2015/06/19 のログ
■アルフェッカ > 「この具合なら、何とか降りられるかな? …って!?」
進む道の先に、誰かが座り込んでいるのを見つけた。
こんな時間に、まさか自分以外でこの山にいる人がいるなんて…。
それはさておき、もしかしたら怪我をしているのかも知れない。
「そ、そこの金髪の人! 大丈夫ですか~!?」
銀の髪の少女は、座り込んでいる人影に慌てて駆け寄る。
■ヒメル > 「ぅ……う……? ……!ひ、ひとだぁ……」
うずくまる青年が顔を上げる。
月明かりが照らすその顔はまるで女性のようだが、声はしっかりと青年。
「おなか、すいたよぉ……」
流血や怪我は見られない。
どうやら腹をすかせているだけのようだ。
■アルフェッカ > 青年の声に、銀の髪の少女はほっと胸をなで下ろす。
怪我をして動けないのではなく、空腹で体力が無くなっているだけのようだ。
「お腹、空いてるんですか? ごめんなさい、生憎食べ物の持ち合わせがなくって…。でもでも、もう少しで山を出られます。もし動くのが辛いなら、私がおんぶして連れて行ってあげますから!」
安心させるように、青年に力強く言葉を掛ける。
■ヒメル > 「お、おんぶ……?うぅ……ん……」
少し考えこむ。
目の前の女性はおそらくは年下。
身長は自分より高そうだが、しかし……。
「え、と……でも、おんぶしたまま下山、なんて……おもいよ……?」
54kgの線の細い青年は、自分をおんぶして下山なんて大変だしきっと無理だ、と考えているらしい。
■アルフェッカ > 青年はどうやら、自分を背負って降りるのは無理がある、と言いたいようだ。
体型こそ線が細いが、それでも男性一人だ。普通であれば、大変な道のりだ。
しかし。
「大丈夫です! 私、力持ちだから! 騙されたとおもって、乗って下さい!」
満面の笑みで即答し、青年の前にしゃがみ込んで背中を向ける。おぶされ、という事らしい。
■ヒメル > 「ち、力持ち……ほんと?大丈夫かい?」
なんとか力を振り絞り、唸る腹に頬を染めながら立ち上がる。
おそるおそるといった様子で少女に近付き、おぶさろうとする。
■アルフェッカ > 自分におぶさって来た青年の体重を、瞬時に計測する。
(体重はおおよそ、50kg半ば。――十分に、許容範囲内!)
しっかりと青年を背負うと、銀の髪の少女はそのまま軽々と立ち上がって見せた。
「よいしょっと。うん、これなら背負って山を下りる事が出来ます!」
■ヒメル > 「んっ……おお、ほんとに軽々だぁ……!
ありがとうねぇ。背負われながらでなんだけど、俺はヒメル。ヒメル・ブリンクマンだよぉ。
下に着いたら何かお礼するねぇ」
少女の背中で揺られつつ、自己紹介。
(柔らかい……あとおっきいなぁ……)
……ちょっと余計なことを考えながら。
■アルフェッカ > 「ヒメルさん、ですか。はい、覚えました!
