2016/12/14 のログ
ご案内:「地区ごとの駅」にミラさんが現れました。
ミラ > この世界は旅人にやさしいのか厳しいのかよくわからない。
それがこの少女にとっての感想だった。

「……」

駅の切符売り場前、運賃表を見上げる少女が一人いた。
手元には電源の落ちた携帯電話のようなもの。
その表情は無表情だが慣れた人物が見ればかすかに困惑の色がある事に気が付くことができるだろう。

「失敗」

ぽつりとつぶやく。
この島は異邦人向けに言語調整をする術式が展開されている。
普通であればこんな場所で迷うこともなかっただろう。
駅の名前とそこに至る金額を払い改札を通る。たったそれだけのこと。

ミラ > けれどその容姿に反して彼女は学者だった。
それ故に言語をマスターし、それの補助が無くなった時対応できるようにならなければという
無駄な向上心と知識欲を発揮してそれが自身に影響を与えないようここまでやってきた。
少しだけなら言語もしゃべれるようになったし、相手が言っていることは半分以上は理解できるようになった。
このケータイデンワというもので最悪補助してもらえば何とかなると思っていたという安心感もある。
が……まさかこれは充電式とは知らなかった。
解除方法は無いでもないけれど、正直ここで使うのはあまりよろしくない。
この世界は旅人に便利な方法を与えてくれるものの、それ以外の手段となると
使わないなら知らないよ……と言わんばかりに意味不明の言語になるものだ。
コレが切れる直後そこの駅から乗ってくれればすぐ着きますから!と多分相手は叫んでいたけれど

(私の世界にはこんな大きな鉄の蛇いなかったもん)

要は怖気づいたのである。電話が切れて初めてボッチであることに気が付いたのだから。
こちらの世界は驚きに満ちていて、同時に自身の世界が驚きに満ちていることも分かった。
クルマというものは非常に便利だったし、ぜひ一台ほしいと思う。
けれどこれは……


どうしようと思案しつつただ案内板を見上げ凍り付き氷像のようになっている少女は
ある意味年相応の心細さに満ちた雰囲気を漂わせていて、
まさかこの時期にやってくる講師のひとりだと気が付くものはおそらく皆無だろう。

ミラ > 見上げてばかりでは事態は決して好転しない。
なら動いてみるほうがいいだろう。
彼女はそう決心し、近くの切符売り場へと赴く。
あたりに声をかけられそうなエキインなるものも見当たらない。
自力で何とかしなければ。

「……」

小さく気合を入れ、
偉い人が書かれているオサツという名前の貨幣を取り出し改札に近づく。
そうして改札口にそれを滑り込ませようとするだろう。
本来は切符を入れる場所で決してお札を入れる場所ではないのだけれど
彼女からすれば長距離移動は移動用のマジックゲートを使用するほうが効率的なのだから、
魔術が使えない人でも安く安全に遠くまで運んでくれる電車というシステムは完全に未知の経験だった。
ここまでの会計はすべて相手が人だったというのもある。要は機械会計に慣れていないのだ。

ミラ > 飲み込まれる紙幣をまじまじと見送る。
まちがいにも気が付かず、紙幣は無常に吸い込まれていき……

「ぴゃぃ!?」

鳴り響くエラーブザーに踏まれた玩具のような悲鳴を漏らす。
内容はわからなくとも何かやらかしたことだけはわかる警告音は非常に心臓に悪い。
とりあえず逃げてみるという動きは完全に小動物の類。
ブザーが鳴り終わるまで遠目で見守り、それが鳴りやむと同時にほっと息を吐き
トランクケースを横に置きベンチに腰掛ける。

(うん……これ本気でどうしよう)

そしてまた案内板を見上げながら膝を抱えた。

ご案内:「地区ごとの駅」にニコラスさんが現れました。
ミラ > (これが研究室ならあのシステム分解して解読してやるのに)

なんていう負け惜しみの視線の向こうで
停止した電車が走り出し、ガタンゴトンと音をたて走り去っていく。
大量輸送を目的としたものだというのは大まかながら理解できる。
この世界はあまり魔術は発展していないけれど、その分別方向に適応している点は非常に興味深い。
それが出来ないからこそ別の手段を考え出し、実現するというのはまさに生き物としての知恵だろう。
とはいえある程度に基盤があって初めてそういうものは共有できるわけで……
彼女からすれば得体のしれない鉄の蛇の腹に入って行けと言われているような気分だった。
とりあえずあの憎たらしい音を立てて脅かす門のようなものを超えないとそこにはたどり着けないわけで。

