2016/05/21 のログ
ご案内:「島にある大きすぎない病院」に烏丸秀さんが現れました。
烏丸秀 > と、部屋の中へ入ると

「あ、こんにちは」

にっこりと笑い。
手を振り、愛想を振りまく

伊都波 悠薇 >  
「……わっ」

出ようとした瞬間に、扉が開く。
どんっとぶつかってしまい――

「ご、ごめんなさいっ」

バッと、後ろに下がれば、見た覚えのある顔だった。

「……あ、こ、こんにちは?」

烏丸秀 > 「おっと、ごめんごめん」

あはは、と笑いながら、大丈夫? と声をかける。
にこにこしながらも帰る様子はなく、部屋の中へ。

「安静にしてなくていいのかな?」

お土産の箱をことんと置きつつ、尋ねる。

伊都波 悠薇 >  
「もう、そろそろ退院してもって話が持ち上がるくらいには」

来客があったのなら、仕方がないと。くるりと方向転換。
ベッドの上に座る。ぎしぃっと、軋む音がした。


「……今日も、商談? ですか?」

あれを商談というのかはわからないけれど。
自分に用事ということはお見舞いという名目の、CMについてのお話だろうかと思いながら

烏丸秀 > 「ん、ただのお見舞い兼、おすそ分け」

お土産の箱を開く。
そこにあるのは、烏丸特製シュークリーム。
ちょっと豪華な逸品だ。なにせ昼間に焼きあがったばかりなので、皮がまだパリっとしている。

「うん、退院って事は、そろそろ食べれるかな?」

伊都波 悠薇 >  
「そうですか」

わざわざ、またお見舞いに来てくれるのはうれしかった。
家族を除けばこれで、二人目。
一人は、お付き合い保留の子が心配してきてくれた時は変なテンションだったのを少し覚えてる。
それにシュークリーム……

「……た、食べれることは食べれますけど」

ここだけの話、ちょっと太った。
というより、筋肉が少し落ちた、気がする。
ぷにっと、おなかが少しつまめちゃう程度には……
だから、さっき運動をしようと思ったのだが

『これが、悪魔のささやき……えいせいへーえいせいへー!!』

すごく悩ましい顔をしつつ、お菓子の魔力に――

「いただきます……」

勝てなかった

烏丸秀 > 「どうぞどうぞ」

ちなみに烏丸、まったく太らないし痩せない体質である。
一度ならず女の子に絞め殺されそうになったが、まぁ仕方ない。体質だから。

「お口に合うといいけど」

ちなみに何が特製かというと。
クリームに常世メロンの果汁と果肉が練り込んである。
島で栽培しているこのメロンは、甘くて汁が多く、お菓子作りにぴったりなのだ。

「退院、って事は大した事無かったのかな?」

ベッドの横の椅子に座りつつ

伊都波 悠薇 >  
「いただきます……」

くるりと、上下をさかさまにしてからまぐっと一口。
ぱりっとした、皮の感触が心地よく。
そのあとのクリームの弾力を引き立てて、口の中に入れれば
じゅわぁっと溶ける。メロンのうまみがぐっと広がって
口の中が幸せになる……

