2017/08/03 のログ
■飛鷹与一 > 「……あれ?」
疲労困憊――魔力をほぼ使い切ったのと、極度に集中状態が続いたのが原因だが―の少年だったが、フと何かに気付く。
(……何だろう?何か来る……上?)
フと上を見上げれば、何かが思い切り落下してくる。流石に「え?」という表情を浮かべるが。
反射的に巻き込まれてはたまらん!と思ったのか、慌てて身を翻して離れた場所に退避。
…ついでに、右手の狙撃銃を何時でも撃てるようにさりげなく構えておく。いや、まぁもう魔力切れではあるけど。
「……って、…イチゴウ、さん?」
派手に着地した物体、もといロボット。馴染みの姿に一瞬驚きつつも構えてた狙撃銃を下ろす。
ちなみに、周囲の魔物の死骸は広範囲に点在しており、その種類も様々。
一番特徴的なのは、どれも人間でいう人体急所を全て正確に撃ち抜かれている事だろう。
一番遠くの死骸はおよそ1キロ先に転がっている。この辺りの魔物を全て彼が片付けた、という事でもある。
ご案内:「転移荒野」に飛鷹与一さんが現れました。
■イチゴウ > 「やあ。与一じゃないか。」
声をかけらればいつもの低音な合成音声で
挨拶をする。そしてもう一度確かめるように
顔を振り的確に撃ち抜かれた死体を見渡せば
「これはキミがやったのか?
ならば素晴らしい腕だ。
最近麻酔弾での狙撃で優秀な戦果を
叩きだしている事はある。」
様々な種類の魔物に対して
それぞれの弱点を数mmのズレも許さず的確に撃ち抜いている。
1km先の目標に対してさえそれは変わらない。
恐らくこのロボットに備えられた
最新の火器管制システムをもってしても
これと同じものは再現できないだろう。
「ところで今日は定期パッチに備えて
戦闘データ収集のために来たんだが
どうやらタイミングが悪かったみたいだ。」
与一の目を射抜くように見上げると
そんな事を呟く。
しかしここは時空間共に不安定な転移荒野、
いつ魔物のおかわりが来てもおかしくはない。
■飛鷹与一 > 「どうも、何かまた凄い派手な登場でしたね…。」
空から落下してくるとは思わなかった。多分、輸送機か何かで運ばれてきたのだろうとは思うが。
彼の質問に、「えぇまぁ」と何故か苦笑いで頷く。あまり知り合いに見られたくは無かったのだが。
「…まぁ、ハイ。魔物相手に実戦訓練も必要かと思いまして。
優秀になりたいつもりは別に無いんですけどねホントに」
少年はそもそも目立つのがあまり好きではない。とはいえ、狙撃の腕前は既に風紀全体でもトップクラスだ。
しかも、狙撃の基礎とかセオリーを無視した射撃なので尚更に目立ってしまう。
何せスコープも無ければスポッター…観測手の相棒も居ない。
しかも、急所を正確に撃ち抜く上にその集中力を長時間維持できる。
完全に天性のものだろう。とはいえ、彼自身はコレを望んだ訳では決して無い。
「…戦闘データ…ですか?とりあえず、この辺りの魔物は俺が粗方処理した筈です…あ。」
そう、ここは時空が不安定な転移荒野。何時何が起こるかわからないしどんな魔物が発生するかも未知数。
魔力がほぼ枯渇してる少年は、現状狙撃の腕前と異能に頼るしかない。
まぁ、異能はそもそもアレなのでおかわりが来たらそれこそ射撃技能で対応するしかない訳で。
(…自分の魔力の現状での限界値を測れたのはいいけど、迂闊だったな…)
■イチゴウ > 「ここは距離があるからな。
でもヘリの燃料代はボクから差し引かれるんで
この方法であまり移動したくはない。」
もともとあまり高いとはいえない給料から
航空燃料の費用が引かれるというのは
財布に痛いという事は間違いない。
「確かに。実戦経験を積む方が重要というのは
兵器も人間も変わらないんだな。」
一旦戦いの場に出てしまえば
人間も一種の兵器と変わる。
それが異能持ちとなればより一層
そう扱われてしまう事は想像に難くない。
「・・・にしてもこの距離を光学照準器無しで
狙うのか。・・・ん?」
イチゴウが遠くの盛り上がった山を眺めがら
そう呟いていると途中で言葉を詰まらせる。
それと同時にイチゴウの背部に眩しい発光と
共に現れたのは彼の全長を僅かに超えるほどの
巨大なガトリング砲。
「見えるか?」
与一に尋ねる。
イチゴウが指摘したのはここから900m先、
魔物らしき姿を捉えた。
まず普通の人間の裸眼で見える距離ではない。
■飛鷹与一 > 「あぁ、そういう事情が…けど、ヘリの燃料代ってどのくらいなんでしょうか?」
あまりそういうのに縁が無いのでピンと来ない。と、いうより彼を輸送するだけでもお金が掛かりそうな気がしないでもなく。
