2016/08/12 のログ
ご案内:「常世記念病院」に烏丸秀さんが現れました。
ご案内:「常世記念病院」に伊都波 悠薇さんが現れました。
ご案内:「常世記念病院」から伊都波 悠薇さんが去りました。
ご案内:「常世記念病院」に伊都波 悠薇さんが現れました。
烏丸秀 > さて、ご対面といこう。
彼女は果たして……

「そういえば……」

彼女に初めてあった時も病院だった。
あの時は、確かメロンシュークリームを持っていったんだか。

「……色々あったねぇ」

そう、色々と。

コンコン、と部屋の扉をノックする

伊都波 悠薇 > 返事は特にない。
無音。静か――特に何も音はなく――
ぴっぴっという機械音だけ流れている。
起きてはいるはずだ。生きてはいるはずだ。

でも――

烏丸秀 > 「失礼するよ」

ここで遠慮する男ではない。
ドアを開き、部屋へ。
彼女以外は誰も居ないようだ。

「やぁ、悠薇ちゃん」

にっこり笑い、ベッドの傍へと近づく

伊都波 悠薇 > 外を、見ていた。少女は、初めての時と同じように。
しかしそれとは違う、空気をまとって――

「……――」

呼ばれれば、首がぐるんっと向く。
表情は――”無”。
笑ってはいる、が、そこに”表情”というものは感じられなくて――

「あ、烏丸さん。こんにちは」

ほほんだ――
笑みなんてない、口角を釣り上げた、それだけの顔で

烏丸秀 > その表情を見て烏丸は悟る。
あぁ、そうか。
あと一押し。
あと一押しがあれば……

「あんまり元気、無いのかな?」

ふぅ、と息を吐きながら、ベッドの脇の椅子へと腰掛ける。
あぁ、どこまでも、あの最初の時と同じように。

伊都波 悠薇 >  
「いいえ、元気ですよ」

こくりと、うなずく。
元気でないわけがない。なにせ、呼吸もしてるし。
別段、なにか怪我をしてるわけじゃない。
ただの”使いすぎ”だ。
だから休んでる今、元気なのは当然だ。

