2018/03/20 のログ
モルガーナ > 炎が収まった後、空からは無数の光が降り注いでいた。
砕けた剣や魔術の残滓、砕けて硝子のようになった魔方陣の欠片が
さながら花のように、雪のように舞い降りる中、
叫び声をあげた本人は空を見上げたまま、ゆっくりと倒れていく。

周囲には先ほどの余波で未だ地面にはところどころ火が残り
けれどそれをもってしても吹き込んでくる風の冷たさは和らぐ事は無い。
炎に焙られた体にはその冷たさがむしろ心地よい位だが

「……して、やられた」

口の中に残る敗北の苦い味をかみしめる様に
怒気がその唇から漏れる。
結果から見れば完全な敗北であることは間違いない。
止めをさすだけの力が相手方に無かったことは確かだが、
恐らく転移に重点を置いた結果だろう。
何故なら……

「……これは、確実に別の世界、じゃのぅ」

空気組成も、密度も、気圧も違う。
恐らく星の大きさが違うのだろう。
大気の厚さが目に見えて違うと、
見上げた瞳で空の高さの凡そをはかり結論付ける。

「……生きながらえた、が」

数時間は体が満足には動かせないだろう。
どのような相手がいるかも判らない場所で長時間動けないというのはあまりにも心もとない。
とうてい太刀打ちできないような存在が跋扈しているような世界でないとも限らないのだから。

「誰か……せめて人型の、誰かが存在しておる世界、なら、良いのじゃがの」

波立つ心を鎮めるような独り言が夜に溶けていく。
溶けた言葉の代りに降りしきる光に白い物が混じり始めた。
……どうやら雪が降りだしたらしい。

モルガーナ > 焦ったところで何かできるでもなし。

割り切り、いや、この場合は開き直り瞳を閉じる。
今はただ、体力を回復しよう。
その後この世界の事を考えよう。
持ち前の好奇心が疼く感覚を抑えつつ、そう思う。
――いずれにせよ、旅は終わらないのだから。

沈むように微睡へと堕ちていく。
供物台の上になげだした体の上に少しずつ積もっていく雪は
さながら傷ついた体の傷口を埋めてくれるような気さえして……

数時間後、祭壇跡には彼女の姿は無かった。

ご案内:「遺跡群」からモルガーナさんが去りました。
ご案内:「転移荒野」に黒峰龍司さんが現れました。
黒峰龍司 > 「―――あン?」

転移荒野を気紛れに訪れていた一人の男が居た。黒いスーツに革靴、そして丸型のサングラス。
いかにもマフィアやヤクザといった類だが勿論そんなものではないし、それより遥かに凶悪だ。
サングラス越しに、何かを感じ取ったかのように黄金色の双眸を細めて見遣る先。
…記憶違いでなければ、あちらには遺跡群があった筈だ。

「……龍の気配を感じた気がしたが気のせいか?」

こちらの世界に流れ着いて、少し”平和ボケ”しているせいか自分の感覚をアテに出来ない時もある。
暫く、遺跡群の方をジッと睨む様に見つめているが…それで何か起こる訳でもなし。

ご案内:「転移荒野」にラウラ・ニューリッキ・ユーティライネンさんが現れました。
ご案内:「転移荒野」に黒峰龍司さんが現れました。
ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「さすがにこの時間になると何も見えない……夜が明けるのを待とうかな…」

ザッ、ザッと砂を踏みしめて遺跡群を歩く人影。
先ほど何か光が見えたような気がしてここまで来たわけだが、
それっきり何かが起こることはなく、少し強めに吹き付ける風の音だけが聞こえていた。

「ちょっとした様子見のつもりで来たのに、思いのほか長くいすぎたかな……」

そういって手に持っていたランタンを適当において、風の当たらない場所を陣取る。
リュックから出てきたのはいかにもな雰囲気の野宿セット。
自分が軍隊にいたころに使っていたものだ。
さすがに、この近辺に魔物以外のだれかがいるなんてことは想定していなくて、
吞気に朝が来るのを待つつもりで火をおこし始めて>

ご案内:「転移荒野」に黒峰龍司さんが現れました。
黒峰龍司 > さて、睨んでいても始まらない。気になったモノを放置しておくのは何となく収まりが悪い気分になる。
吐息と共に、男はその場で軽く右腕を振るった。現れたのは直径2メートル程の真っ黒な”穴”。
空中に出現したソレの中に男は迷わず飛び込んでいく。次の瞬間、その穴は勝手に閉じられて空間へと消えていく。


