2016/02/21 のログ
ご案内:「異邦人街の安アパート」に六道 凛さんが現れました。
■六道 凛 > 今日も、独り。家でぼーっとしていた。
料理を作り、お風呂を沸かし。先に入浴、ほてった身体を冷ますのに。
ワイシャツ一枚で、暖房の効いた部屋のソファーの上でぼーっと。
今日はカレイの煮付け。安売りしていたから。それに簡単だ。
ご飯と、じゃがいもとしいたけの味噌汁。ほうれん草のおひたし。
あと、千切りキャベツ。
ラップをして、机の上に二人分置いておく。
食べないと文句を言われるので、自分のはもう食べた。おにぎり、一つ。
ただぼーっとして、ネットサーフィング。
(今日は帰って来んのかな)
それはわからない。二人は忙しい。それに――
――なんとなく、独りでいるほうが最近は気楽だ
ご案内:「異邦人街の安アパート」に五代 基一郎さんが現れました。
■五代 基一郎 > 「ただいま」
この言葉が一人であることを確認する……ある種の儀式でなくなった時からしばらく経った。
先の人工島での一件以来、情報収集や復元に加えて久方ぶりの接続に対する負荷に対して体調を戻すことに集中していたわけだが
ようやくそれなりに動いても問題はなくなった。
加えていえば、遅くまで続いていた活動もあり半ば休みも混ぜて早めに上がった。
最近は日付が変わってしばらくしての帰宅と食事が続いていたためか
この時間に戻れたのだから彼らはいるだろうか、とも思う。
思えば帰宅すれば大抵凛の食事が出迎えてくれたものだから、今日もいるのではあろうが。
黒猫のエイジャックスに続くように居間に入ればやはり食事は出来ていた。
いつもの通りに。時間を見ればまだそう遅くはなかった。
上着を適当に椅子に掛ければそのまま、凛の部屋の前に歩いていく。
「凛、起きているかな」
ノックを二度してから同居人に呼びかけた。
■六道 凛 > ――帰ってきた……
珍しいと、素直に思う。なにせ久々だ。
意識があるときに、こうして会うのは。大抵はさっさと学校に行ってしまうか。
落ちてしまっていて会えないのどちらかだし。
「起きてるよ」
ぶんっと、ネットを閉じるように手を宙で横に。
声をかけてきたということは用でもあるんだろうか。
脚本があるわけでもないからわからないが。くああっとあくびをしつつ、身体を起こした
■五代 基一郎 > 「話がある……話をしよう、という雑な言い方もあれだが、こちらからも話があるし凛からも聞きたいことがあるんじゃないかと思ってさ」
自分で言っておいてなんだがやはりぎこちなさが残るなと思う。
凛からはおそらく定期的にアクセスしている彼らのことだったりとかもあるんだろうが
自分からとなるとどうもそれなりに時間を空けていた気負いがあるのか。
他人だからどうこうではなく、何か難しさも感じる辺り”出来なくなっているな”と思い知らされる。
近いはずなのに相手の事を出さなければ話すこともできないのだろうかと。
「とりあえず飯食いながらでいいかな、昨日今日は碌に食えなくてさ」
では先に、と。ネクタイを外しながらまたゆっくりと居間に戻って席に着いた。
実際半ば病院食のようなものが続いていたものだから、こうした食事はありがたい。
自分一人だったら外食だろうが……と、ラップを外しながら凛が来る前にでもという様相で食う準備を始めた。
■六道 凛 >
「ん、別に構わないけれど」
どこか他人行儀。いや、いろいろあったし、いろいろ話もした。
が、だんだんだんだん鈍くなってるのを凛は感じていた。
退屈、今まで傍にあった劇がなくなったことからか外への興味は。普通への、転換は実に、ゆっくりと――
「ん。レンジで温めたほうが美味しいかも。あ、でも卵は食べちゃ駄目。あんま良いのじゃなかったから」
そう告げて、ワイシャツ一枚の上にパーカーを羽織って部屋から出る。
そして中央の、テーブルへと
■五代 基一郎 > 「……どれを?」
どれを、レンジで温めればいいのだろうか。
そして卵。生卵という鶏の卵ではなくカレイの卵のことだろうことは察せられたが
火を通せば大丈夫なのではないのだろうか……
カレイの煮つけといえば身と卵というものだろうが一体どいうことか。
説明を求めるように凛を見た。
そして傍らの席にはバッグが一つ……片づけられずにそこにいた。
■六道 凛 >
「カレイの煮つけ。レンジで温めて。ご飯は炊飯器の中、お味噌汁は。今温めてあげるから……」
卵、は正直あんまオススメはしない。新鮮じゃないからおいしくないと思うから。
安さに任せて買ったものだ。それでもちゃんと火は通したし、食中毒にはならないだろうが。まぁ――
おいしく食べてくれるなら、なんでもいいか。なんて――
困った顔をする家主に、苦笑を零し。
「ほら、速く動く」
すたすたと、お味噌汁と白いご飯の準備……
バッグにはちらりと目を向けるだけで。今はまだ口にしない
■五代 基一郎 > あぁ、と確かにと思うに至り。
雑に剥がしたラップをまたなんとか戻し、カレイの煮つけをレンジにいれて
”あたため”のボタンを押す。時間設定もいらないあたためボタン。
このあたためのボタンの便利さは素晴らしいものだった。
人間の文明の発展の極点の一つといっていい。極力人間の介入する手間を削った結果。
