2016/06/23 のログ
ご案内:「青垣山」に山吹冠木さんが現れました。
山吹冠木 > 青垣山。
常世島の中でも未開拓遺跡群に程近く、異界化が進んでいるとも、神話上の存在が住まうとも噂される不可思議な地域のひとつ。

しかし、そんな場所でも生活をしている生徒は少なからずおり……
人が生活しているならば、その地域に危険が無いかを調べる必要が出てくるわけで。

「……ぜー……はー……」

そんなわけで、人の手がほとんど入っていない山の中で、
何時もの格好に幾らかの装備を手にした山吹がゆっくりと歩を進めていた

ご案内:「青垣山」にRK-4610さんが現れました。
ご案内:「青垣山」からRK-4610さんが去りました。
ご案内:「青垣山」にフルート(RK-4610)さんが現れました。
フルート(RK-4610) > その後をぴたりと寄り添ってメイド姿の少女があるく

「ご主人様、
 さきほどから呼吸が乱れています
 休憩を取っては如何でしょう?」

大きな荷物を担いでいるにもかかわらず息を荒げる様子もない
それどころか汗すらかいていなかった

そんな様子で山に分け入る冠木をのぞき込む

山吹冠木 > 「……そう、だな。ちょっと、休もうか」

多少は山に慣れているつもりであったが……まだまだ、自分は猟師としては未熟であるらしい。
青息吐息のこの様では、フルートの言うように休むしかないだろう……
大荷物をもっている少女がケロリとしているのに対して、
多少は軽装の自分がこの有様というのは、些か情けない気持ちにはなるが。悔しくなんてない。

見つめてくる少女の赤い瞳に頷き、へたり込む様にしてその場に腰を下ろした。

「……そういえば、その荷物って、何が入ってるんだ?」

ふと、そんな疑問が零れた。

フルート(RK-4610) >  
「それが良いかと思います」

そう言うと適当な木の根元にリュックを下ろす

「少々お待ちください」

準備はてきぱきと
リュックの中から携帯コンロに携帯用のマグそれからペットボトルにおかきが次から次と出てくる
そのまま名峰めぐりにでもいきそうな勢いである

それらを使ってことことと水を湧かし出す

山吹冠木 > 「…………」

リュックの中から次々と出てくる品々に声が出ない。
プロの登山家が背中の大きなリュックに積めるかの様な物が
次々と出てくるが……一体、あの大きさの中にどう入れていたのか。

魔法の鞄――というフレーズが脳裏をよぎる。
最初に商店街で見かけてから幾らか経つが……
部屋の中でのあの不思議な自己紹介以降、色々と驚かされてばかりである。

――そっくりな姉妹がいること、メイドさんであること。
料理が上手であることなどは分かるが……それ以外は、分からない部分がだらけだ。
夜に布団を勧めたら、まさかその上で正座しているとは思わなかった。あれでちゃんと眠れているのだろうか……
こっそり観察している限りでは、寝ているように見えたが……

「……それ、重くなかったか?」

水を沸かしているその姿に、息を整えつつそう問いかけた

フルート(RK-4610) >  
「およそ20kg弱です
 平均的な携行量と比べれば重い部類に入るかと思われます」

リュックから小さな折りたたみ椅子を出し開いて設置

「どうぞ」

一人用マグに張った水が沸くとそのうえにおかきをポンとおいて差し出す

「内臓に負担をかけないよう軽くふやかしながら食べると良いかと思います」

食べ過ぎ飲み過ぎも良くない
水を湧かせばてきぱきと片付けをはじめる

山に行くと知った時点でサバイバルの技能はもちろんダウンロード済み
この装備ならば遭難しても余裕で数週間生存することが可能だろう

もっともこの程度のやまでそこまでの装備は必要ないのだろうが

心配性なメイドであった

山吹冠木 > 「ありがと……フルートって、力あるんだな」

礼を言いつつ、折りたたみ椅子の上に腰を下ろして、
言われた通りにお湯の入ったマグにおかきを入れてふやかす。
確かに、結構消耗しているが……
今の状態で固いものを口にするのは少々辛い。
そう考えると、暖かい飲み物と柔らかいおかきはありがたかった。