「そうですね、兵器は戦闘データ収集、人間は経験を積むという意味では同じかもです」
と、彼の呟きに頷きながらも少し複雑だ。少年の場合、つまり人殺しの腕に磨きを掛けるに等しい。
それでも、現状まだ誰も殺害していないしするつもりもないけれど。
「…一応、夜目は利きますからね。視覚を基点とする異能も所持してますし」
とはいえ、異能を積極的に使うつもりはない。まだまだ操作が不安定だからだ。
なので、純粋に少年自身の視力で索敵などをしている。
と、彼がいきなり巨大な武装…ガトリング砲を展開する。しかも発光と同時にいきなり現れた。
そこを追求するのは後にするとして、彼が示した方角を眺める。900メートル先…普通なら見えないが。
「……居ますね。あの形は…巨人タイプでしょうか?地味に防御力も高いと聞いてます」
そう、少年は普通に見えていた。そもそも、スコープ無しの狙撃銃で正確無比に急所を撃ち抜いているのだ。
魔術や異能を使わずとも、狙撃に重要な視力はズバ抜けている。
一応、こちらも狙撃銃を構えるが彼一人でなんか十分な気がしないでもない。
■イチゴウ > 「距離や機種にもよるが最悪数百万が
飛ぶ事もある。」
少年の質問にそう答える。勿論このロボットの給料で
数百万なんて払おうものなら
間違いなく暫くの間ゴミ箱で食料漁りコースだ。
「本質は変わらないか。」
人間も機械もどちらも性能向上のためには
場数を踏まなければいけないというのは
共通なのだろうか。
「種類まで分かるのか。
まあコイツはボクに任せてくれ。」
与一が魔物の種類を当てた事に感心する。
そして背部のガトリング砲がスピンアップを始め
間もなく耳を塞ぎたくなるほどの爆音が
荒野に響き渡る。
少し遅れて900m先に着弾する。
ガトリング砲から放たれた20mm弾は
銃弾というより砲弾に近い。
着弾時に巻き上げた煙が完全に魔物を覆いつくす。
煙が晴れれば装甲車すら穴だらけにする
20mm弾が魔物の原型を奪っているのを
確認できるだろう。
■飛鷹与一 > 「…すうひゃくまんえん……」
一介の風紀委員には想像も付かない。と、いうか生活費何か月分に相当するのか、とつい考えてしまう。
そもそも、少年はロボットである彼の給料がどれくらいなのかを知らないが。
「本質、かどうかは分かりませんけど場数を踏んで鍛える。機械で言えばアップデートするという意味合いでは変わりないんでしょうね」
鍛錬、訓練は重要だがやはり実戦が何よりも糧になるのは紛れも無い事実で。
もちろん、その実戦で満足に戦う為には日頃の訓練、鍛錬が欠かせないのだが。
「えぇ、まぁ……分かりました。今俺は魔力使い切って本領発揮できませんしお任せします」
と、言いつつ彼の邪魔しないように後ろへと下がっておく。一応実弾も撃てる狙撃銃だが相手が巨人タイプだとキツい。
「……ッッ!!」
そして、彼の背後にあるガトリング砲が唸りを上げる。凄まじい轟音に耳を塞ぎつつ。
いや、むしろ爆音と呼ぶべきそれが目標――巨人タイプへと向かって放たれていく。
(……え、えげつないなぁ)
着弾と同時に衝撃。銃弾どころか砲弾。派手に巻き上がった粉塵がやがて晴れれば…。
原型もクソもなく巨人タイプはあちこち穴だらけになり、そして倒れ付した。まだ形が若干残ってるだけマシなのだろう。
「……お見事」
乾いた声で笑う。むしろそれしか感想が出てこない。これを食らっても多分異能で「死なない」自分も色々とアレだとは思うが。
■イチゴウ > 「ただ違うのは機械に必要なのは
実戦だけで訓練ではない。」
ヘリや戦車などの有人兵器には訓練が必要だが
それはあくまで中の搭乗員の問題だ。
ただ何度も訓練してモノにするという過程が
ある意味人間らしさの象徴かもしれない。
「目標を撃破。命中率65%。」
魔物を穴だらけにしたのを視認した後に
確認するように呟く。
このロボットと与一では戦闘タイプはほぼ180度
異なる。このロボットはどちらというと
正面対決が得意でありまたそう作られている。
彼は一発の銃弾を狂いなく精密に着弾させるが
イチゴウの場合は大口径弾をひたすらばら撒く。
恐らくライフル弾で弱点を狙う理由は
小口径弾の威力の低さを補うためであり
威力に優れた大口径弾ならば
わざわざ弱点など狙う必要は無い。
「そういえばキミの異能。
確か死という現象を回避する能力だったか?」
唐突に異能の話題をふる。
死を回避できるといえば魅力的に見えるが
自殺すらも許されないのはある意味残酷である。
