2018/01/28 のログ
ご案内:「転移荒野」に追影切人さんが現れました。
■追影切人 > 生活委員会からの放送によると、どうやら転移荒野で騒がしい事になっているらしい――…つまり、斬り甲斐があるヤツが出現する可能性も高いという事で。
落第街やスラムに出歩くには風紀の目が少々厳しい分、転移荒野は警告だけで行くのを禁止された訳でもない。
これ幸いと、愛用の刀を手に転移荒野へとやって来た訳だが――…。
「取り合えず、この辺りにゃ風紀委員の連中は居ねぇぽいな…ま、居たら面倒だから都合が良いが」
周囲をザッと隻眼で見渡せば一人呟く。既に右手には抜き身の刀を握っており、肩に担いでトントンと叩く仕草。
「――んで?【門】が出現して怪異なり異邦人なり出てくれねぇもんかねぇ」
少年が居る辺りでは、少なくとも目に見えた変化や彼の感覚で捉えられる異常は無いが…。
ご案内:「転移荒野」にアーバリティ エルグランデさんが現れました。
■アーバリティ エルグランデ > 「監視の目って緩いなー。こーんな簡単に入れるなんて」
今入ってきたー否乗り越えてきた転移荒野と他とを区切るものに振り返る。
正面からでも良かったがどうせ雑魚との戦闘が数秒。それで警戒されて行動がしにくくなるのもバカバカしい。よってこうやって変なところから入ったわけだ。
彼女には死体から得た情報源がいくつもある。この荒野に門が出現するというのも彼女はすでに知っている情報で。
「どうせここでなにしても誰も来ないしなにしてもいいよねー。あー何か来ないかないないかなー」
わざと聞こえるように、遠くまで聞こえるように叫ぶ。頭の後ろに手を組んで歩く姿は容姿に反して無邪気さはあまり感じられるものではなくー
■追影切人 > 「どうせならドラゴンとか上位クラスの幻想種みてぇなのと一騎打ちしてみてぇなぁ。あるいは伝説クラスのバケモンとか…ま、やっぱ斬り合いに勝るモンはねぇけど」
戦闘狂だが、一番の好みは矢張り真っ向から互いに斬り合う事だ。まぁ、少年の好みは兎も角として。
フと声が聞こえた気がした。幻聴?んな訳が無い。隻眼を軽くとある方へと向ければ…。
「…何だありゃ。裸足に…あーワンピースだっけ。おまけに素手、ねぇ」
僅かに隻眼を細めてジーーーッと眺めていた。一見すると無防備すぎる出で立ちだが、何かおかしい。
「――ありゃ見たまんまのヤツじゃねぇな…人外なのは分かるんだが…あー何だっけ?スラムとかでも偶に斬ってた気が」
相手の顔に覚えは無いが、その気配を纏ったものと似たようなのを昔は普通に斬っていた記憶がおぼろげに。
…数秒考えて「ああ!怪異か!!」と、納得したようにポンと手を叩いた。
「…つっても、アイツは門から出てきたって感じにも見えねぇな…」
そもそも、聞こえた独り言?は既にこっち側に住んでいて土地勘があるのが前提の呟きだし。
ともあれ、もうお互いに普通に視認出来る距離ならば。相手からも抜き身の刀を担いだ隻眼の学ラン姿が見えるかもしれない。
■アーバリティ エルグランデ > 「んー?誰かいるなー?」
切人の気配に気づき目線だけそちらへと向ける。手をポンと叩く姿から怪異とでも気付かれたか。それとも変なところで合点したかは知らないがこちらに気づいていることはわかった。
「刀…かー。昨日の奴…狗隠よりも強いかなー?怪異ではなさそうだし異邦人?それとも風紀委員会かな?それとも…まぁいっか。問題は強いか否かー」
口元を歪めて愉快そうな表情を受けべる。まだ表情は見えない距離だろう。
「エンチャント・不可視」
左腕の上部が少し膨らんだように見えるだろう。小声でつぶやかれた魔法は膨らんだ原因、触手の一本を不可視のものへと変える。
そしてその触手は切人の方へと勢い良く迫っていき刀を奪おうとしている。
■追影切人 > 「……あ?」
気のせいか、彼女の片腕が妙に不自然に膨らんだ気がする…気のせいかだろうか?
