2015/09/25 のログ
■迦具楽 >
「――……ふーんふーん、ふふーん♪」
【山の中だというのに快調にリズムの良く草木を踏み鳴らしながら。
楽しそうな鼻歌は近づいてくるうちに、同年代程度の少女のものと知れるだろうか。
草木を押し分ける音は暫く続き、さて少女とほど近い距離までくれば。
鼻歌と共に音は止むだろう】
「……あら、こんなところに人なんて、珍しいわね」
【珍しいのはどちらのほうか。
聞こえる声、そして口調はやはり女性のものだろう。
発音ははっきりとしているが、落ち着いた大人の声音ではなく、やや高く明るい。
実年齢はともかく、声はやはり少女と近しい年代を感じさせるだろうか】
■ナナ > 「……こ、こんばんは……。」
珍しいのはどっちだ、と危うく言いかけたが
自分もどう見ても不審者だという自覚はあったため
喉下まで出かけた言葉を飲み込む。
声の調子はほぼ同年代らしいが、この島にいるということは
やはり学生なのだろうか。
ひとまず挨拶だけして出方を伺ってみる。
■迦具楽 >
「どーも、こんばんはー」
【返す挨拶の声は、とても軽い調子。
けれどすぐに、『んー?』と、首をかしげるように怪訝そうな音が聞こえる】
「アナタはお散歩?
狩りに来た……って様子には見えないし。
――あ、隣に座っていいかしら」
【そうことわる声のすぐ後に、ゴトリ、と大きく重いものを石の上に置く音。
さらにその後、返事を待たずに人の気配が近づき、腰を下ろすような衣擦れや古びた石を踏む音が聞こえるだろう】
■ナナ > 「は、はい。ちょっとお散歩に……」
当たり障りのない返事をしつつ、警戒は解かない。
好奇心と少しの恐怖、それから混乱が頭の中で渦を巻いている。
狩り、と聞こえたが今目の前にいる人物ももしかしたら自給自足くらしなのだろうか、と
半ば冗談のように考えていた思考が急に現実味を帯び始める。
「……あの、あなたはどうしてここに?」
■迦具楽 >
「ん、私?
私は山菜摘みと、ちょっと狩りに。
このあたりは人がほとんど来ないし、色々棲んでていい場所なのよね」
【先ほどより程近く。
僅か少女より高い位置から聞こえる声は、含むもののない素直な音。
『いい音するでしょ』と、先ほど置いた何かを揺らしたのか、ゴトゴトと重たい音が続く】
「好かったらなにか食べてみる?
木の実なんかも取れたし、赤くていかにも毒っぽい色のきのこなんかも採れたわよ」
【後半は明らかに冗談のような声音で。
ある程度慣れてくれば、土の匂いや草の匂い、ほんの僅かに混ざった鉄臭さを感じられるだろうか】
■ナナ > 「あぁ……なるほど。」
きっと、目の前においてあるのは籠なのだろう、と推測する。
この時期になれば胡桃やら栗が落ちている頃だ。
思ったより怪しい相手でもないのかもしれない、と
少しだけ安心する。
■迦具楽 >
「そ、だからアナタを取って食べたり、襲ったりはしないわ。
……安心してもらえたかしら?」
【続く冗談めかした言葉に、一拍置いて様子を伺うような語調。
僅か布の擦れる音が擦れば、さらに近づく気配】
「私はカグラ。
宿はあるけど金はない、絶賛原始生活中の超がつく貧乏人よ」
【先ほど高かった声の位置が、顔を覗きこむようにしたのか僅かに低くさらに近く。
自虐的だが悲観のない声音で自己紹介をすれば、続けて『アナタは?』と問いかけた】
■ナナ > 「あ、えと……私は、ナナって言います。
貧乏生活……ではないですけど、自給自足中です。」