(いっそのことこの場で解読してやろうかしら)

それを眺めながらゆらゆらと上体を揺らす。

ニコラス >  
(びいびいと鳴り響く改札のブザーに、思わずそちらを見る。
 以前この世界の住人に教えてもらった切符の買い方に従って、無人の切符販売機で切符を買おうとした矢先の出来事であった。
 見ればなにやら少女がベンチの方へ逃げていくのが見える。
 切符を買ってその改札まで近付いてみれば、取り出し口へ排出された紙幣。
 それを手にとって、もう一度彼女を見た。)

まぁ、わかんねぇよなぁ。

(自身だって教えてもらわなかったら似たような事をしていたと思う。
 苦笑いしながら彼女へと近付いていく。)

――あんたのだろ。
切符買わないと入れないぞ。

(紙幣を差し出し、そう教えるつもりで。)

ミラ > (自己過信良くない)

とりあえず無事に研究所についたらこの翻訳術式は再び機能させようと決心する。
私にはまだちょっと早かった。知らない土地に向かうときこれを切ったら次は迷子では済まない気がする。
そんな後ろ向きな決心をしているとカイサツに向かった男性が何かに気が付きこちらへ歩いてくる。
こちらをまっすぐ見ながら歩いてくる様から用事があるのは私だろう。多分。
さっき変なことしたと怒られるのかと少しそわそわとしてしまうけれど我慢。
目が合ったなら困惑気味の笑顔を浮かべてみる。

紙幣を差し出されたなら何か買いたいのだろうかときょとんと首をかしげる。
この人は私にお金を差し出して何か交渉しているのだろうかと。

ニコラス >  
(差し出した紙幣に対し、曖昧な笑みを返された。
 あれ、なんか反応おかしくね?)

――え、あれ?
これ、あんたのだろ?
さっきこれ改札に入れて、だからブザーなったんだろ?
え、違う?

(困惑。
 取り忘れたお金を返したつもりだったのだが。なんで曖昧に笑って首をかしげているのだろうか。)

あれ、もしかして違う?
違う人の?
いやでもみんな普通に通ってたし……。

(辺りを見渡しても困っていそうな人は見当たらない。
 彼女の行動から、改札を通れなくて困っているだろうと思ったのだけれど、もしかして違うのか?
 と、そこまで考えてふと思い至った)

あ、もしかして言葉通じてない?
参ったな、こっちの世界の外国語なんてしらねーぞ。
――あー、えー、おかね、あなた、入れた?
えっと、あそこで、切符かって、入れる。
わかる?
通じてる?

(改札を指差したり券売機を指差したり、お金を入れたり切符を買ったりと言うジェスチャーをもりもり交えながら説明する。
 傍から見れば紙幣を手に不思議な踊りを踊っているようにしか見えないだろうが、こちとら必死である。)

ミラ > 数秒後自分が改札に入れた紙幣だということに気が付いた。
そういえばこの無駄に広いおでこの男の絵は見覚えがあった。
男の手にあるということはちゃんと出てきたのだろうか。
とりあえず彼の瞳に困惑の色が宿り、不思議な踊りを始めながら
喋る言葉にわかる単語がいくつか出てきたのでうんうんとうなずいてみる。
キップ……以外は何とか分かった。

「……アリガトゴザイマス?」

やはり不思議な踊りを続けている彼にそっと呟く。
疑問が多すぎて語尾が疑問調になるのはどうしようもない。
さらには相手は文字通り見上げるような身長でちょっと圧迫感があるのも事実。
それに目つきも鋭い気がする。
けれどこちらを見るその目はなんだか優し気な雰囲気もあって
おずおずと手を伸ばし差し出された紙幣を受け取った。

ニコラス >  
――ドウイタシマシテ。

(釣られてなぜかカタコトになる。
 こちらの言っている事が全て伝わったかどうかは分からないが、少なくとも紙幣は彼女のものだったらしい。)