やわらかくなったおかきを口にしながらお湯を呑みつつ、
この後の予定についてゆっくりと考える。

「……ある程度調べ終わったから、
一度川を探してそこを伝って山を下りようかと思う。
 ……フルートは疲れてないか?」

フルートの分の椅子とか、使わなくて大丈夫か? 
と問いつつ、周囲の様子を探る。

この時期になると若い竹や野生の果実が大きく生育し……
それを求めて、小さな鳥や獣、そして猪や熊などが山に集まる場合が多く見られる。
特に人の手が入っていない山の場合はこれらが放置され、それが原因となって獣の住処となる場合も少なくない。

流石に全域とまではいかないが、歩ける範囲で調べてみたが……
そういうものは見当たらなかったので、一先ずは大丈夫だろう、という判断であった。

ご案内:「青垣山」から山吹冠木さんが去りました。
ご案内:「青垣山」に山吹 冠木さんが現れました。
フルート(RK-4610) >  
「はい もっと重いものでも大丈夫です」

むん とよくわからないポーズを取る
テレビで何か見たのだろうか
そんなこんなで彼女が座ろうとする様子は見えない
まぁロングスカートなのでたくし上げでもしないと地面に擦れてしまうのであるが

つかれてないかと問いかければ

「はい本日は天気も良いので問題ありません」

とこたえるだろう
それよりも気がかりがある
 
「過去のこの付近の気象データを検索します
 少々お待ちください

 ……」

調べたところここ最近雨が降った形跡はないようだ
これから雨が降る兆候もない

川を伝って歩くのは予想よりも難しいことであるが猟師の卵たる冠木ならば大丈夫だろう
いざとなれば自分もいる

そう結論づけ

「はい。
 問題ないかと思います」

そう答えた

山吹 冠木 > 「フルートは頼りになるな。俺も手伝えるようにしないとだ」

そのポーズに小さく笑いつつ、どっこいしょーと言いながら椅子から腰を上げる。
故郷で爺ちゃんおじちゃんに囲まれていたせいか、すっかり移ってしまった。
苦笑しながら、椅子を畳んでカップと一緒にフルートに返す。

少しくらい荷物を持ちたいところだが……
先程のことを考えれば、寧ろ心配をかけるだけだろう。
無理はしないほうがいい。

「ん。ありがとなフルート。大丈夫そうなら、そろそろ行こうか」

何時もの様子に笑みを向け、僅かな水音を頼りに鉈で草を狩り分けながら……それでも、汚れたり引っ掛かったりは避けられないが……進んでいく。
通常、人手がはいっていない山から降りる場合は、
川にそって降りていくのが良いとされる。
場合や人によって見解は異なるが……この場合はそれが良いだろうと考えたのであった。

ご案内:「青垣山」から山吹 冠木さんが去りました。
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フルート(RK-4610) > 「お役に立てて光栄です」

ぺこりと一礼

そのまま渡されたコップと椅子をかちゃかちゃと片付けリュックを背負い直す

例え滝が来ようと絶壁だろうとザイルから懸垂下降の用意まで万全である
めいどさんに抜かりはないのであった

山吹 冠木 > 「真面目だな……と、見えた。川だ」

その様子に苦笑しつつ足を進めると、
開けた視界の先に川の流れが飛び込んできた。
渓流としては緩やかな水量と勢いであり、
また川辺もぬかるんだ泥や丸い小石が主であり、
歩くにも問題は無いようであった。

しかしながら、川を辿った先で傾斜が急な場所につきあたり……
ロープや道具なしで進むのは、些か危険であるように見えた。

「手持ちのロープで足りればいいが……
フルートは、ロープで降りるのはやったことあるか?」

フルート(RK-4610) >  
「滝ですか
 問題ありません」

リュックからするするとザイルをとりだす
長さは50mはあろうか

それを丈夫そうな木にまわしエイト環をかける
てきぱきと冠木に簡易ハーネスをつけカラビナをつける
あっというまに懸垂下降の準備が終わるのであった

別に垂直な崖を降りるわけではないのだが……
心配性なメイドであった

山吹 冠木 > あっという間の早業に、声を上げる暇もなかった。
山吹自身もラペリングをした経験はあるが……
果たして、ここまで早く正確につけられるかどうか。
……メイドさんに用意されて多少ドギマギしたのは置いておいて。

「……あ、ありがとう。
って、俺はいいけどフルートはどうするんだ?」

ここまで準備して貰ったからには、
先に降りろと言うことなのだろうが……
準備してくれた本人はどうするのだろうか。

まさか、メイド服のまま降りるというのは……
いや、出来る気がしてしまうが、まさか……?