少年は首を傾げつつ、担いだ刀でトントンと再び肩を叩き――…不意に左手を手刀の形で無造作に振る。
次の瞬間、どういう理屈か不可視で迫る高速の触手を正確に「斬って」いた。
「…何だ、不意打ち上等だが斬り応えがねぇな…。」
振り抜いた左手をゆっくりと戻し、ワンピースの女へと視線を戻す。今の挙動に異能や魔術を使った気配は欠片も無い。
■アーバリティ エルグランデ > 「切られた…うん。楽しませてくれそう。」
黒いードス黒い笑みを浮かべて腕を頭の後ろから前の方に垂らす。
そして両手の人差し指を切人に向ける。
「遠距離攻撃があるか、どれくらい速度があるか、ためさせてもらうよー。突風弾!」
銃を撃つように指を動かす、動かす、撃つ撃つ撃つ。連射する。
指先より放たれた突風の凝縮された弾は風を切る音とともに切人に襲いかかる。
当たれば捻り、貫き無残な跡を残すそれは次から次へとうちだされつづけており。
■追影切人 > 「……んーー……良し。」
黒い笑みを浮かべる女を確認し。首や肩をゴキゴキと軽く鳴らす。担いでいた刀を下ろしてダラリ、と切っ先を地面に向ける。
そして少女が、まるで指鉄砲のような仕草を両手で行う。おや?と片眉を上げた次の瞬間、
連射、連射、連射、凝縮された突風の弾幕が展開される。一方、少年はといえば暢気にそちらへと歩き出し。
「…おーーい、もうちょっと斬り応えのあるヤツ出してくんねぇか?」
と、女へと暢気に声を掛けながら左手を無造作に横に一閃。それだけで、迫る風の弾丸全てを撃墜、いや両断する。
この時点で遠距離攻撃、つまり彼女に何かを飛ばす仕草を少年は見せていない。
■アーバリティ エルグランデ > 「切り応えー?そーんなに簡単に切れるもんかなー?んじゃあ…エンチャント・マジックシールド・刀」
そんなに簡単に切ってくるなんて、随分と強そうだ。
その予想が空回りでないことを願いつつこちらへ戻さずに不可視状態のままの触手に刀に対する完全耐性、シールドを張ってやる。
魔力を注ぎ込み修復させればさらに硬化の補助魔法も行使して一度不可視を解く。
「これをきればー?」
そう言いながら挑発的な笑みを浮かべて触手を右肩めがけて振り下ろす。速度という重みを持ったそれは防げなければ容易に肩を外すぐらいはできるであろう。
■追影切人 > 「…おーー少しは歯応えありそうだな。流石に素手じゃキツいかもしれん。しかもシールド?刀?」
魔術は完全に素人なのでさっぱりである。その点では明らかに彼女に分があるのだが…。
一つ、彼女が測りきれて居ない項目があるとすれば、この少年は突き抜けた馬鹿だという事。
「…んじゃ、足でやるか。つーか、遠距離からちまちまとかつまんねーんだよ…大人しく「斬られてろ」」。
女、というより今、右肩を狙って振り下ろされたシールド、硬化、そして速度の乗った触手を眺め。
おもむろに何かを蹴り上げる様に右足を振り上げた――それだけだ。
