2017/03/30 のログ
ご案内:「転移荒野」に楊柳一見さんが現れました。
楊柳一見 > 「今まで黙ってたけど、アタシ実はインドア派なんだわ」

そんな戯けた言葉を投げる先に、相対する人の姿はない。
何ぞあるとすれば、精々が己の肩に停まる白無垢の鳩。ただ一羽のみであり。

『駄弁はよい。早う進め』

それが重厚な壮年の声で囀った。
にべもない返句に、チ、と舌打ちを洩らす。
全く苛立たしいにも程がある。
せっかくの春休みだと言うのに、何が悲しゅうてフィールドワークに繰り出さねばならんのか――。

「大体さあ、今回の件はアタシに丸投げって話じゃなかったっけ?」
『自惚れるな。貴様程度に仕遂せるなど、端から思うておらぬ』

鳩が憮然と言い切った。
――じゃあテメーでやれよ。
そんな言葉をすんでのところで噛み潰した。苦味もないくせ表情が渋る。

楊柳一見 > ……まあ、こうなる可能性がなかった訳ではない。
どのみち結社から支援要員は派遣されたろう。
自分より早くからこの島に根を張って潜む輩もいるのだろう。
この鳩――式神が何よりの証拠だ。
陰陽の術理によって使役されるそれは、術者なしに存在する事は基本的に不可能。
また、情報の即時フィードバックに優れる反面、長距離を隔てての運用には堪えない。
翻ってそれは、使役者が割合近辺――少なくとも常世島内にいる事を示している。
定時連絡も寄越さぬまま買い物に出掛けた己の肩に、不意に飛びついたのがこいつである。
そこから耳元で、やれ連絡はどうしたの、一次調査はまだかだのと謳われれば、
回れ右してお仕事行って来ます的ムーブをかますより他はなかったのだ。

「わざわざバックアップなんて、ありがた過ぎて涙が出るね」

心にもない言葉を繰りつつ、歩を進める。