――そして、少女が火を起こし始めて数秒後、そこからせいぜい2,3メートル離れた空中からその”穴”が唐突に出現する。
まるで小型のブラックホールを連想させるそれから、いきなり一人の黒いスーツ姿の男が飛び出してくるだろう。

「……チッ、座標設定をちょいとミスったか。やっぱ微調整がいまいち上手く行かねぇな…。」

そんな独り言を漏らしつつ地面へと着地する。そして初めてそこで先客に気付いたようで。

「…あン?何やってんだオマエ。…野宿か?物好きなモンだ」

と、人の事は言えないのにそんな一言を遠慮なく口にする。そういう男だからしょうがない。

ご案内:「転移荒野」に黒峰龍司さんが現れました。
ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「さてさて、火が安定するまでの間にスープを……っ!?」

使っているのはポータブルコンロではなく、普通に薪を入れるタイプのもの。
相当に古い形のものだが、それを手慣れた様子で扱っている。
ここに来るまでの間に集めた枯れ枝に紙切れとマッチを放り込んで、
火が安定するまでの間にお湯を沸かそうとする。
が、すぐ近くに"穴"が現れたことで、作業は中断してしまう。
とっさの判断でギターケースから機関銃を取り出し、
重さ何て存在しないかのような取り回しで照準を合わせ、弾を装填する。

「動かないで。両手を高く上げて、そのまま膝をついて伏せなさい。
 妙な動きをしなければこちらは武器をおろします」

普段は人見知りでおどおどしているが、こういう時の対応は恐ろしく早い。
物好きはどっちだ。そんな感想を抱くも口にはせず、
突然現れた男にどう対処しようかを考えて>

黒峰龍司 > 「断る。オマエに命令される筋合いはねぇし、従う義理も義務もねぇ」

丸型のサングラスのせいであちらからは男の目元は見辛いだろうが、男はその黄金色の双眸を細める。
どうやら、何かしらの理由でここで野宿を開始しているようだが、男としては別にそちらに何かする気は特に無い。
無いのだが…誰かから命令されたりするのは男は嫌いだ。基本自由人であるならば、彼女の警告を真っ向から切り捨てる。
そして、機関銃を一瞥して鼻を鳴らす。それで死ぬならある意味で俺は幸せものだと、そう思いながら。

「で、撃つならさっさと撃て。弾の無駄にしかならんだろうけどな。
俺としてはそのデカブツを下ろす事を勧めておくが、まぁオマエの好きにしろ」

普通なら威圧感すら感じる筈の機関銃、そしてそれを軽々と取り扱う小柄な少女。
だが、男は大したモンでもないとばかりに泰然自若としている。むしろ、よそ見とばかりに彼女や機関銃から視線を逸らす始末だ。

(…チッ、例の気配が途絶えやがった。隠蔽したか結界でも展開したか。お仲間ならツラくらい拝んでおきたかったんだがな)

と、そんな内心を呟く男はスキだらけであるだろう。何か武器を持っているようにも見えない。

ご案内:「転移荒野」に黒峰龍司さんが現れました。
ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「その感じだと、相手にすらしていないといった様子ですか」

こちらの警告を易々と断り、挙句重火器から目を離す始末。
ここまで決め込んだ態度をとられると、こちらとしてはどうにも相手にしづらい。
しばらくの間視線と射線は彼をにらんだままだったが、すぐにやめた。
あきらめたようにため息を吐いて銃をおろせば、安全装置をかけて薬室に込められた弾丸を抜く。

「いきなり目の前に現れえといて、こうも興味なさそうにされては、
 こちらとしては拍子抜けもいいところです。
 まるで私に遭遇したのは事故みたいな態度ですね」

別に戦いたかったわけではない。むしろ戦わなくて済みそうな流れに安どしているくらいだ。
しかしながら、こうも拍子抜けする感じだと、
緊張感をどこに逃がせばいいかわからず調子が狂う>

