2016/07/24 のログ
五代 基一郎 > 「……帰ってきたらでいいからさ。花火しようよ。見に行ってもいいからさ。
 あと海。水着買ったし行こうよ。それに帰省の予定からだとたぶん八月の神社のお祭りは行けると思うし。」

確か、自分も手持ちの花火をしていた覚えがある。
庭で家族と……そんなふと思い出した思い出から、言葉が出れば
そこから続く様に夏の風物詩の話……話から予定を、と続く。

綾瀬音音という少女がどうして出来上がったのかは知っている。
それが良いというものでもないだろうことも、知っているが……
その出来上がった”普通の少女”を求めてしまった。
高い適応と融和性からまるで見えないようにされているズレという名前の
本来あるだろうものから目を逸らすように……”普通の少女”を通して”普通”を求めている。
それはわかっているが、それに甘えるように……今はまだ、と

その呑気な少女の笑顔に返すように他愛もないことを話しているなと
自嘲なのか、自分の愚かさなへの嘲りか
それとも、いやそれがもう既に楽しみになっていることが表れているのか
くだらないことを話しているように笑いながら

「まぁね……俺もと思うけどやっぱりムラが出来るかな。
 なんかやる時にやるっていうのかな……でもまぁ偉いよ、そういうのは
 大体みんな最後らへんでやるもんでしょ。
 ……?飛行機なんだ。空港にはいろいろあるしそりゃまぁそうだけど……
 飛行機ね。飛行機……結構離れてるわけか、よくここまで来たもんだよ。」

北方はそんな感じなのだろうか、と綾瀬の話を聞きながらカレーをつつく。
南方には東急だか東洋だかが頭についたディスティニーだかガーランドだかというテーマパークがいくつかあると聞いていたが……
綾瀬の話を聞くに、北方にはそういった派手さのある観光施設はないようであり
一体どこに住んでいるのかと思う。温泉地にというならば山岳部が近いのだろうか……

「一応だよ、一応。わかってるけどさ。こういうのは様式美というものでね。
 ……まぁほら話聞いていると音色さん?姉君は忙しいようだし二人同時にお会いすることもないだろうから
 その問題は当分来ないから聞かないし、大丈夫だよ」

何が大丈夫なのか。自分に言い聞かせるわけでもないが
聞く限り彼女も来年度のことで忙しいようである。
来年度こちらに来ると言うのなら別だが、異能がどうとでもない限りそうはない。
そう思うととても子供みたいな話を以前していたが、結局彼女とは会うことはないのだろうとも思う。
手紙越しのやりとりはあるかもしれないが……

そんなことを考えていればやはりカレーの減りは速い。
綾瀬がしっかりとその味に満足している前でもうすぐ空になるかというもので
店員の学生を呼び止めてお代わりをと言えば”またですか。伝票書く前に言ってください”
と叱られて平謝りをしてはついでにコーヒーをも頼んだわけであり

以前ここにきてどうの、というのよりもずっと……
ここは日常の世界だった。

綾瀬音音 > ―――――――。
はい、そうですね。
花火に海にお祭りに。
楽しいこと、沢山んしましょう、ね。
(一度だけ、きょとんと目を瞬かせてから。
いつものように、しかしいつもよりも嬉しそうにへらっと笑う。

なんだか男の笑顔がいつもと違うような気がして、それがなんだか嬉しいような、少しだけ切ないような――締め付けられるような。
そんな複雑な感情を抱きつつ、それでも矢張り自身の気持ちの置き場所は定めなかった。
多分それに形――名前を付けてしまうのは酷く簡単な事なのだろうけれども。
だけれど、それがどういうことなのは自分が一番良く知って理解しているのだ。
だから、彼と同様に、今はまだ。

非常に曖昧で居心地のいい感覚で押し通す。
ずるいのは百も承知だが、ちょっとくらいの猶予があってもいいだろう。
夏はまだ始まったばかりだし、楽しいことの後でもきっと良い。

時間は待ってくれないのも解ってはいるのだけれど)

一気に片付けるきになれば出来ますよ?
今年は特別ですしね。
そうなんですけどね……最終日に泣くのは凄くしんどいと思うんですけど。
ここから結構遠いですよ?
空港から更にちょっと移動します。
またかって言われそうですけれど、音色ちゃんが奨めてくれたんです。
異能を持ってるんだし、色々とそのほうが良いだろうって。
実際異能に付いて学べる場所は限られてますし
(勿論北と言っても相当に広いし、発展した都市部もあるし目立った観光地もあるが、自身の故郷は片田舎だ。
テーマパークは冬期の運営が厳しいのでめっきり数を減らした、とは聞くが詳しくは知らぬ。
地図で示せば多分――そこって何があるの? と訊かれかねない場所である。
その程度には田舎であり、それでも住むには全く不自由ない程度にはモノがある……半端な場所であった)

解ってます。
受験生ですからね、中々に忙しいみたいです。
私もそろそろ進路考えないとーなんですけどね。
―――――見分けれるって信じてるから大丈夫ですよ。
(自分は1年先送りにしているが、本土ならば受験生であったはずなのだ。
相変わらずの宙ぶらりん――半端にしていることがあまりに多いが――状態を維持している事実に目を此方もやっぱりそむけるようにして。
会うか会わないかは解らないが、前に宣言しているのだし、見分けられるのだろうと此方も良く解らない確信で思う。
どちらにしても、姉とこの男が会うとすればそれはちょっとした異常事態、なのかもしれない。

早いですねー、なんて皿を空にしてしまった男に笑いつつ、ついでに自分もショートケーキを頼んで同じく店員に謝ったりしつつ。


当たり前で、当たり前ではない日常に埋もれるように、夏の話は続く)

ご案内:「喫茶店」から五代 基一郎さんが去りました。
ご案内:「喫茶店」から綾瀬音音さんが去りました。