2016/05/12 のログ
ご案内:「廃神社」に伊都波 悠薇さんが現れました。
伊都波 悠薇 > 下校時間。だれもいないこの神社は、わりと悠薇はよく使っていた。
寂しさを紛らわせるため、というか。勝手に一人になるこの空間がなんだか急に、欲しくなったのだ。
考える暇も、あまりなかったし。それに、身体を動かしてなかったというのもある。

するりと、制服の上着を脱ぐ。誰も居ないと確信しての行為。
サラシ一枚。この状態が、悠薇にとっては一番”空気”を感じ取れる。

――風を、拳が切る。
出して、引く。簡単な動作。それの組み合わせ
基礎の、反復だ

伊都波 悠薇 > スカートは、この際気にしない。むしろ、動きやすいからそのままだ。

才能がない。それは父にも、母にも。断言された。
武術を習う。姉に、追従するその様子を見て、両親が優しく、教えてくれた。
厳しさもあるが、やはり娘を思ってのことと思うとやさしいという感想しか出てこない。

伸びきった。この前の体力測定。
もう、これ以上の成長は望めないというのはわかってる。
分かっているのだ。それが目の前に突き出されたからあの時は動揺してしまったが。

(――何を今更、だよね)

絶望したのは、姉への申し訳無さが強い。
だって姉は、自分を疑ってくれない。自分を見捨ててくれない。
自分を逃がしてくれない。

(――なのに、逃げようとした。姉を、言い訳にしようとしたんだ)

それだけは許されない。姉に追いつけないから
そんな言い訳を使って、投げ出すなんて冗談じゃない。
最初からわかっていたことだ、決めていたことだ。

置いて行かれて、たまるものか

教えられた基本の型を復習する。何度も何度も。
ただひたすらに。姉はもっとはるか先にいることを識っていながら
今できる場所で、思う存分足掻いてやる。

―――綺麗な残心が決まる。
……置いて行かないで。

しぃんっとした中で、そんな声がどこかで聞こえた気がした。

「……っやっ!」

集中していて悠薇には聞こえない”誰かの声が”

伊都波 悠薇 > 歯を食いしばれ。自分はないない尽くしの妹だ。
”妹”というものですら失くしてしまうつもりか。
それだけは、それだけは死んでも嫌だ。

「……よし」

こっち側の整理は、とりあえず着いた。
誰かと一緒よりも、一人のほうが強い気がするのは気のせいか。

―― 一人に慣れすぎちゃったかな

自嘲気味に笑えば。

『付き合ってください!』

思い出してしまった。

「ぁぁぁ、ぁ、ずれ。ちが、まちがえた!!?」

型を間違えて、一個飛ばしてしまった。
平常心が乱れる。誰にいうわけでもなく

「ちが! ちがうんですよっ!! そういう意味じゃなくてですねっ」

慌てて言い訳をしつつ、型が早回して繰り出される。

―― 怒られた気分だ。すごく、恥ずかしい。

いい少年だとおもう。優しく気遣いができて、話もできるようになった。
いろいろ教えてくれて、興味を持ってくれて。
姉が言っていた、一緒にいて楽しいはこういうことなんだろかと。
ま、まぁ、男友達なんて初めてだから、よくわかんないのだけれど

伊都波 悠薇 > そういえば、今日は遠巻きに結構な視線を感じた気がする。
でもすぐに消えたから、深くはかんがえなかったが。
そして姉も、何か変――


………………脳にノイズが走った。


いや、姉は最近なにやら、委員会のほうが忙しいらしく帰りもオソイ。
なにも無ければいいななんて、考えて。姉に限ってないだろうと安堵する。

「ふぅ……」

型が、終わる。汗が滴る。
空を仰ぎ、肢体から汗を滴らせながら。

「……おいかけても、とおいよ、お姉ちゃん」

”汗”が滴る。
どうしようもない、力の無さに。
いくら、取り繕っても。姉のような強さは、妹にはなかった……

ご案内:「廃神社」から伊都波 悠薇さんが去りました。