2015/11/03 のログ
ご案内:「常世神社・鎮守の森」に千代田さんが現れました。
■千代田 > 常世神社・鎮守の森。そこは今日この場を訪れた少女たちにとっての、全ての始まりの場所。
橙色に身を包む少女――"千代田"は以前も、その肉体に宿る本来の人格、畝傍との交信を回復する手掛かりを探るため、
常世神社を訪れたものの、未だ交信は途絶えたままであった。
その結果から、交信の回復には畝傍にとっての一番の親友、石蒜の協力が必要不可欠と考えた千代田は彼女に協力を仰ぎ、
今日こうしてこの場を訪れることとなったのだが――
ご案内:「常世神社・鎮守の森」に石蒜さんが現れました。
■石蒜 > すんすんと鼻を鳴らしながら、千代田とともに鎮守の森を歩く。もうあの場所に残り香はないだろうが、それでも無意識に匂いを求めていた。
目指すのは石蒜が生まれた場所、そして畝傍と出会った場所。
「もうちょっとだよ。畝傍は起きそう?」歩幅が違うため、千代田の横を少し早足で歩きながら問う。ここに来てから何度か同じことを聞いていた。
■千代田 > 「……いいえ。まだ気配は感じられませんわ」
石蒜からかけられた問いに、千代田は低い声で返す。
一歩ずつ歩を進めながら、自らの精神の奥深くに問いかけ続けていた千代田。しかし、未だ反応は帰ってこない。
眼帯に覆われたその左目からは、冷気を帯びた灰色の炎が絶えず溢れ出していた。
やがて畝傍と石蒜が初めて出会った場所へ辿り着きかけた、その時。
「――――!」
何かを感じた千代田は、それと同時に瞬間的な頭痛に襲われ、頭を押さえながらその場にうずくまる。
■石蒜 > 「そっか…。」何度目かの同じ答えに、残念そうな声を出す。
そして、目的地が見えてきて「ほら、あそこ」と指を差す。
駆け出そうとした時に、突然うずくまった千代田に驚き、すぐそばにしゃがみ込む。
「千代田大丈夫?!ええと…ど、どうしよう。頭痛?何かすることある?」顔を覗き込みながら、不安げに。
■千代田 > 「……いえ。大丈夫、ですわ」
不安そうに千代田の顔を見据える石蒜の心配を取り除くため、
その言葉とともにゆっくりと立ち上がろうとした。
気付けば痛みは退いていたが、千代田の心には妙な感触が残る。
「もう少し……でしたわよね。向かいましょう」
そう言って、再び目的の場所まで歩き出さんとする。
■石蒜 > 「そう?ほんとに大丈夫?」千代田が立ち上がるのに合わせて、自分も立ち上がるが、不安そうな表情は消えていない。
もしかしたら、もしかしたら畝傍が戻ったら千代田は消えてしまうのではないだろうか、そんな考えが頭をよぎった。
少し前ならそれでも良いと言えただろうが、今となってはどちらも選べない。
確かに千代田は少し怖いし、色々うるさいし、サヤもすぐ千代田に言いつけると脅すけど、一緒に暮らす家族なのだ、消えるのは嫌だった。
「うん、すぐそこ。」不安をかき消すように、今度こそ駆け出して、一足先に到着した。
「ここ、ここだよ!」ぴょんぴょんと跳び跳ねて、場所を示す。ここでサヤだった魂の欠片は石蒜となり、そして石蒜と畝傍は出会ったのだ。
■千代田 > 石蒜が跳び跳ねて示した場所に、千代田もまた遅れて歩み寄り。
静かに瞳を閉じると、交信が途絶える以前の畝傍が残した記憶を辿り、照らし合わせて。
「そのようですわね。畝傍の記憶にある場所と同じですわ」
石蒜にもそう告げた後、しばし周辺を歩き回ると、
「何だか、落ち着きますわ。息をするだけで、心が洗われるような……」
そう言って表情を緩ませかけた時、
「っ……!!」
再び、瞬間的な激しい痛みが千代田を襲う。
それによって姿勢を崩してしまった千代田は、今にも倒れそうな状態になっていた。
■石蒜 > 「うん、ええっと…今が11だから…」指を折って、月を数えるあれは確か…「6月…だったかな、こうやって寝転がってたら畝傍が来て…。」再現するように地面に横になり、嬉しそうに、楽しそうに思い出を話し始める。さっきまでの不安は忘れてしまったようだ。
そしてまた、千代田の様子が変わると、すぐに立ち上がる。
「千代田!」素早く駆け寄ってその体を支えようとする。身長も体重も石蒜のほうが小さいが、人体の扱い方は剣術を通して学んでいる、不測の事態でもなければ、支えきれるはずだが。
■千代田 > 「くっ……ぅぐ……」
石蒜の腕に支えられながら、感謝の言葉を告げる間もなく苦痛に喘ぐ千代田。
その視界には、常世島を訪れる以前の畝傍の過去――
幼い少女が人体実験を受け、狙撃銃を手にして多くの人間を殺め、やがて正気を失うに至るまでの道程が鮮明に映っていた。
しばし後、周囲の風景の一部がぼやけ、いくつかの長方形のスクリーンのように切り抜かれはじめる。
