2016/10/23 のログ
水月エニィ >  
 やり過ぎた。
 無理矢理動かした時に、厭な音がした。
 
「そうだけどそうじゃないわ。
 ……でも、何かある筈よ。それとも、私なんかのクズの為に努力してやる余地なんてないのかしら?
 ……いえ……」

 言葉を振り絞る。
 恐らく届いてはいないだろう。当然のものだ。

「でも、根底では本当は死にたくないんでしょう。異能をあげたくもない。
 そういう願望を持ってしまっているのだから、仕方ないわ。誰だって死ぬのは怖いもの。
 異能を手放すのだって怖いでしょうね。……辛い思いをしてほしくない。
 ……加賀智 成臣、貴方はそう望めていないかもしれないけど、そう思っているのよね。
 良かったら、改めて聞かせて頂戴。」

 激昂したものをどうにか抑える。
 あの書類が正しいものであるのなら、心底では口にしている事を望んではいないことになる。
 あの書類が正しくないのならそう思っているだけの違うものだ。

 だからなんだ。なぜ関わるのか。放っておけばいいだろう。
 そう言われれば、その通りなのだが……

(……私も人の事、言えないわねッ!)

 理性で分かっていても衝動が止まらない。
 身体が止まるなと叫んでいるとすら思える。
  

加賀智 成臣 > 「………。
 ……………。」

「……死にたくない、なんて、今更言えるわけがないじゃないですか。
 言えるわけが、ないじゃないですか……」

誤魔化しのために、何人の人生を狂わせてきたことか。
それが許されないことなのだとは、当の本人が一番分かっている。
自分を『殺させられ』て、華やかな人生を打ち壊された人間たちが、肩にへばり付くように。

「…………。
 もう、僕は行きます。」

すっと立ち上がり、軽くよろめく。
どうしようもない感情たちの行き場と、捨て場を探しに。

「……僕以外には、幸せになって欲しいです。」

最後の最後に、本音に近いものを残して。

水月エニィ >  
「待ちなさい。」

 がっ、と掴もうとする。
 ……"現実的に掴めなくとも"、気迫だけで足を止めさせかねない。
 そんな熱意の籠った動きだ。

「言えるわけがないでしょうけれど、そうね。そうよね。
 私だってそれを抱えているし、都合の良い事は言えない。けれど……
 それでも認めてくれる人が居たじゃない。いるじゃない……!
 自分の都合でそれを蔑ろにするつもりなら、私はそんな強者の横暴、認めないわよ……!」

 半ば自分でも何を言っているか分からない。
 《負け犬》の言葉など耳に通らず、去ってしまうのかもしれない。
 だからと言って、諦めきれない。大人になれない。

 現実改竄は恐ろしいが、ああいっているのだ。放っておけばいい。 
 それが分かっているのに。これではただの泣き言を聞き入れられない駄々っ子なのに。
 私が我慢すればいいだけなのに。

(それでもッ!)
 

加賀智 成臣 > 「…………。」

足を止め、振り向く。
その熱意を、感じ取る。…冷たくなった心には、少し熱すぎる。

「………。」

ぱしっ、と手を払いのける。
そして、背を向けてその場を去っていった。


「……………。」

認めてくれる人がいる。そんなことは分かっているのだ。
彼女は、大事な人だ。だが、だからこそ。……だから、こそ。

自分などに関わって、不幸になってほしくない。
自分のことなど、忘れてほしい。

そんな願望の『上澄み』を無視するのが、加賀智の異能であった。

…雨は、まだ降り続く。

水月エニィ > 「待 ちなさいッ……!」

 払われた際に転ぶ。足をくじく。
 そうあれかしと望まれたのだろう。

 ……それでも、這いずりながらも追いかける。
 追い付ける筈も、ないが。
 

ご案内:「廃神社」から加賀智 成臣さんが去りました。
ご案内:「廃神社」から水月エニィさんが去りました。