バリン!!と、何かが砕ける音と共にシールドを破り、触手をあっさり斬り飛ばす。
――ついでに、少し離れた岩を切り裂いたがそこはご愛嬌と思って欲しい。
「…んで?小手調べは済んだかよ?あんまりちまちま力を測られるのは好きじゃねーんだが。」
未だに刀はダラリ、と右手に持って提げたままで隻眼を細めて女を見遣る。
当たり前のように足で魔術硬化された触手を斬ったが少年にとっては大した事ではない。
■アーバリティ エルグランデ > 「…え?は?完全に予想外……でもその分楽しいかなっ!飛ぶ斬撃もあるみたいだし!僕も『斬る』で戦おう!エンチャント・飛来斬!」
触手がワンピースの下、四肢の部分から大量に現れる。60以上あるであろうそれらに飛ぶ斬撃を発生させる魔法を付与する。
触手全てが先端を切人に向けて振った。
勢いはなく、直接あたるわけでもない。ただしー無数の斬撃が切人に向けて飛翔する。
切人自体はただの人間の肉体。そう判断したのだろう。
少ししか魔力は込めずーそれでも鉄ぐらいはきれるがーを高いところから、右から、左から、早いところ前面の全方位から飛ばした。
■追影切人 > 「へぇ、斬り合いか。……へぇ、そうかそうか……。」
少年の目付きが変わる。何かスイッチが入ったのか、右手の刀を水平に初めて構えて。
彼女から大量の触手が現れる。その数はザッと見ただけで50、60?兎に角沢山ある。
その全ての先端が高速で振られた瞬間、目付きが剣呑な光を帯びて。
「有象無象のクソ触手が、一端に斬撃の真似事してんじゃねぇぞ!!!」
叫びと共に刀を一瞬で何度も振り抜く!それだけで、周囲から迫る彼女の飛ぶ斬撃をきっちりと迎撃していく!
余波で衝撃が飛び散り、少年の衣服や体を軽く裂くがどうでもいい。
しゃらくせぇ!とばかりに刀を一振り。すると刀が「伸びて」彼女の首を一気に切り飛ばさんとする。
■アーバリティ エルグランデ > 「ッ!?!」
切人の突然の激昂に目を見開き明確な驚きを見せる。
触手は耐えず斬撃を放ち続けー
急に迫ってきた刀に対処する方法は考えていなかった。
この時点で体が刀と同じ効果を持つ、そこまではわかっており斬撃を飛ばせることも知っていた。
が、まさか直接狩に来るとは思っていなかった。
「ッ!毒壁・融解!」
刀と首との間に何物でもとかしてしまう毒の分厚い壁を作り出す。
それだけでは足りない気がして体を後ろに逸らして回避すればバク転で後方へと跳ぶ。
「これは…久々どころじゃない…楽しい戦いになりそうだっ!
ロックオン・トルネード!」
生粋の戦闘狂。その証拠に心からの笑みを浮かべている。
手を前に出して切人のいるところに細い竜巻を作り出して閉じ込める。
竜巻の勢いは非常に強く直ぐにでなければ吹き飛ばされるだろう。
首に到達するまでの道にあった切られた触手を再生させながら再び斬撃を放つ。
激昂とともに判断力を失ってくれればよいと思いながら。
■追影切人 > この程度で斬撃とか、この女は自分を舐めているのだろうか?