そして、そこにもまた、千代田が見ている光景と同じ映像が映し出されはじめた。
何者かの異能によるものか、あるいは魔術による精神干渉か、
いずれにせよ、千代田が見ているものは、今この場に居合わせている石蒜にもはっきりと見てとれるようになるだろう。
――そして、そんな二人の様子を、付近の木陰から見つめる少女の姿があった。
■石蒜 > 「千代田!千代田!」細い腕で千代田を支えながら、必死に呼びかける。
突然空中に現れた映像に驚く。「これは……畝傍の…?」その映像のうちいくつかは畝傍から聞いた彼女の過去と一致していた。
「こんな……酷い…。」次々と映しだされる非人道的な扱いと、それに畝傍が苦しむ様に、言葉を失う。
そして、木陰からの視線には気付けない、気付くには石蒜の心はあまりにも乱れていた。
「……。」どう声をかければいいかわからず、ただただ千代田の体を、抱きしめるようにして支える。
■千代田 > 「ううっ……ぐ……っ。……畝傍……」
交信が途絶える以前の畝傍の記憶にあった出来事を、今こうしてまざまざと見せつけられている千代田は、
まともに言葉を発することもできず、ただ押し寄せる苦痛に耐え、その瞳からは涙を零すばかりであった。
石蒜の腕が自らの体に触れる感触と、その小さな手のぬくもりだけが支えとなっていた。
やがて周囲の風景が元に戻りはじめようとも、千代田はなお苦しみ続けていた。
そして、千代田が倒れる以前の風景へと完全に戻った、その時。
木陰で二人の様子を見つめていた少女が、小さな足音を立てつつゆっくりと、彼女らのもとへと近づく。
その背中には飛行用のサイバネティクス翼が乱雑な措置で接合されており、
脇腹から伸びる一対のサイバネアームは、ヒトの頭ほどの大きさの物が収まる大きさをした、金属製の缶状装置をしっかりと保持していた。
「いいものを見させてもらいましたよ。"オレンジ色"」
桃色の短い髪に菫色の瞳を持つ少女は、そう囁くように、二人へ告げる。
■石蒜 > 「石蒜が居るよ、大丈夫。千代田、大丈夫だよ。石蒜が居るから。」そんな保証はどこにもない。自分でもわかっていても、そう言わずにはいられなかった。
涙を流し、耐え続ける千代田の苦しみを少しでも和らげようと、努めて優しく声をかける。
そして、闖入者の存在に、声をかけられてようやく気付く。
「誰だ。今のはお前の仕業か。」千代田の体を支えたまま、警戒と敵意を込めて機械的な異形の人物を睨みつける。
「それ以上近づくな。」
■千代田 > 「……はい。千代田は……千代田は、もう……大丈夫です、から……」
気付けば視界に映し出された映像は徐々に薄らいでゆき、自身へと呼びかける石蒜の声が響く。
そこで千代田は涙を零しながらも小さく作り笑いを見せ、石蒜の乱れた感情をなだめんとした。
石蒜の小さな腕に抱えられていた千代田は、まだ調子の戻らない身体で徐々に立ち上がらんとする。
一方、石蒜の敵意が篭った視線と言葉を受けて足を止めた桃色髪の少女は。
「ええ、その通り」
そう答えると、缶状装置を脇腹のサイバネアームで保持したまま、
「ヒトが抱えるトラウマを呼び覚まし、可視化するのが私の異能」
両手両足を用いてバレエダンサーめいた奇怪なポーズをとりつつ、石蒜の方向を睨み返し。
「申し遅れました。私は筑紫<ツクシ>――『星の子ら<シュテルン・ライヒ>』が一人、筑紫・カテリーナ・ゲゼル」
桃色髪の少女――筑紫は、二人に名乗った。
■石蒜 > 「千代田は休んでて。大丈夫、石蒜がなんとかするから。」立ち上がらんとする千代田から腕を離して、笑いかける。
守るように千代田の前に立ち、異能を使って刀を手中に呼び出す。
「ゲスな異能だな、持ち主に相応しい。」相手が白状すれば、吐き捨てるように嘲りの言葉を投げた。
「お前に名乗るのは勿体無いが、名無しに殺されるのも嫌だろうから名乗ってやる。石蒜、流派は人刃一刀流。」すらりと音もなく鞘から刀を抜いて。その刃は持ち主の瞳のように、薄紫の光彩を放っている。
鞘を捨て、両腕はだらりと垂らす。構えと呼ぶには自然体すぎる構え。
■千代田 > 「……そう、ですわね」
石蒜の言葉を受けて千代田はゆっくりとその場に座り込み、傷ついた精神をどうにか癒さんとする。
一方、石蒜から刀を向けられた筑紫はその顔に哄笑を浮かべ、
「おやおや、勘違いしないでいただきたいものだ」
再び先程とは異なる奇怪なポーズをとりながら告げる。
「私は今この場であなた方とやり合う気はありません。今日ここを訪れたのはあくまで顔見せのため」
そして飛行用サイバネ翼を起動させ、溢れてゆく青白い噴射光と共に、筑紫は体を徐々に宙へ浮かべてゆく。
「私を討ち取りたくば、転移荒野まで来るがよいでしょう」
その言葉を告げ、逃走を図る筑紫。果たして――?