ご案内:「転移荒野」に黒峰龍司さんが現れました。
黒峰龍司 > 「つぅか、ハッキリ言うがそもそもオマエじゃ相手にならん」

真顔で断言する。俺様というか不遜に過ぎる態度だ。仮に彼女が機関銃を乱射しても何も変わらない、とばかりの佇まい。
彼女の緊張感などは何処吹く風、とばかりに男は少女よりも周囲の気配を探る事を優先していたが…。

「別に好き好んでここに転移した訳じゃねぇよ。実際事故みたいなもんだ…が。」

そこで言葉を切って、改めて少女とその野宿の様子を一瞥する。軽く溜息と共に頭を掻いて。

「…まぁ、折角の憩いの時間を邪魔したのは間違いねぇみたいだからな。そこだけは悪かった」

と、素直に謝罪を口にする律儀さはあった。だが、先の暴言を撤回する気は無いのがこの男である。

「…俺は黒峰龍司。常世学園の生徒だ。一応異邦人ってヤツになる」

懐から学生証…実際は精巧な偽造学生証なのだが…を、取り出してそちらに軽く見せる。
こういうのは、証拠を見せた方が手っ取り早い、というかあちらも納得し易いだろう。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「それはまた随分と自信があるようで。
 見た目と装備だけで判断しているならいつか痛い目を見ますよ」

彼のような態度をとる人間に出くわすのは初めてではない。
というか、実際問題初対面の人間はこういう態度をとる。
たかが重機関銃、たかが女子供一人。そういう風にみられるのは慣れっこだ。
だからというわけではないが、別に機嫌を悪くする様子もない。

「別に私だって好き好んでこんな場所で野宿をしているわけじゃないですよ。
 そういう意味なら私からしたって事故みたいなものです。
 とりあえず座るか目的の場所に行くかしてください。
 あなたが立っているとそれだけで物騒です」

別に憩いの時間を過ごしていたわけでもないので、謝られても困る。
そんな態度でいると、立ったままの彼に座るかどこかに行くかするよう促す。
座るようならスープの一つでも出すつもりではいるが。
正直、風紀委員とかではないので彼がどんな立場だろうが興味はさほどなかった。

「私はラウラ・ニューリッキ・ユーティライネンです。
 長いのでラウラと呼んでください。
 別にあなたが異邦人だからどうのとか、そういうのはありませんから」>

ご案内:「転移荒野」に黒峰龍司さんが現れました。
黒峰龍司 > 「それは、獣の血が混じってるから遅れは取らないとかそういうヤツか?それか、よっぽど強い魔術か異能持ちか…。
ま、別にオマエが弱いって訳じゃねぇけどな…実際、やり方次第じゃ俺には”届く”だろうさ」

と、言葉を切って少女を眺める。彼女に流れる血筋を一目で看破したらしい。
それは洞察力とは別の何か、といった感じだが男は特に説明する気は無い。
それに、相手にならないと言いつつも少女を弱者とは見ていないようだ。

「月桂樹(ラウラ)?…ヨーロッパっつったか。そっち方面の女の名前の一つだったっけかな。
あと、目標も何も目当ての気配が途絶えちまってな。…そっちもまさか妙な気配でも感じたりしたクチか?」

と、尋ねつつ懐からタバコを取り出して口に咥える。ジッポライターで点火しつつ紫煙を燻らせれば、取りあえず意外と素直に腰は下ろした。
一応、風の流れなどは把握しているのか煙がそちらに流れる事も無いだろう。

「あと、物騒なのは俺じゃなくてこの場所の方だな。ここで野宿するなら魔物対策はしとけよ。
こっからだと北に3つ、東南に5つ、…あとは西に2つか。強力な魔物の気配があるからな。距離はまぁ、どれもこっちの単位だと…あー…2,3キロってトコか」

ご案内:「転移荒野」に黒峰龍司さんが現れました。
ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「…獣人の血は確かに通っていますが、それはあまり強さの理由にはなっていませんね。
 1/8しかなられてませんし。まぁ、あなたが血の気の多い人なら勝てたかもしれませんね」

色仕掛けってやつですよ。
ふざけた様子でそんなことを言って見せるが、
本人の体は貧相という言葉をそのまま体現したような肉付きだ。

「ええ、そうですね。北欧の辺りが私の故郷です。
 気配かどうかは知りませんが、私は何かが光るのを見たってだけですね。
 それが気配に関係するかは知りませんが」

意外なことに腰を下ろす彼と、殺伐した雰囲気を薄めるように話し始める。
二人分のお湯を沸かすために鍋に水を入れて火にかけると、
彼が煙草を吸う様子を見る。別に煙なんて気にしなくてもいいのになんて思いながら。

