2016/12/21 のログ
ご案内:「転移荒野」に東雲七生さんが現れました。
■東雲七生 > ──すっかり日の暮れた転移荒野に、剣戟の音が響く。
音の発生元は二つの影。一つは赤い髪が月光に映える少年。
手には大振りの青龍刀。その名に反して柄から刃先に至るまで真紅色のそれを重さを感じさせず振り回している。
相対するは異形の獣。
シルエットこそ四足のものだが、全身に刃が生えていた。
何百、何千もの刃が体毛の様に生え揃い、長く長く伸びた尾の先に至るまで鋭利な刃物である。
前脚、後脚、尾に限らず突進そのものが斬撃となっている攻撃を、七生は何とか凌いでいた。
(……このままじゃジリ貧かな……。)
何度目かの衝突の後、刃が欠けた青龍刀に七生の表情が曇る。
見れば足元には砕き折られた真紅の刀剣類が積み重なる様に棄てられていた。
それら全て、この獣と交戦してから使い物にならなくなったものであった。
■東雲七生 > 無論、七生とてただ武器を砕かれているわけではない。
折られた数と同様、あるいはそれ以上、獣の身体を構成する刃を折り、砕き、毀しているのだが。
(──ちっ)
一際強い打ち合いの後、七生の得物の刃が砕けた。
童顔に似合わない渋面で手元に残った柄を投げ捨てると、獣の一瞬の隙を突いて距離を取る。
岩が多いがその他に障害と呼べるもののない荒野で、七生は隠れる場所を探した。
だが月明かりの下、獣の目をやり過ごせそうな場所は無い。
岩陰に隠れるにしても、すぐに岩が両断されてしまうのは、数刻前に経験済みだった。