2017/03/19 のログ
ご案内:「廃神社」に八柳千歳さんが現れました。
八柳千歳 >  
太陽が顔を出す前、空が白み始める時間帯の廃神社に彼女は佇む。
できるだけ身動きのとりやすい服装とその腰には自身の店で飾ってあった一振りの刀を帯びている。
かつて千歳が剣の道を修めていた頃は毎日の様に稽古に明け暮れ、夜と朝の境界にあるこの時間帯を好みよく刀を振っていた。

「(雀百まで踊り忘れずとは良く言ったものですね)」

そんな生活を長く続けていたおかげで今もこうして時たま人気の無い場所を選び刀を振るう。
高みを望むわけでなく無心で振るわけでなし、言ってしまえば惰性で行っているようなものだと彼女は嘲笑していた。

八柳千歳 >  
直立姿勢からやや腰を落とし、柄に手を掛けた。
いよいよ彼女の習慣が始まろうとしている。

「──」

刀を抜き右足を前にした右上段の構えをとりつつ己の中を巡る気を練る。
少しばかり静寂の後、空を切る音すら出さずに刀を振り下ろした。
すかさず斬り上げながら前進、仮想敵の傍をすり抜ける間にさらに銅を薙ぐ。

その一連の動作の中で声を上げず無音を貫く。
ある意味その様子は自然で、異質なものに見えるだろう。

八柳千歳 >  
今度は中段に構えた千歳。
仮想敵もまた己と相対している体で始めていた。

先手を打って袈裟に斬りかかった敵に反応、太刀筋を読みながらそれを刀でいなしつつ勢いのままに敵の首筋を狙う。
一瞬の判断力と反射神経、そして何よりそれを行うための身体能力を求められる技。
それを涼しい顔で行っていた。

「(これは実践ではありません、あくまで仮想の敵故にですね)」

等と自分を戒めつつ、それからいくつもの型を繰り返し繰り返し反復練習をする。

八柳千歳 >  
陽の光を浴びた刀身が軌跡を残すようになった頃。
彼女は刀を鞘に納め、深く息をついた。

「……こんなところでしょうか」

額には玉のような汗が浮かび、パタパタと手で扇ぎ熱を逃がそうとしていた。
顔を出した太陽をのんびりと眺めた後、汗が引くのを待ち立ち去った。

ご案内:「廃神社」から八柳千歳さんが去りました。