

掘り起こしてはならない過去とかもあるらしいな。
まあ、知ったこっちゃねえけど、と俺は思う。
そもそも知る由もない。昔も今も未来も、俺はこの世界育ちだから。
……と、そんなことよりも。

「命を賭けるたあ、生々しいねえ。命って事は将来を掛けてってことだろ?
 ──っ、悪い。巻き込むかもしれねえからちょっとこっち来い──!」

背後の動きに気付いていないルベールの手を取り、俺は引き寄せようとする。
同時に火と風、二種類の魔力を編んで術式として展開。自前の魔力は心許無いが、ここは転移荒野。
──奇しくも俺の十八番フィールドだ。

「見た目金属っぽいし……燃え尽きちまえよ!」

俺が出来る事といや、火を着けることと風を起こすことだけ。
だがそれらを上手く組み合わせれば一瞬だけとはいえ凄まじい力を出すこともある。
まずは風の術式で腕野郎の周囲の空気を循環させる。ぐるぐると渦の様に気流が生まれたそこに、火の術式で生んだ火種を放り込めば。
渦巻く風──酸素を際限なく吸収して、デカい炎の竜巻が出来上がるって寸法だ。

ルベール > 「別にいーのさ、どーせ死んだことになってるだろ。
 戻れたら戻れたで奇跡の復活。戻れなけりゃ、こっちで荒事の仕事の一つでも探すかね。
 あー、………ま、そういう境遇だから見逃してくれよ。
 戻った時に腕が鈍ってたら終わりなんだからさ。」
 
 ぺろ、っと舌を出して片目を閉じて、いいだろ? なんて笑って見せる。
 無邪気な仕草だ。どうやら注意は聞きそうにない。
 
「………や、やーめーろよ。 やーめろってばー。」

 顔も体も。その言葉に湯気が出そうになりながら、流石に胸を腕で隠して後ずさり。
 ぶっとばすぞー、なんてちっちゃい声で言いながら。
 
「……そ、そーだよな。 まあなに、ほら、暴れまわってたからさ。
 有名ってーことは敵も多いってことさ。
 強さの代償って奴? まー、有名人はつらいからさー。」
 
 相手が自分の過去を知らないことが分かれば、またどや顔で吹かせるだけ吹かす。
 恥ずかしがったり胸を張ったり、なかなかに忙しい。
 
「……んひゃ?」
 
 腕をぐい、っと引き寄せられれば、そのままばふ、っと。間の抜けた声だった。
 シャツ一枚を隔てたそれが潰れるも、本人は理解が遅れる。
 ごぉう、っと燃え上がるその炎をみて、おお、っと声を漏らしていたから。
  
「……まだ生きてたのかい。 ったく、この場所も半端ねーな。」

 炎に包まれ融けていく相手を見ながら、ちぇ、っと舌打ち。

暁 名無 > 「──ったく、二度までだぞ。」

斯く言う自分も生徒の時分に散々ここで暴れ回ってたから注意できる立場じゃねえ。
いや、でも俺の場合はちゃんと授業の一環で報告書も書いてたしだな……。

「なぁんだよ、気にしねえんじゃなかったのか?」

くっくっく、と流石に自分でも悪い顔してると思う。
だがまあ、何て言うか、授業以外であんまり生徒と触れ合う機会なんてものが無かったんで、少し調子に乗ってるのは見逃して欲しい。

「有名税って奴だな。
 まあ良くも悪くも目立つもんは叩かれるもんだ。」

引き寄せれば流石に不意を突いてしまったのか俺の身体にぶつかる。
そのまま肩に手を回す様にルベールの身体を抱き締めて、俺は炎に包まれた腕を睨みつける。
ぶった切られても動いた様なバケモンだ、まだ何を隠してるか分かったもんじゃない。

そもそも斬っても動く様なものは、数パターン考えられる。一つ目はトカゲのしっぽみたいに囮にして本体が逃げる為に動くか。
二つ目は分離した方に核があり、それを叩かないと動き続けるか。
三つ目はスライムの集合体みたいに、切っても切っても小さくなって動いてくるか、だ。

