2017/01/06 のログ
■常夜 來禍 > 「じゃあ、盗るか?」
非人道的な案が、こんなにも早く自分の口から、脳から生まれたのにまず驚いた。
ただ正直、この空腹がなんとかなるならば良いのかもしれない。そう思うほどに、來禍自身が疲弊していることにも気づいた。でも。
「ここに通えねえ、この"呪い"も解けねえ、妹にも顔見せできないんじゃ、意味ねえよなあ」
やはり、思い直す。それだけは、やってはいけない。
「じゃあ、狩りか」
実際、これが一番現実的である。今までそうしてきたことの、繰り返しなのだから。
だが、この広い転移荒野の中で、転移してきたものに遭える可能性は。それは食べられるものだという可能性は。そのことも、今までの経験からして容易に想像できる。
「……誰か、うまいもん、くれねえかなあ」
情けない狼の消え入るような鳴き声が、転移荒野の風に乗って過ぎ去った。
■常夜 來禍 > そんな戯けたことをしていると、夜もだいぶ更けてしまったことが頭上に高々と上る月を見上げて分かった。
腹具合は魅惑の一分目へと突入しようとしていた。ここまで来ると、寝て空腹を誤魔化することすら不可能。
「……しゃーない、いくか」
諦めたように目を閉じ白い息を吐くと、來禍はその場を立ち上がり、すっかり燃えきって灰だらけになった焚火の火種を踏み消す。
御節も雑煮も今は昔、と節をつけて嘲りながら、宛て処ない広い荒野に今晩のメインとなる獲物を探しに向かった。
ご案内:「転移荒野」から常夜 來禍さんが去りました。