2016/10/30 のログ
ご案内:「転移荒野」に黒龍さんが現れました。
黒龍 > とある夜明け前――転移荒野、その一角。上空200メートル付近。

バヂッ…!バヂバヂバヂッ…!!

不意に激しい放電が空中に迸り、そこから黒い円形の「門」のような物が突如出現する。
やがて――…

ドォォォォォォォォォンッッッッ!!!!

その門を閉じている「扉」が、不意に内側から強烈な力で弾き飛ばされ…
その中から、一つの巨大な影が高速で飛び出してくる。

『…あんのクソ野郎がぁ!!脱出に何十年も掛かるような狭間に落としやがってからに…!!』

落下する影――いや、全身を黒い鱗で覆われたソレは……巨大な一頭の龍だった。
龍の言語で悪態を零しながら、頭から地面に落下していく身を器用に反転。
黒い両翼を広げて急停止を掛けて行く!やがて、地面スレスレの所で何とかその身を危なげなく着地させて。

黒龍 > 『……あぁ?』

何とか着地をすれば、黄金のギラついた双眸が周囲の景色を睥睨する。
鼻息を一つ荒く漏らす。…大気が違う、空気の匂いが違う、漂う魔力も違う。
――”何処だここは?”。黒い龍が真っ先に思ったのはそれだ。
まるで人間のように、器用に右手…右の前足と形容するべきなのか。その爪で頬を掻く仕草。

『おいおいおいおい、やっとあのクソッタレ空間から脱出したと思えば…妙な所に出やがったな』

己が居たあの世界とは違う匂い、違う魔力をひしひしと感じる。
それに、ここはそれ以外もよく分からないモノが渦巻いているようだ。
だからこそ、あの上空の門がここに繋がったとも言える。つまりは――…。

『…クソが。あの世界よりここの特異性に門が引き摺られやがったって事かぁ?』

不良めいた荒い独り言を龍語で零す。荒っぽいがバカではないようだ。そして龍は溜息…ブレスを吐き出す。
ただの無属性のそれだが、その吐息の余波で地面と周囲が削れたがお構い無しだ。

『……腕一本支払って門を「抉じ開けて」出てきてみれば…知らねぇ場所…ってか?
俺の腕返せよマジで…』

黒龍 > 『チッ…妙な場所だな。魔力どころじゃねぇ。色々と捻じ曲がってやがる』

器用に舌打ちをする黒い龍。ここが何処なのか未だに分からないが…確かな事は一つ。
ここは己知っている国、大陸、世界ではないという事だ。…そうなると。

『…こっちの連中に見つかるのは面倒だな。適当に姿を晦ますか…最悪、あの術使って潜り込むしかねぇか』

呟きながらも黒い龍は周囲の警戒を一切怠らない。魔力、気配、音。空気の乱れ。
その全てに注意を払う――が、この場所が不安定なのか遠くまで警戒が届かない。

『……チッ』

もう一度短く舌打ち。そして上空を見上げる…黒くぽっかりと空いた門。
が、それも徐々に小さくなって…やがて消えてしまう。
当然だ。あくまで彼が門を抉じ開けたのは一時的な物に過ぎないのだ。
時間切れになれば、当然門は跡形も無く消えてしまうのは必然である。

『――クソッタレが。あの野郎にノシ付けて借りを返すのが遠退くぜ』

つまり―つまり、だ。完全に己はここに取り残された。脱出したというよりも…

(迷い込んだ……ハッくだらねぇし笑えねぇ。狭間を漂ってるよりゃマシだが…)

黒龍 > 『…ま、ここでボサッとしててもしゃあねぇ。取り合えず地理の把握は基本だしな』

閉じていた黒い翼をバサリッと広げる。左腕が無いのでいまいちバランスが悪い。
が、しょうがない。次元の狭間に門を形成して別の場所に転移する。
その触媒と代償として腕一本なのは安い方だろう。そうしなければ、永久に次元の迷子だった。

『――ここがどんなトコかは知らねぇが…ま、ちっとは楽しめるといいんだがなぁ』

不適な笑みと共に呟きを漏らし、そのまま翼を羽ばたかせて上空へと舞い上がる。
やがて、その姿は夜の闇に紛れて消えていく。

ご案内:「転移荒野」から黒龍さんが去りました。