私はアルフェッカと言います。よろしくです!」
背負ったヒメルに自己紹介しながら、アルフェッカは夜の山道をひょいひょいと器用に降っていく。
ヒメルが余計な事を考えてるなどとは露も知らず。
「困った時はお互い様、って事です。あまり気にしないで下さい。
それにしても…こんな時間に山の中に居たなんて、驚きです。何か用事でも、あったのですか?」
下手をすれば遭難だ。
なのに山に居た事を疑問に感じ、アルフェッカは小首をかしげて、ヒメルに問いかける。
■ヒメル > 「うんー……ええとね、クォーツを探していたんだぁ。出来れば純度の高い透明な……。
学生街で万屋をやっていてねぇ。お客さんがクォーツを求めてるらしいから探しに来たんだぁ。
ふふ、ようやくなんとか見つけられたよぉ」
素直に返す。
頼まれてからどれだけ経っただろうか。依頼の品の回収がようやく終わった、というわけだ。
■アルフェッカ > 「ほぇ~…万屋さんですか! 若店主ってやつですね。凄いです!」
見た感じ、まだまだ学生でも通用しそうな容貌のヒメルが既に一つの店を持ってる…言葉尻からして、アルバイトではなく、経営者であろう事に、アルフェッカは驚きと尊敬の籠った返事を返す。
「探し物、見つかって良かったですね! …あれ、じゃあ、ヒメルさんは此処の学生さんではない、って事ですか?」
■ヒメル > 「ん?うん~と。学生だよぉ。
購買部として、支援を受けて店を持たせて貰ってるんだぁ。
常世の人には感謝しないとねぇ~あはは」
学生であり、モデル都市としての側面を利用させてもらい、経営させてもらっている……そういう立場らしい。
■アルフェッカ > 「おぉ~、学園から支援が受けられて、お店が出せるんだ。
中々凄いんですね、「学園」って。」
常世学園の規模に、驚いた声を上げる。
まさか、学生が店一つを任されるような事が許可されるとは。
(……あ。)
よく考えたら、こういった事は「学園の学生」であれば、常識として知ってるかもしれない。
先程の言葉で、もしかしたら自分が「学生」でない事に、気が付かれてしまうかもしれないが…。
(ま、その時はその時かな。ヒメルさん、後ろからぐさっとやるタイプには見えないし。)
■ヒメル > 「うんうん~、すごいよねぇ。
俺も入ってからの学費とかどうしようーって思ってたけど、おかげ様でなんとかさせて貰ってるよぉ」
のほほんとした青年は、全く気付いた様子は無い。むしろ楽しそうだ。
■アルフェッカ > 「成程、万屋さんやって、そこの利益から学費を納めるって形ですか~。社会勉強できて、学費の当ても出来て、一石二鳥ですね。中々いい感じのサイクルだなぁ。」
自分が学生でないとばれなかった事に少しほっとし、同時に騙しているようで少しうしろめたい気持ちを感じながら、努めて明るく返事を返す。
「――おっと、もう山の入り口ですね。 お待たせしました~、これで下山完了です!」
気が付けば、既に山の登山口に到着している。無事の下山に、成功したようだ。
■ヒメル > 「あはは~、お陰で学費足りない時とか切羽詰まるよぉ」
まったく平和な脳の青年は、少女の柔らかさを堪能するのに精一杯で違和感など頭を掠めもしないらしい。
「あぁ、うん~、ありがとー!ほんとに助かったよぉ。
んんー……今は持ちあわせがクォーツしかないから……お礼、またでもいい、かなぁ……?」
■アルフェッカ > 「はい、そんなに気にしなくても、私はいつでも――。」
そう言いかけて、ふと思う事があった。
もしかしたら、ヒメルからこの学園についての情報を教えて貰えるかもしれない、と。
さりげない誘導尋問で聞き出す…のは、何だか嫌な感じがする。
(――次会った時は、素直に話そう。私が、ここと別の所から来た事。私が、ニンゲンじゃない事も。)
心の底に決意を飲み込むと、笑顔で返答する。
「――もし良ければ、次に会った時、色々教えて欲しい事、あるんです。それで、お礼って事にしてもらっていいですか?」
■ヒメル > 「うん?うーん……」
少し考えこむ様子で、顎に手を当てている。
そして数秒後に顔を上げ、
「おんがえし、それだけでいいのぉ?なんか、その、申し訳ないよぉ」
■アルフェッカ > 「――今の私には、とても大事な事だから。ここの事を、もっと良く知る事。ここがどんな所で、どんな人がいて、どんな事が起こるのか、知る事。」
静かにそう告げた後、思い切り能天気な微笑みを浮かべて。