ご案内:「青垣山」に山吹 冠木さんが現れました。
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フルート(RK-4610) >  
「問題ありません
 お先にお降りください」

とはいいつつも自分に何かつける様子もない
スカートなのでハーネスがつけられないと言うのもあるがはたしてどうするのであろうか

山吹 冠木 > 「……わかった。じゃあ、先に降りて待ってるからな」

些か不安はあるが、しかしはっきりと言いきった以上、
何か考えがあるのだろう。
フルートがそう言った部分でできないことを誤魔化したことはないし……信じて、先に降りるにした。

頑丈な手袋に指を通し、体を斜面から降ろしていく。
恐怖を感じて身をすくませず、しかし慎重に丁寧に。
消防士が行う跳ねるような真似は決してせず、着実に下へとむかう。

「……っと。よし、こっちは降りたぞー!」

無事に降りられたことを、声をあげてフルートに伝える。
幾らか泥で汚れたり濡れたりはしたが、この程度は良くあることだ。

フルート(RK-4610) > 崖の上からひょこっとかおをだす
冠木がロープの下から離れたのを確認すればパタパタと小さく手を振るだろう

それからロープを輪にしてカラビナだけかけるとそれを使って減速しながら下降する

握力だとかバランサーだとかめかならではである
スキルとか言う以前の問題だが彼女的には問題ないのだろう
初見ではぎょっとすること間違いなしである
それとは別にスカートが大きくはためきなにやら純白な布が見えたり見えなかったりするだろう

どちらに目が釘付けになったかは神のみぞ―――いや みた本人のみぞ知るところである

ほどなくしてズシャッという大きめな音と共に地面に降り立つ

「お待たせいたしました」

そう言いながらもロープをするすると回収していくだろう

山吹 冠木 > 「…………お、おつかれさま」

あっけに取られた様子で山吹は応える。
流石にあんな方法で降りてくるとは思わなかったらしく、
まるで漫画のような予想外の光景に目が点になっている。

丁寧にロープを回収する姿を見ていたが、
降下の際、はためいたメイド服から
覗き見えてしまった脚線やある布の白さが脳裏をよぎり、
思わず僅かに視線をそらしてしまう。

「……そう、言えば、さっきの検索とか、今の降りるのとか……
何か異能でも使ったのか?」

何かを誤魔化すように、そんなことを尋ねた。
機械じみた何かが関わっている……そこまでは分かっているが、
正確に何がどうかまではまだ知らないがゆえの疑問であった。

フルート(RK-4610) >  
「いえいえ。とんでもございません」

クルクルとロープを∞字にしてまとめリュックにしまう

「私に異能にカテゴライズされる能力はございません
 ですがネットワークに繋がっておりますので必要な技能や情報があれば取得可能です」

一般的な技能の他、少し特殊な技術、情報の処理手順や補正、知識まで
まだまだ偏りはあるがそのデータ量は計り知れない
個でありながら群体
技術や情報ををすべてのものが共有しているというのが彼女たちの強みである

ただ何かをごまかそうとしているようすに違和感を感じつつも
その正体には気付けない

情緒や機微に関してはまだまだな様子であった

山吹 冠木 > ロープを手際よくリュックに仕舞う様子を見ながら、
自分もハーネスを外してフルートに返しつつ、
返ってきた答えの内容を考える。

異能ではなく、ネットワークに繋がっている。
機械の腕やサイボーグなんてことも思ったが……
あの時、そっくりな姉妹がいたことを考えると。

「もしかして、フルートってロボットなのか?」

何がどう変わるというわけでもないが……
そうならば、すとんと納得がいく部分が幾つかあった。

フルート(RK-4610) >  
「はい。
 カテゴリーで言えばロボット。
 もっと詳しく言うのならばガイノイドと言うことになります」

隠すでもなくそう答える
しゃべる間も作業の手は止まらない

山吹 冠木 > 「なるほどなあ。フルートはロボットでメイドさんだったのか」
ガイノイドという言葉の意味は分からないが……
抱いていた疑問がおおよそ分かってすっきりした。
そんな調子で応えつつ、フルートが作業している間に周囲を確認する。
作業を手伝うには……あの手際のよさの前では、できることは中々ない。

