2015/10/03 のログ
蒼穹 > 私は景色収集家じゃないけどね。ま、でもそういうのもあるかな。本当の所はキミの内心を曝け出させたかったんだけど。
…「それ以上でも、それ以下でもない」…なら。
それ自体でもない。数学の勉強をやり直せ、こーのっ!

(≧《いじょう》と≦《いか》は、どちらにも=《イコール》が付いている。故に、それ以上でもそれ以下でもなければそれ自体でもない。
そんな数学的注釈を入れる。そして頭を小突く。
あまりに冷淡にあしらわれて、だが、その通りなのだろう。彼女の意見は、間違っていない。
機械から見たら、それこそただの街で、ただの森で、そしてただの海に囲まれた、ただの島だ。)

そう、あれはただの街。そこにあるだけの街だろうさ。
良い景色か、悪い景色か。…なんて、キミにとっちゃどうでもいいのかな。

(ふー、と、一つ息を入れて。)

ま、そうだろうね。キミは表に出してないけど。結局あれを壊したいんでしょ?ここみたいにね。
だったら、それが良い景色か悪い景色か、なんて関係ないだろうな。
結局壊したら楽しいかどうか。それが問題なんだよ。
自分の手で握り潰して、自分の足で踏み潰して。幾多の悲鳴を耳に聞きながら、
何かを壊していく…そういうの、楽しいって思うんでしょ?

(景色という物について、彼女はあまりにもどうでもいいと思っているのだろう。
英霊の生態については、もう読んだ。彼女ばかりは他の英霊とは違うけれど、結局のところ考えていることは同じなのだろう。
隠しても隠し切れぬほどの、悪魔的な悪意が溢れる。
分かっている様な表情で、何も分かっていない子供の様に稚拙な比喩を使いながら、
そんな風に本心を強請ってみる。思うだけなら、罪にはならないし。破壊衝動って、割と誰だって携えている。)

…何だと。…貴様ウィザード、貴様ァっ!!
上官命令だよ、御弁当ちょーだい。

(そのお弁当に毒物でも入っているやもしれないが、何とも油断の抜けきった様子で、
理不尽に理不尽を重ねた。用意周到さに引き下がって流石に二千円を仕舞い込んだ。
流石頭良い奴、侮れない。備えあれば患いなし。)

…ふぅん。そう。

(論理的に反論して来る。それは最もだと言える反論だろうし、こちらから言い返すことはできない。
つまんないの、と言いたげに彼女の反論を受け流した。)

『ウィザード』 > 「私の内心……か」
そうだな……しいて言うなら、街の人々が阿鼻叫喚とする姿が見たいか。
とは言っても、島全体を燃やしたりするなどつまらぬ事は、過去に幾重にもやっているしな……。
だがそれらをやったのは“本来(アクマ)の体”であって、“この体”の状態ではやってなかった。
仕方がなき事か。
──それはさておき。
「そんなものを曝け出させて、どうするつもりだ?」
『ウィザード』はその赤い瞳で、蒼穹を見る。

そんな時、頭を小突かれる。
それにより少し、『ウィザード』の頭が揺れて、魔女帽子がずれた。
『それ以上でも、それ以下でもない』というのは、物事が言葉通りの状況であり、言いすぎても言い足りないわけでもない表現だが、そんなマジレスを返しても仕方がない。
「そうだな。
 学ぶのは良き事だ。
 貴様と違って、私は出来る限りサボらずまじめに授業に出席しているからな。
 いくらでも、勉強する機会がある」
以外にもまじめなのか、単なる知識欲からか、あるいは表面上だけなのか。
理由がある時以外は、講義には出ている。

「良い景色、悪い景色、この光景を見てみなそれぞれ感想を抱く事だろう。
 ただの街程度にも、人は思う事があるというわけだ。
 私個人の感想をあえて述べるならば、悪いものでもないとだけ言っておこう。
 さて、貴様は破壊神だろう。
 このような風景を幾重もぶっ潰してきたのだろう?」
『ウィザード』今日初めてとも言えるぐらいに楽しげに語る。