「烏丸さんは、元気ですか?」

烏丸秀 > 「ん、なら良かった」

何処か虚ろな彼女。
さて、そこにあるのは……

「うん、ボクはそれなりに。
――お姉さんとは、最近どうだい?」

伊都波凛霞。
彼女の姉。
――道は、どうなったのか。

伊都波 悠薇 >  
「――少し、変わっちゃいました」

困ったようにつぶやいた。
変化というのは成長のあかしで、成長というのは英雄にはつきもので。
姉の幸せには不可欠だから、喜ばしいことではあるのだが――

「どうやら、私は――いらないみたいです」

その事実は、少し。困ると、少女は告げる

烏丸秀 > 「いらない?」

ふむ、なるほど。
烏丸は顎に手を当て、少し考える。
あの姉に限って、いらないとは言わないだろう。
という事は……

「凛霞に限って、悠薇ちゃんをいらないとは言わないと思うけどねぇ」

つまり、いらないと思っているのは彼女自身。
「彼女の思う姉妹の世界」から、伊都波悠薇がいらなくなった、という事だろうか。

伊都波 悠薇 >  
「――そうですか?」

首を傾げた。
静かに、静かにゆっくりと。こきんっと垂直に曲がったのではと錯覚するほどの――動き……

「でも、”あのひと”は、”凛霞さん”になりましたよ」

ワラッタ。ケタと、けたけたと。
大変、面白そうに――少女は、ワラッタ

烏丸秀 > ――烏丸は、その表情を見て。

とても愛おしそうに笑った。

「ねえ、教えて、悠薇」

最早気兼ねせずに呼び捨てにする。
あぁ、あと少し。
あと一押しで……

「君のその力――お姉さんとの繋がりを、最初に感じたのは何時だい?」

伊都波 悠薇 >  
「――さぁ。いつでしょう」

静かに静かにつぶやいて。視線を窓へ。
外の風景に向ける。

「つながりなんて、勝手にあるものだと思ってましたから」

そんなこと、わかりませんと、つぶやく

烏丸秀 > 「大事な事なんだけどなぁ」

ふぅ、と溜息を吐く。
落ち着け、あと一歩。
まだ油断するな……

「幼い頃。何か、凛霞と君に、大きな出来事は起こらなかった?
何かの、きっかけになるような」

伊都波 悠薇 >  
きっかけ、と言われれば。少し考えるように――

「大きなこと、かどうかは分かりませんが――」

ふぅっと息を吐く。

「護ってくれました」

ただ一言だけ―― 一言だけ……

烏丸秀 > 「護ってくれた?」

――当たりだ。
いや、当たりかどうかは分からない。
だが……

「凛霞が、君を護ってくれたのかい?」

幼い姉妹に訪れた転機。
それがきっと……

伊都波 悠薇 >  
「そうですよ」

こくり、頷いた。よい、思い出だ。
もう、思い出になってしまった。

思い出になんて、したくなかったのに――

「姉、だからと当然の様に、護ってくれたんですよ」

あぁ、こんなにも色あせていないのに。
どうして、思い出なんてしないといけないのか――

烏丸秀 > 「姉だから、ね」

少し泣きそうな表情をしているか。
だが、烏丸は構わず踏み込む。
彼女の中へと。

「凄いね凛霞は、小さい頃から君を護ってくれたなんて」

ふふっと少し笑う。
そして――

「でも、どうやって? 小さい頃なのに」

伊都波 悠薇 >  
「どうやってでしょうね?」

ふっと、ワラッタかもしれない。
でも、表情は見えない。ない、虚無――
なにせぽっかり穴が開いてしまった。
なにかを埋めた姉とつり合いをとるように――

「――お姉ちゃん補正、かもしれません」

烏丸秀 > 烏丸は彼女の中身になど興味は無い。
むしろ、邪魔な中身が無い今こそ、彼女は一番輝いて見える。
そう、だから――

一番輝いている今だから、この手で

「――ねぇ悠薇、一から思い出してみて」

ゆっくりと、物語を言い聞かせるように。
つとめて優しい声音で。

「凛霞は、君を何から、どうやって助けてくれたんだい?」

少しずつ、顔が悠薇の方へと近づく

伊都波 悠薇 >  
「何を言ってるんですか?」

ケタケタケタケタケタ。

思い出して? 思い出す?

だから言っているだろう。
色あせてなどいないのだと、”過去―うしろ―”は自分のテリトリー。

「――――ずっと、そこにいますよ」

ふっと笑った。今までで、一番すがすがしい笑顔だった。
自分はどこにも言ってない。成長していない。

ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと
ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと
ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと
ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと
ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと


ずーーーーーーーーーーっと

「あげませんよ。烏丸さん。これは私の器です。誰にも、渡しません」

烏丸秀 > 「あぁ、なるほど」

烏丸は頷いた。
あの鋼鉄の精神、そしてあまりにおかしいあの『無能』。
つまり、は。

「なるほどね、そりゃあそうだ。『三人』で分けていれば、才能も幸運も、足りなくなるわけだよ」

彼女の生み出したそれは、別の人格なのか別の存在なのか。
それは分からない、が。

「悠薇ちゃんが壊れそうになるたびに、君が出てきていたのかい?」

伊都波 悠薇 >  
「三人? いいえ、二人ですよ。変なことを言いますね、烏丸さん」

ケタケタケタケタ。
ただただ、笑ってる。
普段通り、いつも通り――

踏み出すことは誰も許さない。
誰も許可しない。歩き出すのはいつもあの人の役目だ。

「私は私。妹の、伊都波悠薇です。勝手に、妄想、しちゃやですよ?」

烏丸秀 > 「妄想はキミの得意分野だろうけど。
でも、ボクの妄想には、あと1ピースだけ足りなくてね」

美しい悠薇は消え去った。
ここにあるのは、そう――

「過去、キミと凛霞は何かの災厄に見舞われた。
そこで何か『幸運と才能の総量が減る事態』が起こり、姉妹はお互いの才能と幸運を分け合い、共有する事になった」

妄執。
過去を認めず、独占し、悠薇を過去から遠ざけようとする。

「ねえ、教えてよ。一体キミ達に何が起こったんだい?
それが分からないと、ボクは悠薇を諦めきれないよ」

伊都波 悠薇 >  
「――そうですか?」

きょとんっと、足りないといわれれば。考える。
なにせ友人のお願いごとだ。聞いてあげるのが礼だろう。
彼は姉を助けてくれている。この前も、今日も、これからも――
だから――