――えーと、わからなかったら、駅員さんに聞いて。
券売機のボタン、ボタンわかる?
押せば、来るから。

(これも以前助けて貰った人に教えてもらった事だ。
 紙幣を渡し、そう告げて、券売機に戻る――のだが。
 気になって彼女の方をもう一度見る。
 外国人――自身は彼女の事をそう認識している――が異国に一人、と言うのは心細いだろうと思う。
 自分だって助けてもらうまで知らない地に一人だったのだ。
 その感覚はよくわかるし、彼女の様子が明らかに困った人のそれだったから。
 お人好しが首を出し、もう一度彼女の方へ。)

――どこまで行きたい?
連れてってやるから、教えて。
路線、図?だっけ?
あるからさ。

(困ったように笑いながら、路線図を指差す。
 言葉の壁はあるけれど、きっと何とかなるはずだ。)

ミラ > なんだかお祭りがあった後らしく、そのダンスか何かだろうか。
ボンダンスとかいうのがあるらしい。
それを教えてくれた彼が実演してくれた
両手を組んで中腰で足を交互に前に蹴り上げる踊りはなかなか見事だった。
それの一種かもしれない。

「良い、踊リダッタ?」

とりあえず称賛してみる。
こういう時にコミュニケーション能力を身に着けておけばと悔やむ。
いや、言語能力を身に着けようと頑張った結果がこれだけれど、
故郷ではコミュニケーションはとるだけ無駄だった為、
どうしてもそう言った感覚に疎くなってしまっていて。

ほっとしたような表情をうかべ、券売機のほうへ歩いていく彼を見送りながら良い人なんだろうなぁと思う。
とりあえずせっかく踊ってくれたのだからお礼は言ったほうがいいと思う。
そのチョイスが決定的に間違っているけれど。

「…エト」

どこか連れて行ってくれると言ってくれている気がする。多分。
ロセン、ズというらしい絵を指さしながら人の好さそうな笑みを浮かべてくれた彼に
戸惑いがちに行き先が書かれた紙を差し出してみた。
そこには学園地区教師控室……俗にいう職員室と書かれている。

ニコラス >  
踊りじゃねーよ!

(戻ってきて早々思わず叫ぶ。
 ああ、なんかこういうノリ懐かしいなと思うのだが、今はそんな場合じゃない。
 差し出された紙を見れば、どうやら職員室に行きたいらしいというのが分かった。)

ああ、職員室な。
えー、とりあえず、こっち。

(手招きして券売機の方へ。
 切符を買ってきてあげるのは簡単だが、使い方が分かっていたほうが後々便利だろうと。)

職員室なら、学園地区だから、ここ。
で、ここにお金入れて、行きたいとこまでの値段書いてあるボタンを押す。
わかる?

(そうして券売機の前に二人でくれば、切符の買い方についてを説明。
 伝わるだろうか。)

ミラ > 「ソナノカ?」

踊りじゃなかったらしい。この国の言語は難しい……。
そのまま券売機のそばへトランクケースを引っ張りながら案内してもらい、
言われるままたどたどしくボタンを押していく。
機械が何かしゃべっているけれどこれは無視。
今度は額の広いおじさんの絵を吸い込んでもブザーが鳴らない。
簡単な言葉を意識して選んでくれているのだろう。人の良さが伝わってくる。
ゆっくり丁寧に話してもらえたおかげで大部分は理解できた。

「アリガト」

切符を無事購入してほっと胸をなでおろしぺこりとお辞儀をする。
学校につくことを条件付けにこの翻訳魔術除けを設定しているのだから
向こうについたらまた改めてお礼できればいいと思う。

「……私、ミラ、言う。
 今季、着任、先生
 学生、沢山、教える、予定」

とりあえず身元を伝えておこうとわかる言葉を選んでみる。
誰かが保証してくれるわけではないけれど……
運が良ければ誰かが今年からの年若い教員の事を話してくれているかもしれない。

「後、お礼、したい。
 名前、聞く、いい?」

ニコラス >  
ったく。

(確かに踊りと撮られても仕方のない動きではあったけれども。
 ともかく無事に切符が買えた。
 後は改札の通り方を教えれば問題ないだろう。)

どういたしまして。
で、それを改札に通す。
降りる駅過ぎちゃったら、駅員さんに言えば何とかなる――らしい。

(らしい、と言うのはまだやったことがないからである。
 そもそもあんまり電車に乗る機会もない。)

ミラ、な。
へー、センセイ――先生!?