この破壊神は、『ウィザード』の本性の一端を知っている。
あたり前と言えば、あたり前だろう。
「破壊神である貴様がその質問をするか」
おかしくて、おかしくて、まさしく正解だったので、笑いそうにもなる。
「破壊神なら、どういう動機で潰す?
 芸術的に美しい景色だからこそ狂気的に壊す? 悪い景色が気に入らないから壊す?
 あるいは、壊しているものなどどうだっていい?」
『ウィザード』にとっては、その全てが当て嵌まる可能性があった。
「まさしく自分語りにも聞こえるな、蒼穹。
 昔の貴様は、そうだったという事かな?」
結局、『ウィザード』も他の英霊の例に漏れず、存在そのものが悪なのだ。
本性は、どうしようもなく邪悪なのだ。
だが悪は、実行しなければ罪にはならない。
『ウィザード』は逆に、破壊神たる蒼穹に質問を返す。

「なぜ私が貴様に弁当を……?」
だが一日下僕という立場もあって、この場は素直に引き下がる。
「仕方がないな。
 サンドイッチ二つ程度ならくれてやる」
本当に、不本意だが……。
『ウィザード』は弁当箱を取り出し蓋をあけると、そこにはサンドイッチが五つぎっしり詰まっていた。
ちなみに毒などは入っていない。

反論を受け流されては、それ以上言う事もなかった。

蒼穹 > …どうするつもり、か。
さぁね。徒党を組んで仲良く飲み物飲んで気まぐれに何かを踏み潰す、
馬鹿みたいな力を持っていて、永遠と死ぬことのない不屈無窮の関係。…そんな友達、あったらいいよね?

(何処までも自分勝手な意見だった。あるいみ、人間的ともいえる。
己は、何処かしらで求めている。自分の同族を。そして、己は数少ないながらも、そんな同族と呼べる友人を持っている。
お友達は、多い方が良い。作っても、いずれ消えてしまう物は、最初からない方が良いと分かっていても、
最近は普通に死んでしまうお友達も作っている。どうしてか?なんて理由は付けようがない。
己に貫く信念なんてない。故に優柔不断で甘くて、それでも我儘で自分勝手。こうした多面的な性格は、己に限らず邪神には間間あることらしい。)

…ふぅん。
ま、私は学ばなくても元から知ってるの。
十七条憲法は知らないけど。あーらら、英霊を名乗る魔女っ子が真面目な事で。

(そのまま、ずれた魔女帽子を取り上げようとする。一目から見て結構な速度、マッハスピードで。こんなどうでも良い所に人外の力を使うのは、気紛れとしか言いようがあるまい。
皮肉っぽい口調には、皮肉っぽく返した。)

そうだねぇ…。良い景色も悪い景色も。
あっはは、どうかな。幾重幾重にも。
数え切れないくらい、忘れてしまったくらいには壊して来たんじゃないかな。

(否定する様子はなく、それを悪びれる様子も、後悔する様子も、まして反省する様子さえなかった。
破壊する事を否定してしまう等、自身の存在そのものを否定するのに相当するからだ。
複雑だけれど、あの頃楽しかったのは間違いない。そして、それを思い出して楽しくなくなると言う事はない。
悪びれない、悪辣ともいえよう表情が仄かに翳った。)

動機?決まってるじゃん。
"楽しい"からだよ。
狂気でもなく、気に入らないわけでもない。
壊したいと思ったから壊して満足する。だから壊しているものならどうだっていい。三番目が正解だね。

(言い切った。楽しいから。ただそれだけの理由だ。
使命感に駆られるわけでもないし、狂気に満たされたわけでもない。まして景色が気に入らないわけでもない。
破壊神が壊すのは、ごく当たり前の事である。まるでプログラムされているかのような、必然的な行い。
一種の生理現象でさえあると言えるかもしれない。
寝たいから寝る、お腹が空いたから食べる。それくらいに、当然な行いだった。
今は、どうだろうか。甘くなった。平和ボケした。かつて彼女の同胞に言われた言葉だ。
実際はと言えば、どうなのだろうか。災害や災厄に例えるなら、活火山が休火山になった、そんな感じなのかもしれない。
昔は、暴れん坊だったけれど。何かが原因で力を失って。それからは、めっきり変わってしまった。
それがいつの事で、どこで、何故そんな風に変わったか、はっきりとは覚えていない。けれど。)