ルベール > 「じゃあ、ちゃっちゃと隠れないといけないわけな。
 ま、目立たないようにやるさ。」
 
 に、っと笑って言葉に出す。
 バレなきゃいいのさ、をはっきり口に出しながらも、相手が悪い顔をすれば、拗ねたように胸を隠して、べー、っと舌を出してやろう。
 
「ふん、………気にしないさ。
 言われるだけならずいぶん言われたもんだしね。
 そそ、有名税って奴?」
 
 ふっふーん、とドヤ顔。調子を取り戻すのも早ければ木に登るのも早い。
 だからこそ、倒したと思った相手が動き出したのは悔しいらしく。
 
「おっけ、いったん離して。私がぶっ潰す。
 動けなくなるまで刻んでやりゃいいだろ。 もしくは潰す。 すりつぶす。
 
 私さ、炎にゃ強いから。
 
 ……あと、うん、やっぱ離れて。」
 
 ふっふん、とどや顔で己の耐性について述べた後、べったり身体が密着していたことに気が付いて、視線を逸らして相手の身体を手で押す。
 改めて恥ずかしくなったとか言えない。

暁 名無 > 「お前さんじゃ隠れるのも目立たない事も難しいと思うけどな
ー。」

とはいえ一応今回の注意は終わりだ。
これ以上今日ここで何をしようと“一回”のカウントに含まれるから知った事じゃない。

「言われるだけなら。
 ほぉ、有名なだけあって男からの誘いも引く手数多だってわけかい。
 そりゃ俺が袖にされんのも納得てもんだ。」

けらけらと笑いながらも俺の視線はさっきからルベールが斃したはずのゴーレムへと向けられる。
見るからに金属だが、もしこいつは一個体じゃなく集合体だとしたら。
あまりにもぞっとしないが、あり得ない話でもないのがここ、転移荒野だ。

「んー?あー……一応生徒に万が一って事があっちゃ悪いんだけどな。
 ………てのは建前で、こんな別嬪抱く機会なんてそうそう無いもんでな?
 出来りゃこのままで居たいんだが仕方ねえ。

 ちゃんと戻ってこいよ?」

手で押されるのも意に介さずに、ぐっ、と一度強く抱き締めてから解放してやる。
本人は大層なやる気だし、こういう手合いは完膚なきまでに相手をノさないと気がすまないんだろう。

ルベール > 「ま、私は目立つからねー?
 仕方ないかな、こっちの世界だともうちょっとみんな小さい子が多いし。
 髪の色も目立つしねー。」
 
 目立つ、の意味合いを言葉通りに解釈する女。
 髪の毛をちょい、と指先で弄りながら、うーん、と悩む素振り。
 
「……そ、そー。 そういうこと!
 まー、わ、……私くらいになるとね。 私クラスになっちゃうとね!」
 
 苦しい言葉を続ける。この意地を張るのはかなり苦しいらしい。
 暑さで汗をかかない彼女が汗だくである。
 
「……ふきゃ……っ!?」

 ぎゅ、っと一度抱き締められれば変な声が出た。
 うっせー、うっせー、なんてぶつくさ小さな声で不満げに漏らしながら体を離して。
 
「ったく……。まあ、このおかげで後ちょいと足せばいいか。
 ……お待たせ、んで、さようなら。」

 燃え盛る炎の中を眺めて、小さく呟き。

「………もっと。 もっと、もっともっともっともっと燃えろぉぉぉぉおおおぉおおっ!!!!」

 叫んだ。両手が炎に包まれ、それを彼の生み出した炎に混ぜ込むように、地面にたたきつける。
 炎の渦に更に追加で炎が足されれば、周囲にあった草木が熱で枯れ、燃えるほど。
 次第に地面が赤熱の状態から、ぐずり、と金属の身体を持っていたゴーレムが埋まり始める。
 地面を、燃やし、溶かして。
 
「……鉄くずは地面に還りな。」

 紅のルベール、渾身の決め台詞とドヤ顔。背中で決める女。
 ………終わってから、どう? どう? すごいでしょ? みたいな顔で振り向くから台無しだが。

暁 名無 > 「そうだな。
 目立ち過ぎてどんな人混みに居てもお前って一発で分かる自信があるぞ。」

流石にそれは無い。それは無いが何と言うか、売り言葉に買い言葉というか。
あまりにも言葉通りに受け取られたので、言葉通りに受け取っても恥ずかしいような事をしゃあしゃあと言ってしまう。

「くくっ……」

流石に無理して見栄を張る姿に笑いが堪え切れなくなっちまった。
あまりにも必死過ぎて、一体何がそこまでさせるのかと逆に心配になるくらいだ。

「おーおー、張り切っちゃってまあ。
 男に抱かれてテンション上がったか?」

だとしたら冥利に尽きるんだけどな。
ルベールの起こす熱で銜えていたタバコに火が灯る。
流石に服まで火を着けられちゃたまったもんじゃねえ、とそそくさと後退してゴーレムの最期を見届けた。

……んまあ、B級モンパニムービーなら長い時間かけて再生して、ってのが御約束だけどな。
そんな俺の戦闘後の余韻もルベールがビシッと決めてくれたからこそのものだったんだが。