「もしもそれでも申し訳ないって思うのでしたら、美味しいケーキの食べられるお店に連れてって下さい! 大好きなんです、ケーキ!」
実際には、甘味全般が大好きなのであるが、それはまた別の話。
■ヒメル > 「んー、うんー。分かったよぉ。不思議な人だねぇ、アルフェッカさんはぁ。
ケーキかぁ、いいねぇ~。俺もケーキ好きだよぉ。
おすすめのカフェがあるんだぁ、そのうち一緒に行こうねぇ。」
嬉しそうに、微笑み返す。
さすがに少し疑問に思ったようだが、深く踏み込むつもりはないようだ。
「連絡先だけ渡しておくねぇ。俺の店の場所と、電話番号~」
名刺を渡す。
【万屋『シュネー』】と書かれた、簡素な名刺だ。
■アルフェッカ > 「――ありがとう! 近い内、お邪魔しますね!」
笑顔を浮かべながら名刺を受けとり、そっとしまう。
「…随分おそくなっちゃたな…。そろそろ休んだ方がいいかも。ヒメルさん、ここから一人で大丈夫です?」
心配した様子で、ヒメルの顔を見る。
■ヒメル > 「ああ、うん~。遅くまでごめんねぇ。
しばらく背中で休ませてもらってなんとか……動けそうだよぉ。」
伸びをし、答える。
学生街に戻るぐらいの元気は戻っている様子だ。
■アルフェッカ > 「ううん、大丈夫みたいで何よりです。それじゃ、私もそろそろ休むので、行きますね。」
笑顔で手を振り、歩き出す。
暫く離れた所で、一度振り向いて大きく両手を振って見せる。
「また、会いましょうね~! 約束です~!」
その言葉を残して、アルフェッカは夜の闇の向こうに歩き去って言った。
ご案内:「青垣山」からアルフェッカさんが去りました。
■ヒメル > 「うん~、ありがとー!またねぇアルフェッカさん~!」
手を振り、遅くまで付き合わせてしまった少女を見送る。
そして、少女と別の方向へと歩き出す。
「ん、ウスヒラタケだぁ。……まあきっと大丈夫、大丈夫……。」
道中拾ったキノコを口に運びながら。
ご案内:「青垣山」からヒメルさんが去りました。
ご案内:「青垣山」に久喜棗さんが現れました。
■久喜棗 > 久喜棗が協力の対価として血液を提供している研究チームから連絡が入ったのは今からちょうど二時間前のこと
モルモットが逃げたので駆除に協力して欲しい、彼らはそう要請し、棗はそれに答えた
聞けばモルモットに鬼の血を注入し経過を観察していた所、突如凶暴化し研究者二人に怪我を負わせ未開拓地へと逃走したとのこと
そして捜索の末、青垣山へと追い詰めることに成功したということらしい
■久喜棗 > 「取り扱いには注意せよとあれほど念を押したというに…」
棗はぼやきながら森を散策する
棗の鋭敏な嗅覚は山の中から漂ってくる鉄臭い血の臭いをキャッチしていた
恐らく既に相当数の野生動物が餌食となったのだろう
それは単に動物の被害という事だけでなく駆除対象の力が増していることを意味する
鬼の血を与えられたものは成長する、それも急激に
他者の血肉をすすり栄養とすることで身体がまるで別物のように変わっていくのだ
■久喜棗 > その成長は徐々にではなく、段階的にではなく爆発的に変化する
鬼の血を与えられた直後の一段回目、成長二段階目、最終形態の三段階目といったふうに
「三段階目まで成長しておったら、今の儂では手が負えぬかも知れぬな…」
思案しながら森の中を進んでいくとクマの死体を発見した
体長は2メートルほどだが喉元を爪のようなもので一撃に引き裂かれ絶命している
腹は食い破られ既に餌にされた後のようだが、血の臭いからして割と新しい死体だろうと感じた
「ふむ…近くに居るのか?」
周辺の地面をよくよく見てみる、するとここらの動物のものとは思えない大きな足跡が奥へと続いていた
棗は気を引き締め、恐る恐る進む
■久喜棗 > 棗が奥へと進んでいくとやがて、クチャクチャと何かを咀嚼する音が微かに聞こえてきた
気配を殺し、それへと近づいていく
そしてそれは、姿を見せた
岩のような肌を持ち、爪は大きく鋭い。一本角を生やした顔は肉食の魚類のような凶相をしている
しかし幸いな事に身体はそう大きくない、人間程度だろうか
だが鬼の血が暴走した異形であることに間違いはなかった
「障壁、展開」
石を天にかざし、そうつぶやく
すると周囲に亀甲模様のきらめく障壁が広がっていく
異変に気づいた異形は食事を止め、おもむろに立ち上がる
そして棗へと向け猛烈な勢いで突進をかました
■久喜棗 > ドスンッ
