2016/11/02 のログ
ご案内:「深夜の農業区」に谷蜂檻葉さんが現れました。
■谷蜂檻葉 > 農業区。
産業区と合わせて島の自給を影で支える離島一つを範囲に設定させられた区画。
離島という立地のため基本的に交通機関を使って渡るのが一般的だが、
大半の例外が揃う学生達は各々好き勝手にこの地区に足を運ぶことが出来る。
とはいっても、そう多くはないのだが――――
「……さて、この辺りかしらね。」
農業区上空。
深夜に差し掛かる非居住区は完全に人気を失い、遠くから動物や虫の音が多く聞こえてくる。
■谷蜂檻葉 > 「さて、下見に来た畑はこの辺だし『彼』が来てもおかしくないんだけど……。」
ゆっくりと、檻葉は両手で落とさないようにスマホを眺めながら高度を落としていく。
画面にはマーキングされたデジタルマップが表示されており、
彼女が散歩(回遊、のほうが近いかもしれない)でここまで足を伸ばした訳ではないのは明確だ。
「―――………待つ、しかないかな。」
暫く地面に足をつけたままキョロキョロを闇の深い遠くの林に視界を向けていたが、
やがて諦めたように腰元にくくりつけていたポーチからシートを取り出すと地面に引いて座り込む。
ご案内:「深夜の農業区」にライラさんが現れました。
■ライラ > 蝙蝠の群が飛んでいる。
フラフラとフワフワと特有の軌道で夜の空を行く。
「珍しいのぅ、夜中に空で誰ぞに逢うとは思わなんだわ。
どこかの魔女と待ち合わせかえ?」
群れから声が響く。
その声は落ち着いた女性のそれだ。
■谷蜂檻葉 > 多くの黒く影を落とす塊が転がる畑の中で、シートに寛いで魔法瓶でほっと息をつく檻葉。
時折、野生の動物達が遠くに見える中ぼんやりとそれらを視線で追う隠居人のような時間を過ごしていると
パタパタと騒がしく空を走るコウモリたちに視線を移したその直後
「――――?」
はて、と空を仰いだまま首をかしげる。
「……いえ、待ち合わせと言うか待ちぶせというか。」
聞き間違いか、それとも。
そうではないのだろうと、内心確信してコウモリたちに声を放る。
■ライラ > 蝙蝠達が降りてくる。
それらがまとまると黒いドレスをまとった女性の姿になった。
抜けるように白い肌が夜闇に浮かぶ。
「待ち伏せかえ。
獣を相手にするような格好でなし……逢引ならわらわは邪魔じゃのぅ」
扇で顔の下半分を覆い隠す。
■谷蜂檻葉 > 「まぁ、獣ではないですけど言葉の通じない相手ですからね。」
飲みます?と差し出すカップには温かいココアが入っている。
こうして降りてくるその姿は何処か、神聖さ―――もしくは妖艶さすらあるのだが。
「『ジャック・オー・ランタン』を探してるんです。
この辺り、ハロウィン用のカブとカボチャの栽培園なんですよ。
……ほら、そこのおっきなやつ。 4年生の子が悪乗りして大きくしすぎた失敗作の2作目です。」
あたり一面の、カボチャ、かぼちゃ、南瓜………。
幾つかはその場で悪戯に掘ったのかニコニコと舞い降りる吸血姫を笑顔で迎える。
ふと雲の晴れた月明かりが地面を煌々と照らし上げれば、橙の畑の奥に白く輝くカブの畑が目に映る。
「『彼』から、少し授業に使う”オモチャ”を貰おうと思って……ただ、見つからないんですよねー。
昨日下見に来たときには彼が来た痕跡を見つけられたので場所は間違ってはないんですけど。」
■ライラ > 「いただこうかの。
眠りからさめてから、今の世の食事は美味いものが多いでな」
食べ道楽である。
というか、基本が道楽者なのだ。
「ああ、あやつか……。
確かにここには気配が残っておるな。そのうちに顔を見せるじゃろう」
見事な大きさじゃな、味は知らぬが とコメントをしつつ、そのカボチャに腰掛けて。
受け取ったカップに口をつけた。
「甘いのぅ……確か、砂糖やカカオは貴重品じゃった記憶もあるが。
人はどんどん開発していくのぅ」
■谷蜂檻葉 > 「……あなたは」
しみじみと呟く「怪奇!蝙蝠女!!」にどう問うかしばし迷うが、
幾つかの候補を消して端的に問う。
「『伝承の吸血鬼《ヴァンパイア》』でいいのかしら? それとも、別の何か?