「あーはいはい。カッコ良かったな。惚れちまったよ、もうぞっこん。」

子供っぽい、を通り越してもはや犬っぽいアクションに、俺は溜息に紫煙を乗せて吐き出した。

ルベール > 「ま、これも有名税? ……ちょっと違うな。
 別にいーけどね。 こっそりやるときゃ、一人でぶらつくしさ。
 見つけてもでかい声で呼ぶなよ、恥ずかしーから。」
 
 ちぇ、と舌打ち。相手が笑うのをなんとなく感じる。
 からかわれている気がする。
 からかわれる経験が豊富な女は、そのオーラだけはなんとなく感じ取った。
 
 自分の恥ずかしい記憶とかそういうのを一気にぶっ飛ばそうと気合が入りまくった結果のハイパワーであったが、思ったよりパワーが出たので満足げ。
 
「…………でっしょー。かっこいーだろ。
 まーな、私だもんね。 そりゃーねー。
 惚れたら物理的に火傷しちゃう、なんてね。」
 
 呆れたように褒められても、そんなことには気が付かない。
 どうよー、と胸を張って笑いつつ、流石に熱いことには気が付いているのか、とんとん、っとその場から離れて軽く近づき。

暁 名無 > 「了解、じゃあ小さな声でハニーって呼んでやろう。」

ぷくく、とまだ笑いが後を引きながら俺は頷く。
流石に危険な事を率先して行う生徒はマークしておかなければ、俺の給料に響く事にもなりかねない。
こればかりは仕事だから……ん、あ。そうか。

「じゃあルベールお前、俺の助手んなれ。」

我ながら名案だ、と凄まじく自画自賛している俺が居る。
どのみち俺は定期的に調査して転移荒野に来るし、その調査も転移荒野に棲息する生物及び生物っぽいものの把握だ。
いざ何かに襲われた時に腕の立つ相棒が居れば、それほど心強いものは無い。
……と、簡潔に説明する。

「格好良かったけど何もその辺の木まで焼くこたねえだろがよ。
 近くの森まで延焼したらどうすんだ、一大事だぞったく……」

俺は水の魔力を編み、術式を展開する。
空気中の水分を集めて幾つかの水球を造り、それをまだ燃え残る火へとぶつけた。
盛大に弾けた水球は瞬時に火の勢いを殺して鎮火していく。

ルベール > 「やーめーろってば! 恥ずかしいっての…!」

 一瞬でドヤ顔が赤い顔に戻って、腕を振り上げて怒る。
 こんにゃろー、こんにゃろー、とやっつけようとしたところで、相手の言葉に?と首を傾げて。
 相手の説明をふんふん、と聞きながら、そうさねぇ、と考える。
 
「…んー? でも私加減とかできないし、私が戦うってことは、こういう状況になるってことだけど、それでも言ってんの?
 ………まー、手伝うくらいならいーけどさ。
 大義名分があるのと無いのはえらい違いってことくらいは知ってるから。
 でも、よばれない限りは好き勝手やるけどね。」

 腕を組んで、ぅうん、と唸る。
 その上で即断即決。 手伝うくらいならいいよ、と口にして。

 周辺被害についてぶつくさ言われると、頭の後ろに手を回してぺろ、と舌を出して視線を逸らす。
 私知らない、って顔で口笛なんか吹いたりして。

暁 名無 > 「わーったわーった、冗談だって真に受けんな。」

俺だって何の関係も無い相手を公の場でハニーなんて呼べない。
ぱぱっとした説明だったけれどまあ、それ以上の説明も特に無いもんだから。

「ああ、それでいい。加減はしなくていいぞ。
 後で元々この辺りに居る生き物の写真だけ見せるから、そいつらとの戦闘は極力避けろ。
 それ以外はまあ……ブッ倒してからどんな奴だったか俺に後で説明してくれ。
 そしたらささやかだけど給料も出すし、何より俺が与り知らぬ時にお前が他の先生に見つかってもだ。
 俺の名前を出して調査の一環ですってホラが吹けるだろ。」

その為の手続きとかは俺がしよう。それくらいは当然だ。
腕を組んで殊更強調された胸に気付いてるのか居ないのか、多分気付いて居ねえだろうなーって思いつつ。
──じゃ、決まりだ。と俺は握手を求めようとして、こっちの方が似合そうだな、とハイファイブを求めた。