「まあでも、無理はさせないようにしないとな。
世話ばかりかけてるけど」

このまま川沿いをいけばいずれは山を抜けるだろう……
あと何度ラペリングが必要になるかは分からないが

フルート(RK-4610) >  
「いいえ
 無理ではございません
 ご主人様をお世話をするのが今の私の存在意義です

 存分に甘えてくださいませ」

本来、移動や体調管理など業務に直接関係ない部分の補助―――
冠木がやるべき業務以外をサポートするのが今回の役目であり実際にそのように動いてきた

のではあるがこの言い方ではただの甘やかしである

笑顔で答えるその顔にはもはや母性が溢れているのであった

山吹 冠木 > 「ありがとな。まあ、流石に子どもじゃないからそこま」

その言葉に小さく笑いつつ……
気のせいか、笑顔が違う感じに見えるなと思いながら足を踏み出して。

視線を外した直後だからか、踏み出した足が綺麗にぬかるみに滑り。

「お?」

そのまま、浅いとはいえ川に盛大に転げ落ちることになった。

子どもじゃないから大丈夫と言い切る前だったのは幸か不幸か

フルート(RK-4610) >  
「大丈夫ですか?」

リュックからタオルを取り出し
パチャパチャと近づくと助け起こそうと手を伸ばす

と冠木よりもはるかに重いメイドさんはぬっぽりとぬかるみにはまり
さりとて冠木に覆い被さることも出来ず

変に体を捻った結果、冠木の横で見事なブリッジをきめることとなった

当然リュックにスカートは沢に浸かっている
それはもうぐっしょりと

脚も足首まで完全に埋まってしまっていた

「申し訳ありません。おたすけください」

山吹 冠木 > 「……あ、ああ、こっちはまあ、大丈夫……だけど」

頭からぐっしょりと濡れ、ぽたぽたと滴が垂れているが……
自分の状況よりも、目の前で起きてしまった出来事を何とかすべきだろう。
メイド服のスカートとリュックについては……後から洗って乾かすしかない。
とにかく、ブリッジしてしまっているフルートを起こすべく、その上体が起きやすいように、抱え起こすように力を入れる。
リュックを下ろすことができるなら、先に下ろしたいが……まずはバランスを取らないといけないだろう。

「帰ったら、洗濯と風呂だな……」

ふん、と力を込めて、体を起こそうとする

フルート(RK-4610) > しかし持ち上げようにもビクともしない

なにせ体重100kg超にさらに荷物である
持ち上がろうはずもない

そのままバランスを崩すとコロンところがり冠木の上にのしかかることになる
あわれ冠木君はまた沢の中へ
泥まみれで濡れ鼠

洗濯と風呂が必要なのは間違いあるまい
もちろん二人ともである

「……もうしわけありません」

なおリュックは防水機能付きプロランクである
中身は安心して良いだろう

山吹 冠木 > 「むぐっ!?」
見た目は自分よりも華奢だから軽いかと思っていたが、
全くそんなことはなかった。
寧ろびくともしない……などと思っていたところに、
バランスを崩したフルートにのし掛かられる。

当然、山吹の力では支えられるわけもない。
そのままのしかかられるままに再び川に沈むことになり、
冷たいやら重いやら柔らかいやらを強制的に堪能することになる。

半ば混乱しかかるのを物理的に押さえつけられることで……
何に触れたかは深く考えないようにしつつ……
何とか平静を取り戻す。

「い、や……気にしなくていい……から。
とりあえず、川から上がろうか……」

同じく濡れたフルートのメイド服姿は、些か刺激が強い。
出来る限り意識しないようにしつつ……

「っくし!」

ひとまずはタオルで拭くなりして乾かしてから、
はやく洗濯と風呂をなんとかしなければならない。
そう考えるのであった

フルート(RK-4610) > 「はい……」

もうほとんど座り込むようにして脚を引き抜く
スカートをたくし上げて絞れば水がばしゃりとしたたり落ちる

この高機能メイド服にもある程度の撥水性はあろうが
さすがに泥汚れがつかないなんてこともない
服の中に入った水で服がぴたりと肌に張り付き微妙に扇情的である

リュックの中に綺麗なタオルはまだあるが二人ともとなるととうてい足りるものではないだろう


ぴぴーん


メイドさんがなにやら受信したようである

「位置情報によりますと市街地はもうすぐそこです
 このままくだりきってしまいましょう」

タオルを出すだけだすと冠木をわしゃわしゃとふく

火をたき直して服を乾かすというのも時間がかかる
それならば冠木だけでもタオルである程度水気を取り後
さっさと降りきってしまうべきだろう

なにせ自分は風邪もひかない体である

山吹 冠木 > 「むぐぐ」

タオルに拭かれるままになりつつも、
フルートの言葉に何とか頷く。

「分かっ……た。じゃあ、急いで……」
メイドさん情報連絡の優秀さに驚きつつ、
思わずフルートの方をみて……その格好を改めて認識して目をそらす。
そして自分の着ていた作務衣の上を脱ぐとよく絞り、
外套の代わりに使うように差し出した。