(思わず二度見。
 まじまじと自分より背の低い彼女を見つめる。
 自分と同じぐらいの年に見えるのだが、実は年上なのだろうか。)

――へ、あ、名前な。
ニコラス、ニコラス・アルヴィン。
お礼なんて良いよ、困った時はお互い様だ。

(しかし名前を尋ねられて我に返る。
 名前を名乗って、お礼は良い、と。)

ミラ > 「そう、先生」

こくりと頷く。ただの学者にすぎないけれど魔導学に関しては学ぶより教えるほうが多いだろう。
彼女自身はこの世界において教わりたかったり調べたいことのほうが多いのだけれど。
年齢の割には幼い見た目なのだから驚かれるのにはなれていた。

「ニコラス、覚えた」

小さく頷く。
幸いにも物覚えは悪くない。一度見た顔は忘れない。

「……ニコラス、どこか、行く、途中
 時間、取らせた、アリガト」

そう伝えてから小首をかしげる。
彼もどこかに向かう予定だったようだけれど時間等大丈夫なのだろうかと
いまさらながら心配になってきてしまって。

ニコラス >  
マジか。

(にわかには信じがたい。
 しかし彼女が嘘を吐くような人物には見えず、きっと本当なのだろうなとも思う。
 天才っていうのは彼女のような人を言うのだろうか。
 それにしては先ほどの行動はそれっぽくは無かったが。)

いや、帰るとこだった。
方向も一緒だし、送るよ。
一人にするのも不安だし。

(さっきの小動物みたいな逃げ方を見ていると本当にそう思う。
 まだこっちには友人も居ないし、手続きや買い物以外で話をしたのは彼女が二人目なのだ。)

ミラ > 「本当、研究、したい。
 生活、条件、教師、する、だった」

研究するにも環境がいるわけで……
元の世界なら放っておいても研究室を用意されたけれど、こちらではそうもいかない。
何せこちらには来たばかりでほぼ無名なのだから。
若干世知辛い内心を吐露しつつ続く言葉に少し目を見開いた。

「…アリガト」

本心から安堵のため息と言葉が漏れる。
やり方を聞いたとはいえ正直こっちの喋る機械のほうが敵兵や爆撃よりよっぽど怖い。
生き物なら解析できるし魔法なら割り込めばいい。
けれど魔術を使わなくても動くってどういう仕組みなのだろう?
トラベルゲートにも選別機能があったけれどあれはある程度認識術式が組まれて初めて
機能するものだし、兵士用の識別コードのようなものをより複雑に扱うこれが魔道具でないというのは
正直初めて見たときは信じがたかった。

ニコラス >  
あぁー……。

(なるほど、本職は研究者と言う事なのだろう。
 彼女の授業がどういうものか興味は出てきたが、一体どんな授業をやるのだろうか。
 専門的なことはさっぱり分からないので、そう言う方向だったらお手上げなのだが。)

良いって。
わかんねーのは不安だからな。

(に、と笑ってみせる。
 自分も切符を買って、いこうぜ、と声を掛ける。
 改札に切符を突っ込み、向こう側に出てきた切符を取る。
 電車が来るまでまだ少し時間がありそうだ。)

ミラ > 改札を通る姿をしっかり観察する。
なるほど、こうやって通るのか。
先ほどのようににっくいブザー音も立てることなく
素直に開いていくカウンタードアのような部分をしげしげと眺め

(忘れ物……なし)

二度と通らなくて済むようにしっかり持ち物確認する。
そうして恐々と自分も改札を通り、無事に通り抜ければほっと一息つくだろう。

「帰る、ニコラス、学生?」

この島にいる大半は学生と聞いているけれど、彼もそうなのだろうか。
この島にいる間は先ほど走っていった鉄の蛇にお世話になることになりそうだけれど……
みんなこれに慣れているのかと思うとすごいと素直に思う。