ああうん。よく分かったね。そう、さ。昔の自分語り。
私は壊すことを渇望しているんだよ。理由なんて知らないけどね。

(あまりに身勝手だけれど、それは狂気でも何でもなかった。壊すのはごく当たり前の事だから。
己は、存在そのもの、といっては語弊があるかもしれないけれど、破壊衝動から創られた曖昧な概念の権化。
語る名は破壊神。誰が認めようと誰が認めなかろうと、自分が破壊神であることに、間違いはない。
少なくとも、自分はそう認識している。)

くれ。
(同じ表情のままお弁当を強要する。酷く理不尽だ。)
お、おおおー!
さっすがウィザちゃん、気が利くねー!!
(変な仇名を付けながら、かっぱらう様にお弁当箱からサンドイッチを引き抜いた。
―――カツサンド?卵サンド?何だろうか。これは…。)

『ウィザード』 > 「友達か」
くだらないと、そうばっさり切り捨てるのは簡単だ。
しかし、それはあまりにもったいない。
目の前にいるのは、絶大なる力を持つ破壊の神だ。
蒼穹とのシューティングゲームも中々に楽しめた。
そんな蒼穹と仲良しごっこをして過ごすのも、また一興。
「確かに素晴らしいな。
 ああ。否定しない。
 特に貴様の寿命はとてつもなく永いだろうからな。
 友人などつくっても、瞬き一つした頃には滅んでいる事だろう」
蒼穹に理解を示すかのような態度をとる。
だが、友情なんてものは上っ面で終わる事も多い。
『友人のため』というのが実はただのエゴであったり、要所で上手く友人を出し抜き自分を優位に立たせようとする人も多かろう。
ただ、蒼穹は人ではなく邪神だ。
はたして友達というものをどんな風に見ているかな。

皮肉を言われて、『ウィザード』は軽く首を縦に振る。
「邪神として長年生きただけの事はあるか。
 その頭には、それなりに知識が詰まっているようだな。
 蒼穹が不真面目だとも言える。
 必要な単位をギリギリ習得しようという魂胆か?」
もしそうなら、不真面目というより効率的とも言い変えていいかもしれない。

そんな時、人知を遥かに超えた超スピードにより魔女っ子必須アイテム魔女帽子が取られてしまう。
「なっ……!?」
『ウィザード』の綺麗な青い髪と、その紅の瞳、そして普段はあまり見えない顔が露わになった。
一瞬、『ウィザード』は眼を見開いてしまう。
その後思わず、『ウィザード』は蒼穹を一直線に睨む。
「返せ」

「ただ壊す。
 貴様にとっては、それが“楽しい”。
 その心を忘れたわけでもないだろう?
 この島には、そんな“楽しい”テーマパークが数え切れない程にある。
 あるいは、今休火山の状態が、また活火山になり噴火する事を恐れてでもいるのかな?
 もしそうだとすれば、その気持ちも分からない事もない。
 だが、狂気でもなく、気に入らないでもなく、壊したものなんてどうでもいいと思えるぐらいに、破壊に興じれる貴様だ。
 ごく当たり前に、破壊してきたであろう貴様だ」
まるで破壊神の破壊衝動を蘇らせるかの如く、“悪魔”は誘いの種をまこうとしていた。
直接ではなく、間接的に破壊活動を肯定するよう暗示している。
周囲が否定的であろうとも『ウィザード』は、それを受け入れる。
そんな様子で『ウィザード』は、破壊神の破壊衝動を焦らず少しずつ煽る。