「俺は拭いてもらったおかげで何とかなったら、
ひとまずは代わりに使ってくれ」
流石に、濡れたメイドさんをそのまま連れていくなんて、
なんと言われるかわかったものではない。
自分も上がシャツだけにはなるが、まあ問題はないだろう。

そんなこんなで、市街を目指して急ぐのだった

フルート(RK-4610) > 作務衣を羽織り山道を下る

程なくすれば市街地に出るだろう

銭湯などによるよりは直接、寮を目指した方が早いであろうか

雨も降っていないのに街をかけるびしょ濡れ二人が道中目撃されたとかいないとか―――

ご案内:「青垣山」から山吹 冠木さんが去りました。
ご案内:「青垣山」からフルート(RK-4610)さんが去りました。
ご案内:「廃神社」に鞍吹 朔さんが現れました。
鞍吹 朔 > 青垣山、廃神社。
かつては立派な神社ではあったものの、打ち捨てられて久しくもはや過去の栄華の欠片すらない。
そんな、誰も見向きもしないような場所に、恐ろしいほど似つかわしくない格好の朔が避難してきていた。

「……はぁ。雨風を凌げるのはありがたいけど……いつまでもここに居いるわけにもいかないわよね。」

常世公園の遊具の中では、人に見つかる可能性が高すぎる。
そのため、おそらく人に見つかる可能性が低いであろう廃神社に居を移すことにしたのだった。

とはいえ、今の朔は格好が格好。買い物にもいけないし、落第街もうろつけない。
胸と尻が邪魔で戦闘力はガタ落ち、しかも先日の戦闘の影響か目の調子は普段より更に悪い。
更に。

「……。まあ、拡散されてるわよね。
 暇人ばっかり。」

こっそり公園にあったプラグで充電しておいたスマホを立ち上げ、学園内の掲示板を見る。
そこには、手錠をかけられて歓楽街を這いずる朔を写した写真があった。
どうやら、既に拡散されて物珍しさに人が朔を探しまわっている様子。
書き込みを見る限り、公園から青垣山へ来たのもバレているようだ。SNSとは恐ろしいものである。

ご案内:「廃神社」に雨宮 雫さんが現れました。
雨宮 雫 > ザク、ザク、と土を踏む音と共に聞こえる足音。

闇に紛れて全身が把握し辛いせいか、真っ白い長い髪の毛だけが浮き上がって見えるようだった。

片手に何かぼんやりと光る板を持ちながら、ゆっくりと歩き、
立ち止まっては、を繰り返しながら境内に入ってきた。

「どーこかなーかなー?
 どーこっかなー、かなー?」

妙の楽しそうな声と共に、社の方へと向かっていく。

「こーっこに、いるのーかな、かなー?」

鞍吹 朔 > 「……!」

土を踏みしめる音が聞こえれば、急いで廃神社の陰へ隠れる。
蜘蛛の巣が貼っていて気持ち悪かったが、背に腹は代えられない。

「……この声は……」

そう、この声はあの時の。よく死体処理を任せている、保健委員の声である。
なぜこんなところに来たのだろう。誰かを探しているのだろうか。
まさか自分を探しに?……などということがあるだろうか。

「……………。」

息を殺す。
誰にしろなんにしろ、この状況を見られる訳にはいかない。確実にややこしいことになる。

雨宮 雫 > 苔とヒビの入った賽銭箱を前にして、足を止めるとぐるっと周りを見回す。

さて、右手の光る板を、まぁスマホなんだが、の画面を見る。

SNSに流れてきた写真の被写体を見て、更にそれがこの山に入ったらしいと聞いて、ここまで自分で来てみたのだが。


さて、これは本当に目当ての"知っている子"だろうか?