ニコラス >  
んー?
うん、学生。
つってもこないだ登録したばっかりだけどな。

(まさかこの年になって学生の立場になるとは思わなかった。
 元居た世界にも大学に相当する機関はあったが、自身は猟師をやっていたので縁がなかったのだ。
 ベンチに腰掛けて、彼女の問いに答える。)

異邦人、わかるかな。
違う世界から飛ばされてきてさ、親切な人に色々教えてもらったよ。

(電車の乗り方に限らず、生徒登録から支援制度、街の事とか簡単な法律だったり。
 その人に会っていなければ最初に居た山に篭っていたかもしれない。)

ミラ > 「そう、この、国?
 学生、登録、……平和」

トランクケースを置き、それにちょこんと腰掛ける。
彼のような学生がいる国はきっと良い所なのだろう。
もちろん問題が何一つない楽園のような場所とまではいわないけれど
それでも戦争にまず駆り出され、その為の教育をまず受けるというよりは
随分と平和な世界だと思う。

「いほーじん。わかる
 此方、来て、沢山、言われた」

大まかにだけれど彼もまたこことは違う場所の出身なのだということは分かった。
それがなんだか心強く感じたのはやはりここでも"異邦人"であるという壁は
確かに感じていて、だからこそ似た境遇というのは身近に思えて
あまり公言するべきことではないとわかっていても小さく頷き口にする。

ニコラス >  
あー、うん、平和だよな。
俺のいた国も平和なほうだったけど、ここはもっと平和だ。

(勿論裏に行けばどうなるかは分からない。
 けれど街を出れば弱肉強食の世界と言うわけでもないし、何かあればすぐ飢えるというようなこともなさそうだ。
 治安は似たようなものだが、制度とか法律なんかの点で平和な国だと思う。)

――あれ、ミラも異邦人?
おかしいな、異邦人の言葉は勝手に翻訳されるって聞いたんだけど。

(実際自身もその恩恵にあずかっている。
 見たこともない文字も読めるし、言葉だって通じる。
 こちらの言葉で元居た世界と一番近い言葉のは英語だろうか。
 それでも文法が似ているだけで、使われている文字は全然違うけれど。)

ミラ > 「……良い事」

小さくうなずいて足をプラプラとさせる。
不親切な機械がなければさらに高得点なのだけれど。

「……情報、妨害、戦時用術式」

投げられた問いに簡単に答える。
戦時用の暗号等の読解を助けるスペルで読み取られないように
通信信号にかける保護を応用して自分にかけただけのことなのだけれど、
説明し始めるとたどたどしい言葉運びも伴って長くなるだろうと判断。

「帰りたい、多い。
 ニコラス、帰りたくなる、ならない?」

彼がどれくらいこの世界にいたかは知らないけれど、
だいぶこの世界になじんでいるように見える。
帰りたいと嘆く異邦人も少なくない中で彼は帰りたいと思わなかったのだろうか?
純粋に疑問に思いつい口にしてしまった。

ニコラス >  
うん、良い事だ。

(居心地は良い。
 このままここに永住してしまっても良いか、と少し思ってしまう程度に。)

ん、ん?
妨害?
よくわかんねーけど、そう言う魔術か何かをキャンセルしてる、って事?

(なんでまたそんな事を。
 しかしそうすると彼女は翻訳術式の補助無しにカタコトながらも会話出来る程度にこちらの言葉を理解していると言う事らしい。
 やはり天才か。)

あー、そりゃまぁ帰りたいよ。
友達とか幼馴染とか、向こうに居るしな。
でも元々旅してたし、あんまり強くは思わないかな。
こっちで学べる事学んでからでも、遅くはないと思うし。

(学生と言う立場は楽しいと言えば楽しい。
 知らない事が分かるようになるし、元の世界で使われていない技術の仕組みを知るのは面白い。
 とは言え帰りたい気持ちも無いわけではなく、しかし帰る方法が分からないのだ。
 魔術に明るくない自身にとっては尚更。)

ミラ > 「ん」

どちらに対してかはっきりしないかもしれないけれどうなずいて短く返す。
どちらの問いに対しても肯定なのだからどちらでとられても別に問題はない。
最近まで祭りをしていたという案内もあった。
安全という意味でも、今ある機能が至近に使えなくなる心配をしないでいいということも
平和と言っていいと思う。