ふざけるな、と斬る事に異常な執着を持つ少年は激昂した思考の片隅で思う。
刀の刀身だけを「伸ばす」という、奇怪な「技」を繰り出しつつも、それは彼女が体を逸らしバク転した事で回避される。
…そして、刀身は毒壁を――だからどうしたふざけるな!とばかりに構わず両断してしまう。
瞬時にまた刀身は元の長さに戻っており、軽く舌打ち。矢張り怪異か反応が良い。
「ああ、クソこんな斬撃の押収じゃ中途半端もいい所だ…決めた。テメェは絶対にぶった斬る」
出来るか出来ないかは別として少年は宣言する。そもそも出来る・出来ないではない。やるのだ。
激昂しているのが丸分かりの剣呑な目つきと鬼気迫る気配だが、刀をスゥ、と静かに振り被る。
彼女が竜巻を放てば、その姿勢のままわざとなのか竜巻に飲まれる。そして吹き飛ばされ――
「…オイ、そこの触手女。ちゃんと避けろよ?」
吹き飛ばされるどころか、そのまま勢いよく身を翻して全方位へと回転しながら刀を一閃。
次の瞬間、周囲の大気、風…いや、空間すら断ち切る鋭さで、少年を中心に半径100メートル程度の空間全部を問答無用で切り裂いていく。
彼女の判断力なら回避も防御も出来るだろうが、防御は無駄とばかりにその斬撃は異様な鋭さを帯びており。
「…ごほっ!」
ただし、少年も無事ではない。竜巻を敢えて利用したが吹き飛ばされたのに変わりなく、着地や受身をまともに取れず派手に地面に激突した。
■アーバリティ エルグランデ > 「やーれーるーかもねー?」
呑気にそう言う、が内心、一撃は確定で食らうだろうと確信している。
相手に余裕を見せる事は戦闘において基本吉と出る。
竜巻に巻き込まれた彼を見ながらニヤニヤしたところでー
驚愕に一瞬触手までもが動きを止めた。
「あはは…えっげつねー」
素が思わず、と言った風にでてしまう。
その異様なまでの斬撃に防御は何の意味もなさない。ならばよけるのみ。
「フライ!」
思わず早口となる。体へと速く、早く退避しろと命令が出されているのだ。
風を纏って地面を強く蹴り高く飛び斬撃を回避する。
割りと余裕を持って回避できたはずだが安心感は湧いてこず警戒心が湧き上がる。
地面に降り立ち倒れた切人へと四本の触手を四方囲むように伸ばす。
「毒霧・麻酔」
四本の触手から気体が噴出される。吸い込めば体の自由を奪う毒はあたりを染め上げて行き切人にも迫る。
■追影切人 > 「ちっ…着地の事を考えるの忘れてたぜ」
結構高い所から落下したのもあり、肋骨が何本かヒビか…折れているのを感じる。
それでも素早く立ち上がろうとして触手に囲まれている事に気付いた。刀は間に合わない。左手を手刀の形で振るおうとして――…
「…が…ぁ…っ!?」
一瞬、噴出される気体のほうが早く毒をそのまま吸引してしまう。そう少年は絡め手には弱いのだ。
それでも左手の手刀は強引にそのまま振るい、何とか四方の触手は全て切り裂いたが体の自由が効かなくなる。
「…麻痺毒…ってやつか……ハッ…」
何ともドツボに嵌まったもんだ、と皮肉な笑みを零す。だが―
「だが俺がテメェをぶった斬る事に何の変わりもねぇんだよ!」
瞬間、動かないはずの麻痺毒に蝕まれながらも刀を持つ右手を動かし、自分の胴体を躊躇なく軽く切りつけた。
その痛みと衝撃で、中途半端ではあるが麻痺毒の蝕みを突破していく。
■アーバリティ エルグランデ > 「うーん…まぁ切っちゃうよね。それにもう十分吸ったでしょ」
切られた触手を見ながら嬉しそうに笑う。
ここで起き上がって来ずにただただ気絶なり動けなくなるしたら殺す気だった。
でも起き上がった!
そんな半端な毒ではない。それの耐えた彼は賞賛に値する。
落ちて骨の数本は逝っているだろうに。
「うっわぁ痛痛しい…これってあんまり油断してるとまたあれ飛んでくるよなぁ…ちゃっちゃとやるかなー?