「ウィザちゃん……?
 もっとマシなあだ名はないのか、蒼穹」
ちなみにカツサンドも卵サンドも、なぜかりんごサンドもある。

蒼穹 > …へぇ。そうなんだ。
そりゃあ意外だ。プリースト、とかいう奴はどうでも良いって言ってたけど。
キミはそうじゃあないわけだ。瞬き一つ、そりゃ、長い目で見りゃそうなる。
けれど、私はこうして普通に人と同じ時間を感じて、人と同じ言葉を喋って、人と同じ姿を持って、人と同じく感情を持ってる。
異能と魔術が交錯する世の中で、私と人って何が違うんだろうね?
私はさぁ、結局善にも悪にもなりきれないんだよ。だから私は悪神でもなく神でもない、邪神で、破壊神なんだ。
何言ってるか分かんないって?分かんなくていーよ。ま、兎も角言いたい事は。
私は自分で壊しておきながら、寂しい寂しいって泣いてるどうしようもない奴って事だよ。

(無気力そうに。それでも悲観はしていない様子で告げる。
友人、なんて言いだしたって、結局は自己満足かもしれない。都合の良い踏み台にしか見ていないかもしれない。
それでも、己は一応は友達思いの部類に入るとは思いたい、思いたかった。
そんな己が友達という物をどういう風に見ているか。…それは分からない。
或いは、そんな事普通は気にしないと言うのが正しいかもしれない。
己に信念なんてものはない。知らない人を守る時もあれば、知ってる人を殺す時もある。
気まぐれでご都合主義。嵐の様な自由さで、飄々として掴めない。そんな在り方だから。)

あっはは、そういう事になるかな。
うん、必要単位を取ればいい。最悪取れなくても、ゆるゆる留年してるだろうさ。
楽しい授業は出てるけどね。

(楽しいか楽しくないか、それが問題だ。)

あっはは、やーなこった。

(跳ね上げるかのように、見れたかどうかさえも不可解な程のスピードで魔女帽子を捻りあげた。
青い髪がふわっと宙を舞ったのが見える。…こうしてみると割と可愛らしいが。
まぁそれはさておき、彼女から没収した魔女帽子を自分の頭に乗せた。
睨まれようが、怖じる様子はやはりない。危機感が薄いとも言えるし、慢心的だとも言える。)

…なぁにがいいたいのさ?キミは。
分かんないよ、そんな事は。…いつかは、そりゃあ、そうかもしれないだろうね。
テーマパークやおもちゃ箱と見ることだってできるけどさ。…何でだろうね。
暫く、お休みしてるんだ。その癖偽善活動に破壊力を使うんだからまぁ笑い話なんだけど。
破壊神が風紀活動なんて、世の中平和になったって、思わないかな。
…兎も角、私は壊すことが"楽しい"。それは事実だし、私はそういう風にできているんだ。
でもま、こうして普通の人間の生活を送るのも、いいんじゃないかな…。

(何かを、暗示的に誘い込むような言葉には、気付いている。
逆説的な言い回しをしながら、そういった非日常へと招き入れようとする悪魔の囁き。
けれど、やはりそれを聞き入れるには、色々と変わっていた。
もし昔の己なら。どうだろう。こんな事を言われなくとも破壊に興じていただろうけれど。
今は、変わった。自分もそう思うし、それこそ旧知の知り合いだってそう言っている。
休火山は、未だに止んだまま。)

じゃあなんて仇名が良いのさー。いっただっきまーす!!
(さっさとカツサンドと卵サンドをかっぱらうあたり抜け目ない。
リンゴサンドは…まぁ、彼女らしいのだろう。)

…リンゴ、好き?

(何となく、聞いてみた。)

『ウィザード』 > 「『プリースト』なら、そう言いそうだ。
 貴様も何人かの英霊と会ってきたのだから分かるだろう。
 当然、英霊にもそれぞれ、様々な考え方がある」
そもそも、英霊はどいつもこいつも慣れ合いというものを好まない。
故に、七英霊は一枚岩ではなく、各々勝手に動く。
『ウィザード』はそれを黙認してきたわけだが、最近は奴等に積極的に指図する事も多くなったものだ。

「ほう。
 貴様と人の違いは、些細なものなのかもしれぬな。
 人格ある神とは、そういうものだからだ。
 どこまでも人間臭く、どこまでも人間に似ている。
 そんな者が自然の擬人だったり、強大な力を持つからこそ神として君臨できる。
 とは言え、貴様は邪神だったな」
“邪神”の前で、“悪魔”が“神”について語ってみせる。
この世界で、人と神の差異など些細なもの、そう大胆に言ってのける。
だが神といっても様々なので、全てが全て当てはまるわけでもない。