「こんなのでも"人間じゃない存在"を相手にしてきた身ですから。
 わたしからすればあなたのほうがよほど物騒ですよ。
 さらに言えば5キロ北に2体、おそらく北の3体と同じ類のモノがいます。
 5キロ以内なら私の射程距離ですから」

別に索敵に秀でた能力があるわけではないが、こうも開けた場所だと風に匂いが乗り、
かすかに音が聞こえる。この辺は獣人特有の能力だ>

ご案内:「転移荒野」に黒峰龍司さんが現れました。
黒峰龍司 > 「色仕掛けねぇ。…ま、スレンダーはスレンダーでいいとは思うが…ハニートラップじゃなけりゃあな」

肩を竦める。貧相とかそういうのより問題はトラップ的な方らしい。
彼女はふざけただけだろうが、男としては色仕掛けでなければ、と半ばマジに思う所だ。

「…光…門とは違う転移の類か?いや、そうなると…。」

と、彼女の言葉に少しブツブツ呟くがすぐに切り上げる。殺伐とした雰囲気…なのだが、男は別にそんな空気を出しているつもりはない。
無いのだけど、矢張り男の元々の素性からどうしても滲み出てしまうものがあるのだ。
煙草を吹かしつつ、彼女の追加報告に僅かに目を丸くして。それから少し沈黙の後に頷いた。

「…あぁ、確かに。成るほど、悪くねぇ感知能力だな。匂いと音、気配…ああ、この開けた場所も好条件か」

男もややあって、その追加の気配を探知したのか頷く。口は悪いが相手の能力は素直に認めるタイプだ。
まぁ、その実力者の少女から堂々と物騒判定を食らっている男だが、本人はそこは無言で肩を竦めてみせるのみ。

ご案内:「転移荒野」に黒峰龍司さんが現れました。
ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「あの、一応ふざけて言ったことにそこまで真面目な反応をされるとボケた側がつらいんですが」

予想に反した反応をされると、彼は冗談とかそういうのが通じない人間なのかと思う。
いずれにせよ自身の身体的コンプレックスをネタにしたというのに、
それを真面目に返答されるというのは、馬鹿にされるよりも精神的に来るものがある。

「さぁ、私はそういう存在に対処するのが専門で、どういう理屈で来るかとか、
 どんなものが来るのかは素人ですから。
 これでも獣ですからね。下手な人間に感知能力で負けるわけにはいきません」

果たして目の前にいる男が下手な人間なのかといわれるとおそらく否なわけだが。
いずれにせよ彼がどういう理由でその気配を気にしているのかはわからない。
分からないが、きっと理由があるのだろうし、それをいちいち聞くのもあほらしい。
気付けば鍋に入れた水がグツグツと沸騰し始める。
火から降ろしてスープの粉末が入った二つのコップにお湯を注いでいく。
それらを軽くかき混ぜると、一つを彼に渡して>

ご案内:「転移荒野」に黒峰龍司さんが現れました。
黒峰龍司 > 「いや、そんくらいは分かってるが。俺はただ自分の感想を言ってるだけだしな。
つぅか、体ネタやるなら相手選んだ方がいいんじゃねーか?」

色仕掛けというトラップ要素が無ければ、という言葉に嘘が無いのがタチが悪い。
彼女の肉付き関係なく、男からすれば普通にラウラも守備範囲だからだ。

「…んー、やっぱ感知系は獣人系統には少し及ばねぇか…まぁ、俺の状態がこれならしょうがねぇか」

独り言のように呟いて、何やら納得したのか溜息混じりに頷く。
そもそも、異邦人という存在が人間とは限らないし、男としても問われれば普通に答えるだろう。

気がつけば、目の前にカップが差し出されていた。軽く瞬きをしてから「ありがとよ」と、礼を述べて受け取る。
煙草の吸殻は携帯灰皿を取り出してその中に放り込み、軽くカップスープを一口飲みつつ。

