2016/11/19 のログ
■シング・ダングルベール > 「さて、校舎の方は展示が結構あった。美術部あたり凄かったな。
しかしここいらだと展示品なんてそうは……屋台とか?
さっき来る途中だったか、よくわからない肉とか売ってたよ。
あとラクダとか。ワニとか。……食えるのか?」
■セシル > 「どうやら、予期せぬサプライズになってしまったようだな」
はっはっは、と楽しげに笑う。本当に無自覚なのか、それとも。
「せっかくの休日で、祭りなのだから、多少着飾っても罰は当たらんだろうな。
…そうだな、シングがどのような私服選びをするのかは興味がある。
貴殿の体格では、店を探すのも大変かもしれんが」
セシルと並んですら、10㎝以上高い背丈に、肩幅などは比べるまでもない。
自分が贔屓にしている異邦人街の店は使えないな、などと思いながら、楽しげに笑った。
「ああ…後者の方は巡回ついでに軽く覗いては見たな。学生の活動、といっても侮れんものだ。
…でも、こういう街の活気を「一個人として」楽しむのも良いものだな。
屋台は故郷でもあまり縁がなかったから楽しみだ」
よく分からない肉については、「この世界にいる動物ならどこかで食べられているんじゃないか?」と楽天的に軽く笑って。
いざ、屋台の並ぶ街並みへ、と。
■シング・ダングルベール > ■???「やだーシングちゃんなになに? オマセなお年頃なのぉ?
もう年末だしそういう時期よねぇ、わかるわぁー!
おばちゃんそういうのわかっちゃう。ンモーそっちの子お肌キレイねぇーーー!」
と、出迎えてくれたのは2mは軽々と超える強烈なおばちゃん。
二足歩行しているワニ、という風体である。
「うちの常連客でシャニおばちゃんです。」
いきなりのハラスに青年は顔を覆う。
じゅううと焼かれた串焼の肉が、そ知らぬ様子で香ばしい音を立てていた。
■セシル > 二足歩行のワニ、といった風体の屋台の主に肌を褒められれば、少し驚いたように何度か瞬いた後、人の良さそうな笑みを浮かべた。
「特別な手入れはしていませんよ、日に負けないように保護する程度です。
…ですが、お褒めに預かり光栄ですよ」
声を聞けば、セシルが男性とはあまり思えないだろう。
「シャニさん、ですか。
セシル・ラフフェザーと言います。彼とは、「友人」の間柄と認識しています」
シングへのハラスメントに対する援護射撃のつもりか、穏やかに釘を刺して。
それでも、刺の立たない声の出し方で、穏やかににこやかに会話をしている。
「…それにしても、いい匂いですね。
二本、頂けますか?」
ちらと、一瞬シングの様子を伺って。
もちろん、一本はシング用のつもりである。
■シング・ダングルベール > ■シヤニおばちゃん「いいわよいいわよ。折角だもの、お題は結構よ!
この子友達あんまりいないし、仲良くしてやってちょうだいねぇー!」
「あっはい……お気遣いありがとうございます……。」
身長が割合減少しているかのようなぐんにょり感。
受け取る串は焼き鳥のよう。でもそことかとなく一粒がでかい。
「ところでおばちゃん、これ何の肉?
異様にジューシーというか。よくわからんけど……うまい……。」
■シヤニおばちゃん「何ってドラゴンよ。」
「はああ!?」
■セシル > 「おや…いいのですか?
それでは、せっかくですからお言葉に甘えますね」
串焼きを渡されて、「ありがとうございます」と朗らかに笑って受け取った。
いじられる対象ではないからか、気楽なものである。
…と、串焼きに噛み付く前に、わずかな躊躇。
それでも、かぶりつけばその美味に顔がほころび…よく味わって、飲み込む。
「ドラゴンか…私の故郷では既にほぼ過去の生き物だったが。
こちらでは食べられてしまうのだな…しかも、美味いときた」
飲み込んでから、そんな感想を零す。すごく、自然に受け入れている。
■シング・ダングルベール > 「いや、俺だって食べるのはじめてだよ……っていうか、食えたんだ……。」
■シヤニおばちゃん「あさイチで転移荒野に出たのを〆たのよぉ~~。
ささ、こんなところで油売ってないで、他まわりなさい他!」
とバシバシ背中を叩かれて追い立てられる。
■シング・ダングルベール > 「なんだったの、あのテンションは……。」
食べきったあとの串をぶらぶらと咥えながら散策は続く。
「なんというか、いきなりの出来事でほんとこう……申し訳なさ……すまな……ごめ……。
大自然の驚異の前に、人ってなんでこうも無力なんだろう……。」
■セシル > 「ははは、強いご婦人は頼もしいですね」
仕入れ経路を聞き、朗らかに笑って。
シングが追い立てられれば、「ありがとうございました」とシヤニに軽く頭を下げてから彼に伴って歩いた。串焼きを食べながら。
「彼女なりに、貴殿のことを気にかけているんだろうが…難しいな。
私のことは気にしなくていいよ」
屋台が見えなくなってから、少しだけ困ったように笑いながらシングにそう声をかける。
「大自然の驚異…シヤニさんは普通に文明の中にいる方だろう?」
不思議そうに首をひねる。が、そのついでに食べ終わった後の串を捨てられるゴミ箱を探して辺りを見回し…
「………フライドアイスクリーム?」
何か、変な屋台を見つけた。
■シング・ダングルベール > 「フライド……? アイスを揚げる?