ある程度の消火も終えて素知らぬ顔をしているルベールの頭にも。
水球をぽーんと放る。大したダメージは無いが水でも被って反省なさい、ってやつだ。

ルベール > 「ふぅん。………そういうことなら。
 ま、この世界はやべーのがたくさんいるみたいだけど、私も負ける気無いし?
 ……まー、宮仕えをしたことがある分、飼い慣らしやすい猟犬だとは思うけどね。
 まー、任せてよ。ただまあ、名前も聞いてないんだけどさ?
 センセーってことなんだよね?」

 ふっふん、と鼻を鳴らして笑う。
 駄犬っぽいオーラを出しながらも頼られると悪い気はしない。
 胸を強調しているつもりはどうやら無いらしい。
 いかにもな満足げなオーラ。

 相手が手を伸ばせば、ぱちん、と軽く掌を合わせて。
 にしし、と笑い顔をみせるのだけれど。


 ばっしゃーん、と水が弾ければそれをまともに浴びて、ぎゃーっ!? と大きな声をあげた。

「……こ、こんにゃろぅ………。」

 ぷるぷると震えながら、声を漏らす。
 寒いんじゃなくて怒りだ。
 なぜか白いシャツを着てきてしまったせいで、肌色を透けさせながら、ぎりり、と歯を噛んで睨む。 がるるる。

暁 名無 > 「利害の一致だな。
 ……まあ、その意気で上手い事やってくれ。
 飼うだなんだってのは趣味じゃねえが……ま、手は噛まねえようにしてくれよ。」

ああ、そういえば名乗ってなかったっけか。

「俺はナナシ。暁名無だ。ここから十数年先の未来から来た。
 好きな物は酒と煙草とこの島と──優秀な美人助手だな。」

はっ、と笑いながら煙草を足元へ。そして踏み消す。
この選択が間違いだったかどうかはまだ解らないが……まあ、少なくともこいつを見てれば少しは仕事も捗るだろ。
……余計な仕事をこいつが増やさなければ、の話だが。

「自分で燃え広げて置いて他人事のよーに構えんじゃねえよ。
 次やったら風紀にチクるからなー。」

今回は初回だし、その濡れ透けシャツに免じて見逃してやろう。
何が飼い慣らしやすい猟犬だ、と俺は内心で肩を竦めるのだった。

ルベール > 「わっかんねーよー?
 不用意に手を出したらがぶっとな。

 ………あー、そういう飛ばされ方もあるのな。
 ふぅん、時代を超えてねぇ。 ま、そういう意味では私も過去かもしれないわけか。

 ん? 他に誰かいんの?」

 異邦人だからか、すごい勢いで未来人という言葉を納得して。
 頭が弱い子だからか、すごい勢いで美人助手という言葉に、他にいるんだ、妻帯者かな? なんて考える。


「うぐぐ、……もう流石にやらないってば。
 ちくしょー、これで帰るとか無理じゃんか。

 乾かして帰るか………。」

 ぶつくさぶつくさ。
 本気で怒る、ということはないけど、己のやったことを棚に上げて不満げ。
 透けていることがわかるのか、腕で隠しながら乾かし。

 近寄るときっとがるる、と唸って追い払うのだろう。

暁 名無 > 「ちゃんと用意を整えりゃ手を出しても良いってこったな?

 飛ばされ方つーか……この時代にゃ、自分の意思で来たんだ。
 ま、詳しい事はお互い無しだ、助手やるうえで問題はねえし、お前さんも過去のことは詮索されたくねえクチだろ?」

お互いの過去や経歴は不干渉にしようと、提案しつつ、
早速スカウトしたことを後悔しかける。
察しが悪いと言うか、薄々勘付いてたけど結構頭ユルいなこいつ。

「……お前のことだよ。美人で巨乳の有能助手カッコ仮。」

……ただまあ、本当に退屈だけはしなさそうだ。
右も左も知った過去に来てなお、新たな出会いには心躍る自分が居る。
それが何だか恥ずかしくもあり、俺は俺なんだと実感する。

「脱いで火に当てれば早いんじゃねーか―。」

警戒されれば近寄らず、先程のルベールの真似をして舌を出して視線を逸らす。
もちろん隠す前に目に焼き付けたし、何なら下着の色もばっちりだ。

ルベール > 「……そーゆータイプもあるのな。
 私んとこから誰か飛んできたりしねーかな。
 ま、その通りだな。私も過去のことは忘れたいこともある。」

 そーゆーのもあるんだー、で納得するゆるさ。
 過去、部下に真っ赤な装備をつけろよー、って強要して、え、嫌ですけど。って断られた過去とか。

「やーめーろってばよー。
 ……ほ、ほんとのことだとしてもやめろーよー……。」

 ったくもー、と相手の言葉に文句を返す。
 美人だのなんだの言われるとみるみる照れる。


「っさーい! そのうち乾く! 先に帰ってろって!」

 むきー!と両腕を振り上げて怒って。
 そのあとすぐ腕で隠す。 ちくしょう。
 ぐつぐつと煮える溶けた岩の近くで乾かしながら、背中に下着のラインを透けさせつつも、きっと乾くまで帰らないのだろう。