「んっ……」

官能に近い、甘味。あきがこない、体を刺激するぐらいのものだった。

「……大したことなかったというよりも、原因がわからなかったというほうが正しいみたいですけど」

ゆっくり食べ進めつつ、質問には答えて

烏丸秀 > 「あー……」

原因不明。なるほど、この島ならよくある事だ。
何かの異能が原因か、それとも妙な病気か……

「一応、医者に知り合いは居るからさ。体調が変になったら、相談に乗るからね」

そんな事、無いにこした事はないのだが。
口調を少し明るくし、話題を転換する。

「で、お出かけだった?
うん、ずっと病室に居ると飽きるし、ストレスも溜まるしね」

伊都波 悠薇 >  
「ありがとうございます」

家族以外から心配されるのは新鮮だ。
未だになれないからか、少しうつむく。きっと赤くなってる頬を隠すように。

「あ、えっと……その少し運動しにいこうかななんて」」

ラジオ体操とは恥ずかしくて言えなかった。

烏丸秀 > なるほど、運動か。
確かに入院中だし、運動不足にもなるだろう。

「なるほどね、でも、あんまり病み上がりで無理はしない方がいいよ」

この男、運動の話はからっきしである。
せいぜいたまにスポーツ観戦に行くくらいだ。

「うん、それよりもさ。
退院したら、ちょっと一緒にショッピングに行かない?」

一応、理由はある。
期待したような眼差しをしながら彼女を見つめ

伊都波 悠薇 >  
「……ショッピング、ですか?」

きれいに食べ終えて、口についたクリームを指でぬぐい。
そっとなめて。

「……え、二人でですか?」

硬直数十秒。
まさかと思いつつ聞き返して

烏丸秀 > 「そ、二人で、デート♪」

さらりと言い放つ。
まぁ、デートと言いつつ目的はあるのだが。

「うん、実はね、悠薇ちゃんの売り込みの為に、写真つきの資料を作りたいんだけどさぁ」

前回のCMのように、向こうから来る話もあるはあるが、基本的に各部活に売り込む方がメインだ。
キャンペーンガール、モデル、イメージキャラクターなどに起用してもらえるよう、悠薇の写真付き資料を各部活に配る。その資料作成の為、一緒に服を見繕い、美容院でスタイルを調え、スタジオで写真撮影をする。

「っていうのを名目に、悠薇ちゃんをデートに誘おうってね」

最後、本音をダダ漏れにしながら説明する。

伊都波 悠薇 >  
「あの、なんかもうお受けしたみたいな話にいつの間にかなってるような……?」

『こいつ、しれっとその流れにもっていこうとしてるぞ! ナンパ師だ!!』

携帯ストラップはけん制しつつ、すでにできてる流れがなんとなくらしく感じた。
とはいえ――

「写真は、その困りますし……資料とかもその。それに――」

もごもごと口を動かし。

「ふ、二人でデートとか、恥ずかしすぎますし? 難易度高いですし、何か過ちがあったらあったでそれはそれで困りましまし寿司?」

目をぐるぐる回しつつ、あれやこれやと言い訳を並べ――

「と、とにかく……ふたりでは危険です!」

なんとなく、最終的な結論はそうなった

烏丸秀 > 「うーん、ダメかぁ」

残念そうに呟く。まぁ、確かに性急だろう。
特にアイドルなんかはこの方法で売り込む事が多いのだが。

「じゃあ、3人ならいい?」

ふっと思いつき尋ねてみる。
2人が危険なら3人ならいいじゃない。
安直だが、さて?

伊都波 悠薇 >  
「さんにん……」

三人……三人。
いやまて、それこそ知らない男子が来られてもこまるし。
まさかの万が一薄い本展開も困る。
しかし相手が詰めにきているのは、

『はるっち、ここは勝負だぞ!』

携帯ストラップが忠告してくれている。
考える。考える――そして思い浮かんだのは……

「あ……」

久々に、そういうのもいいかと思って。

「お姉ちゃん……」

ぼそっと、第三者を巻き込んだ

烏丸秀 > 「うん、お姉さんね」

お姉さん。
うん、もうお姉さんだ。
伊都波凛霞。烏丸にとって、既に『悠薇のお姉さん』でしかない彼女。

「うーん、両手に花になっちゃうなぁボク」

くっくっくっと笑いながらも、悪い気はしない。
彼女と凛霞が一緒に居るところ、見てみたい気もする。
そして、凛霞の反応も……

「ま、その分楽しませる事は保証するよ。
美味しい御飯に楽しい時間もね」

伊都波 悠薇 >  
「……?」

なんか、妙な違和感を感じるが気のせいかと思いつつ。

「……まぁ名前は確かに花ですけど」

片手だけじゃないかなぁと思いつつ。

「……それなら、まぁ。お姉ちゃんが良しっていったら、ですけど」

結局、是としてしまったが。まぁ悪い話じゃないよねと思いつつ

烏丸秀 > 「――んー、悠薇ちゃんはさ」

3人デートの話には頷きつつ。
ちょっとだけ彼女の顔を覗き込み。

「自分の評価が低すぎると思うんだけどなぁ。
もっと、素直に自分の事を認めてあげていいと思うけど」

少しだけ、彼女に踏み込んでみよう。
どんな顔をするだろう?
考えただけで――胸が躍る。

伊都波 悠薇 >  
「……?」

きょとんっとする。さっきまでの沈黙とはまた違う。
低すぎる? 自分が? いや、そんなことはない。
低いなんてことはない、いつだって。いつだって、自分はナイナイ尽くし。
雑草のようなものだ。はるか彼方に凛々しく咲き誇る霞には及ばない

