2016/10/28 のログ
ご案内:「常世保健病院」に龍宮 銀さんが現れました。
■龍宮 銀 >
(目を覚ました。
見覚えのない部屋の中のカーテンに仕切られたベッドに寝ている。
部屋の様子を伺おうにも、仕切られたカーテンしか見えない。)
――ここ。
(病院だ、ということはわかる。
ということは、自分は入院しているらしいと言う事もわかるのだけれど、何故入院しているのかがわからない。
その理由を思い出せない――と言うよりは、それを思い出すと言う事に考えが至らない。
頭の中にモヤが掛かっているように思考がはっきりせず、また思考をはっきりさせようと言うことすら思いつかない状態である。
当然自身が倒れる直前にしていたことなど思い出せず、ただぼんやりとベッドに寝転んだままカーテンを眺めている。)
ご案内:「常世保健病院」に真乃 真さんが現れました。
■真乃 真 > この世界の常識が通じないこの島においてすら信じられない非常識というものは存在する。
例えば、全くなにも聞かずに何も言わずにお見舞いに来たり!
「龍宮さん!大丈夫だったかい!?」
病院で叫びながらカーテンを開けたり。
『誰ですか!あなた!』「ごめん!間違えた!」
しかも、開けたカーテンが隣の人の場所だったりする奴の事である。
この、異様に長い白タオルを首に巻いたこの男のことである。
■龍宮 銀 >
――?
(唐突に騒がしくなった部屋。
聞いたことがある声。
だけどその声の主の顔がぼんやりとしか思い出せない。
その騒ぎを見に行く事もせず、そちらの方をカーテンの内側からじっと見て。)
■真乃 真 > 『新しく入った人ならあっちですよ!あと、病院でうるさくしないでください!』
「ああ、ありがとう!」
そんなやり取りの後、カーテンが閉まる音。
そして…
「龍宮さん!大丈夫だったかい!?」
カーテンが開くとそこには男がいた。
白く異様に長いタオルを首から伸ばした男だ。
先ほどよりも若干声のボリュームが下げられている。
手にはおそらくお見舞いだろう。果物の入ったカゴを持っている。
■龍宮 銀 >
(隣での会話のあと、カーテンが開く。
光の無い瞳で彼を見て、)
――真乃、せんぱい。
(その名を思い出した。
目に光が戻る。)
先輩――ごめんなさい。
(そうして思い出す。
彼の視線から逃げるように俯いて、小さく呟いた。)
■真乃 真 > 「ああ、僕だ!」
どうやら意識は戻ったらしい。
運ばれた時は意識がなかったと聞いていたから…。
「ちょっと、待った!何で謝るんだい!?
ありがとうならともかく謝られる覚えはないな!」
前回、倒れた時に少し安むと良い!と伝えて実際彼女は普段より仕事の量が減っていたと聞く。
なら特に今謝られる理由はない!
「それに謝るなら僕の方だ。
多分倒れる時に電話してくれただろう?その時すぐにいけなくてごめんな。」
■龍宮 銀 >
でも、先輩、心配してくれていたのに……。
(倒れることがあってはならないと、こちらの身を案じてくれていたのに、それに応えることが出来なかった。
それはつまり、期待を裏切ったと自身が感じるには充分であり、謝る理由には充分すぎた。
シーツをぎゅっと握り、唇を噛む。)
せんぱいは、悪くないです。
先輩にだって都合ありますし、こうしてお見舞いにも来てくれましたから。
(少しだけ笑う。
その笑顔は困ったようなそれ。
しかし彼が来た事を困っているのではなく、ばつの悪い表情であることはすぐにわかるだろう。)
――それに、私思い出したんです。
謝らなきゃいけないのは、そのこともあるんです。
■真乃 真 > 「それこそ、気にしなくてもいいさ!
後輩を心配するのは先輩の義務だからね!
気をつけた上で倒れたのならば君は悪くないよ!」
誰が悪いというならば、原因をしっかりと考えなかった真が悪い。
もう少し、しっかり休むように言わなかったのが悪い。
…いや、それに関してはもう終わっている。
「そうかい?
そう言ってくれると少し楽になるよ。
あっリンゴ食べる?」
持ってきたカゴをサイドテーブルに置く。
そう、主な目的はお見舞いである。
「思い出した?
…何を思い出したんだい?」
やさしく尋ねる。手にはリンゴ。さて、どうやって剥こうか?
尋ねてみたが、想像はついていた
あのファイルを見て倒れたのだ、思い出したことなんて限られる。
■龍宮 銀 >
――ありがとう、ございます。
(正直、あまり深く考えていなかった。
言われたとおり仕事は減らしたものの、大したことは無いと考えていたのだ。
ああして資料室で倒れたのも、自分の体調を正確に把握していなかったからこそである。
複雑な表情をしながらも気にするなと言われたので素直に頷いておく。)
真先輩は、ヒーローですから。
あ、おかまいなく。
(まだ何も食べる気にはならない。
おなかは空いているのだけれど。)
――二年前より前のことです。
私ひとりだと思ってたんですけど、違いました。
ずっと励ましてくれた人がいたんです。
ずっと傍にいてくれた人がいたんです。
(再び俯いて喋り出す。
そうだ。
資料室であの事件のことを調べて、思い出した。
何故今まで忘れていたのかはわからないけれど、それは思い出した。
忘れちゃいけないことのはずだったのに、忘れていた事を思い出した。)
――真先輩。
私、「先輩が一緒に居てくれてた事」、忘れてました。
(「思い出した」。)
■真乃 真 > 「いや、僕はヒーローじゃないよ。
僕がヒーローなら…
みかんもあるよ、要らない?そう?」
ヒーロならきっと彼女が倒れることは無かった。
倒れる前に助けられることが出来た。
ヒーローというにはあまりに力が足りない。
「二年前より前…」
二年前、彼女が風紀委員に助けられる前。
真には想像もつかない地獄。
「ああ、その人が龍宮は…
えっ?僕!?僕!?」
龍宮鋼。彼女の姉の名前だ。
その名前を言おうとしたとき出てきた。
思わぬ人物に驚きリンゴが床を転がった。
「…もう少し落ち着いて考えてみて欲しい、龍宮さん!
ちょっと記憶が混乱してるんじゃないかな?」
■龍宮 銀 >
いえ、ヒーローですよ。
少なくとも、私にとってはヒーローです。
(助けに来るのが間に合わなくても、自身にとって彼は間違いなくヒーローなのだ。
掛けただけの電話でこうやって病院まで来てくれたのだし、何より。)
何言ってるんですか。
先輩がずっと一緒に居てくれたから、今こうして普通の生活に戻れたんです。
先輩が居なくてひとりだったら、私とっくに壊れちゃってました。
(あの地獄を「一緒に過ごして」、その間「ずっと支えてきてくれた」のだから。
その「思い出した真実」を考えれば、彼は「間違いなく」自分のヒーローなのだ。
嬉しそうに、笑う。)