「んで、ラウラは結局ここで野宿すんのか?街に帰るなら転移魔術で送っても別に構わんが」

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「相手を選んでたらダニも冗談言えなくなっちゃいますよ。
 こういうのはある程度ツッコむ側に期待している部分もあるんですから」

少なくとも、自分の体形が一部の人間から支持を集めているというのは自覚がある。
そりゃ男ばかりの軍隊に長い間身を置けば
彼らがどんな好みを持っているかを把握するくらい当たり前だ。
だからこそ冗談は冗談として流してほしいと思ったりもするが。

「先達はもっとえげつない感覚を持っていましたけどね。
 私のように血が薄くなるとどうしても鈍ります。
 むしろあなたの感覚のほうがすさまじいですよ。
 察するにただの人間というわけではなさそうですが」

彼がどういう存在なのか、興味がないわけではない。
必要以上に聞かないというのがこの荒野でトラブルを避ける
手っ取り早い手段であると考えているだけだ。

「私は野宿するつもりです。
 もとより野宿を視野に入れてここに来た部分もありますから。
 何よりもいろいろ感覚が鈍りそうで。半分訓練みたいなものです」>

ご案内:「転移荒野」に黒峰龍司さんが現れました。
黒峰龍司 > 「なら俺は期待外れのタイプって事だな。冗談として流して欲しい気は分からんでもないが。
けど、本気でラウラをタイプなヤツも中には居るだろうし、ある程度相手を見定めるのは大事な気もするけどな」

どちらかといえばツッコミ役なのだが、体ネタに関してはストレートに答えてしまう。
ボケの意図は勿論察しているのだが、そこに上手く乗っかれないのだ。

「隔世遺伝で強まるってパターンもあるけどな…ああ、俺ドラゴンだからな。龍王ってヤツ。
で、さっきの気配云々はその持ち主が俺と同じ龍系統の力の波動を出してたから、どんなヤツか見に来たって訳だ。」

あっさりとそう答えつつ証拠…は、流石に龍化は出来ないし、そもそもここで変身は野宿用具が吹っ飛ぶ。
なので、背中から片方だけ艶のある黒いドラゴンの翼を少しだけ出してみせよう。
考えたら、こうして出すのは久々な気もするがまぁいい。口が軽い少女ではないだろうし。

「そうか、まぁそう言うなら余計な提案ってやつだったな」

彼女の言葉に頷いて。訓練も兼ねた野宿なら止めたりするヤボはしない。
翼を仕舞いつつ、指を一度パチンと鳴らす。すると周囲の空気が一瞬だけ変化した。
それはすぐに霧散するが、この野宿スペースを取り囲むようにうっすらとした光の膜が展開されていて。

「攻性防御術式ってヤツな。ラウラにはいらんかもしれんが、外からの攻撃とかに自動で反撃するタイプの攻撃結界だ。一応、朝方くらいまで時間設定しておいた」

訓練、というなら結界術式はいらんお世話かもしれないが、まぁ万が一の保険とでも思って貰えばいい。
それに、朝型には自動的に効果は切れるタイマー設定でもあるし。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「私みたいなのがタイプ、ねぇ。
 なかなかの物好きだとは思いますが、男の人というのは理解に苦しむ部分が多いです」

彼女はどうなのだろう。
彼の言葉を聞いてふと思い浮かべたのは一人の女性。
彼女はどんな人が好みなのだろうか。

「同族ならそういうこともあるでしょうが、私の場合は薄くなればそれだけ弱くなるので。
 倫理的な問題を無視するなら獣人の血を濃くすることも可能ですが……
 ドラゴン。これはまた私なんかよりもよっぽど空想的な生き物ですね」

倫理的な問題。まあいうなれば近親相姦というやつだが、
今の時代そんなことを望む人などどこを探したっていない。
少なくとも私の一族にはいない。
そして彼の素性を聞くと少しおかしくて笑ってしまう。
自身も一昔前までは空想上の存在だったのに、彼の素性をきいて空想的だと思ってしまったから。

「ほんと、そこまで用意してもらうとは。
 私も随分とか弱い女の子になったもんです」

これでも一応自身も決壊に似たものを異能で身にまとっているわけだが。
まぁ、これも彼のやさしさとして受け取っておこうではないか。
準備はできるだけしておくことに越したことはないのだから>

