2015/08/12 のログ
朽木 次善 > 「……ッッッッッ……!!!」

感情が溢れ出し、力を込めて両手を握った。
――余りの自責に、意識が飛びかける。

ダメだ。
ここで意識を手放したら。
一条ヒビヤが自分の身を呈して作り上げたこの舞台が、
――何の意味も持たなくなってしまう。
ただ一人の観客として、それだけは――それだけは絶対に耐えられない。


絶対に掛けたくはなかった番号を知るために、
懐に手を入れて財布の中に入れておいたとある風紀委員の名刺を取り出した。
個人番号ではなく、部署の番号を呼び出して。

――静かに、現在地と、重傷患者がいる旨を告げる。

これで、恐らく。
全ては形に収まる。


何事もなく。
日常の中に組み込まれて。


意識が遠ざかる。
血を流しすぎたのだろう。

顔を覆い。
零れ落ちる涙でふやけた視界の中で。
最後に見せた彼女の表情を。

――せめて自分だけは永遠に忘れずにいようと誓い。


静かに意識を手放した。

さようなら。

ごめんなさい。


もしかしたら、
何か一つでも掛け違えただけでも
――好きになれたかもしれない人。

ご案内:「路地裏」から『脚本家』さんが去りました。
ご案内:「路地裏」から朽木 次善さんが去りました。