「旅人、慣れ、自由、凄い
 その中、声、アリガト」

旅慣れているからこそ、その途中で声をかけられることの有難さを知っているのだろう。
そうして自分に声をかけてくれたと考えると改めてお礼を口にする。
彼は礼はいいと言っていたけれど、ちゃんと伝えておくだけでも少しは違うと思う。

「楽しい、良かった」

小さくつぶやく。やはり見知らぬ異国の地
そこで同じような境遇の人が曲がりなりにも楽しめているのだと思うと少し心が安らぐような心持になる。
……学園につけば思っている以上にそう言った境遇の人物が多いことに彼女は驚くことだろう。

ニコラス >  
――なんでまた。

(頷きは両方に対してのものだと理解した。
 その内の翻訳機能をキャンセルしていると言うことに対して今度はこちらが疑問を抱く。
 何故そんな不便になる事をしているのだろうか。)

困ってる人は助けなさいって教えられてきたからさ。
ほっとけないんだ、そう言うの。

(あのまま帰る事は出来なかった。
 そう言う性分なのだ。
 お礼を言われるようなことじゃないとは思っていても、彼女にとってはそうではなかったのだろう。
 だからそれは素直に受け取っておいた。)

……ミラは、そうじゃないのか?

(ふとした疑問。
 彼女が自身にそう聞いてきたと言う事は、彼女は不安に思っているのではないか。
 見知らぬ世界で言葉も分からず――彼女がそうしていることと言え――、不安になるのも無理はない、と思う。)

ミラ > 「……」

少し考え込む。
どういえば伝わるかと考えて。

「今、機能、している
 明日、機能、している、わからない」

そう、戦時中であれば当たり前に起こりうること。
今日動いていた機能が明日も動く保証はなくて、それでも生きていかなければならないから。

「素敵、凄い、思う」

それが染みついているからこそ、人にやさしくできるというのは素敵なことだと思う。
そしてそれが当たり前に許される世界もまた素敵だと思う。

「わからない、私、来た、すぐ」

その優しさを信じるにはまだ時間が足りなくて。

ニコラス >  
――あー、なるほど。

(今当たり前に動いているものが、次の瞬間にどうなるか分からない。
 確かに言われてみればそうだ。
 いつ何が起こるかわからないのだから。)

そう、かな。
それが原因で変な事に巻き込まれる事も沢山あるし。

(不良に追い掛け回されたり、いらない怪我をしたり。
 それでも懲りる事もなく、今日もこうしてお節介を焼いてしまっている。
 治らないな、と自分でも思っているのだ。)

あ、俺も同じ。
まだ一ヶ月も経ってない

(なんとなく親近感が増した気がする。)

ミラ > 「選択、出来る、いいこと」

その結果何かに巻き込まれるとしても
後になって何もできなかったと悔やむことすら出来ないよりは
数倍納得できるものだから。
それにこうして誰かの力になれる強さは本当に素敵な事。
その分面倒毎に巻き込まれてもなおそうしてしまうというのは立派な強さだとだと思う。

「そう?慣れてる。長い、思った」

一か月もたっていないということに少し驚きを覚えた。
それだけの期間でここまで馴染めるというのはそれはそれで才能の一種だと思う。
旅慣れているのはそういった才能もあってこそだったのだろう。

ニコラス >  
確かに。
俺も覚えたほうが良いかな……今度、教えてもらって良いか?

(選択肢が増えるのは良い事だ。
 きっとなにかの拍子に言葉が分からなくなった時のために、こちらの言葉を覚えておくのも悪くないと思う。
 機会があれば勉強したいと彼女に申し出た。)

あー、色々教えてもらったから。
まだわかんないことばっかりだよ。
これなんて何がなんだかわけわかんねーからな。

(電車は一応何度か乗って覚えたが、分からない事はまだまだある。
 この手の公共的な機械は分かりやすくていいのだが、すまーとふぉんとか言うヤツはさっぱり分からない。
 買ったはいいがせいぜい電話をかけるぐらいで精一杯。
 ポーチからその黒い板状の機械を取り出して。)

