2016/10/17 のログ
■蕎麦屋 > 「案外こういうのも楽しいもので。
こうも平和ですと他にやることもありませんし――ねぇ。
ああ、そちらの小鉢の薬味もどうぞ。
赤いのは七味、黄色いのは天かすです、味のアクセントになりますよ。」
文字通りの暇潰し。とはいえ、決して手を抜いた代物ではない。
食す姿を見ながら。そこまで格式張った食事、というわけでもないのだが。そこは環境の差だろうか。
とりあえず横に備え付けてる小鉢の中身も勧め――
「まぁ、周囲が変われば、変わらぬと張ったところで変化はせざるを得ませんし。
変わらぬつもりが案外、変わっていたりするのもですけどね。
鰹と昆布の合わせ技、日本が生み出した一つの食の極み。
伊達に数百年と愛され続けるだけはありますからね。単純なようで奥が深いんですよ、これ。
そのあたり、蘊蓄聞きます?」
褒められれば頷いて。
放っておけばその奥深さについて延々と語りだしそうな口ぶりである。
■ライラ > 「平和か。
統治者が名君なのか、それとも……まぁ、わらわは静かに暮らせればそれで良い」
薬味をちらりと見て、やめたようです。
「細かいものは止めておこう。
下手をすれば日が昇ってしまうでな」
うっかり数を数えだしたら悲惨な最期になってしまう。
「退屈を厭うが、変化は嫌う。
個としては強いが、緩やかに滅ぶ種なのかもしれぬ。
わらわは滅ぶにしても矜持を捨てるつもりは毛頭ないがのぅ」
やや物憂げな顔。
薀蓄と言われると、そのままゲンナリした顔になるだろうか。
「その鰹と昆布の合わせ技とやらが、魔道の足しになるなら耳も傾けるがの。
王には王の、料理人には料理人の住み分けがあろう?」
つまり、聞いても理解できないぞ という前置きである。
■蕎麦屋 > 「さぁ……そこはわかりかねますけれど。
静かに暮らす分にはそこまで困らないのではないでしょうかね。
――おや、残念。ではそちらは次の機会に。」
ちらりと見やっただけで諦められてしまった。
薬味のほうもそれなり以上に手の込んだ一品だけに、ちょっと残念。
「滅ぶというならそれもまた、でしょう。
何を糧として何を成すのか、それは自身で決めるしかありませんしね・
と、それは心外な。すべての道はローマに通ず、などというではありませんか。
案外学んでみれば新たな気付きがあるやもしれませんよ?
とはいえ、今日はもう時間もなさそうですけれども。陽に当たると融ける系統のようですし。」
まだまだ夜は長い。長いが語りだすと朝までやる自信があった。
それに、流石にここまで露骨に気にされると否が応でも気が付いてしまうだろう。
■ライラ > 「わらわの希望と、人間の願いが一致するとは限らぬよ。
それに、この島は少々賑やかに過ぎる。
隠遁するには向かぬじゃろう」
少し笑って、扇で口元を隠した。
「そのローマも別の国になっておるんじゃろう?
何より、わらわは料理の基礎がわからんからの。
聞いていたらそれこそ憎い太陽が顔を見せてしまうでな。
それらも改めて次の機会にしようではないか。
わらわは、ライラ。嘗ては黒薔薇卿や銀主卿と呼ばれたノスフェラトゥじゃ。
おぬし、名はなんという?」
■蕎麦屋 > 「何かと物入りならこれくらい騒がしいほうが都合もよさそうですけれどねぇ……。
ああ、北のほうは行かれました?彼方の方は人もなかなか立ち入りませんから都合がいいかもしれませんね。」
北のほう―ー山を越えて更に北。転移荒野の方角を示す。
人は立ち入らない代わりに面倒事もあるが、たぶん大丈夫だろう。
「どうせ時間を潰すなら基礎からどうぞ?軽く数十年は遊べますのでおススメです。
問題は食わせる相手がいないとどうにも捗らないことですけどね。
――ああ、これは申し遅れました。
沈黙の蕎麦屋、蕎麦の神、戦争蕎麦屋……あれ?碌な呼ばれ方がないですね?
まぁ、概ねただのしがない蕎麦屋ですし、蕎麦屋で通しておりますよ。」
蕎麦を売るから蕎麦屋。それ以上でもそれ以下でもない。今のところは。
問題は明らかに偽名だということだが。気にしない。
■ライラ > 「静かな生活は好ましいが、人が居らねばわらわは渇く。
渇いた吸血鬼は始末に終えぬぞ?
それに―――夜も賑やかな場所に、躾のなっておらん同胞の気配もあるようじゃしな」
若造に礼儀を教えるのは年長者の務めじゃろう? と見る。
「……どうにも、わらわが厨房に立つイメージがつかぬ。
ナイフはともかく包丁を握ったこともないでな」
筋金入りの貴族様です。
「肩書きや屋号を聞いたのではないのじゃがな?
よい、蕎麦屋よ。
月の綺麗な夜に、また逢おうぞ」
体が徐々に蝙蝠に変化していく。
■蕎麦屋 > 「ああ、それはまた難儀なことで。
人が集まるような場所でしたらそういう悩みの種もございますか。」
納得した様子――ではある。
あの魂ほしいな、と思うようなものであれば、理解も及びやすかった。
「――まぁ、気が向いたら、ですよ。
無理強いは致しませんし。
いやいや、蕎麦屋で通しておりますから。此ればかりはご勘弁を、と。
と、出前もやっておりますので。よろしければご利用くださいな。」
小さな紙切れを一つ取り出せば、変じていく蝙蝠の群れへとひょいと差し込む。
必要なら咥えるなり拾うなりなんなり、要らぬならそのままで。
書いてあるのは電話番号だけであるーーそういえば電話は持っているのだろうか。
「では、また。島のどこかで店は開いていると思いますので、今後ともごひいきに?」
■ライラ > 連絡先は蝙蝠の一匹が掴んでもっていくようです。
が、去り際に一言。
「……けいたいでんわ とやらは、ようわからん」
どうやら機械全般が苦手なようです。
どうにも締まらない言葉を残して、蝙蝠の群れは町の方に飛び去っていきました。
ご案内:「廃神社」からライラさんが去りました。
■蕎麦屋 > 「……――ああ。」
出前のほうは期待薄ですかねぇ。
おつきの人が機会に強いことを祈るとしよう。
「――それにしても。」
もう一度拝殿を拝んでおく。
なかなか面白い客が来たので。
■蕎麦屋 > 「――と。」
場所が場所だ。
二人目が来るともなかなか思えないことであるし――
さく、と店を畳んでしまう。
たたんでしまえば店を開いていた名残もないだろう。
最後に提灯の火を落として――
えっちらおっちらと、山を下りていく。
明かりがないと案外怖いが、それはそれ。
ご案内:「廃神社」から蕎麦屋さんが去りました。