2017/05/08 のログ
ご案内:「転移荒野」に百鬼さんが現れました。
百鬼 > 何時もの様に、変わり映えも無く淡々と殺しの依頼をこなし、それも全て済んだ後に最後の”トラップ”に不覚にも引っ掛かった――…結果、何故かこんな場所まで一気に飛ばされた。

「………転移…荒野、か」

ポツンと一人、荒野で佇む黒ずくめは結構目立つだろうか。しかも、肌の露出が一切無く、顔にも奇妙な白い仮面を付けていれば尚更に。
辺りをゆっくりと仮面越しの視線で見渡せば面倒そうに吐息を一つ零す。

(…転移のトラップ…か。ただの嫌がらせにしか思えんが)

百鬼 > 「……。」

正直、あまりこの辺りに来た事が無いので土地勘がある、とは少々言い難く。
専ら、活動範囲が落第街やスラムなのも相俟って、こちらに足を運ぶ用向きが特に無い。
そもそも、目立つのは面倒ごとに繋がるので嫌いだ――が、こう飛ばされてしまった現在、面倒なのに変わりはなく。

(…魔力の流れは不安定…空間に揺らぎもある…何が”出る”か分からんな…)

そういうのに関わってもロクな事にならないだろう。一先ず、この場から離れんとゆっくり歩き出す。
…が、仮面が居る場所は特に不安定な一角なのか、歩く度に景色が微妙に捩れて見える。

「……ふむ。」

一度足を止める。周囲をそれとなく探りながら、その場にしゃがみ込んで革手袋に包まれた右手で地面へと触れる。

「……地脈の流れもアテにはならない、か」

百鬼 > 「……全く。死人が手間を掛けさせるものだ」

吐息と共にゆっくりと立ち上がる。無造作に空間の一角に右手を伸ばし、ドアノブを捻る様な仕草。

――キンッ!

と、一瞬だけ空間全体が軋む様な音を立てるが…何も起こらない。周囲にも変化は無い。
伸ばした己の右手を見つめながら、もう一度捻る様な仕草をする…が、結果は同じだ。

「……流石に、”整調化”は無理がある…か。矢張り地道に歩くしかない…と」

面倒だ、と小さく仮面の奥でボヤきながら再び歩き出す。さて、歩いているだけでも何が起きるか分からない状態だが。
ここで留まっているつもりもない。

百鬼 > その気になれば、整調化とはいかずとも空間の乱れを一時的に抑える事は容易い…が、そうすると肉体に反動が来る。

必然、そうなれば「真淨在処」の方へと何らかの皺寄せが行く事になろう。
あまつさえ、こちらに繋がる痕跡が残れば面倒な連中に嗅ぎ付けられかねない。

ゆっくりとした歩調で歩きながら、時々周囲に視線を走らせる…何も変わらない。
…いや、あるにはあった。誰かが過去に討伐でもしたのか、異形の残骸――つまり、骨らしきものがあちこちに散らばっている。それの一つを拾い上げる。

「………ふむ。」

コンコンと軽く叩いてみる。ただの骨とは違い、風化しておらず金属のような手応えがある。

(……丁度良い。黒刀をあの娘が”返しに来る”までの繋ぎくらいにはなりそうだ)

そのまま、仮面は周囲の地面から幾つかの骨を選別して集め始める。小一時間程して、そこそこの量の骨を回収できた。


「……。」

おもむろに骨の山に右手を伸ばし、真淨の異能である発火能力を用いる。
周囲に誰も居ないからこそ堂々と己が使えるというものだ。
骨の山に超高温の炎熱をぶつけながら、もう片方の手を複雑に動かして行く。

そう、この場で骨を加工して繋ぎの刀剣を作るつもりなのだ。鍛治の真似事みたいなものである。

ご案内:「転移荒野」に百鬼さんが現れました。
百鬼 > (……無いよりはマシ、という程度かもしれないが)

武器がなくても殺しに支障はさして無いが、あって困るものでもない。
あっという間に骨を溶かし、鍛造し、細かな部分も加工していく。
刀が矢張りしっくり来るのか、微妙な曲線を描くように形を整えていき…完成だ。

後は、懐から取り出した柄と鍔だけの刀を取り出してガチャガチャと嵌め込んで行く。
若干、ぎこちない動きの気もするがあまり慣れていないのだからしょうがない。

「………こんなものか」

やがて、魔物の骨を加工した「骨刀」が完成する。試しに素振りをしてみるが…意外と重さがある。
矢張り骨の質が一般的なソレとは違うのだろう。鋼鉄程度の強度はありそうだ。
流石に、鞘を作るのは面倒なので抜き身のままそれを右手に携える。

5、6メートル程度離れた所に丁度手ごろな大きさの岩があったので―無造作とも言える一振り。
どういう原理なのか、一瞬だけ骨刀が”伸びて”その岩を綺麗に両断する。…頑強さ、切れ味共に及第点。まぁこれでいい。

ご案内:「転移荒野」に百鬼さんが現れました。
百鬼 > ちなみに、一瞬伸びたかのような骨刀だが実際はごく一般的な刀剣の長さでしかない。
刀の間合いを伸ばす…あまり使わないが、片手間に仮面が習得した技能だ。

「……さて」

即席の武器も出来た事だ。後は――地道に徒歩で引き上げるだけだ。
それがとても面倒なのは今更である。骨刀はそのまま右手に携えて再び歩き出す。

道中、何匹もの魔物に襲われたが、それらを全て根こそぎ切り伏せて何とか帰還したのは別の話だ。

ご案内:「転移荒野」から百鬼さんが去りました。