2016/01/19 のログ
ご案内:「秋輝の私宅」に寄月 秋輝さんが現れました。
■寄月 秋輝 >
自分の愛刀を返却されてより、今日まで目を逸らし続けていた。
だが、研究所にてリビドーとの会話を経て、やはり向き合う必要があるようだと感じた。
「……あの時、何があったのか……確認しなければ」
畳の上に正座し、愛刀を見つめる。
母の形見でもある『エニグマ・レイ』と母が呼んだ刀。
この刀に記録された、あの日の戦いを確かめる時が来たようだ。
■寄月 秋輝 >
耳が痛いほどの静寂。
先日少女を一人保護したとはいえ、未だにこの家は広く、静かだ。
その少女、レンファがここに居ないからなおさら。
静かに調息にて気を静め、ゆっくりと口を開く。
「記録再生開始。時刻は……」
四年前のあの日。
最後に、この命を賭して臨んだ戦い。
■寄月 秋輝 >
記録が再生され、空中に投影される。
写された『無数の』金髪の少女たち。
それを見てしまった秋輝は眉をしかめ、吐き気すら覚えるのを唇を噛んで耐える。
その中で刀を振るい、数体を切り落としたところで、記録の中の秋輝はズタズタに引き裂かれた。
そこで記録の再生が止まる。
「……やはり、ここからか……」
吐き気と頭痛、胃の痛みすら現れる。
この少女たちの顔を見るだけで、とてつもない不快感に襲われる。
かつての敗北と凌辱の記憶が蘇り、手が震える。
だが、知るべきことはまだここから先なのだ。
「……プロテクト解除……『修羅』システム、起動。
記録再生、再開。時刻は……」
その直後。
自身が血みどろになり、倒れた瞬間からだ。
■寄月 秋輝 >
直後の映像だ。
引き裂かれた体を少女らに踏みにじられていた。
が、その体が恐ろしい勢いで引き合うように再生し、秋輝は再び刀を振るい始めた。
それは記憶にない出来事だ。
しかし記録の中の秋輝は刀を振るい続け、彼女らを殺し続けていた。
「……これが……修羅システムの……結果か……」
先ほどとは違った吐き気がする。
これほどの数、少女たちを殺していたのはやはり自分だったのだ。
噴き出る血が、殺到して来る敵を意識が無いまま無表情に殺し続ける自分が、あまりに見慣れず気持ち悪かった。
もっともある意味で、その記録を見れたことには安心するのだが。
もう数えきれないほどの少女たちが膾切りにされたあたりで、もう一人……クラスのアイドルでもあった『あの子』が現れた。
そうだ、もうこの記憶は無い。
あの子は力を振るい、記憶の無い秋輝と共に残った少女たちを殺しつくした。
「…………」
手の中がじっとりと汗に濡れている。
気持ちが悪い。
やはり自分は目的を果たせなかったのだと、思い知らされたのだから。
■寄月 秋輝 >
自分の鍛えた意味を果たせず。
その直後の自分は、白目を剥いたまま、全身から敵と自身の血を滴らせながら、あの子に刀を向けていた。
だがあの子の叫びが聞こえた記憶だけは頭に残っている。
同時にシステムを強制終了させ……
記録の秋輝は倒れ伏し、全身から血を流して昏倒していた。
「やはりか……活動出来るギリギリまで再生させ、活動する……
そういうシステム、だったのか……母さん……」
今は無き母への恨み言を呟き、映像を見続ける。
あの子が倒れた自分を懸命に止血し、本部に救援を要請していた。
そして救助される……直前だ。
この刀から記録が途切れた。
そこからはこちらの世界、転移荒野で倒れる自分が居た。
そして体の傷は不思議なことに修復され、命をつないでいた。
■寄月 秋輝 >
「どういうことだ……?」
何があったのか理解できない。推測も出来ない。
死んだと思いきや、直後生き残って転移していた。
そうとしか言いようが無い。
「……いや、けれど……」
自分の服をたくし上げ、見下ろす。
鍛え上げた筋肉が目に入るが、それ以上に大小無数の傷跡が目に入る。
その傷跡は、以前の訓練でついたものと……この記録における戦いでついた傷がそのまま跡になって残っている。
あの戦いは現実にあったものであり、死ぬまで戦った記憶にも記録にも誤りはないのだ。
「……ならば何故……僕は生きている……?」
疑問符を出さずにはいられない。
今生きているという事実すら、本当なのかどうか疑わしい。
■寄月 秋輝 >
母の形見の刀を見る。
この刀も知らない何かが起きたのだ。
「……生きている……」
ぽつりと呟いた。
急にそれが不思議に思えるようになってしまった。
ならば今の自分は死霊か何かだろうか。
そんなことすら考える。
再び耳が痛いほどの静寂が訪れる。
静かに、静かに息を吐き出し、眉根を寄せた。
さて、監視の目に留まればまた自由のない身になるだろうか。
刀を解析されても、彼らはシステムについて知ることすらできなかったのだ。
このまま正直に話してしまえば、解析も事情聴取も全て拘束の上で行われる気がする。
「……はぁ……」
気が重い。
居候の少女を拾ってから見るものではなかったかもしれない。
■寄月 秋輝 >
刀を袋に仕舞い、大きなため息を吐き出す。
頭痛の種は増えるばかりだ。
目の保養になる分、少女を引き込んでおいて正解だったかもしれない。
胃の痛みがひどく、嘔吐しそうになる。
「……今日は早く眠らないといけないな……」
これだけで恐ろしく疲弊してしまった。
やはり体と精神に刻まれたトラウマは厳しいものだ。
胸から胃がきりきりと痛む。
とはいえ、あまりだらけてもいられない。
家事を終えなければ、また同居人に文句を言われてしまうだろう。
■寄月 秋輝 >
ふと表を見ると、雨が降っている。
なんとなく、あの同居人は傘を持って行っていない気がする。
濡れた子犬のような様子で帰ってきそうだ。
「……先にタオルと風呂の準備を整えておくか……」
ひどく重い体を起こし、活動を開始する。
それが終えたら、すぐに眠ってしまおう。
そう心に誓った。
ご案内:「秋輝の私宅」から寄月 秋輝さんが去りました。