何人か似たような目的で山に入ったのも見かけたが……ここにはそれらはまだ、来ていないらしい。

「朔ちゃーん、朔ちゃん居ませんかー   だね、だね?
 居たらお返事、してくださいなー……かな、かな?

 それとも、喋れないのかな、かなー?」

からからと笑いながら、少し大きな声を上げて、また周りを見回してみる。

暗く、よく見えはしないがのだけど、も。

鞍吹 朔 > 「…………。」

成程、既に伝わっていたか。
それはそうだ、大きく取り沙汰されては居ないものの、「裏」の事情に詳しい者なら情報をすでに持っていてもおかしくはない。

しかし、そうなるとここからどうするか。あくまで雨宮雫はビジネスパートナー。
そして、自分は今や戦えないただの兎である。
……この二者の間に、ビジネスパートナーとしての協定は成り立つだろうか?
軽く睡眠薬なりなんなりで眠らされて売り飛ばされる可能性もある。ありえないとは言い切れない。

「………………!」

ばきっ、と音がした。
足元にあった廃材を踏み割ってしまったようだ。
普段ならこのような音を立てる失態などしないのだが……胸と尻に付いた肉の影響だろう。

雨宮 雫 > ぐるん!と音を聞いて首がそちらに回った。
雨宮 雫 > いや、全身でそちらを振り向いたのだが。

こんなところで、このタイミングで、音が鳴るだなんて。

偶然の家鳴り?

それはない。
だから、少なくとも隠れている何かが居るのだろう。

目当ての人物かどうかは分からないが。

「かくれんぼかな、かな?
 うん、ボク見つけるのってすごい得意だからね?

 ボクの目はすっごい、見えるから、ね、ケヒヒッ」

石畳を踏む音を隠そうともせず、真っ直ぐそちらへと足を進める。

鞍吹 朔 > 「…………。」

ああ、これはダメだ。隠れていられない。
心の底からこの服装とかの魔王を呪いながら、両手を上げて社の陰から出てきた。

豊満すぎるほどに豊満な胸と、安産型に作り変えられた尻、そしてそれに追従するようにむっちりと膨れた腿。
それらがぴっちりと黒いバニースーツで覆われ、頭にはウサギの耳、腰にはウサギの尻尾。

……なのだが、唯一その中でシリアスを保っているのが、足と手に付けられた枷のような鉄のパーツである。
しかもそれに繋がった鎖は引きちぎられている。

「……何の御用でしょうか。出歯亀なら帰って頂きたいのですが。」

雨宮 雫 > 「………………わぁ。」

元の姿はドコに行ったのか、淫靡さの塊のようになった姿の現物を見て、とりあえず両手を軽く挙げて驚いてみた。

写真で見たとおりで、かつ、本当に知っている相手だったわけだ。
上から下までざっと眺め回して、そういう趣味ってわけでもないんだろうというのも分かる。
本人も不服そうだし。

しかし、何の用かといわれれば首を傾げざるを得ない。

「え…………分からないのかな、かな?」

鞍吹 朔 > 「その反応ものすごく癪に障るんですが。刺して良いでしょうか?」

ナイフに手をかける。目がだいぶマジだった。いくらなんでもジョークだが。

写真で見た通り、そして見ての通り……ぶっちゃけ、この格好で外に好き好んで出歩くのは擁護できないレベルだ。
故にそうでないことはよくわかる。よく見れば、靴もハイヒールだ。
いくらなんでもこの山道をハイヒールで登るというのは不自然極まりない。

呪術に見識があるなら、それは相当に強力な呪術で体に縛り付けられた物だと知るだろう。

「分かりません。処分ですか?捕獲して内蔵でも摘出しますか?皮膚を剥がし取る?血液を抜く?
 それとも娼館にでも売り飛ばすのでしょうか。新薬のモルモットという線もありますね。
 なんにせよ、戦えなくなった私に用事はないはずですが。」