黒峰龍司 > 「…別に男じゃなくて女って場合もあるんだがな。あと、誰の顔を思い浮かべてるか知らんが、気になる相手が居るならさっきみたいなネタは程々にしとけ」

洞察力云々より、単に無駄に長く生きた事による経験則。顔色、視線、気配、表情筋。そういう総合判断だ。
別に、相手の心を読む魔術や異能があるという訳ではない。ちびちびとスープを飲みつつ。

「この世界の倫理はどういうモンか知らんが、俺の世界にゃ近親相姦とか普通にあったしなぁ。
空想ねぇ。…実際、想像上の産物だったら少しはマシだったろうな」

何がだろうか。まぁ自分でも分からないが。まぁ、その空想上のドラゴンが少女の目の前に居る。
ただし、見た目は物騒な見た目や空気だが普通の人間としか見えない。ドラゴンの気配みたいなものもない。

「備えあれば憂い無し、だったか?この国の言葉でそんなのがあった筈だがよ。
ま、別に必要ないなら無いでいいさ。俺からしちゃ片手間の魔術だからな。
それと、か弱いも何も誰かの手助けを借りる事が弱さとかそんな事はねーだろ」

と、言いつつスープを飲み干す。問答や説教は苦手だ。そもそもあまり口は上手くないし。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「……思考が読めるとか、そういう能力とかは持ってないですよね?」

持っていたにしろ、持っていないにしろ、図星を突かれるとあっという間に顔が紅潮する。
彼ほどに冗談が通じない男というのはそんなにいないと思うが、
まあ、今後は控えるに越したことはないだろう。
もっとも、こんな冗談、日ごろか言うわけではないのだけれど。

「世界が変われば倫理感も変わりますか。
 とかく、私の一族は血を薄めるよう努めてきましたから。
 今となってはその努めも意味をうしないましたが。
 どうでしょう、あなたや私はどう頑張っても存在しますから、
 空想ということで片付けられていた時代に生まれなかっただけ幸せだと思いますけどね」

自身にこんな力がなければ。そう思うことはままあるが、自分の存在は否定のしようがない。
ならば、今の時代、
空想が現実にあると受け入れられた世界に存在することを幸いとしたほうがいいだろう。

「この国にはそういう言い回しもあるようですね。
 別に助けを借りることが弱いことだとは思いませんが、
 圧倒的な力さえあればそんな手間を借りる必要もありませんから」

圧倒的な力。それは自身が求めたものの一つだ。

「とかく、私はここで夜が明けるのを待ちます」>

黒峰龍司 > 「これでも長く年食ってるドラゴンだからな。ある程度そういうのは察するくらい出来んだよ」

ニヤリ、と笑って口にする。まぁ、どうやら少女には気になる相手が居るのは確かなようだ。
そこを突く野暮は男はするつもりはないが、頬が紅潮してる少女はやっと年相応に見えてきた気がする。

「俺としちゃ、少なくともドラゴンは空想の産物で十分だと思うが…ま、自己否定になっちまうな」

苦笑気味にご馳走さん、と空になったカップを返そう。
そして、彼女の言葉に溜息を一つ。おもむろに軽く右腕を真上に掲げて。

――瞬間、”空が割れた”。単に大出力の魔術を軽くぶっ放しただけだが。

「…圧倒的な力はただ持てばいいってモンじゃない。求めるならそれなりの理由と覚悟。後はいざ、力を手に入れた時にそれを制する強い心を持つか。
…そこは忘れんなよ。じゃなきゃ自滅するだけだ。そんなのバカバカしいだろ。」

何事も無かったかのように右腕を下ろし、割れた空も普通の夜空に戻っている。
アレだけの魔術を放っても、男は息一つ乱さずむしろ淡々としていたか。

「さて、じゃあ俺はそろそろ行くとするわ。んじゃなラウラ」

そして、何事もなかったかのように右手をヒラヒラと振って歩き出す。向かうのは遺跡群の奥。
個人的にもう少し調査をしてから帰るつもりらしい。
そのまま、後は少女の方に振り返らずに――…

「…あぁ、忘れてた。スープありがとな」

と、一度足を止めて律儀にそう礼を述べてから今度こそ歩き去ろうか。

ご案内:「転移荒野」からラウラ・ニューリッキ・ユーティライネンさんが去りました。
ご案内:「転移荒野」から黒峰龍司さんが去りました。