「邪神らしい言い方をすれば、“善悪を超越した存在”とも言えるな。
 ただ気紛れに行動するその様は、まさしく動く“災害”。
 破壊衝動で壊した後に、孤独を実感するか。
 それは、本当にどうしようもない」
信念とか、そんなものがない。
蒼穹は、善でも悪でもないのだから。

「それで単位が取れなくなれば、まさしく自業自得だ。
 しかし、貴様なら大丈夫と、思っておいてやろう。
 面白くない授業にも顔を出さないと、単位を落とす事になる。
 精々、気を付けることだな」
そうは言っても、忠告してる気は一切ない。
学ぼうと思えば、どの授業もそれなりに楽しく受けれるものだ。
最も、この学校の授業など『ウィザード』にとっては既に知っている事ばかり。

やーなこったと言われれば、さすがにむっとした表情を少し見せる。
蒼穹は、赤い魔女帽子を頭に乗せた。
さて、どう取り返そうか。
とりあえず、蒼穹の頭にある帽子に手を伸ばして掴もうとする。
「返してもらうぞ」
だがこの『ウィザード』、文字通り魔術師。
魔術を使わない素の身体能力など、たかが知れている。

破壊神の破壊衝動は目覚めぬか。
このまま無理につっこまない方がいいだろう。
別に焦って行う案件でもない。
「そうだな。
 破壊神は、休業中だったな。
 貴様が風紀活動をしている間は、この島も平和なわけだ。
 蒼穹が普通の人間としての生活を送るのもまた良き事だな」
誘惑はあっさりと終了する。
無理に深く踏み込もうとはしない。
この邪神は気紛れだ。
他者の誘いで動く事は、かなり少ないのかもしれない。
邪神を直接誘惑するのは、やめるべきとも考えていい。

「先程貴様が考えた仇名とは然程変わらないが、私は『ウィズ』という名で学校に通っている」
無遠慮にも、邪神はカツサンドや卵サンドを取られてしまった。

「りんごは普通に好きだな。
 程良い甘酸っぱさが舌に染み込む感じが良い。
 さくっとしたその歯ごたえも癖になると言えるだろう」
冷静にりんごを語ってみせる。

蒼穹 > ま、あれは成仏したらしいけど。
(あまり、興味はなさげだ。過ぎたことを気にしすぎるたちでもないらしい。
誰が何といおうと、あれはもう二度と口を開く機会もないのだから。)

邪神っていうのは悪霊とかそういうのに近いけど。
結局何が違うのって言われると分からないよね。
ま、それは兎も角として、人間臭いって言われちゃ仕方ない。
そういう風にできてるんだよ、私。
クトゥルフ神話に出てくるような神々みたいに、グロテスクで人智を越した化け物じゃないんだ。

(彼女が己にはなった言葉は冒涜的だった。"悪魔"は、"悪魔"ゆえに。口を噤まない。
人らしいと仮にも信仰を集め祀られたる邪神に向かっていうのは、酷く冒涜的と言わざるを得ない。
神は色々。だけれど、己は破壊という物に人間の体の皮をかぶせた化け物という表現が適切かもしれない。
或いは、機械という表現が適切かもしれない。
けれど、実際は表現のしようがない、曖昧であり、超常的な何か。)

そういう事、かな?私は善にも悪にもなりきれないけど、善悪を超越しているともいえるかもしれないね。
寂しい奴でしょ?散々自分で壊しといて、まぁ、笑い話の一つに思っておいてくれると良いさ。

(肩を竦めて笑う。自嘲気味だけれど他人事の様に述べる。自然の悍ましやかな力の権化、災害。
己は風の如く自由でつかみどころなく飄々とマイペースで、されど置いて行かれることのない強制的な性質も持ち、
嵐の如く乱暴で、通ったところをすべてぶち壊す破天荒でどうしようもない性質も持ち、
また、凪の如く静かで、この廃神社の様に閑散とした物悲しく寂しい面も持つ。多面的だ。)

あっはは、そりゃあ嬉しいね。
はいはい、キミのご忠言は確かに聞き入れた。
暇があったらまた授業で鉢合わせようじゃん。

(といっても、この適当な様子から、その気はまるでなさそうだが。)

いやだっつってんでしょーが。

(普通の身体能力で、負ける事はなかった。ひょいと右に飛び退けば、
楽々と躱せる。)

…ふぅん?