発想がいちいち物騒である。

雨宮 雫 > 「刺してもいいけど、痛いから困るかな、かな。
 うーん、そうだねー……」

眉間でも貫通されない限り、大丈夫かもしれないが……怪我するのはいいが、痛いのは困る。
後に響くから。

眉間に皺を寄せて、顎に手をやって、うーん、と悩み顔。

何かこう、強烈に呪われているか、その類に縛られているようにも見える、感じるが……

でなければ、こんな格好でずっと居たりはしないか。

「内臓は間に合ってるし。
 皮は今は足りてるし。
 血液はちょっと前に絞ったばっかりだから、不足無いし。

 娼館からオーダーはきてないし。
 薬の実験なら、マルタは確保してあるし。

 だから、どれもハズレかな、かな。」

一つ一つ、丁寧に否をつけていく。

「ほんとに分からないのだね、だね。
 朔ちゃんはクイズが苦手かな、かな。

 そんなの、困ってる知り合いが居るからに決まってるかな、かな。」

鞍吹 朔 > 「痛くないように刺せばいいんですね。」

声色がすごくマジ。

人体薬学に精通している雫なら見れば分かるかもしれないが、よく見れば顔色が悪い。
髪もボサボサ、化粧している(させられている?)ものの、肌の状態もあまり良くないようだ。
……どうやら、家にも帰れず、結果風呂にも入れず、食事もできていないように見える。
その上ここ最近の夜間気温の低下を外で直接受け、体調を崩しているようだ。

「……………。」

一つ一つ採点されて、結果は0点。その結果に眉を顰めながら、首を傾げて考えこむ。
しかしその理由はすぐに提示された。


「は?」

第一声だった。
あまりにも目の前の少年のイメージと発言内容が咬み合わない。困ってる知り合いがいるから?
この少年はそんな情で動くタイプの人間だったのか?すごく違和感がある。

「なるほど、恩を売りたいんですね」

そういうことになった。

雨宮 雫 > 「一回だけならまぁ……でも、その体だと刺すのも大変なんじゃないかな、かな。
 朔ちゃん、お体大丈夫じゃないよね、よね。

 睡眠不足、疲労、微熱、倦怠感、空腹、喉の渇き、ドレが当て嵌まるかな、かな?」

こちとら、免許はないが仙術まで使う医者である。

異能で観るまでもない、体調不良の見本、下手すると肺炎その他とかにもなり得る具合に診える。

とりあえず、困り顔のまま近づいていく。

「うーん、ボクは別に冷酷無常の鬼とかじゃないからね?

 むしろ優しい系の人間……
 いや人間じゃないけど、そういう感じが売りの子だからね?

 だからーコンビニのおにぎりとお茶、いかが?」

何時の間にか片手に、コンビニの袋をぶら下げていた。

鞍吹 朔 > 「………………。全部ですね。」

あいにく、全て当てはまって見事にビンゴが完成した。喉も痛いし寒気もする。
それをおして無理やり青垣山まで登ってきたのだ、疲労も相当なもの。ハイヒール登山までしたなら尚更だろう。

「………。」

胡散臭さの見本を見たような顔をしている。……よく見ると、左目が少しだけ白く変色している気がする。
しっかり注視しないとわからないレベルだろうが。

「………。対価が必要ない、とは言わないんですね。
 …貰えるなら頂きます。」

ぐー、とお腹が少し鳴った。

雨宮 雫 > 「代金とか考えもしなかったから、勿論要らないかな、かな。
 知り合いを助けるのに、代金とかおかしいでしょう、ケヒヒッ」

どうぞ、と にっこり と笑顔の見本のように笑ってコンビニの袋を差し出した。

中身はおにぎり幾つか、ペットボトルのお茶である。

次いで、近くで じぃ と朔の顔を見る。

これは、明日には倒れてたんじゃないだろうか?
かなり深刻なように見受けられる。

「朔ちゃん、それ食べたら薬も飲もうかな?
 目薬も無くしちゃったかな?

 足も、走れないんじゃないかな、かな?」

鞍吹 朔 > 「………。そう。ありがとうございます。」

袋を受け取って、おにぎりを食べ始める。胃がびっくりしないようにゆっくりと良く噛んで。
そしてお茶を飲み、喉を潤す。本当に喉が渇いている時は、甘いモノよりお茶のほうがありがたい。

「……。ええ。目薬はちょうど部屋に置いてきていたので。
 眼の調子も、何だか普段より悪いですし。……足も、ええ。挫きました、何回か。
 歩けない程ではなかったので引きずって登りましたが。」

悍ましいほどの鋼鉄メンタルである。

雨宮 雫 > 「じゃあ、食べ終わったら薬も飲んでかな、かな。
 目薬はちょっと一回帰って作らないと駄目かな、かな。

 普通に病院に投げ込んで入院させたいけど……ここまで逃げてきたってことは、それは良くないのだよね?

