2016/08/30 のログ
■東雲七生 > 「いてて……」
傷の治りはどの程度だろう、と十分ほどして腕をお湯から上げてみる。
ちいさな切り傷が1つ、2つ……腕だけで5つほど。これらがどうして付いたのか、七生にはとんと解らなかった。
まるで不可視の攻撃でも突然受けた様で、何だか心がざわめく。
しかし、どう気配を探ってもこの辺りには自分一人で、殺気も敵意も害意も感じない。
「んー……変なの。」
その傷の原因が、自分の背に生えた翅にある事には全く気付かない。
■東雲七生 > 「……よいしょ、と。」
お湯の中で身体を動かしても、傷口にお湯が沁みなくなった。
七生は確かめるように一度身体を揺すって、それから念押しする様に再び腕を見る。
腕についていた傷は蚯蚓腫れの様になっていた。ついさっきまで出血するほどだったにも関わらず、だ。
「うーん、相変わらずの治癒力……。」
背中の翅ともども、普段以上に人間離れしている様に思える。
……いや、
──実際に人間ではないのかもしれない
「……なんてな。」
そんなはずないだろ、と自分に言い聞かせるように呟いて、
七生は背中の翅を僅かに震わせた。
■東雲七生 > 「さーて、夏休みももう終わりかー……」
うーん、とお湯の中で腕を伸ばしながら感慨深げにつぶやく。
今年は一度たりと教室に足を運ばなかった。補習で缶詰になるのは去年だけで良い。
七生は少し体の力を抜くと、ふわぁ、と欠伸を漏らし。
「新学期は何しよっかなあ……そういや、免許も取ってみたいんだよなあ。」
二輪二輪、とのんびり呟きながら空を見上げる。
入った時は夕暮だった空が、もうすっかり暗くなっていた。
■東雲七生 > 「免許……免許。
先生以外で暇そうで二輪車乗ってそうな……」
心当たりが一人居た。
ばしゃ、と水音を立てて立ち上がる。濡れた翅から水が滴り落ちた。
「よし、今年中に俺も二輪乗れる様になろう!」
自分が載って様になるかは分からないし、きっと走った方が早いけど。
七生はそう決心すると、家に帰るべく、お湯から出て脱衣所らしき掘立小屋へと向かうのだった。
ご案内:「露天温泉」から東雲七生さんが去りました。