毒雨・硫酸」
いい戦い。そう感じる戦いだった気がする。
別に傷を与えられなかったっていいのだ。楽しければ。
融解毒でもいいのだがあれだと多分死ぬ。同じかもしれないが硫酸なら死にはしないだろう。
横殴りの硫酸の雨が切人に襲いかかろうとする中一歩ずつゆっくりと切人へと歩み寄って行き。
■追影切人 > 「お蔭様で、最悪の気分だぜクソが…」
何とかある程度からだの自由を無茶な自傷行為で取り戻したが、まだ毒が完全に抜けたとは言えない。
しかし、まだだ。まだまともに彼女の体をぶった斬っていない。考える時間は無い。
「…馬鹿言え。アレよりまだ上の斬撃くらい俺なら出来るに決まってんだろ」
属性:斬みたいな少年なので斬る事に関しては本当に何でもありに近い。
この短時間の戦闘で、交戦した彼女が一番身に染みている事だろう。
男としては、楽しい、というより中途半端な斬り合いが少々不満である。
そして、息を吐き出しながら硫酸の雨を横殴りに食らった瞬間
「――で?何を余裕ぶっこいてんだテメェ。斬り殺すぞ」
敢えてもう一度言おう。この男は突き抜けた馬鹿の類だ。
先程よりも早い動きで、硫酸の雨を一瞬で駆け抜けて横薙ぎに女の胴体を切り裂いて走りぬけんとする!
勿論、その動きは麻痺毒が抜けたからではない。ただの気合と根性と、この女は絶対に斬るという男の意思の「力技」だ。
ご案内:「転移荒野」に追影切人さんが現れました。
■アーバリティ エルグランデ > 「それはすごいねーってバカにしたいところだけど君の行動の9割斬撃放てるよねー…おっそろしい力だよほんとに」
しかも全てが最強のシールドを破壊する威力を持つ。
要するに一撃必殺を無限に放てるような力。恐ろしいことこの上ないだろう。
強者と戦うこと何回目か、そんな中でもなかなか緊張する戦いだった。
ー油断したわけではなかったのだ。決して、油断したわけでは無かった。動けるはずがない。そう決め込んでいただけに回避はできない。
「ビーストロンガーッ!」
筋力増強。回避は捨てて迎え撃つ。胴を切られても魔法でどうにかなる。ならばー
反撃だ。
シャッターすらも突き破る暴力の拳をすれ違いざまに切人の頭に叩き込む。
「ッァ!シャットダウン・ダメージ!」
想像以上の痛みに意識が飛びかけ魔法で無理やり痛みを消す。
そして触手で取り残された下半身を上半身との切断面へと持ってくる。
「ハイエスト・ヒール!」
ぐちゃっと音を立ててくっついた上半身と下半身との間に光が発生してくっつける。
流石に着地はできずに地面に放り出される。
手を付き合い起き上がればしばらくハァハァと辛そうにしており。
■追影切人 > 「……ちぃっ…!」
斬った手応えがおかしいと瞬間的に悟ると同時、斬るのは間に合わないので反射的に右腕を掲げて頭の盾代わりに。嫌な音と共に右腕がひしゃげるように折れ曲がり…。
「……そういう事かよ。」
折れた右腕ではあるが、握った刀は放さずに居るのは偏に斬る執念と意思の凄さによるものか。
振り返れば、既に彼女が何らかの処置…あの触手や魔術なのだろうがそれで回復したようだ。
とはいえ、あちらも魔力か体力か、はたまた精神力か。消耗はそれなりなようで結構しんどそうだ。
(…右腕は使い物にならねぇし、左手一本でやるしかねぇか)
即座に右手に握ったままの刀を左手にスイッチ。とはいえ、片腕が折れて肋骨数本はおそらく骨折。
更に、無茶したせいで麻痺毒のそれが余計に回ったのか体の動きも鈍い。
「…クソが。これだから再生手段があるヤツは」
必死こいて一撃叩き込んだ意味が無くなってしまった。むしろ、怪異にここまで斬撃で応戦した少年がおかしいのかもしれないが。
もしかしたら異能や魔術と思われている可能性もあるが、少年の奇怪な斬撃は全て技能や技術のカテゴリーだ。
