2016/10/23 のログ
相楽 満 >  
「うん、それで?」

目をぱちくり。
右手の小指を耳に突っ込み、ぐりぐりと回して見せる。

「まぁ俺がいきなり聞くことでもないかもしれねーけどさ」

前のめりになり、膝の間で指を組む。
まっすぐ射抜く様な、鋭い視線。
にも関わらず、先ほどまでと変わらない笑顔。

「そんなら、疲れて、寂しくて、助けてほしいって懇願は?」

 

東瀬 夏希 > 「……!」

そこまで聞いていたのか、と言う驚きの表情。
だが、即座にそれもそうだと納得する。あの小さな嘆きを聞き届けたのだ。
その前の声も、聞こえていたのだろう。

「少しばかり……疲れただけのことだ。私は一人でここに来ていて、寂しかったのもある。
聞き流してほしい。何より……」

少し区切って、自分の手を見つめる。
―――その目は、どこか遠くを見ているようだった。

「私に、救われる資格などない」

相楽 満 >  
「そうじゃねーよなぁ。
 だって東瀬、すげーイヤな『音』するもんよ」

んむーっと口を横に引き結んだ。
どうも意固地だな、と。

「いや別に俺はお前が救われるかどうかとか、そういうの考えてないし。
 俺はその顔色、どうも好きじゃねーんだ」

ちょっと考えて。
こちらを見ていない、少女の顔を見る。
かつて、まだ無理をしていたころの恋人の表情を重ねて。

「逃げられねーものもあるだろうし、やりたいこともあると思うけどさ。
 とりあえず、辛いこと吐き出すのは悪くないと思うぜ」

東瀬 夏希 > 「『音』?」

訝し気に首を傾げる。異能であろうか。
そこで、改めて目の前の青年を観察する。
……見たところ、異端ではない。確認したいところだが……。

「……話せるようなことでもないのだ」

それ以上に、この質問をどうにかせねば。
これは自分が抱えるべき業だ。辛くても苦しくても、背負い続けなくてはならないものだ。

相楽 満 >  
「うん、『音』が。
 ごめんな、ちょっと抽象的な言い方で。
 俺もよくわかんねーんだ、コレ」

新しい異能っぽい、と呟く。
自分でもよくわかってないのだ。

「まぁそれはなんとなくわかるよ。
 でも、そろそろそれが重くて仕方ねーんだろ?
 ちょっと軽くするくらいしとかないと、そろそろ生まれたての小鹿みたいな足取りになるぜ」

そんな風に言って。

ぶふっといきなり噴き出した。
顔を横に向けて、声を押さえて笑い出したのだ。

たぶん、生まれたての小鹿みたいな足取りって言葉に自分でウケてる。

東瀬 夏希 > 「……そうか」

この学園では、異能を持つものがその使い方を学ぶと聞く。
つまりはそういう事だろう。己の異能を研鑽するとともに、研究する段階なのだ。

「何を笑っているのだ……そうだな。
なら、そこの剣を取ってくれ。そうしてくれれば、少しだけ話そう」

普段ならこんなにあっさりとはいかないのだが、やはり弱っている。
それを自覚も出来ないまま、壁に立てかけてある『Anti Heresy Holy Weapon Series Prototype『Innocentius』』と刻印されたブロードソードを指し示す。
……この剣は、と言うよりAnti Heresy Holy Weapon Seriesは全て、法化素材で作られている。
よって、異端であれば持つことすら出来ない。持てばその身を浄化作用で焼かれるからだ。
つまり……異端かどうかの試し、である。