ミラ > 「ん」

小さく肯定する。人にかける分には簡単な術式。
ただの展開解除と暗号化阻害、それの再編成と雑音除去。たったこれだけ。
これだけの術式ならたぶん問題ないはず。

「すまーとふぉん、便利
 高級、支給品」

こんなものを高級士官でもない一般人が使いこなしているのだから
うまく応用すればもっと身近に魔術を応用できると思うのだけれど。
ああ、そういえばこれを利用して魔術展開できるか後で試してみよう。
彼女の世界では兵器の操作用としてよくある光景ではあったのだから
此方の機械でも出来ないということもないと思う。
そんなことを考えながら取り出し……電源が落ちていることを思い出す。

「……番号、覚えて、いる?」

なら暗記すればいいやという結論に至った。

ニコラス >  
さんきゅ。

(ありがたい。
 これで何かあっても大丈夫、とは言えないだろうが、何もしないよりはマシだとも思う。)

便利は便利だけど、何をどう触ったら良いのかわかんねーんだよな。
みんな良くこんなもん触りながら歩けるよ。

(スマートフォンをいじりながら歩いている人の姿は良く見かける。
 自分では歩く事すら出来ないだろうと思う。
 やはり慣れの問題なんだろうか。
 薄い板にしか見えない、と言うのは技術力の差だと思うことにしている。)

番号?
あー、これの?
ちょっとまって……えーと。

(番号と聞かれて一瞬何の事か分からないが、すぐに電話番号の事だと理解した。
 まだ覚えていないため、四苦八苦しながら自身のアドレスを呼び出して。)

はい、これ。

(画面を見せる。
 メールアドレスは弄り方が分からないため、初期設定のままのランダムな英数字の羅列だ。)

ミラ > 「ん」

実際これを歩きながら触っているのを見たときは何かの視覚補助装置か何かかと思った。
皆して魔術地雷でも探しているのかと思えばそんなことはなく普通に操作しながら歩いているらしい。
これ自身もさることながら使うほうもなかなか馬鹿にならない技術だと思う。
慣れれば絶対に便利なツールという確信はあるのでもう少しマスターしたいと弄り回していたら
直ぐに電源がなくなったことだけは改善点かもしれないけれど。

「……覚えた。問題、ない」

小さく頷いてから見上げる。
実は登録の仕方がわからなくてかけてきた相手の番号を全部覚えているというのは内緒。
その分自分の番号の出し方はいまだにわからない。
とりあえず相手の電話番号さえわかればなんとかなる。

ニコラス >  
やっぱ頭良いんだな。

(この番号とメールアドレスを覚えたと言う。
 自分と似たような歳で研究者をやっているだけはある。
 自分なら他の事に気をとられた瞬間に忘れる自信があった。
 未だに番号すら覚えていないし。)

――ん、もうすぐ電車来るみたいだな。

(そこで聞こえてきたのは目的地方面へ向かう電車が来る、と言うアナウンス。
 ベンチから立ち上がり、電車の扉が来る辺りへ向かおう。)

ミラ > 「……得意、だけ、変わりない」

ある意味特化型だからできるだけだと思う。
簡単に返した後聞こえてきた声に一瞬ビクッとする。

『ハクセンノウシロマデオサガリクダサイ』

……ハクセンってなんですか喋ってる人。
立ち上がった彼が一緒に行ってくれるというのは本当に助かった。
そっと裾を掴んで恐る恐る付いていく。
もし見下ろせば若干涙目で服の裾を掴んでついてくることに気が付くかもしれない。

ニコラス >  
俺からすれば充分すげーよ。

(得意な事は人それぞれとはいえ、やっぱり自分に出来ない事を出来るというのは凄いと思う。
 立ち上がれば、服の裾に重さを感じた。
 見れば、なんだか泣きそうな顔をしている彼女が服の裾を掴んでいた。
 ほっこりする。)

取って食われはしねーから。

(なんとなく、ぽん、と頭に手を乗せる。
 そのまま優しく頭を撫でた。
 すぐにやってきた電車に乗り込み、目的地へ向かう。
 ――電車内は結構混雑していて、彼女を所謂壁ドンの形になってしまい、若干気まずい思いをしたとか何とか――。)

ご案内:「地区ごとの駅」からニコラスさんが去りました。
ご案内:「地区ごとの駅」からミラさんが去りました。