2016/06/19 のログ
ご案内:「転移荒野」に五代 基一郎さんが現れました。
ご案内:「転移荒野」にレイチェルさんが現れました。
五代 基一郎 > 以前の会合から少しして。

レイチェルを呼び出し、連れてきたのは転移荒野の一角。
そこでは時空が歪み霊気すらも安定せず淀んだ空気が漂う場所。

そこにレイチェルを連れてきて、怪鳥であるサマエルと共に
そこらが一望できる高台にてレイチェルに話し始める。

「さて……それじゃ始めようかレイチェル。
 レイチェル自身の意識としての欠点は前回言った通り。
 言い方は……わかりにくいかもしれないが、自分のみ意識が強すぎること。
 そして次は、となればその意識からまれる自分の存在意識……存在感の強さ。
 どんなに意識が変わっても、自分の存在を誇示するようであれば誰からしてもどこでも目立つ。
 存在感が強いっていうのかな。レイチェルの場合、異邦人ということもあるけど
 人より素の身体の出来が違うというのも、あると思う。
 ここらへんは……わかる?」

レイチェル > 「懐かしいな……。オレがこの世界に来て初めて踏んだのは、ここの土だった。
 あれから、ここへは来てなかったが……」

腰に手をやり、高台から未開拓の荒野を見回す。見覚えのある風景がそこには広がっていた。


「まぁ、自分で全部やろうとする意識がいけないってんだろ?
 そこはOKだ。何とかしてみるさ。
 意識して目立とうと思ってる訳じゃねぇが、まぁ……
 目立っちまってるのは確か、だな」

人差し指で軽く頬を掻いて、レイチェルはそう返す。
異邦人である以上に、『素の身体の出来が違う』と五代は言う。
まさにその通りである。表面だけ見たとしても、
ダンピールにして、身体の一部が機械に置き換わっている彼女の
身体は、他から見て特異なものであるのは間違いないことだ。

五代 基一郎 > 「自分では何でもないと思っている所作が、他者にとっては異物にもなる」

サマエルが飛び、鷹のように羽ばたく。
周囲を見渡すように飛んでいく。

「種族が違えば尚更ね。レイチェルは色々混ざっているから
 他の人から見ても、やはり何をせずとも違和感を感じることもあるんだろう。
 あと戦っていたことの影響かそういう戦いの場所だと気配がだいぶ強くなっている……かな。
 というわけで今日からは、そこを変える……鍛えるようにしよう。
 闇と同化する……周囲と同化するということは、己の気配を同調させることに他ならない。
 また落第街に行く前にこれを身に着けなければ結果は同じだろう。」

サマエルが再び降りてきて、一鳴きすればそれを承知したかのように
頷き、高台の下を見やる。

「来たぞ。地獄の亡者共だ。」

鬼か、骸か。巨躯か痩躯か……人非ざる者達。
別の時空か、またはこの世界の地獄の門が開いているのか。
眼下には続々とそれらが空間を通して湧き出て来ている。

「レイチェル。
 眼帯も、クロークも武器も魔術も異能も何もかも使わず体一つ。
 あそこで戦うんだ。いいか。
 己の気配をコントロールしなければ、ただ群がられていたずらに戦い続けるだけだ。
 周囲を見て、読み、感じなければあの地獄の亡者はお前をひたすらに狙い追い続けるだろう。
 異邦人ではなく、この世界の存在になるんだ。」

レイチェル > 「まぁ……自分の行動ってやつは、なかなか分からねぇもんだよな、どう見えてるか、
 ってのは。四六時中鏡を見てる訳でもねぇしよ」
肩を竦めてやれやれ、と頭を振り。

「そりゃ……一筋縄じゃいかねぇだろうな。同化、同化ねぇ。
 そういうのは慣れてねーが、まぁやってみるとするか」
首を二、三度横に小さく振り。高台から眼下を見据えるレイチェル。
湧き出る気配を感じ、目を細める。
同時に、五代の声がかかり、彼女はクロークの内に手を滑らせる。
普段通りの、染み付いた動きだ。あとは意志一つ、いつでも銃が抜き放てる。
やって来たのは、人外の化け物共だ。五代が地獄の亡者、と称すそれらの姿を
じっくりと観察するように、レイチェルは眼下を見渡していた。

「……ははーん、そういうことか。まぁ、あいつら蹴散らすだけだったら、
 ただの戦闘訓練《肩慣らし》だが、武器も異能も魔術も、縛るとなれば……
 そりゃ面白そうだ」
群れる化け物共を前に、臆することなくクロークを脱ぎ捨てる。
袖口に備え付けられていた銃器も外して地面に落とす。

最後に眼帯を外し、《右眼》の機能を最低限の視界確保が出来るレベルまで落とす。

「周囲を見て、読み、感じる……ねぇ。その上で戦え、か。ま、やるだけやってみるぜ」
全ての武器を取り払い、今や身ひとつとなったレイチェルは、普段通りに
高台から飛び降りようとして――。

「いや、こういうのもやめた方がいいか?」
そう口にして、迂回して下へ降りていくのであった。
待ち構えるは地獄の亡者。肩を回しながら、レイチェルは歩を進め、その距離を縮めていく――。

五代 基一郎 > 「自分が如何に見られているかは他者の目を通してわかるものさ」

そう。それは人に非ざる者でも同じ。
その見ている者を通して、鏡として己の姿を見る。

「己のことだけを考えているだけでは、何も変わらない。
 ただ打ち倒し蹴散らすだけなど誰でもできる。
 本質はそこではないんだ」

そして普通の武器を持たない人としては裸同然となったレイチェルが
高台の下に降りて行けば。
その気配を……生者の生気を感じた鬼達が爪と牙をむき出しにして襲い掛かる……