相楽 満 >  
「あー、うん、ごめん……
 マジごめんって……
 生まれたての、小鹿……」

まだ笑っている。
が、なんとか落ち着いて深呼吸した。

「ん、この剣?
 わかった」

立てかけられた剣に近付き、それを手にする。


びり、と手に浄化の力が走る。


それが広がる ような 納まる ような 不思議な動き


しかし相楽満本人はまるで気付かず、片手で掴んで夏希の前に差し出した。

「この剣が何か関係あんの?」

不思議そうな顔で尋ねた。

東瀬 夏希 > 「……自分の言葉に自分で笑うとは、よくわからん人だ」

ジト目で言いつつも、インノケンティウスが運ばれて来れば、それを受け取る。

「そうだな、関係あると言えばある。
……私は、ある吸血鬼によって、家族を失った。
その仇討ちをしている途中なのだ」

敢えてさらっと流すように言う。
それだけだ、と。大したことではないと言わんばかりに。

相楽 満 >  
「ほんとゴメンって……」

申し訳ない、ともう一度謝っておく。
ツボったものは仕方がない。

「あー、マジか……そりゃ大事だよな。
 んで、そろそろ修行にも疲れてきたって感じか。
 早く見つけてブッ殺せりゃいいな」

にへっと笑顔を浮かべて告げた。

東瀬 夏希 > 「……止めないのだな」

少し驚いた風に。
大抵、復讐だなんだといえば、そんなことは止めろと言われるものである。
他の異端狩りにも、それはよくないと言われたことがあった。
その程度で止まる気もないのだが……それでも、このように背中を押されたのは驚きだった。

相楽 満 >  
「え、だって親とか兄弟のカタキだろ?
 そんなんブッ殺さなきゃ気が済まねーじゃん」

驚きの表情を浮かべられたのが驚きだ。
家族の敵討ちなどと聞いて、やめておけなどと言えるはずもない。
自分も、家族はもちろん、恋人や友人が殺されるようなことがあれば、全力でお礼参りに行くだろうから。

「まーだからさ、カタキ討ちするにも健康が要るじゃん。
 体は資本ってやつ。
 今は無理したって仕方ねーよ、まず休もうぜ?
 カタキは……まぁ逃げるだろうし、死ぬかもしれねーけど。
 逃げるんなら捕まえてブッ殺しゃいいし、死んでたら死体蹴っ飛ばして笑ってやりゃいいんだよ」

へらっとゆるい笑顔を浮かべて、そう告げた。

東瀬 夏希 > 「……本当に、分からん人だ」

くす、と。
珍しく笑みをこぼし、ちょっと失礼なことを口にする。
だが、何故だろう。少し心地よかった。

「そうだな。私は少し焦っていたのかもしれない。
……医者の言う通り、安静にせねば。急がば回れと言うしな」

そして、人に話すことで、確かに落ち着くことが出来た。
少なくとも、焦っていた自分を自覚は出来たようだ。

相楽 満 >  
「えー、マジ?
 ていうかどうせカタキ討ちとかやめとけって言ったって、東瀬は聞かねーじゃん?
 だったらいっそ、完璧にボッコボコにしてきてやれーって言ったほうが爽快じゃん」

シュッシュッとシャドーボクシングの構え。
相手が笑ったのが嬉しかったのか安心したのか、満も満面の笑みだ。

「そーそー、そうするべきだって。
 まずはのんびりして、美味いものでも食べて、もーこれ以上ないってくらい最高の気分の時に!
 花でも摘むみてーに気軽にブッ殺しにいきゃいいんだよ」

こう、ぶちっと。花を引っこ抜くようなモーション付きで言い放つ。
な?と同意を求めるのも忘れずに。

東瀬 夏希 > 「はは、その通りだ。
……私はもはや止まることは出来ん。復讐を果たさねば、生きていけんのだ」

刹那、夏希の瞳が暗い炎を宿す。
復讐に全てを捧げたもの特有の、何も見つめていない、暗く輝く瞳。
この世の地獄を目にして、そこで時が止まってしまった者の目だ。
だが、目を閉じて首を横に振り、言葉を紡ぐ。

「居場所がわからんのが問題だが……そうするとしよう。
手遊びの如く狩りとってやろう。そうするためにも、まずは万全にならなくてはな」

相楽 満 >  
「うん、んでカタキ討ちが終わったら、また別の生きがい探しすりゃ問題無いし。
 ……未婚の女性云々って話もしたし、さっさと恋人でも作ってみるのもアリじゃね?
 恋人はいいぞー、なんかもう……こう、恋人が居るって思うだけで豊かになれる」