「簡単ですよ」

ふわり、微笑んだ。
それは――”化け物になりたがってる――……”

「何も違いがなかったお姉ちゃんがまぶしくてかっこよくて、
 どこか遠くに行っちゃうのが、嫌だった。それを見ているだけの自分が嫌だった
 せめて、見ている場所で。見えている場所で――置いていかないで。そう、願っただけです」

そして、異能が芽生えたのかどうかは分からないけど。

「”英雄―おねえちゃん―”にあこがれた、ただ。それだけですよ、烏丸さん」

烏丸秀 > カチリ。
ピースの嵌った音がした。

さあ、扉を開こう。
願わくば――

「そうか。キミは願った。そして異能が発現した。そう――こう願ったんだね」


烏丸は再び微笑んで彼女を見て、言葉を紡ぐ。


『置 い て 逝 か な い で』

伊都波 悠薇 >  
「――……」

にこりと微笑む、その顔は――
肯定も、否定もない。
ただただ柔らかい――いつもの悠薇の表情で。

「少し、疲れました。一人にしてください」

まるで誰かを待つようにほほえむ。
これからが大変なのだ。烏丸という、友人に感謝を。
こうして”予行演習”ですら、手伝ってくれたのだから。

「――さよなら、烏丸さん。お姉ちゃんのこと、お願いしますよ?」

烏丸秀 > ここまでか。

最後の扉は、予想以上に固かった。
これで砕けてくれるかと思ったが――
残念だが、その役目を負えるのは、彼ではないらしい。

だが、良い。
人は終わりを選ぶ権利がある。
彼女が終わりを姉に望むのならば、烏丸如きが介入できるものではない。

「――さようなら、愛していたよ、悠薇ちゃん」

烏丸は立ち上がり、彼女に背を向け、病室の外へ向かう。

彼女の終わりが破滅であろうと。
それとも再生であろうと。

彼の愛した悠薇は、二度と戻ってはくるまい

伊都波 悠薇 > 「はい、私も大好きでしたよ。友達として」

ごめんなさいと、いつものように笑えば。
そっと、外に視線を移した――

「お姉ちゃんを、一回、手に入れてなかったら――わからなかったかもしれませんね?」

なんて、つぶやきを残して――

烏丸秀 > 烏丸はその言葉には答えない。
彼はいつだって、己の行動に疑問を持たない。

その過程が彼の望んだものならば、どのような結末でも肯定する。

そして。


いつだって、本当に欲しい物は手に入らないのだ

ご案内:「常世記念病院」から烏丸秀さんが去りました。
伊都波 悠薇 > ――さて……

「ごめんなさい。似合わないって言われたけど、これしか私にはなかったよ」

独白。誰に言うわけでもなく――

「ごめんなさい。姉妹とか偉そうに言って――その言葉嘘にしちゃいそう」

――謝る。

「好きって言ってくれたのに、応えてあげられなくて、ごめんなさい」

――その言葉は、夏の風と蝉の鳴き声に消えて――

「ごめんなさい、馬を見に行けないかもしれないです」

ただただ、それしかすることがないというように。

「――ごめんなさい。いろいろ、勉強手伝ってくれたのに」

色あせぬ自分の場所を、過ぎ去って。

『ごめんなさい、やっぱり価値なんてわからないよ』

そして、最後に――


「――ごめんなさい」

置いて行かれるくらいなら――

    もう、必要ないというのなら――


「――置いていくよ? ”―――……”」

かすれた言葉が、こだまする

ご案内:「常世記念病院」から伊都波 悠薇さんが去りました。
ご案内:「Free1」に伊都波 悠薇さんが現れました。
ご案内:「Free1」から伊都波 悠薇さんが去りました。