「素直にって……認めてると思うんですけど」

考えた結果はそれ。
そう、認めている。自分のことを、否定したりとかは一切してない。
自分は、自分を認めてる。

自分は、妹なんだと。

「――それこそ、買い被りです。結果が出ないですし」

過程はどうであれ自分は結果がない。出なかった。
だったら、それは仕方のないことなのだ。

烏丸秀 > 「あぁ……」

そうか。
この子は、常に姉のまぶしい結果を一番近くで見せつけられ。
おまけに、自分は何の結果も出なくて。

「結果、結果ねぇ」

ここで『結果が全てではない』などと言っても意味は無い。
何故ならばそれは厳然として『姉にあり』、そして『悠薇に無い』ものだからだ。
所詮他人の烏丸が何を言っても、それは覆せない。
なら……

「まぁ、確かにお姉さん、優秀だよね。
ボクの趣味は骨董だけど、まるで完璧に、欠けた所の無い古伊万里みたいな人だよ」

うん、たとえがちょっと分かりにくかったかな、と言いながらも。
烏丸は話をやめない。

「――そのお姉さんの『結果』と君の『結果』、ボクには対して違うように見えないんだけどなぁ」

伊都波 悠薇 >  
「……そうですか?」

結果に違いはないという言葉を吟味する・
そこまで卑下することはない。低く見ることはないということだろうか。
まだ、否定も何もできない。
目の前の男性の言葉には続きがある

烏丸秀 > 「うん、結果に違いはない」

片や多くの人を惹き付け、数々の栄誉に彩られた姉。
片や俯きながら生き、人々に顧みられなかった妹。

「君たち姉妹は、確かに多くの違いがあるんだと思うよ。
お姉さんは、ボクから見たって魅力的だし、成績も優秀で、多くの人のアイドルだ。
一方で君は無名で、異能などもなく、これまでの人生であまり目立った事も無いかもしれない」

でもね、と。
烏丸は続ける。
熱っぽくもなく、真摯にでもなく。
まるで、好きな趣味の話をする時のように。
楽しそうに。

「それってさ、器の中身の話だよ。
注がれた人生は、確かに違うかもしれない。
でも、結局それ、『悠薇ちゃんという人間の結果』にとっては、対した事だとは思わないな」

烏丸が愛するのは器だ。
そこに注がれた人生ではない。

「イヌの御飯に使われた器だろうと、それに唯一無二の価値があるなら、豪奢な懐石を持った皿にだって勝るさ」

伊都波 悠薇 >  
「……好みの話って感じですね?」

くすりと笑った。
お姉ちゃんのような人が好きな人もいれば、自分のようなものでも好きな人がいる。
そういう意味なのだろう。
実際、自分のことを好いてくれる人はいる。姉とか、それに告白してくれた男の子とか。

「そういう話でいうなら、まだ私は唯一無二の価値を見つけてられないのかもしれません。もしくは、満足してないと言い換えたほうがいいかも」

壁がある。それを壊していく姿を見た。
山がある。それを登っていく姿を見た。
でも、でもどこか寂しそうだったから。
なら、その寂しさを。せめて埋められるようにしたいと。
それも難しいことになりそうだけれど。

「ありがとうございます。慰めて、くれて」

少し、弱いなと思う。
やっぱ一人のほうが強くあれる気がする。
だれかがいると、なにかこぼれ出てしまうから

烏丸秀 > 「全くその通り」

さて、人の生、己の生に興味が無いのがバレただろうか。
烏丸は人間が何を為すか、その生涯で何をしようとするかにまったく興味が無い。
ただ、あるがままの、特に歪み、壊れた、人間という器そのものを愛する。