なんともいえない気分で自己紹介をする。
これが親近感、というものなのだろうか。
決してお金がないわけではないが、やっていることは同じ。
もしかしたら、相手にも何か事情があるのだろうか、などと考えて
目隠しした顔を向けてみる。
■迦具楽 >
「そう、うん、ナナね。
しっかり覚えたわ」
【こちらはまた、機嫌よさそうな声。
収穫がよかったからか、先ほどの鼻歌といい、上機嫌である事は伝わるか】
「それにしても、貧乏でないのはいい事だけど……今時自給自足なんて珍しいわね。
なにか事情でもあるの?」
【伺うような声と共に、声の位置が元に戻る。
『私は大食らいだし、お金はないしでやむを得ずってね』などと、訊ねておきながら先に事情を話し出す】
「友人のおかげで、住む土地と屋根つきの寝床は用意できたけど、結局働いてないからお金は出来ず。
その友人を手伝って貰ったお金は、食費以外に使わないと生きていけないとくればねえ……」
【そんな事情を苦笑するような調子で、呆れたように告白した】
■ナナ > カグラの明るい声を聞いて少しの間考え込み、口を開いた。
「わたしは……そのほうが性に合っているだけ、です。」
僅かに表情を曇らせ、すこし歯切れの悪い言葉を返す。
嘘はついていない。
全部を話していないだけ。
勘がよければ何か事情があることは読み取れるだろうか。
■迦具楽 >
「……ふうん、性に合っている、ねえ」
【その声は怪訝そうな、疑問を持った声音だったが】
「ま、話したくないことなら聞かないわ。
何でも話すには、会ったばかりだものね」
【それは特別、不快に思うでもない自然な声。
気を使うようではあったが、話せないのも当然だろうと】
「けど、山をその目で歩くのは大変じゃない?
お世辞にも足場が良いとはいえない場所だし」
【それはやはり、気遣うような、心配するような声音。
親近感でもわいたのか親しげな口調に、身を案じるような色が混ざる】
■ナナ > 「……少しは不便ですけど。でも、慣れましたから。」
声に込められた少しの心配にこたえるように
笑顔を作って答える。
第一印象こそ不思議な人だったが、きっといい人。
だから、話せない。
だから、見せられない。
本音を押し隠して少女は笑う。
きっと、それが相手のためになると信じて。
■迦具楽 >
「そ、慣れたなら、まあけっこう何とかなるわよね」
【慣れ、という物に自分でも思うところがあるのか。
声色にはなにか実感が篭っていただろう】
「けど気をつけないとだめよ。
このあたり、マトモな生き物以外もうろついてるみたいだし。
……私だって、機嫌が悪いときは人を襲って食べちゃう事もあるのよ?」
【前半の言い含めるような口調と、一拍置いた後半は、冗談とは言いがたい少し低い音だ】
■ナナ > 「だ、大丈夫ですよ。たぶん……」
まともでない生き物は少ししか見たことがない。
だから実感は沸かないのだが……おそらく目の前にいる彼女の言うとおりなのだろう。
けれど、それよりも最後の一言が重く響いた。
冗談で言っているようには聞こえない。
「……大丈夫です。」
無くなりかけた自信を立て直すように、もう一度つぶやく。
今度は、自分に言い聞かせるように。
■迦具楽 >
「……うん、ナナは”強い”のね。
ごめんなさい、脅かすような事を言って」
【なにか含むような声音で『つよい』といえば。
転じてまた親しげな調子で謝った】
「まあ、あんまり深くまで入らなければ大丈夫よ。
あとは、私みたいな不審者には要注意!