異形の突進は当たる寸前棗の左腕によって止められた
踏みとどまった足の裏の地面が盛り上がる
しかし直後に異形は頭を振り回し、掴んでいた棗を周囲の木々に叩きつけられた
「グォオオオオオオオ!!!!」
異形は吼え猛り敵をけん制した
棗はダメージを受けよろよろと立ち上がる
「くぅっ…やはり歳は取りたくないものじゃな」
まだふらついている棗へと異形は再度体当たりを行う
棗はすぐに体制を立て直し、横っ飛びをしてそれを躱す
異形はその回避に反応することができずにそのまま木々に体当りし、へし折りながら地面へと倒れこんだ
ご案内:「青垣山」に片翼・茜さんが現れました。
■久喜棗 > バランスを崩し地面へ倒れこんだ異形に勝機を見出し
トドメを刺そうと腕を振り上げたその時、周囲の障壁が解除される
ちょうど一分が経過したのだろう、迂闊にもそのことに一瞬だけ注意を向けてしまう
異形はその隙を見逃さず即座に体制を立て直し、脱兎のごとく駆け出し、その場を逃げていった
「し、しもうた…逃してしまった!」
棗も慌てて後を追おうとするが、山特有の障害物の多さにすぐ姿を見失ってしまう
耳をすませても鳥や虫の鳴き声しか聞こえない
近くの木に登り、周囲を見渡す
しばらく後、やや遠くで鳥の一団が騒ぎながら飛び出していくのが見えた
そこにアタリを付け弾丸のように飛び出す
一度の遭遇で匂いは覚えた、あとはある程度まで近づけば正確に場所を捉えることができるだろう
急がなければ、棗は焦った
もしも三段階目まで進化されてしまえば、角が折れ半分ほどしか力が出せない今の棗では勝てるかどうか怪しい
■片翼・茜 > 散歩と見回りを兼ねてうろついていたら、木々をへし折る音と獣の叫び声が聞こえたので、駆けつけたのだが。
「おいおいおい」まさか森を抜けた先が、猛然と走る化け物の目の前とは……
「死ぬわこrゲボッ!!」一本角で土手っ腹を突き刺され、化け物の顔の上に乗るかたちになる。
「この……くそっ!」めちゃくちゃ痛い、必死で肘鉄を化け物の顔に打ち込むが、全く効いている様子はない。
■久喜棗 > 「なにごとじゃ!?」
突然の人間の悲鳴に驚きスピードを上げる
高速移動で視界が狭くなった先に一人の少女が異形に串刺しにされているのが見えた
「てりゃああああああああああああああああ!!!!」
一瞬だけ鬼の力を開放し、赤い光を放ちながら異形の一本角へと飛び蹴りをかます
「グゴオオオオオ!!!」
異形の角は綺麗にへし折れ、苦しみ悶える
それに対しとどめを刺すよりも先に少女へと駆け寄り安否を確認する
「お、おい!お主!大丈夫か、しっかりするのじゃ!」
肩を持ちガタガタと揺らして意識を戻そうとする
■片翼・茜 > 「おごあぁぁぁー!!」折れた角ごと地面に転がりおち、また悲鳴をあげた。畜生、せっかく今日体を綺麗にしたばかりだっていうのに!
「だ、大丈夫だ!あんまり揺らすな!モツこぼれる……!!」
腹に空いた穴は向こう側が見えるほどで、普通の人間なら間違いなく致命傷だが、返答はしっかりしている。
「私より、あっちをなんとかしてくれ。畜生、起き上がるぞ!」
悶えながらも異形の獣が立ち上がり、こちらを睨んでいる。怒らせてしまったようだ。
背中の交差して背負ったソウドオフショットガンに手を伸ばす。見たこと無い奴だが、この地域じゃ見たことある獣のほうが珍しい。
■久喜棗 > 「お、おおなんじゃ死んだかと思ったよ…
っておぬしモツが出ておるぞ本当に大丈夫か!?」
思わず手を止め異形によって開放感溢れるリフォームをされてしまった茜の腹を二度見する
明らかに大丈夫ではなかったがしっかりした返答にとりあえずひと安心し、異形へと向き直る
そのタイミングで激怒した異形の爪の一撃が棗へと向かって振り下ろされた
足を踏ん張り腕をクロスさせ、何とか食い止めることに成功するがガツンと重い衝撃が身体に走る
「頭じゃ、頭を狙え!銃でも他に当てては効果が薄い!」
ショットガンを手に持った茜にそう叫び攻撃を促した
■片翼・茜 > 「あとで説明する!」背骨が折れてなかったのが幸いだ、この匠はちゃんと耐震強度を考えてリフォームするタイプらしい。ドリームハウスじゃなくてよかった。
「わかった!」両手に2丁のショットガンを構え、獣に接近する。
「全部くれてやるよ!」獣の頭にダブルバレルが2丁、合計4つの銃口を押し当て、引き金を引く。
無数の散弾が獣の頭を襲う!やったか!