それと、カップは一つだから返してね? もうだいぶ冷え込むもの、寒いのはあまり好きじゃないの。」
要件が終わったらさっさと帰るつもりってぐらいね。
と、甘味から人の進歩に思いを馳せる伝承生物を急かす。
■ライラ > 「いかにも。
嘗ては黒薔薇卿と呼ばれておったノスフェラトゥじゃ。」
吸血鬼かと問われれば、あっさりと認める。
「ああ、それは悪い事をしたのぅ。
わらわは気温などはさほど気にせぬゆえな」
飲みきって、カップを返す。
「しかし、お主は……また、ずいぶんと変り種じゃな。
最初は取替え子かとも思うたが。
混ざっておるように視えるぞえ。元から近かったのかもしれぬがのぅ」
少しだけ、食欲が刺激されたのか己の唇を舌で舐めた。
■谷蜂檻葉 > なるほど。と声なく頷き、そのまま気温は気にしないという言葉に今度は小さく
「損した…。」
とぼやいた。
親切は人の為ならずというが、吸血鬼にもこの桶屋の法則は通じるのだろうか?
返してもらったカップで、改めてココアを注ぎ込んで暖を取る檻葉。
また遠くを見るように暗がりに目を向けていたが、ふと視線を戻す。
「”手を取り合っている”―――って言ってくれればそれでいいんですけど。」
唇を舐める吸血鬼に、鼻を鳴らして半目でガンを飛ばす。
細かく小さく鈴虫のような翅音を鳴らす六翅は小刻みに揺れて燐光を撒いており、
それは警戒のようにも見えるし、何かを知らせるようにも見える。
■ライラ > 「損とは限らぬぞえ?
行いは報われねばならぬ。 恩には恩を返さねば、家名に泥を塗ってしまうでな」
そう言って、地面を足で軽く踏みつける。
何かを探るように目を瞑っていたが、ほどなくして少しばかりの金属が顔を覗かせた。
「金や銀は、いまだに価値があるのであろう?
妖精族と近しいならば、銀の方が使いやすかろう」
顔を覗かせた金属が、姿を変えていく。
意思をもった蛇のようにライラの体を伝い、掌へ。
「そんなに睨むでない。吸血鬼としての性みたいなものじゃ。
お主とて目の前に美味しそうな果実があれば喉も鳴ろう?
さて、妖精の愛しい子よ、望みの形はあるかえ?」
それは水銀のように不定形に姿を変えている。
■谷蜂檻葉 > 「いえ、まぁ。 大して気にしてないので構いませんけれど。
―――とはいえ、そう。
返される恩義を受け取らないのもまた不義理というものですし?
ええ、金もいいけれど銀も、……(魔法素材として授業単位取得に繋げやすいので)良いものですね。」
どこか不貞腐れたようなセリフから美しい手のひら返し。
翅は開き、ユラユラと揺らしながら小雨のように燐光を散らす。
更に形を問われれば
「インゴットで。」
即答である。
そしてプランB《見つからないときの保険》にする気満々である。図太い。
■ライラ > わかりやすいのぅ と苦笑して銀は延べ棒になった。
ややボリュームは足りないが。
なおインゴットには、蝙蝠の印が押してある。
無駄に細かい。
「わらわの家紋を刻んだものを潰されてはかなわんからの」
褒美をとらす と冗談めかして贈呈する。
「後はそうじゃのぅ、おぬしの探し人はそろそろやってくる頃合じゃろう。
わらわはそろそろ別の場所を散歩しようと思うが……まぁ、お主なら大丈夫じゃろう。
亡霊と意思の疎通ができればよいな」
■谷蜂檻葉 > 「―――――…………ええ、勿論。」
非常に、長い沈黙があったが檻葉はそう言って微笑み彼女から銀のインゴットを受け取る。
「……と、ようやくお出ましか。
ありがとう、吸血鬼《ヴァンパイア》さん。
会うには困るけど、ツテはあるから心配無用よ。貴女も、もう2時間もしたら雨になるから気をつけてね。」
やる気を出して立ち上がり、さり際のライラに声をかける。
その視線は空を見ているようで、より近く。
空を走る青白い風の精霊を見て、注意を促した。
■ライラ > 「雨か、まったく面倒じゃのぅ。
そのまま日が昇っては目も当てられぬ。
仕方がないのぅ……今宵は戻るか」
無駄に色っぽいため息。
「それではな、妖精の愛しい子よ。
礼にならぬかもしれぬが、蛇に気をつけた方がよいかもしれぬぞ」
それだけ残して、吸血鬼は蝙蝠の群れに変わっていく。
群れはそのまま学生街の方に消えていった。
ご案内:「深夜の農業区」からライラさんが去りました。
■谷蜂檻葉 > 「蛇、ねぇ。 ……猫なら知ってるんだけど。」
そう独りごちると、林の中に音もなく現れた紅の灯火を見つけてゆっくりと歩み寄っていった。
―――その日の明け方、南瓜をかぶった奇妙な飛行少女を見つけた朝の早い生徒が何人か居たとか居ないとか。
ご案内:「深夜の農業区」から谷蜂檻葉さんが去りました。