溶けないのか、それ?」
■セシル > 「聞くだけ聞いてみるか」
すたすたと、屋台の方に近づいていくセシル。
「すみません、フライドアイスクリームというのは…」
と恐る恐るセシルが尋ねると、屋台の主が快く説明してくれた。よくある質問らしい。
いわく、衣をつけたアイスクリームを念入りに冷やし、その上で超高温の油でさっと揚げることで中のアイスが溶けきるのを防ぐらしい。
熱々の衣と中の冷たいアイスのハーモニーがおすすめなのだそうだ。
『いかがです?』
にこやかな屋台の主。
「…どうする?」
セシルは、不安4割、好奇心6割といった眼差しで、シングの方を振り返った。
■シング・ダングルベール > 「乗った!」
『まいどありー。』
目の前で油の中に放り込まれるアイスクリーム。
確かに溶ける素振りもないが、これ本当に火を通して大丈夫か? と怪訝な顔でまじまじと見入る。
さっと菜箸が拾い上げ、視線がそれに追従する。
「ほ、ほんとうに揚げた……。
これやっぱりソースとかかけるのか……!? マ、マヨネーズとか!」
■セシル > 『やだなぁ、アイスですよー?
トッピングは甘いソースと生クリームです。ソースは選べますけどどうしますかー?』
トッピングには、チョコレートソースやストロベリーソース、キャラメルソースや生クリームなどなどがあるようだ。
「私は、ストロベリーソースで」
興味深そうに揚げる行程を見ていたセシルだったが、トッピングは即答だった。
■シング・ダングルベール > 「ソースは普通にパフェみたいだな……〇〇サンデー。みたいな。」
じゃあ俺生クリームで、と。
興味に惹かれるまま一口。ざくりと軽妙な食感。
「あ、うま。」
■セシル > 「ありがとうございます」
『普通のアイスより溶けるの早いですから、気をつけてお召し上がり下さいねー』
お代を払い、出来上がったものを受け取る。
少しの逡巡の後、シングと同様にかぶりつく。
「………本当だ、衣とアイスがよく絡むなぁ………」
未知の感覚に、こちらもご満悦のようだ。
■シング・ダングルベール > 「でもこれ急いで喰わないといけないから慌ただしいな。クリームもう液化してる。」
袋の中はクリーム液でいっぱい。最後に傾けて流し込む。
満足げな顔をして、遠くを見つめた。
開放型の小さな自然公園。小さな人だかり。
「なんだろ、あれ……。 ああ、演武か?」
曲がりくねった蛮刀を両手にそれぞれ1対。
背後に控えた太鼓や笛の楽器隊の演奏を受け、戦士たちは無言で猛る。
「ああいうのはアリなタイプ?」
■セシル > 「ん」
こちらは溶けきる前に食べていました。早い。
唇についたクリームやらをぺろりと舐め取る。
「…演武…実習区でやるものかと思っていたが、こちらでもあるのだな」
身体を傾けるようにして、戦士達の舞のごとき動きを何とか視界に入れる。
「そうだな…他の文化圏の武術を見るのも興味深い。
…貴殿が構わんなら、見に行きたいな」
そう、演武の様子を伺うようにしながらぽつりと。
■シング・ダングルベール > 鼓笛のリズムで戦士たちが乱舞して、初冬と言うのに珠のような汗が迸る。
蛮刀同士の打ち合いが始まれば、額に飾った尾羽が揺れる。
一人また一人と打倒される戦士と、それを打ち倒す戦士。
ただ一人勝ち残ったその戦士は、高らかに雄たけびを轟かせた。
寒空に地鳴りのような声が響く。
間。
一転して静まり返る。
途端の沈黙にギャラリーがざわつき始め、追い立てるように太鼓が打たれた。
それは小さく、やがて少しずつ大きく。
最後に残った戦士がリズムに合わせて首を振り、体を揺らす。
そして最後に、双の剣先をセシルに向けた。
まるで舞台へといざなう様に。
■シング・ダングルベール > 「あー……もしかして、『かかってこい』って、そういうことなのか?」
■セシル > 実際に打ち合いが始まる。
蛮刀のぶつかり合う高い音、そして…自分に向けられた切っ先。
「………普段の格好であれば、喜んで受けるのだがなぁ」
苦笑いを浮かべながら…コートとニットカーディガンを脱ぎ、コートを羽織り直す。
コートの前をしっかり閉じて…どうやら、友人と買った私服に瑕疵が出来るのが嫌らしい。
「…これを、預かっていてくれるか?」
そう言って、脱いだカーディガンをシングに差し出した。
■シング・ダングルベール > 「あ、ああ……。構わないけれど……大丈夫か?