■久喜棗 > 茜の放った弾はいくつかは逸れ、いくつかはその強固な皮膚な弾かれた
しかし目の玉と口内は皮膚ほど頑丈ではなく、その柔らかな肉を切り裂き、破裂させながら弾丸は食いこんだ
更に弾の幾つかは頭蓋に到達しその衝撃でヒビを入れる
「グギャアアアアアア!!!!」
異形は血と泡を吹き出しながら悲鳴を上げ、腕を振り上げ最後の一撃を繰りだそうとする
そこに棗はクロスカウンターの要領で左胸部へと拳を当てる
ズムン、と重い音を立て異形は崩れ落ちた
心臓部に強い衝撃を受け心不全を起こし倒れたのだ
「ふぅー……やれやれ、肝を冷やしたわ
まさかこのようなところに人がいるとは思わなんだよ
それにしてもお主それ、医者を呼んだほうがよいのではないか?」
仕事を終え、スマホを取り出しながら茜の腹を見る
■片翼・茜 > 「……ッ!!」仕留め切れなかったか、即座に左手のショットガンを捨て、もう片方をリロードしようとして
「おぉう……。」
クロスカウンターで獣が沈んだ。凄いなクロスカウンター、力石が死んだのも頷ける。
「こっちは肝をいくつか失くしたよ。全く、見回りしてたらとんだ災難だ。」腹の穴に手を入れて内部を探る。今頃野鳥の餌にでもなっていることだろう。
「大丈夫だ、飯食えば治る。そういう異能でね。」ふぅーやれやれ、とその場に腰を下ろす。
「君は……」見覚えのない顔だ、口調と纏う雰囲気から不死者のようだが。名前を聞こうとして「私から名乗ろう、私は片翼・茜(かたよく・あかね)、学園で教師をやっているものだ。」
■久喜棗 > 小さくはない異形の体を持ってきた死体袋に無理やり詰め込み、野犬や野鳥がついばまないように処理する
あとはこの位置を研究チームに伝えておけば後で引き取りにやって来るだろう
位置情報をスマホに入力し、送信した
「ふぅ…これで儂の仕事は終わりじゃな。さて…」
腹部を直接手で弄っている茜を見て痛くはないのだろうかと案じながら
「なるほど、そういう異能者であったか…ならば安心?じゃな
儂は久喜棗というものじゃ、しかし教師どのであったか…自分を差し置いて言うのも何じゃが
見た目のせいで生徒かと思うたよ
あっ、一応儂も学園で生徒をやっておるよ」
■片翼・茜 > 「仕事……いつも一人でこんなことをしてるのか?大変だな。」
一瞬手伝っただけでこっちはかなりくたびれた、ショルダーバッグから手探りで水筒を取り出し、中のブラックコーヒーを飲む。腹の穴からコーヒーがこぼれだした。「カハァー……。」ため息のように吐息を吐いて、立ち上がる。
「死体になっても動けるって異能さ。痛みはあるが、まぁ二度は死なないから大丈夫だ。」捨てたショットガンを拾って、両方リロードしてから背中のホルスターに戻す。
「見た目は……まぁよく言われるよ、残念ながら死体は成長できないから、ずっとこのままさ。君は生徒だったのか。いや、大体長生きしてる存在は教師側に回る事が多いから、君もそうだと思ったんだが。」読みが外れたな、生徒か……。と小さくつぶやく。
■久喜棗 > 「いつもやっておるわけではないがな、今日はちと協力しておる研究所がミスをしてのう…それはそうと」
一瞬言葉を止め、茜の腹部を指さしながら困った顔をして指摘する
「お腹、お腹、漏れておるぞコーヒーが」
「ふむ…つまりはゾンビというわけか?
