2016/12/22 のログ
■東雲七生 > 「さーて、どうしよ……かなっ!」
文字通りの縦横無尽、息つく暇さえ与えられずに繰り出される斬撃を躱して躱して、七生は考える。
この獣とは、前に一度戦った事がある。
その時は隙を突かれて大怪我を負わされ、散々な目に遭った。
それからというもの、対斬撃を想定した訓練を積んだつもりで居たのだが。
「うーん……多分コイツ自身もこの辺の奴らと戦り合ってんな……。」
以前と比べ動きが数段上がっているように見える。
何より間違いなく砕いたはずの四肢の刃が再生していた。
別の個体、と考えられなくもないが、こんな化け物が何匹も居る方が面倒極まりない。
「何より……うん、一度手合わせで見た相手の目は忘れないし。」
顔を覆う刃の奥に見える瞳は、間違いなく以前戦った獣の固体であった。
■東雲七生 > 「……俺が強くなってる間に、相手も強くなってる。
うんうん、何と言うか良い関係だと思う。これで言葉が通じりゃあ少しはな。」
猛攻を紙一重で躱しつつ、足元に落ちていた獣の刃を拾う。
何処からどう見ても金属で出来ているそれは、月明かりの下鈍く輝いた。
切れ味の鋭さは以前身を持って経験済みで、その時の事を思い出して背筋が冷えるのを感じつつ、七生は刃を腕に当てた。
鋭い刃は七生の腕の皮膚を、肉を裂く。
怖気の後に痛みが走り、生温い血が一条の傷口から溢れ出る。
ゆっくりと腕の輪郭をなぞるように流れる血は、地面に滴る事は無かった。
(イメージしろ、もっと硬く、鋭く。単純な数で相手に分があるんだから、もっと速く。速く。)
繰り返し唱えるように頭の中で想像の力を高めていく。
相手に合わせて最適な武器を創る為に。
「……よし。」
手の中に完成した新たな得物を握り、刃獣の突進を紙一重で躱す。
逆手に握った短刀を、その感触を確かめるようにその場で振るった。小気味よい風切音が宵闇に消える。
「軽さは申し分ない……が、その分強度はどんなもんか……なっ!」
振るわれた尾に対して反射的に飛び退りながら今出来たばかりの小刀で受け止める。
耳障りな音を立てながらも、刃毀れ一つさせずにうけ切る様を見て、七生はほっと息を吐いた。
「おっけー……これならあと2~3時間は続けられるッ!」
飛び退った先に在った岩を足場に跳躍し、今度はこちらから斬り掛かる。
そのまま数時間、七生と獣の戦いは続き、獣の右前脚と尾の刃を奪う形で七生はその場から逃走したのだった。
ご案内:「転移荒野」から東雲七生さんが去りました。