人っぽくっても、実際は……なんて、この島じゃ良くある事だもの」
【明るく自虐的に忠告してみれば、『邪神が風紀にいるくらいだし』なんて、呆れた調子で付け加えて】
■ナナ > 「へぇ、邪神…………え?じゃし、ん……?」
少し上の空になりかけた意識が予想外の単語に引き戻される。
いいんですか常世学園。
風紀委員に明らかに風紀を乱しそうな存在がいるんですが。
常識が通じないこの島のことだから、良い邪神がいてもおかしくないのだけれど、
やっぱりちょっと想像ができない。
目の前にいる少女も人間ではないのだろうか、とふと思った。
現実逃避から浮かんだ考えではあったが
そんな予感がした。
■迦具楽 >
「そう、邪神よ、邪神。
それも破壊神。
あんたが一番風紀を乱しそうだーって言うのよね、ほんと」
【可笑しそうに笑い声を混ぜながら、はっきりと肯定し】
「まあそれが私の友達で、命の恩人で、雇い主で、寝床もくれたお人よしって言うんだから、やっぱりこの島は可笑しいわよ。
こんな島だから、私も人間みたいになっちゃったのかしらね」
【その破壊神の事を話す口調は、笑いながらもどこか信頼を感じさせる声音で。
しみじみと続いた一言は、少女の疑問を補足するかのような言葉だった】
■ナナ > 「そう、ですか……そんなことが……」
突拍子もない話だが、不思議と相手が嘘を言っているようには聞こえなかった。
常世島だから、なんて理由にもならない理由が通ってしまう。
ここは、そういう場所なのだと改めて痛感する。
同時に、ほんの少しの羨ましさのような、もやもやした感情がこみ上げてくる。
いつか、自分もそんなおかしな、けれど温かい日常に入っていけるのだろうか。
「……良い人、なんですね。きっと。」
■迦具楽 >
「……ま、働く気なしで、仕事も人任せの駄神だけどね」
【ため息と共に出た言葉は、うって変わって心底呆れた調子だったが。
それでも親しみが込められて聞こえたことだろう】
「でも良い人って言うなら、ナナこそ良い人よね。
こうして私に付き合って話し相手になってくれてるし……というか、アイツの話するとか私なに話してるんだろ……」
【ふと、我に返ったかのようにトーンが下がると。
小さく一つ、咳払いが入った】
「……もう、全部ナナのせいよ!
ナナが聞き上手だから、ついつい素直に話――余計なことも言っちゃったじゃない!」
【そして突然の責任転嫁は、どこか拗ねたような声音で、なにかを誤魔化すようにまくし立てられる】
■ナナ > 「え、私の所為なんですか……」
ちょっと困ったような表情を浮かべてみるけれど、
それも嫌そうな表情ではなくて。
きっと、仲がいいんだろうと想像してみる。
……たぶん邪神さんは人の姿をしているのだろう。そうだと信じたい。
ちくりと刺さるような痛みと、染みるような温かさ。
不思議な感覚を覚えながら、曖昧に微笑んでみる。
■迦具楽 >
「そうよ、ナナのせい!
……だから責任とって、友達になりなさいよ」
【相変わらず拗ねた調子の声。
けれど、なぜか言葉は徐々に尻すぼむように小さく、勢いも弱弱しくなっていく】
■ナナ > 「はい、ともだ…………え?」
勢いで返事をしかけて、予想外の言葉に戸惑う。
それも、今までの勢いが嘘のように弱弱しいから、余計に。
「……わたしで、よければ。」
無意識のうちに、返事は口からこぼれていた。
考えるより先に口が動いていた。
驚くよりも早く戸惑いと羞恥が頭の中で回って
頬が熱く感じられた。
■迦具楽 >
「……う、うん。よろしく」
【応えた言葉はやはり小さく、しかも最後は、顔でも逸らしたのか響き方が変わり。
少しの間黙り込んでしまえば、落ち着きをなくしたように、布の擦れる音が断続的に続いた】
「……ほ、ほら、自給自足仲間だもの。
良い場所があったり、大物が獲れたら分け合ったりとか、そういう!」
【そしてまた、急に話しはじめれば、少しトーンの高い、キンとした音混じりで声をあげる】
■ナナ > 「えっ、あっ、ひゃ、はいっ、そ、そうですね……」
思考がぐちゃぐちゃになりながらも何とか返事を返す。
もしかして、相手も恥ずかしいんだろうか、などと
現実逃避のようにどうでもいいことを考えながら。
友達、という言葉が頭の中でぐるぐる回る。
■迦具楽 >
「そ、それじゃあ、私はそろそろ帰るわねっ!」
【焦るように早口になれば、ザッと音を立てて立ち上がる気配がするだろう】
「あ……えっと、私は普段、こことか、神社の森とか海とか……いろんなとこで狩りしてて……。
それと今は異邦人街の端っこ……宗教施設が並んでるとこの端っこに、黒い石の祭壇がある家に住んでるから」
【だからなんだ、とは言わず。
ただ思いつくままに並べたとでも言う調子で、自分の行動範囲を告げつつ。
『よいしょ』という声と共にまたゴトリという音を立てた】
■ナナ > 「えっ、あっ……」
思考が定まらない。何をいえばいいか分からない。
けれど何かいいたくて、伝えたくて。
咄嗟に思いついた言葉を口に出す。
「えっと……あ、ありがとうございましたっ!