眼下でその戦いが始まるかという時。
サマエルと共にそれらを一望し、感じ取るかのように眺めそして……

■サマエル>「一昼夜で会得できるようなものではないのをわかって放り込んだな」

「出来る出来ないが重要ではないさ。他を通し己を見て、己が何者であるか
 この世界のどこにいるかということを感じれればいい。
 ただ戦い続けることになど意味はない。
 何のために戦うかをレイチェル自身が生み出し始めているのならば……これもまた必然。
 地獄の亡者共を鏡とすれば答えへの道しるべを見出すことも、出来るはずだ。」

レイチェル > レイチェルという生者の気配を感じて、一斉に群がる者達。
彼らは群れを成してただ一人の少女の命を狙って動き始める。
その様子を見て、レイチェルは溜息にも似た、小さな息を吐く。

「こういう輩は、何処の世界でも変わらねぇな。生きてる者を見かけたら、
 構わず襲ってきやがる。分かりやすくていい。好きだぜ、そういうの」
親指から人差し指、中指、薬指、小指。
一本一本の指を確かめるように。
その拳を握りしめるレイチェル。

「ほら来いよ、お前らの好きな生者の肉はここにあるぜ――」
まず眼前に飛び出して来たのは、動きの素早い亡者だった。
目にも止まらぬスピードで飛びかかる亡者。
常人ならばその爪と牙にかかり、一瞬の内に肉塊と化してしまうことだろう。
事実、気を抜けばレイチェルとてそうなり得る。

迫る牙、爪。それも一瞬の内に。

「――ありつけるかどうかは、別だがな」
対し。
レイチェルは真正面から、固めた拳で迎え撃つ。
狙うは頭部、ただ一箇所。
彼女の反射神経は、頭部を狙う、ほんの一瞬の機会を逃さない。

刹那、弾け飛ぶ拳。

凄まじいスピードでレイチェルに喰らいつこうとした亡者は、
頭部を失ったまま地にどう、と倒れた。

さて、一匹は仕留めたが、と。
レイチェルは辺りを見回す。次々とやって来る地獄からの使者達。
肩を回して、レイチェルは改めて拳を構えた。
戦い続けるだけでは仕方ない。五代の言った『同化』を実践しなければならない。
そうやって、しなければならない、などと言葉を思い浮かべるのは簡単だが。
さあどうしたものか、と。レイチェルは思案する――。

五代 基一郎 > 亡者と戦い始めたレイチェルを見てはいない。
高台で、折り畳みの椅子を出して座りひと息つく。

そう……高台から見下ろさなくても分かるぐらいにレイチェルを感じ取れる。
音だけではない。亡者達が狙うようにレイチェルの生きている気の燃え盛りが
遠くに離れていてもそれを感じさせるには十分であった。
レイチェルがダンピール、吸血鬼という種族としての繋がりがあるように
その身には人に非ざる力がそもそもに宿っているような種族としての差。
膂力や身体から滲み出すものなど……それらは獣を前にする人のように
種族が違えばよりハッキリと浮彫になるものだ。
姿や容姿が人と似ている分、人の世界では誤魔化されているのかもしれないが
このような種族として決定的に違い、また隔絶された場所であれば
レイチェル自身が闇の中で輝く灯火のように目立つ。

その生者の……力強い存在の灯火をめざし、歪んだ空間の狭間や
逆流する滝の中から鬼や亡者が次々と湧いて出てくる。
その生の肉を、血を切り裂き啜り貪るために。


「ただ力を極めて行けばただ殴り、屠れば何者でも破壊できるだろう。
 しかしそれはレイチェルが必要としている……これから手に入れ
 望む力ではない。ここでさえレイチェルならば、ただ戦い続ければ亡者たちの骸の山を築くことが出来るが
 それを、その果てを目指しているわけではないはずだ。
 レイチェル……己を見る全ては鏡だ。それを見出しそこに同化し
 同調を果たさなければ
 ここに来ずともいずれ修羅になるのは解かりきったこと……
 己だけではなく自分以外全てに目を向け感じるんだレイチェル」

レイチェル > ニ――。
すれ違い様、首を薙ぎ払う。
三――。
振りぬいた右拳で、頭蓋を打ち砕く。
四――。
左の手刀で、頭部を両断。
五――。
回し蹴りで体勢を崩し、肘で打ち砕く。

六――七――八――九、十――。
みるみる内に、レイチェルの周囲に地獄から溢れた死骸の山が積み重なってゆく。
地獄の亡者共を屠っている間、レイチェルの思考の先は『如何に目の前の敵を倒すか』
ではなく、『如何にこの状況下で周囲との同化を図るか』であった。
鬼や亡者は、次々と絶えることなく彼女を目指して、彼女を喰らわんと押し寄せる。
倒せば倒すほど、襲い来る彼らの数は多くなっているように感じる。
このまま倒し続けることは、得策ではない。かと言って、それならばどうするか。
まずはこの軍勢を振り切って距離をとるべきか、と――。

亡者の爪が思案する彼女の肩口を切り裂いた。
一瞬にして目の前の現実に引き戻されるレイチェルの意識。

「全ては、『鏡』……? 自分以外の全てに目を向ける……?
 ったく、難しいぜこいつは!」
彼女の手は、攻撃から防御に転じる。
亡者の攻撃を捌きながら、レイチェルは周囲を改めて見渡すのであった。