■飛鷹与一 > 「まぁ、訓練は必要なさそうですね…性能試験とかも実戦の中で行われるでしょうし」
少なくとも、彼には訓練というのは必要ないのだろう。兵器の性能試験やアップデートは当然あるだろうけれど。
「……一点を撃ち抜くか面制圧をするかの違いかなぁ」
ボソリ、と独り言のようなそれが彼と自分の射撃の性質の違いを物語っている。
要するに、弾幕をバラ撒くか一発で急所を射抜くかの違い。
少年の場合、近接戦闘や真正面からのガチンコはどちらかと言えば不利だ。
あくまで彼の最大適正は「遠距離からの狙撃」または魔術攻撃なのである。
「え?ああ、ハイ。代償に自身の生命力…寿命を削るのであまり意味が無いですけどね。
それに、今このときも常に発動してる上に俺自身で制御出来ませんし。完全自立型みたいな感じです」
能力のオン・オフすら出来ない。生まれつきの異能だから消す手段も見当たらない。
タチが悪いのは、例え無効化しても直ぐにその性質が復活する事だ。
ある意味で悪辣な死神じみている。なのでこの異能は改めて「死神」と少年は呼んでいる。
「あと、正確には俺に迫る死の概念を捻じ曲げる感じですね。
なので、ほかの人が俺の傍に居てもその人には適用されません。
あくまで自分自身だけを死から遠ざける力です。あと、面倒なことに捻じ曲げた力の余波が周囲に拡散するんです。
つまりまぁ、死を捻じ曲げると同時に周囲に不幸をばら撒く、という感じです」
だからこそ悪辣なのだ、と苦笑いで少年は肩をすくめた。
■イチゴウ > 彼が自身の異能の事を一通り話せば
「そうか制御できないのか。
暴走状態なのか?」
現在は制御できないだけで
いずれ制御の見込みがあるのか
もはや根本的に「そういうもの」なのか。
「なるほど死を回避したあかつきには
周りに負の現象を分散させるのか・・・
自身の幸福のために周りを不幸にする。
ただキミは直接的過ぎるだけで人間は
皆やっている。これはある意味自然の摂理と
言えるかもしれないな。」
彼にとって自身の異能で
他人が苦しむ事こそが一番耐え難いのだろう。
しかし人間のほとんどが間接的に
誰かを踏み台にし、苦しめている。
それは生きるためには仕方のない事だ。
■飛鷹与一 > 「そうですね。一応研究区画で検査してもらった限りではそういう事らしいです。
実際、制御も解除も出来ない時点で暴走というのは間違いでもないでしょうしね」
制御の見込みもだが、問題はまだ生まれてからの付き合いであるこの異能の本質を理解できてない点。
いずれ、この力を理解できるときがくるのだろうか?
「…とはいえ、幸福とも言えませんけどね、寿命削る時点で死期に近づくのは変わりませんし。
ただ、自然の摂理に近い側面がある、というのはなんとなく分かる気がしますけど」
そう言って笑う。正直、厄介でいらない力だが切り離す事も出来ない。
なので、分かっていても割り切れない。出来る限り自分の異能に他者を巻き込みたくはない。
とはいえ、それが続くかどうかは分からないしいずれ限界も来るだろう。
「さて、と。俺はそろそろ引き上げますね。イチゴウさんはまだ留まりますか?」
と、帰り支度を整えつつ尋ねよう。一応帰りの道は確保している。
もし、彼が留まるなら挨拶をして別れるだろうし、彼も引き上げるなら同行するだろう。
思わぬビックリもあったが、今夜の実戦はこの辺りで一度幕引きとなるのだった。
■イチゴウ > 「中には異能を無効化しても
身体の変異が戻らなかった生徒もいた。
これでは制御できても意味はない。」
過去に出会った一人の少女を例にあげる。
異能が制御できるようになったからといって
それが必ずしも本人にとって良い結果を
提示するとは限らない。
そして与一がそろそろ帰る事を告げれば
「もう魔物は現れないようだから
こちらも演習データ収集は終了して
帰りのヘリを呼ぶことにする。
キミも乗るか?」
そもそも自身はヘリに吊り下げられるので
ヘリ内部に人が増えた所で何の問題もない。
■飛鷹与一 > 「とはいえ、俺の場合はこのままだと早死にしてしまいますからね。異能を無くすのが難しい以上、まずは制御しないと」
とはいえ、制御も何もあったもんではないのだが。
ともあれ、彼の提案には「え?いいんですか!?」と、驚きつつもヘリに乗せてもらう事に同意。
で、まさかの人生初のヘリに搭乗して帰宅する事になるのであった。
道中は、多分大人しくしながらも地味に興奮していたかもしれない。
ご案内:「転移荒野」から飛鷹与一さんが去りました。
ご案内:「転移荒野」からイチゴウさんが去りました。