2018/09/23 のログ
ご案内:「廃神社」に神代理央さんが現れました。
神代理央 > 此処は、嘗て神を祀った場所。嘗て祈りを集めた場所。嘗て多くの人々で賑わった場所。
尤も、今は只の廃屋でしか無い。祀るべきヒトは消え去り、祀られる神は消え去った。
只の廃屋。人が居た痕跡の残る場所。

「そういった意味では、スラムとさして違いも無い。神だの悪魔だの、自分より上位のモノに縋ろうとしていながら、いざとなればこんなものか」

晩夏の夜風が吹き荒ぶ荒れ果てた境内で、小さく欠伸をしながら独りごちる。
そんな少年を見据える様に、ホログラフで対峙するのは長身の男性。
怜悧な顔立ちの男は、黄昏れている様な少年を一瞥すると小馬鹿にした様な表情で声を発した。

『異能や魔術を行使しながら、今更宗教を否定するか。とんだ捻くれ者だな、理央』

神代理央 > 「…貴方の息子ですからね。多少なりとも性格に難があるのは当然でしょう。まあ、貴方に父親らしいことをされた記憶もありませんが」

ホログラフの男性を睨む様に見上げる。
しかし、此方の刺々しい言葉や視線など意に介さぬ様に、男性はその表情を感情の浮かばない事務的なものへと変貌させる。

『戯言は此処までで良い。お前の報告書には目を通しているが、良くも悪くも平凡極まりない。その島で普通の学生として人生を謳歌したいというなら止めはしないが、与えている小銭を回収するくらいの仕事はしてみせろ』

此方を見下げる男に僅かに舌打ち。
確かに、与えられている任務に対しての進捗が芳しくない事は自覚している。

「言われずとも、貴方に与えられた任務はこなしてみせますよ。それに、僕に【小遣い】をくれるのは貴方だけでは無い。……御祖父様や御祖母様に、どうぞ宜しく」

皮肉を返そうと思ったが、完全に負け惜しみになってしまった。
その事実に今度は隠さずに舌打ちしてしまう。
その様を、無感情に見下ろしていた男は僅かに肩を竦めた。

『孫に甘いというのも考えものだな。まあ、精々使えるものは使うが良い。期待はしない。平均点くらいの仕事さえしていればな』

言いたいことだけ言って、ホログラフは消え去った。
後に残ったのは、裏寂れた廃神社に佇む自分だけ。

「……チッ。まさかアイツが出てくるなんて聞いてない。全く……ああもう…!」

苛立たしげに崩れた鳥居を蹴飛ばす。魔力強化も何もしていない己の蹴りでは、崩れ落ちた鳥居すらびくともしなかった。
忌々しげに鳥居を見上げた後、深い溜息を吐き出して近くの石椅子に腰を下ろした。

神代理央 > ぼんやりと周囲を眺めてみても、視界に映るのは自然に侵食されつつある廃屋ばかり。
ある意味幻想的な光景かも知れないが、朽ちゆくモノの末路をまざまざと見せつけられるのは性に合わない。

「…結局、文明だの科学だのといったものの限界を見せつけられている気分だ。これがあるべき姿だなどという狂信者共とは、分かり合える気がしないな」

鉄と火の力によって築かれる文明こそ、人類が踏みしめてきた歴史なのだと思う。
こうして、大地に飲まれゆく文明の痕跡は、それを真っ向から否定されている様な気分だった。
嫌いでは無いが、好きにもなれない。そんな複雑な気分を、大きく息を吐き出す事で紛らわせた。

神代理央 > そんな気分に浸っている間にも時間は過ぎていく。
小さく欠伸しながら立ち上がり、軽く埃をはたき落とす。

「……次回の提示報告までには、少しばかり結果を出しておかんとな」

僅かに陰鬱な魔力が流れ始めた廃神社を一瞥した後、崩れた鳥居に背を向けて立ち去った。

ご案内:「廃神社」から神代理央さんが去りました。