(やけにあっさり引いて行った?
分かっているのだろう、恐らく、彼女が何を言おうと己が動かないことを。
ただ、言い方は実に胡散臭い。己が風紀員として、普通の人間として生活を送るのも良い事、と。
本当にそう思っているか突き詰めれば、実に怪しい。
…大方、何かしらの策があるのではないだろうかと読むけれど、それはまた、いつか先の話になるかもしれない。)

ふーん。ウィズねぇ。
まぁ、それはいいけど。仇名は考えておこうか。
ああ、それとも名前が良いかい?ウィザードなんて直喩的な名前じゃあ色がないでしょうが。

(早々に口に二つのサンドイッチを放り込んだ。コイツ家事も出来るのか。)

ああ…うん。そうだね。

(頭脳明晰で冷静沈着なリンゴ語りには苦笑いするにとどめた。)


んじゃまぁ、ごちそうさまでしたーと。暫くコキ使ってやるから覚悟しやがれーっ。

(そして取り上げた魔女帽子を被ったまま山を登り始めるのだった。
彼女の頭に帽子が戻ったかどうかは…"災害"の気紛れ次第だろう。)

ご案内:「廃神社」から蒼穹さんが去りました。
『ウィザード』 > 「ああ。そうだな」
『ウィザード』の方も、短くそう返した。
仲間意識皆無な七英霊。
『プリースト』が成仏した事についても、やはり気にしていない様子。

「無理に違いを見つける事もあるまい。
 ただ貴様は、邪神としてこの島に君臨している。
 それだけが事実だ」
神、邪神への冒涜はいくらでもしてきた。
なぜなら、“悪魔”なのだから。
この『ウィザード』の体では成し得た事はないが、神を殺した事すらある。
人の皮を被った化け物は、結局のところ人を模る。
つまり、極論を言えば化け物染みた力を持つ人の形だ。
異能や魔術が入り乱れたこの世界にてそれは、ちょっと超越した生物に過ぎない。
故に、神も人も、『ウィザード』にとっては差異などあまりない。
力があるかないか、その違いはあるがな。

「ああ。寂しい奴だ。
 いっそ、どちらかに傾いてふっきれる事が出来れば、まだ楽だったかもしれないな」
それはつまり、“善”になり欲ばかりの破壊活動はやめ、大切なものを守るなどのために壊す。
あるいは、“悪”になり、自分の思うがままに破壊しつくし、壊れたものを一切気にしない孤高の存在になる。
『ウィザード』達七英霊はもちろん、後者だ。
壊したものにわざわざ未練など残さぬ冷酷さがある。
いくら同胞たる七英霊が散ろうが、心情的には『ウィザード』は痛くも痒くもない。

「貴様と授業で鉢合わせる事を楽しみにしておこう」
蒼穹のこの適当な感じから見て、『ウィザード』の忠言は聞く耳もたずと言ったところか。

手は伸ばしたものの、帽子にはとどかず。
蒼穹にひょいっと避けられてしまう。
だが、こんなくだらない事で魔術を使っても仕方がない。
「避けるなっ」

蒼穹の『ふぅん?』という言葉から、やはりと言うべきだろう。
彼女は納得していないところがある。
「仇名など必要なのか、蒼穹よ。
 私は『ウィザード』、あるいは『ウィズ』。
 それでよかろう」
まあ、他に別の名前が二種類あるが、ここで明かす事もない。

何気に家事もできる『ウィザード』である。
「ふん。貴様のせいで、私の昼ごはんが減ったな」
取り上げられた魔女帽子を見つめながら、蒼穹の後をついていく。
本当に不本意だが、今日一日仕方がない。
一日下僕となってしまったのだからな。

ご案内:「廃神社」から『ウィザード』さんが去りました。