ま、また会いましょう!」
そのまま、あわてたように頭を下げた。
■迦具楽 >
「――っ、それはこっちの台詞よ……ありがと、ナナ。
……またねっ!」
【一拍の息を呑むような沈黙。そして、小さな声の呟き。
一歩、石段を踏みしめる音を鳴らせば、大きな声で答えて。
それからすぐ、小刻みな足音があっという間に遠ざかって行っただろう】
ご案内:「廃神社」から迦具楽さんが去りました。
■ナナ > 相手が立ち去ったのを確認すると、
踵を返して逃げるようにその場を立ち去る。
恥ずかしいのか、泣きたいのか。
とにかく頬が熱かった。
けれど、嫌な気持ちではない。
また会いたいと思った。
そして、きっとまたまた会うことになる。
ご案内:「廃神社」からナナさんが去りました。
ご案内:「廃神社」に洲崎さんが現れました。
■洲崎 > 新しい服に着替え軽く体と頭を洗い
シーツを取り去った赤い祭壇の前で街を見下ろす
「雨も降らずにいい夜だね…雨天決行なんかじゃつまらない。
きれいな空に祝福されてよかったよ♪」
■洲崎 > 祭壇に寝かされた少女
スラムに居た少女は薬のせいかよく眠っている
数時間は目を覚ますこともないだろう
「10年、か……なんか無駄に長かったなぁ。」
しみじみと呟き街を、島を見下ろす
自分の願いのために色々と世話になった島を
材料を集め何度か激闘を繰り広げた島を
だがそれも今日で終わり
■洲崎 > 「よし、じゃぁさっそく始めようか♪」
祭壇に振り返り、歩いていく
血で清められた祭壇は赤く、禍々しく
見ているだけでムカムカと胃の中の物が沸き上がってきそうなほど異様で
それでいて周囲の雰囲気ともそぐわない異質な存在感を発している
「来たれ、千匹の仔を孕みし黒山羊よ
来たれ、千匹の仔を孕みし黒山羊よ
イア・イア・シュブ=ニグラス!
イア・イア・シュブ=ニグラス!
古の習わしに従い我が前に顕現せよ
千の仔山羊を孕みし森黒山羊!!
豊穣の神、絶対者の妻よ!!」
強い魔力、歪みがこの場所に集中する
街からも異変が感じ取れるほどの強大な歪み
雲が歪み山の上空に分厚く重なる
月の光が差し込まず辺りは薄暗く漆黒の闇に包まれていく
■洲崎 > 彼の者を呼ぶ 呼ぶ
自身の人生を賭けた一世一代の儀式
失敗の許されない儀式は着々と進んでいく
「来たれ来たれ子山羊の母、僕の為に彼女の為に
貴方のために僕は万の贄捧げます
だから…僕の小さな願いを叶えたまえ」
雲の奥から滴が落ちる
黒いタールのような大きな滴、それが神社の境内
祭壇の奥、境内の真ん中
水風船を叩き付けたような音が響きそれは降り立つ
■洲崎 > 黒いタールが浮かび黒の球体が浮かび上がる
正面から見つめるだけで嫌悪感に襲われ不快感が沸き起こり
胃の中の物を全て吐き出したくなる
相対する事すらおこがましい、人とは決して相容れない存在
そして…自身が10年間待ち焦がれた存在
愛しくおぞましく異常なほどの興奮が体の中を駆け巡る
■洲崎 > 「……初めまして、子山羊の母よ」
額に伝う汗を拭う
こうして立って話しているだけで汗が止まらない
だが言葉を吐き出す
倒れてたまるか意識を手放してたまるか
あと一歩、あと一歩なんだ