「なかなか面倒な生き方を選ぶね――ボクにはマネできそうもないなぁ」

面白い事、楽しい事の方がいいや、とおどけながら。
それでも、彼女がそれを行くのは好ましい。
そうやって、追いつけないものを追い求め――

壊れる姿が、是非、見てみたい。

「まぁ、慰めにもなってないだろうけど。

でも、ボクは悠薇ちゃんの事が好きだよ、うん」

肩を竦めながら言う。

伊都波 悠薇 >  
「……あんま好きって言葉はさらっと言っちゃだめですよ?」

『わるいおとこだ……こいつぁあぶねぇぜ、ドキッとしたら即ぱったんだ……』

頬を書きながら。この人はそういう人なんだなと思う。
たぶん、見るのが好きなんだ。
なんでも、みるのが。だから、うまい。
人を見るのが、活かし方を思い浮かぶのが。
なるほどと、納得がまた一つ増えた。

「面倒といわれればそうかもしれませんが――
 なんとなく、寂しそうな笑顔で。それでもいいよっていう人がいるもので」

――そんな顔して言わないでよって、思いませんか?

くすりと、誰にも言わなかった、ちょっとした本音を口にした

烏丸秀 > 「ボクね、これでも一杯後悔したんだよ。
『あの時好きって言ってれば』ってね」

これは本当。
態度で察する、言葉で察する、目で察する。
そんなのは幻想に過ぎない。
人間は、好きという言葉で、はじめて好意を悟るものだ。

「――うん」

本当に、この娘は聡い。
精一杯考え、精一杯悩み、そして精一杯生きている。
他人には、それが分かりにくいだけなのだ。

「――本当は来て欲しくない。でも、面と向かっては言えない。いっその事、拒否してくれれば、諦めもつくのに?」

伊都波 悠薇 >  
――どんな経験をしたか推し量れないから。
自分ごときではそこに口を挟めない。
それこそ親友とかなら軽口とかをたたけたかもしれないが。

どこか、この言葉は重みを感じたから。

そうなんですかと、うなずくだけで止めた

「家族大好きですから。絶対言わないですよ。そんなこと
 それに、いまさら言われても。私の気持ちが収まりません」

そう。もういまさらなのだ。
もう、おいて行かれたくないと思ってしまった。
だったらもう、ここまでぞっこんにさせられた責任くらいはとってもらわないと。

「――お姉ちゃんのこと、大好きなんですよ」

烏丸秀 > 「――うん、そっか」

そうだね、と。
優しい声で呟く。
お姉さんのことが、大好き。

「きっと、お姉さんも悠薇ちゃんの事、大好きなんだろうね」

そっと手を伸ばし、彼女の頭に手を伸ばす。
なんとなく、彼女の頭をなでたくなり。
もっとも、嫌がればすぐに手を引っ込めるだろうが。

「うん、仲良し姉妹だね、本当」


ああ、そうだ、だからこそ。
それだからこそ。

(君がお姉さんを失ったら、お姉さんが壊れてる事を知ったらどうなるのか)


   ソノスガタガ
             ミテミタクテ
                        タマラナイ
    

伊都波 悠薇 >  
「……くすぐったいですよ?」

何の意図かは、わからなかったが払いのけたら気まずいかなと思ったので。我慢。
こみゅレベルが上がった気がした。

「……っと、そろそろいい時間ですね。私、運動してきます」

ふと時計を見れば、そろそろ動かないと夕ご飯まで帰ってこられなくなる。
それはまずい。

「……あなたは、どうしますか?」

烏丸秀 > 「あ、ごめんごめん、思わず」

からからと笑いながら手を引っ込める。
あぶないあぶない。ついスキンシップを摂りたくなるのは悪い癖だ。
ここは慎重に……

「ん、じゃあボクもお暇するよ。
あ、シュークリームの残りも遠慮なくどうぞ。
また作ってくるからね」

嬉しそうに言いながら立ち上がる

伊都波 悠薇 >  
「はい……それでは――」

……また?

ショッピングになるかはわからないけれど。
たぶんまた、会うのだろうと思い。
手を振って、見送って――

ご案内:「島にある大きすぎない病院」から伊都波 悠薇さんが去りました。
烏丸秀 > 「うん、またね」

手を振り、病室を出る。

さて、次は……

(お姉さんの番、だね)

ご案内:「島にある大きすぎない病院」から烏丸秀さんが去りました。