腕を組み、自分の大切な恋人を思い浮かべながら、そう呟く。

夏希の目には少しだけ覚えがある。
かつて不治の病に犯され、異能が発現するまでの間は、自分もあんな顔をしていた気がする。
死が、絶望が、自身を停滞させてしまう気持ちはよくわかるのだ。
だからこそ、たとえ敵討ちでも彼女が輝けるなら、それは捨てさせてはいけない。

「んじゃ、ちゃんと休んでろよー。
 学校で会ったら、ジュースとかおごってやるからな」

そろそろおいとま、と椅子から立ち上がり、ぐっと腰を逸らして伸ばした。

東瀬 夏希 > 「別の生き甲斐か……考えたこともなかったな」

異端審問教会に入ってから、死ぬまで異端狩りのみをするのだと思っていた。
だが、それ以外にも……何か、探すのもいいのかもしれない。
全ては仇を殺してからだが。

「はは、その時はお願いしよう。
……ありがとう、助かった」

頭を下げる。
間違いなく、自分はわずかだが救われた。その礼は言わなければならない。

相楽 満 >  
「おう、なんかあったら先輩に頼れよ。
 別に俺じゃなくてもな」

ぐっと親指を立ててサムズアップ。

いい顔になった夏希を見ながら、ひらひら手を振って病室を去った。

ご案内:「病室」から相楽 満さんが去りました。
東瀬 夏希 > 「……時と場合に依るな」

曖昧な言葉を返しながら青年を見送る。

「頼る、か……」

思えば、何でも一人でやろうとしてきたように思う。
少しは、頼ることも覚えるべきなのだろうか……そう思いつつ、そのまま眠りについた。
ともかく、安静にせねば。

ご案内:「病室」から東瀬 夏希さんが去りました。
ご案内:「病室」に飛鷹与一さんが現れました。
飛鷹与一 > ――目が覚めたら、そこは何故か見知らぬ天井でした。ゆっくりと瞼を開く。相も変わらず死んだ魚の瞳。
覇気も光も無いその視線を、ゆっくりと天井から周囲へと向ける。
個室…白い無機質な調度品。薬品のような匂いが微かにする。緩慢な動作で気だるそうに身を起こしていく。

「……ここ、は……病室?」

学生御用達の病院だろうか?しかし、特に怪我をした記憶も無ければ病気になった覚えも無い。

「――…頭痛が……嗚呼、思い出した…」

僅かに残る頭の鈍痛に顔を顰めた。研究所での検査を受けていたのだが、薬物か何かが合わなかったらしい。
それで急性の症状を起こして担ぎ込まれた、と。そんな感じだろう。自身がモルモットの延長なのは承知している。

「…流石に、病院に担ぎ込まれるのは初めて…かな…」

飛鷹与一 > 「……個室、じゃあないみたいだな…大部屋か…」

改めて周囲を見渡す。自分が寝ていたベッドの他にも幾つかベッドや仕切りのカーテンが並ぶ。
が、どうやら今現在は他のベッドはもぬけの空のようだ。自分だけ寝ていたらしい。

「……ん…この鈍痛はまだ続きそうだな」

軽くこめかみ辺りを押さえて。どんな薬物を使ったか知らないが…こちらの身にもなって欲しい。
いや、建前はこちらの異能の解明だから助かってはいるのだろう…進展は無いが。

「……休日なのが幸い、だったかな…いや、休日が潰れたのはアレだけど」

さて、目が覚めたはいいのだが…医師も看護師さんも居ない。ナースコールするべきだろうか?いや、巡回に来る可能性もあるし…。

「……後でいいか。どのみち、あまり動けそうにない気がする」

呟いて、試しにベッドから抜け出して立ち上がろうとしてみる…が、若干くらりと眩暈がしてベッドに尻餅。
もうちょっと鍛えた方がいいのだろうか…いや、研究所の薬物のせいだからあまり意味が無さそうだ。