 そんな体になった原因も気になるし。」

食べているのを見ながら、袖から小さい投機の小瓶と、粉薬を幾つか取り出して置く。
栄養剤、抗生物質、解熱剤はちょっと微妙なので出せないが……

「これ以上歩くのもヨロシクなさそうだーけーど……
 朔ちゃん、隠れ家とかないのかな、かな。」

無さそう、という気はしているが、念のため、確認。

鞍吹 朔 > 「この服、脱げないので病院に行けないんです。
 いくらなんでもこの服装のまま入院するわけにもいかないですし。それに、別に入院するほどでは……」

自分の体についてはとても無頓着らしい。
なぜその姿になったのか、と言われれば顔をギュッとしかめる。

「……人が襲われてました。助けに行ったら、犯人に返り討ちにあって。
 ……それで。」

悔しそうに、あるいは泣きそうにそんなことを呟く。
もしくは、殺意が燃えているのか、どれなのか。

「……あったらこんな所を転々としてません。学校にもいけないし、マンションの鍵も無くしましたし。」

雨宮 雫 > 「また強烈に呪われてるもんなのだね、だね。
 悪霊か悪魔か、ロクでもないものに縁を作ってしまったかな、かな。

 あと、朔ちゃんそのままだと2-3日位で割りと深刻にマズい具合になるから、放っておくと。

 勿論、ボクは放っておかないけど。」

人助けなんかするから、とは勿論言わないが。
どんなタチ悪いモノに引っかかったらこうなるのか、哀れなり。

溜息をついて、スマホをカチカチと弄り始める。

「じゃあ、ボクが手配しようかな、かな。
 落第街か歓楽街で部屋をとりあえず。後は、薬とご飯がいるかな、かな。」

鞍吹 朔 > 「……まあ、多分そういう類のものでしょうね。碌な物じゃないことだけは確かです。
 人には害しか為さない。……さっさと処分しないと。」

目に殺意を溢れさせて、そう呟く。ドス黒く染まっていたはずの左目に、ちらりと白い光が覗く。

「二、三日……
 ……じゃあまだ1日は大丈夫ですね。」

そういうことじゃない。

「……落第街と歓楽街は勘弁して下さい。
 ……ただでさえ、向こうでは悪目立ちするのに。この体じゃまともに戦えません。」

雨宮 雫 > 「報復でも何でも、とりあえず体を治さないといけないと思うかな、かな。
 呪い祓いはボクはちょっとアレだけども…… いや、1日も駄目だからね?
 朔ちゃんは実は結構、アホなのかな、かな。」

1日で何がどうなるというのか。

呆れたようにスマホから顔を上げて、物凄く残念な子を見る目で朔を見た。

「成る程、じゃあ、学生街にしよっか、かな、かな。
 いっそ農業区とかでもいいけども……

 朔ちゃん、ちょっと寝る気ある?
 寝るなら、その間にボクの術で運んであげれるかな、かな。」

鞍吹 朔 > 「一日あれば墨袋が3人ほどは狩れます。」

ワーカホリックなのか何なのか分からない。
ともかく、結構頭が残念なのは否定出来ないようだ。

「………。まあ、それなら。でもどちらかと言えば目立たないところの方がいいです。
 じゃあ寝ますから、どうぞ。変な所触ったりしないでくださいね、腹部切開したりとか。」

雨宮 雫 > 「今頑張っても1人と半分くらいなんじゃないかな、かな。
 朔ちゃんはもうちょっと自分を大事にしましょう、十全な御仕事には健康な体からかな、かな。」

居るよね、こういう自分を省みない系の子。
医者泣かせの言うコト聞かない系。

「じゃあ、農業区の倉庫を幾つか押さえてるから。
 ソレの改造居住スペースにでも運ぶかな、かな……あそこあんまり人来ないからね、うん。」

本来は組織用のセカンドハウスか、密入島させた人間の待機場所なのだが、とりあえずはそこに確保しよう。

スマホで上司の、何か月曜に足を捻ったらしいヤツにメールしながら

「朔ちゃんが内臓系の病気になったら、開くかもしれないけど。
 今はそこまでじゃないから、中に手を入れたりしないかな、かな。
 安心してさっくり寝ちゃっていいかな。

 明日の朝はベッドで目を覚ませるからね、ケヒヒッ。」