■洲崎 > 「贄の対価…子を、僕の最愛の人を…彼女に孕ませてください」
にこりと笑顔を浮かべる
酷い作り笑い、だが嘔吐を堪えながらの笑顔
としては及第点
「母よ、慈悲があるなら哀れなこの身に
慈悲を……僕をまた彼女に会わせてほしい
彼女と共に…生を歩ませてください」
■洲崎 > ゆっくり…ゆっくりと球体は動き出し
祭壇に寝かされた少女に近付く
もし彼女が起きていれば自身に近付くそれを見て発狂死していたかもしれない
「………」
じっとそれを見つめる
正直一歩たりとも近づきたくない
こちらによって来るだけで今すぐ逃げ出したい欲求にかられる…
だが決して、目は逸らさない
全ての事が終わるまで…
ご案内:「廃神社」にルフス・ドラコさんが現れました。
■洲崎 > 紐状の触手が少女に伸びる
少女の衣服に潜り込みその肌を撫でながら
ゆっくりと触手が体の中に溶け込んでいく
異様な光景
少女に群がる触手
気持ち悪い…リビドーも何も湧かない
ただただ気持ち悪さだけが湧き上がる
だが、それよりも大きな圧倒的達成感
そして感謝の念
「ありがとう……ありがとう…」
涙が零れる
待ち焦がれた答えが目の前に広がる
成功、その言葉が頭の中を駆け巡る
■ルフス・ドラコ > かつて参道であった物を踏みしめる音がする。
ゆっくりと。
草を、土を、転がる石を、倒木を、逃げ惑う虫を、
踏み潰しながら、その音が境内へと迫ってくる。
遅い夕焼けのように紅く。
山に吹く風は酷く乾いていた。
■洲崎 > 後方から音がする
何かとても嫌な音
全てを台無しにしようとする死神の音が
「させないよ…今回だけは、絶対に」
振り返り、歩き出す
神聖な受胎の邪魔などさせない
狂ったような笑みを浮かべながら参拝者の方へ
■ルフス・ドラコ > うねる山筋は、胎内巡りめいていて。
その足音を徐々に近づけさせる。
旧い旧い道。かつての祭神の通り道。
それを踏み越えて、血に伏せた鳥居の前に。
赫々とした影を背負う何かが立った。
「昨晩」
異界じみた所業とその音を乗り越えて、境内に声が響く。
「偶然にもこの廃神社に忍び込もうとした集団が有りました。
……結局は夜の闇と、何処からか響く少女の声と、それと――」
声だけは、以前までと同じく。
まるで人間であることを主張するように、持って回った内容の言葉を告げる。
「血の臭いに恐れをなして逃げ帰り、
その話をたまたま未開拓地域担当の風紀委員が聞きつけました。
そしてその上偶然にも。
真相を確かめるべくやってきた風紀委員は、開拓村での誘拐事件の折に。
貴方の足跡を追跡したトラッカーだったのですよ」
息継ぎを、一つ。
ヒュウとなる空気の音が、火の吐息を思わせる。
「私達が追い詰める、と申し上げました。
これ以上貴方が何を為すこともない、と。」
「……『させない』は、此方の台詞です」
月の差し込まない闇夜に、灯火がついた。
紅い髪、紅い瞳、どこかの民族衣装を着た少女の姿をした何かが、
傍らに燃え盛る炎を従えて、明確な敵意を持って見つめている。
■洲崎 > 「へぇ…それは本当に運がよかったね♪」
その集団の事を思い告げる
もしも彼らが祭壇に近付けば…言うまでもない
「足跡を残しすぎた…って事かな?