暁 名無 > 「あるんだよ。
 ……ま、そういう期待はするもんじゃねえぞ。
 意図的に飛んでくるならともかく、事故で飛んで来られたら路頭に迷うのが二人になるわけだ。」

流石の俺でも二人も助手として雇うのは厳しいものがある。
出来れば雇うのはルベール一人、あとはボランティアで協力を募りたい。

「悪いな、正直者でよ。」

けらけら笑いつつ、これは良いからかい相手が出来たと我ながらご満悦ってやつだ。


「へいへい、あそうだ。」

存分に目の保養もさせて貰ったし、と俺はポケットを漁って鍵束を取り出す。
学校の職員ロッカーとか、準備室とか、机のカギ等々の中から二つでワンセット、アパートのカギを取り出して束から外す。
その後メモ用紙に連絡先を走り書きして、それに鍵を包んで。

「ほらよ、俺の家のカギだ。あと連絡先。
 雨の日とか退屈持て余し過ぎて死にそうになったらまず職員室当たってから来い。
 雇ったよしみだ、この島のことならある程度教えてやる。」

ぽーんと、それらをルベールへと放る。
多分これが最後だろうから拝んどくか、とわざわざ頭上に手を伸ばさないと取れないラインをノーコン装って、だ。

ルベール > 「大丈夫だっての。
 そうそう二人も飛んでこないこない。

 ふん、正直過ぎたら噛みつかれるからな。」

 がるる、と唸る。
 からかわれていることだけは良く分かる。
 からかわれガチ勢は流石だった。


「……ぁん? あー、なるほど。
 流石に家にゃ行かないとは思うけどね。
 学び舎なんだろ、ここ。がっこで会えるだろ、がっこで。
 ああ、いやまあ、いざって時もあるから預かっとくけどさ。」

 思ったよりも常識的なことを言う女。
 頭の緩さと比べると常識力はそこそこ高かった。

 それでも、ぽーん、と投げられればお、お、お……っとそれを目で追いかけて。

「あぶなっ!?」

 このまま飛んでいくと、どろどろに融けた地面に飛び込んでしまう。
 そいや、っとジャンプしながらぱちん、っと掴んで着地。
 バスケの練習がここで生きた。
 余計なジャンプのせいで、下着に包まれた胸が思い切り弾むことを見せつけてはしまうけれど、あぶねーだろー! ってむきゃーと怒っている彼女は気が付く様子もなかった。

 下着はピンクだった。 

暁 名無 > 「そうである事を願うしかねーな。
 おお怖い怖い、からかうのは程ほどにしておくかな。」

とは言っても、そうやめることは無いだろう。
それ程までにこいつとの対話は何だか楽しいし、少し、懐かしい感じがした。
俺もこんな風にからかわれたりしたな──なんて、少しだけ感傷に浸ったり。

「合わねえもんだぞ、生徒と先生の時間ってよ。
 それに変に学校で気安く話し掛けたらすーぐデキてるだのデキてねえだのお前はいつまで童貞なんだの始まるからな。
 ……まあ、それは冗談として、スペアを持ってる奴がいると気が楽だ、預かっててくれ。」

フッ、と自然と笑みがこぼれる。
思いの外常識的な考えも出来て少し安心したのか、それとも

「おおっ、ナイス。……キャッチ。」

大迫力で揺れる胸を拝んでから俺は名残を惜しみつつ背を向ける。
次に会うのはやはり学校だろうか、と考えつつ──

「それじゃあな、ルベール。風邪ひくなよ。」

俺は新たなタバコに火を着けると、その場をゆっくり後にするのだった。

ルベール > 「からかいすぎると噛みつくからなー。」

 こんにゃろー、と言いながらも。
 そういうもんか、とカギは預かっておくことにしよう。
 ライトでドライで、無頓着なのも彼女らしさだ。

「学校外で会う方が絶対噂されると思うんだけどさ?
 ま、いーけど。」


「……水かぶせた奴が言うかあ…?
 へいへい、んじゃーね。」

 さらりとした様子で見送ることにする。
 ジャンプに伴う自分に起こった現象については、最後まで理解が及ばず。

ご案内:「転移荒野」から暁 名無さんが去りました。
ご案内:「転移荒野」からルベールさんが去りました。