むしろ、魔術は素人で使えないし異能はまだ披露していない。今、異能を使っても再生能力があるとすれば意味がなくなるだろう。
(…ったく、恩人の異能とはいえカウンター特化ってのは使い勝手が悪ぃ)
内心でボヤきつつ、左手に持った刀の柄を握り直して一息。どうすれば斬り殺せたものか。
■アーバリティ エルグランデ > 「たーのしーねー」
本気スイッチが入る。
胴を切られれは本気になるだろう。
腕とは勝手が違う。相手もまだ動けるときた。
やるしかないだろう。
触手が地面へと一斉に潜り込み地面を揺らし無詠唱でフライをはつどうする。
高度10mぐらいのところで止まって下を見下ろす。
「毒槍・融解」
5つの毒の槍が生成され切人へと高速で射出される。
と同時に触手が地面から這い出て切人の両足を縛り上げて胴体へと這い上がってくる。
■追影切人 > 「俺は斬り合いが一番楽しいがな。…否定はしねぇよ」
戦闘狂なのは少年も同じなのだから。ただ好みが斬り合いに傾きがちではあるけれども。
彼女の纏う空気が変化したのを感じ取る。どうやらあちらさんも本気らしい。
こちらも出し惜しみなんぞしている場合ではないが、再生する相手にこちらの異能は相性が悪い。
「……つまり、結局俺が出来る事は後にも先にもただ一つって訳だが」
苦笑を僅かに零す。突然、無詠唱で彼女が10メートルくらいの高度に浮かび上がっても少年は動かない。
左手一本で刀を構え、口の中で何やらブツブツと独り言を呟く。詠唱のようだがそうではない。
「我は全を知り――我は一を知る。故に我が刃に斬れぬモノ無し」
毒槍が生成され、高速で射出される。触手が地面から這い出てこちらの両足を縛り上げ、更に胴体を拘束していく。
そこでパチリ、と目を開いてまだ動かせる左手の刀を動かし。
「――オマエは強い。だが上から見下してんじゃねぇ…堕ちやがれ」
ヒュンッ!と、一度刀を振るう。まず、体や足を拘束していた触手が細切れになる。
次いで、毒槍がまるで分解するように空中で霧散していく。そして。
「…『天涯崩し』」
そして、奇怪な少年の剣術…いや斬術の大技の一つ。少女の真上…上空から押しつぶす様な無数の見えない斬撃の”絨毯爆撃”が迸る!
欠点はこれ、自分も巻き添えになる事だが構わない。自分の身を厭わないのも少年の強みだ。
ご案内:「転移荒野」にアーバリティ エルグランデさんが現れました。
ご案内:「転移荒野」にアーバリティ エルグランデさんが現れました。
ご案内:「転移荒野」にアーバリティ エルグランデさんが現れました。
ご案内:「転移荒野」にアーバリティ エルグランデさんが現れました。
■アーバリティ エルグランデ > 「天…?」
天涯、その言葉に反応して上を見上げるも何も見えない。
見えないだけなのか?そう思いつつ触手を引き抜き高速で飛行する。
風の後押し、魔力の全力開放。
走るよりも速い速度で斬撃の範囲より少し離れたところまでいけば両手を広げて後ろへと引っ張られるように腕を動かして行きー
「クリティカル・ロックオントルネード!」
両手からそれぞれ竜巻が出来上がり切人めがけて飛ぶ。
それは視認できる限界を超えて切人へと突き刺さる。
そして貫き、地面へと潜り込みー
斬撃の絨毯爆撃はここで初めて地面を襲った。
■追影切人 > 「…おいおい、アレを交わすのかよ…」
当たれば地面に叩き落して無数の斬撃で肉片に変える可能性もあったが、そう都合よくは行かないものだ。
さて、こちらが巻き添えになりそうだが、無理やり後方へと連続跳躍して何とか範囲外まで離脱する。
次の瞬間、降り注いだ斬撃の雨で地面が広範囲にズタズタになっていた。