にしても…」
衣服を見やる
風紀委員の制服ではなくどこぞの民族衣装
そして真っ赤に燃えるような瞳と髪
「君はここに風紀委員としてではなく…君として来たって事かな♪」
向けられる敵意に足が竦む…と言う事はない
今は達成感による脳内麻薬のせいか恐怖が薄い、それとも先ほどのあれを見た後の慣れだろうか
どちらにせよ危機的状況にかかわりなくとも冷静な判断と思考はできる
「何も為せない…確かに僕の今までは失敗ばかりだったよ
でも…今日この時だけはそれは許されないんだ」
■ルフス・ドラコ > 「ええ、僥倖でした。彼らが居なければ…
そして、貴方の足跡であれば靴を変えようと見分けてみせるといった先輩が居なければ。
私はここに居なかったでしょうから」
一つ目の問には容易に首肯しながら。
「……そして、何よりも。」
ふたつ目の問を明確に拒絶するために。
「メアさんと出会っていなければ、私はこの島にさえ居なかった。」
鳥居を踏み越えて、境内へと歩を進める。
「私は風紀委員として。
数多くの誘拐事件と、数多くの改造による傷害行為をこれ以上増やさないために、
そして開拓村で家族の帰りを待つ一人の男性のために、
あるいは……同僚を失った同僚のために」
足を進める毎に足跡に炎が灯る。
島に洲崎が残した軌跡を追って近づく、紅い炎の群れのように見えた。
「……そして、ルフス・ドラコとして。
メアさんに、『洲崎さんを止めました』と伝えるために。
この一晩だけ、この名前に残された因果のために私はここに来たんですよ。」
掲げた右手が纏う、龍腕の幻影。
「ここに私が現れた時点で、もうとっくに失敗は始まってるんですよ」
洲崎ごと、そして呼びだされてしまったモノまでも殴り飛ばすような巨大な一撃をまっすぐに振るった。
■洲崎 > 「へぇ、そんな先輩が…それに、メアちゃんのこと知ってたんだ?」
これ以上ない程の皮肉
自分がこれほど手こずらされた相手が自分に一番近いあの子によってこの島に呼び込まれたなんて…
「ルフス・ドラコ、いい名前だね…でも君は勘違いしてる」
繰り出される拳
それはまるで竜の拳
逃げたい、避けたい…だが自分の背後を守るためそれはできない
空間に歪みが生じたこの場所でしかできない芸当…
今までは小窓ほどしか開かなかった穴を限界まで広げ、その拳を呑み込み…閉じる
「ハハ、失敗なんてしないよ……さぁ、僕とのんびり遊んでもらおうか♪」
顔を抑える、目から流れる涙よりもねっとりとした液体
赤く赤く視界が染まる…脳が焼き切れるような付加に耐えながらそれでも男は笑う
全てを完遂させるため、その為だけに今まで生きてきたのだから
■ルフス・ドラコ > 「命の恩人ですから。……何時か恩を返さなければ、と思っていました。
こんな形とは、思いませんでしたけれど」
ルフスの肉体に同期して現実に干渉する赤龍の因果は、
ひどく巨大で、受けようと逸らそうと青垣山の形状を容易に変えうるだけの破壊力を持っている。
だが、それはあくまでも物理的な干渉であって。
干渉している最中に反撃を受ければ傷つくし、
こうして転移させられてしまえばその衝撃は何処にもたどり着かず、腕がちぎれてしまったダメージはルフスに共有されるだろう。
ルフスが、つい数カ月前に異能を手に入れたばかりのただの少女であったなら、の話だが。
「のんびり、ですか?」
龍腕が、飲み込まれる前に姿を消す。
常に干渉されている精神と違って、この現象そのものはルフスが制御できる。
拳を振りぬくよりも早く、自身の動作に依存すること無く、呼び出すことも消すこともタイミングは自由だ。
「…お付き合い出来るのでした、構いませんけれど」
牙を剥くようにして、赤龍は笑った。
"全ての動作に必殺の可能性のあるフェイント"として、今度は左の拳を握って振るう。
ルフス自身は、今も洲崎と、その背後の儀式に向けて歩みを進めている。
■洲崎 > 「恩人…嫌だなぁそういうの、僕に関係ないところだったら大いに結構なんだけどさぁ♪」
軽口を叩きながらまた扉を開く
ルフスからのダメージは一切なくこのままやっていれば永遠に足止めできる
そのはずだ…だが、現実はそれほど甘くない
「のんびりのんびり、神聖な儀式を邪魔しちゃいけないよ♪」
目の次は鼻からも血が流れる
何もしていないのにこの体たらく
扉を開けば開くほど自分の祖の負荷が返ってくる
分不相応な力を使えばそれだけ命も削られる…
そしてこのままではいずれ彼女は祭壇に到達する
それを許す訳にはいかない
「おぉ母よ!貴女に害をなす不届き者にどうか罰を!
―――――!!」
聞きなれない単語を口にする、同発音しているのかも不可思議なほど異様な言葉
異音ともとれるその音に導かれるように…周囲の林からいくつもの気配が近づいてくる