レンジに求められるあたためる、というものをボタン一つで可能にするもの。
これ一つとっても、人類がどこへ向かうかはわかるだろう。賢さも愚かさも内包したボタン。
さておきそんな一人の時にもたった今も世話になっている万能のあたためボタンに任せる。
料理というものは冷めていても温めればまた息を吹き返す。
あたため終わった、とレンジが鳴れば開き、ラップをはずす。
香りもまた蘇ったように漂う。
ここ数日水と栄養粉末のみの胃がこれを欲していた。
そのままテーブルに運び、ごはんと味噌汁を待った。
右手には既に箸が握られている。
■六道 凛 > ――そんなに待ち遠しいのか
そんな風に思う、まともなものをまた食べていないのかと。
まるで空腹の子供のようだ。いつもどおり、お玉でかき混ぜて。
ご飯を普通に盛る。大盛りでも何でもなく普通に。
胃の負担を考えて、まだ食べれるようならまたおかわりをすればいいと考え。
そっとお椀に味噌汁を流し――
テーブルにおいて、対面に腰掛ける。
「どうぞ?」
ふぅっと息を吐いて、頬杖をつき――
■五代 基一郎 > 飯を食いながらでいいかな。
そんな先の言葉は何だったのか。
飯を食うことに集中するという姿勢、雰囲気が既に出ていた。
食事のバランスを考えればまずキャベツを食い腹を慣らしつつ
味噌汁で胃を整えながらカレイの煮つけとご飯を食う。
栄養学的にも最適解に近い食い方だろう。
しかしどうぞ、と言われればそれらは無かったものとなり。
「いただきます」の手を合わせた一声と共にまずカレイを箸で切っては
米とくらい、味噌汁を飲んで喰ってのローテーションで回し
食い終わればキャベツを納め
「ごちそうさまでした」
と手を合わせた。目の前のものから食っていく知能の著しく低下した食べ方を見せての終わり。
お代わりはしない。腹が満たされたが食欲がある以上話を忘れて飯を食うことに終始してしまいそうだったからだ。
現に今、食事をしながら話をということを言っていたような気がすることを思い出している。
そして皿を脇に退けつつ、ようやく本題というようにバックを開けて
ファイルを取り出して凛に渡すようにテーブルの上に差し出した。
「さてどこから話をしたものかな……とりあえず、普通の学生生活や時間外の生活はどうだった。
……まぁ俺が忙しかった時期も重なって普段の生活でも飼い殺しみたいにしたのは悪かったよ。」
■六道 凛 >
うわぁっと、ちょっと引くくらいのくらいよう。
まぁ男性ということも合って、野性味もあるし
食欲があるということは健康という意味だからいいのかもしれない。
もう一人の同居人もまた、同じくらい食いつきがいいし――
(見てて、気分が悪くなるもんじゃない)
自分の作ったものを、こうしてくれるのは。
なんて和んだのもつかの間。どうだったと聴かれれば――
「食事の感想はなし?」
なんて、ひとつ冗談を交えた後。表情は若干消える。
「――つまらなかった、ただ。純粋に」
寂しさが、最初はあふれていた。依存したい、縋りたいものを探した。
でも”なれて”。普通の生活に浸ってみれば実に実に。
この美術屋という、非日常。リアリティある、刺激にあふれた日々を最も近くで特等席でみていた彼にとって。
何もない、日常は本当に――
「うん、退屈。だった」
■五代 基一郎 > 「今後はなるべく出来てすぐに食えるようにするよ」
食事の感想はこれで、というように口元をティッシュで拭って。
また切り替えるように、漱ぐように冷たくなった茶を口にいれひと息ついて。
凛の言葉を聞く。今までの……ここへ来てからの所感というものか。
聞けば、つい思ってしまう。ヤツならどう返すか。愉快でもないのに口が笑ってしまう程に。
それほどにこの六道凛と名づけた、美術屋と呼ばれていた少年はズレていることが心からわかってしまう。
「娯楽は普段の生活に刺激を求めるからこそ生まれたものだろうし当然さ。
日常というか、日々というようにある程度の繰り返し。そこに楽しみを見つける者もいれば、娯楽が生まれ発達して文化になったというところか。
有史以来人々の多くはそこにいたからこそ娯楽を生み出す職業が今もあるわけだし」
何を言っているのかとも思うが言葉は出てくる。
凛のその、日常を退屈と思うような価値観を肯定するような言葉で。
いわば非日常がと思う凛を肯定するような言葉の流れで
「日常の外に戻りたい?退屈を抜け出して」
そんな、安いポップカルチャーの…ヒットチャートにも一瞬だけのるかのらないかすらわからない
フレーズを、返していた。
その目は凛ではなく湯呑の中に注がれていた。
■六道 凛 >
「そう……」
それだけ。ならすることはいつもと変わらない。
ご飯を作って置いておく。それだけだ。
だから視線をふと空になった皿に注ぎ――
「なに、そのフレーズ」
くすっと笑う。一昔もふた昔も前の安い映画みたいだ。
それに肯定的な意見が出てきたのは意外だ。
あんなに、否定して。なにが演劇だと口にしていたのに。
新たな発見は嬉しい物がある。どうして目の前の男が笑っているのかは理解できなかったが。
ほんの少し、色が世界に点ったのを感じた。
「いらないよ。非日常に戻ったところで、退屈がなくなるわけじゃない」
もう、欲しいものはこの世にないのだから