それよりもまだだ。と、思った次の瞬間、視認限界を超えた竜巻の一撃がまともに突き刺さる。
いや、反射的に刀を構えたがそれでも派手に吹っ飛ばされていく。
「こな…くそ…!!」
だが少年もしぶとい。意識が飛びかけながらも、左手の刀を振るい竜巻を切り裂いて強引に脱出。
そのまま落下するが、今度は地面へと斬撃を繰り出して土塊を舞い上げる。
そこへと器用に着地すれば、そのまま足場の変わりに飛び移る動作を繰り返し着地。
「…流石にキツいな」
魔力は元から魔術が使えないから意味無いが、異能は論外で純粋に体力の消耗がキツい。
■アーバリティ エルグランデ > 「まずいなー…魔力が底を尽きそう…」
初めの20分の1あるかないか。
どっちにしろ回復魔法を行使することができない量である。
そろそろ撤退してもいいか。その考えが出てくる。
強者と戦えたしこの少年は随分といい戦いをしてくれた。
胴を切り裂き攻撃を振り切り、まだ立っている。
ならば見逃す…いや、ここで退散しても良いだろう。
「強いねー…ところで君の名前は何ていうの?僕はアーバリティ。気づいてるとは思うけどこの島に住まう怪異だよ」
大声で呼びかける。名前は知っておきたい。
強者の名前ほど知っておきたいものはないのだ。
■追影切人 > 「……追影切人。元・二級学生で今は色々あって常世学園の生徒だ。」
あちらは魔力、こちらは体力がそろそろマズい。むしろ少年は回復手段が無いので尚更だ。
特に、ひしゃげたような右腕は早く治療しないと再起不能になってしまいそうだ。
正直、まだまだ足りないと思う心はあるがこちらの体力が持たないし、動きがまだ鈍い。
「……チッ、正直悔しいがここは痛み分けって事にしとくぜアーバリティ…名前なげぇな愛称とかねぇのか?
…まぁ、怪異なのは何となく分かってたけどよ。怪異と戦った事は何度かあるしな」
一息。ここで決着を付けれないのは正直不満があるが、またいずれやり合う事もあるだろう。
こちらが少々不利なままで痛み分け、というのがイラッと来るが事実は事実だ。
■アーバリティ エルグランデ > 「へぇ。うん、ちゃーんと覚えておくから、次あったらまたやりあおうね。…今度こそは決着を…ね?」
魔力が回復するまでまる1日はかかりそうなほど消耗した。ここまでの消耗はいつぶりかな、と思いつつ切人の不満に最もだ、と心の中で同意です。
「そうだね、引き分け、ドロー。にしよう。愛称はねぇ…黒触姫(こくしょくひめ)とか呼ばれているらしいよー。まぁ何とでも呼んだらいいじゃん。アーバとか?」
試合を終えた選手のように爽やかな笑顔でその顔の持つ本来の可愛さを見せる。
「それじゃぁねー。ついてこないでねー?」
そう言えばそのまま高く天へと登っていきーー何処かへと消えて行った。
ご案内:「転移荒野」からアーバリティ エルグランデさんが去りました。
■追影切人 > 「ああ。次こそは絶対に斬り殺してやるからな」
真顔で頷く。とはいえ、最初に比べたらダメージや体力の消耗で少々生気に欠けているが。
刀を一振りし、片手で器用に鞘へと納めれば今回の戦闘はこれにて一先ず終了、というヤツだ。
「…黒触姫ぇ?…面倒だからアーバでいいだろアーバで」
異名というものだろうか?少年も<斬鬼>の異名持ちではあるが。
彼女と対象的に、こちらは不満が顔に出ていたが一息と共にダウナーな態度に戻り。
「おぅ、別にストーカーの気はねぇから。んじゃなアーバ」
彼女が立ち去るのを見送り…さて、ここから帰るのは面倒だが仕方ない。
さっさと右腕の治療とかもしないと再起不能になったら斬るのに支障が出てしまう。
そのまま、フラリとした足取りで転移荒野を徒歩で後にする少年であった。
ご案内:「転移荒野」から追影切人さんが去りました。