死なないのは便利ではあるがなかなか気苦労の多そうな能力じゃな…
儂は見ての通り鬼じゃよ、まぁ長生きはしとるが
少し学びたいことがあってこの学園へと来たものじゃからな」
ちらっと死体袋を見返してから言葉を続ける
「いま儂らが倒したアレも…異形ではあるが鬼でな
ああいったものを生み出さぬための方法を研究しておるのじゃよ」
■片翼・茜 > 「やれやれ、学者センセー達もしっかりして欲しいものだな。」あまり研究所だの博士だのには好印象は持っていない。その声には少しだけ侮蔑を込めて。
「おわっ、マジか。ああ~、服が全部ダメに……」上着とシャツは穴が空いて、ズボンや靴下はコーヒーまみれだ、がっくりと項垂れる。
「そうだな、くさった死体が動いてるんだからゾンビだ。
まぁ、不都合は多いが出されたカードで勝負するしかないんでね、なんとか付き合ってるよ。」
相手は鬼らしい、確かに角が生えているし、さきほどの人間離れした身体能力も頷ける。
「学習意欲があるのは素晴らしいことだ、年をとると怠惰になりがちだからな。」不死者の知り合いの多くがだらだらと毎日を過ごす、停滞した生活を送っているのを思い出す。
「それに失敗して、討伐依頼ってとこか……。」抑制するための研究で野に放ってしまうというのは本末転倒にも程が有るように思えるが、詳しく事情も知らないのに、あまり悪しざまに言うのもはばかられた。
■久喜棗 > 「研究意欲が有り余っておるのはよいのだが
反比例して危機意識が全くないのが玉にキズよのう…
まぁしかしそのような者達に協力しておる儂にも責任はあるがな
じゃからお主がぶっ刺されておるのを見た時にはちと焦ったぞ…」
コーヒーで濡れた茜を見かねてかばんからタオルを取り出し差し出す
「むう、ほれ…これで拭くといい、痛みがないということは熱さもわからぬということか
難儀そうじゃのう」
「うーむ、儂の場合は学習意欲があるというより学習せんと不都合が生じるのでな
今のままではいつバイオハザードの発生原因になるかもわからぬ
だが今の儂にできることはこうやって自分の尻を自分で拭くぐらいじゃよ」
流石に疲れたのかその辺の岩場に座り、ぽんぽんと汚れた着物の裾をはらった
■片翼・茜 > 「ハハハ、悪かった。」笑おうとして、頬が動かず、指で頬を釣り上げて笑顔を作った。
「私の悪い癖なんだが、死なないとわかっているから自分の安全を疎かにしがちでな。生徒が真似するといけないから、気をつけようとしてるんだが。中々意識を変えるのは難しい。カハァー」顎をだらりと落とし、ため息めいてコーヒーの匂いの息を吐いた。
「ああ、ありがとう。いや、五感も痛みもあるが、なにせ神経も死んでるから鈍いんだ。コーヒーぐらいの熱さじゃ何もわからないね。」上着はもうあきらめたので、ズボンを重点的に拭う。あんまり押し付けると腐汁がつくので、とりあえずあらかた水分をとってから、ありがとう、と返す。
「なるほど、自身の制御のためか……。力になれるといいんだが、異能や魔術の制御は管轄外でな。」
相手が座れば、こっちだけ立っているのも忍びないので、また地面にどっかりとあぐらをかく。
■久喜棗 > いやいや、と手を振り
「いや、お主が悪いわけではない
最初の遭遇で仕留めきれんかった儂のミスじゃ
しかしこう言うのも何じゃが遭遇したのがお主で良かった、結果的にじゃが
あそこでお主を襲わず逃げ切ってもう一段階成長しておったら
儂では止めきれんかったかも知れぬしな…礼を言うぞ茜どの」
そう言って頭を下げる
鬼はその能力で姿を隠すこともできるので、実際茜を襲っていなかったらそのまま逃してしまっていた公算が高い
自分の手に負えないほどに成長してしまっていたらと考えるとさすがの棗も肝が冷えた
「そうか…では一応味はわかるのだな、少し安心したぞ
味覚が死んでる時の飯ほど辛いものは無いからのう…それがずっと続くなど考えもしたくないな」
「ん、いや気にせんでくれ。これは儂の問題じゃ」
と、笑顔で返す
実際この件で他人の手をわずらわせることはしたくなかった
研究所のようにギブアンドテイクの関係ならまだしも