飛鷹与一 > 「……研究所に異能の検査を依頼したのは失敗だったかな…また倒れたりするのも嫌なんだけど…」

立ち眩みを起こした直後なので、そのままベッドに座り込んだ態勢を保ちながら一息。
周りは静かだが、病室は基本静かなものだろうな、と思い返し。
――病院には当然良い思い出なんて無い。そもそも良い思い出を得る場所でもない。

「…と、いうか制服姿のまま寝かされてたのか俺…扱いが雑な気が…いや、まぁいいんだけど」

自らの格好を見下ろす。幸い貴重品は持ち歩いていなかったので、万が一だが盗られたという事も無さそうだ。
再びベッドにゴロリと仰向けに寝転がる。流石に見舞いなんて来る人はまず居ないだろうし、相変らず医師や看護婦が来る気配も無い。

(…まさか完全に忘れられてたりしないよな……むしろ俺の異能のせいだったら…有り得ないって訳じゃないのが嫌になるな)

飛鷹与一 > 「…いいや、もう少し寝ていこう…」

異能のせいで地味に気苦労が耐えない為、多少なりとも心労が溜まっている。それが体の疲れにも現れているらしい。
そのまま目を閉じれば、やがて数分後には静かな寝息を立てている事だろう。

ご案内:「病室」から飛鷹与一さんが去りました。
ご案内:「総合病院」に斉藤遊馬さんが現れました。
斉藤遊馬 > ごほ、ごほ、ごほ。くぐもった咳が三回。
狭まった気管に掠れるような呼吸の音が、己の内側を通って少年の耳に届く。
マスクの内側、湿った空気に犯されて、顎に張った絆創膏が気持ち悪い。
右手の甲で抑えるようにして擦れば、ピリッとした痛みが走った。
「……っつ」
待合室の中、身動いで。
手の甲で、マスクの下の絆創膏を強い力で抑えたまま、固まる。

斉藤遊馬 > 遠くから聞こえるざわめき。人々の会話し、動き回る音。
痛みの波が過ぎ去ってから、手を離した。
一息つくように深く呼吸をすれば、ばりっ、と痰の絡む音。
咳き込みそうになるのを、ぐっ、と抑えて。ゆっくりと咳払いをした。
改めて落ち着いて呼吸をしてから、ベンチの上、座り直す。
くらくらする頭の内側、倦怠感の混ざった目で、周囲へと視線をやった。
己に負けず劣らず体調の悪そうな人間たちが座っている。
季節の変わり目。寒暖の激しい最近の気候にやられたのだろう。

斉藤遊馬 > その中のひとりである少年は、己の前に並んでいた患者が、
また一人呼ばれるのを眺めながら。背凭れに体重を預けた。
唾液を嚥下するのも酷く億劫で。
目を閉じて、時間が過ぎるのを待つことだけが許される。
それを邪魔するものは、ポケットの中の振動。
右手が鈍い動きで引き抜いた、携帯電話。
まだ真新しいそれの画面の中。
メッセージツールの吹き出しに並んだ文字を見て。
もそもそと指先で操作すれば、スタンプ1つ返す。
ポケットに改めて携帯を仕舞い込んだ。

斉藤遊馬 > 再度目を閉じれば、風邪によって鈍くなった聴覚が、
少しだけ鋭敏になったように感じる。
医師と患者の会話する声。
ピンポーン、と鳴る通知音。
自動ドアの開く音。
ヒールがリノリウムの床を叩く音。
意味のない音たちが、頭の中で踊る。
考えるにも靄の掛かった脳の間で、聴覚だけが働いて。
『斉藤さん さいとう あすまさん 5番にどうぞ』
耳に入った意味ある音、言葉に反応し、思考が再起動した。
右の手が、乗った車椅子の操作バーを押せば、前へ進む。
開いたドアの向こう。医師の待つその場へ向かって。

ご案内:「総合病院」から斉藤遊馬さんが去りました。