無理しなくてもいいんだぞ……!?」
受け取りつつも、困惑しきり。本当にやる気か?と。
■セシル > 「…まあ、一曲分くらいで引き上げてくるよ」
カーディガンを預かってもらえば、苦笑いながらもそう言って舞台に上がる。
抜いた剣は、いつものレイピアではなく、もう少し太さがあるサーベル。
受け流しを重視してのことだろうか。
その顔には、剣士の張りつめた表情がくっきりと浮かんでいた。
■シング・ダングルベール > セシルの参戦を受けて、楽器隊の演奏はより激しさを増してゆく。
肉厚の蛮刀を振り乱し、戦士は勇猛に襲い掛かった。
体格差は雄に30cm以上。リーチ、膂力、鬼気迫るような迫力と、セシルを遥かに上回る。
ざわつくギャラリー。心配そうな声もあがる。当然だ。
しかしそんな声もすぐに鳴り止むことだろう。
彼女の地力からすれば。そしてそれを、ただ一人彼は知っていた。
「頑張れーッ!!」
その一言をきっかけに、周囲のギャラリーもまた熱を取り戻す。
■セシル > 「…!」
すっと腰を落とし、軽やかに身を翻すセシル。
剣を受けるでもなく、まずかわした。
次に剣戟が迫ってくれば、身を逸らしつつわずかにサーベルを当てて相手の剣筋を逸らす。
リーチ差があるということは、内側に入ればセシルの方が小回りが利くということでもある。
くるくると軽やかに相手の周囲を回りながら、受けと避けに徹するセシルは、本当に舞っているかのように見えるだろう。時折、音楽のリズムに合わせて、わざと強めに音を立てながら剣を受け流してみせる。
足の動きを確保するために腰から下はボタンを留めていないコートが翻った。
■シング・ダングルベール > 「おおっやるじゃん!」「すげー!」「いいぞーっ どっちもがんばれーっ!」
後追いでギャラリーの声援も飛ぶ。
その光景を見て、シングの顔もどこか誇らしげだ。
戦士の剣戟はまるでそれ自体が打楽器のように、セシルとの打ち合いでさらにリズムを刻む。
盛り上げるは背景の演奏隊。鼓笛のリズムはテンポを早め、一合一合激しさを増していった。
そして熱狂が最高潮に達したとき……戦士が大きく飛び上がり、双の蛮刀を一息に振り下ろす!
■セシル > 鼓笛のテンポが上がっていっても、セシルはそのテンポに合わせての受けの剣を続けていた。
そして、やってくるクライマックス。
たっと、相手の刃が届く前に前に飛び込み、転がって相手の双刀をかわす。
コートの背で綺麗に受け身を取って、そのまま相手の戦士の懐へ再度駆け込む。
相手がこちらの方を振り向くだろう瞬間を見極めて、相手の首筋に、サーベルの切っ先を突きつけようと。
■シング・ダングルベール > 「「「「おおーっ!!」」」」
拍手喝采大喝采。
老若男女どころか人種、生まれた世界すら違う人たちが、同じ光景を見て歓声をあげている。
演奏隊や倒れていた他の戦士たち、またセシルと対峙していた戦士たちも駆け寄り声援を浴びた。
その中心にはセシル。飛び入りゲストに一層の声援が送られる。
■シング・ダングルベール > 『しばらくして』
■シング・ダングルベール > 「いやあ、すごかったなあ。『舞う』っていうのは、ああいうことを言うんだなあ!
こう、シュバっと? 俺が女の子だったらもう、たまらないよ。
むしろ今にでも女の子になりそうだ。」
■セシル > 「私はもっぱら軽い剣しか扱えんからな、その分はああして補うしかない」
喝采の中にいた現代服の美貌の剣士は、友に「褒めてもらうのは光栄だがな」と語って軽やかに笑った。
…が、「今にでも女の子になりそう」の発言には、くすりと意味有りげな笑みを零して、
「男だろうと女だろうと、私は誰かと「そういった仲」になるつもりはないよ」
と、今まで通りの朗らかな口調で、あっけらかんと言い切った。
■シング・ダングルベール > 「それが君らしいと、俺はそう思うよ。
誰かと番いになる姿も想像できないしね。いやそれは失礼か。……失礼か?
『惚れ惚れする』とは思ったけど、この場合は語弊があるな……なんだろう。
なんというか、技巧であったりだとか、あり方であったりとか……違うな。
単純に『凄い』と思う。いやあ……陳腐な表現だけど。はは。」
手札の中から選ぶようにして、捻出した言葉は幾分かシンプルなもの。
少しの難しさを感じながらも、直な気持ちを表す。
「今日はありがとう。新鮮だった。
オフは基本的に書籍に埋もれてるから、こう、インドアなんだ。
おばさんが言うように、友達付き合いも得意じゃないし。その。言葉選びも得意じゃない。
……のは、今ので伝わってるか。
だけど。でもよかったら、次も遊ぼう。
ほんとうに楽しかったんだ。」
■セシル > 「まあ、自分を男だと思っているわけではないが、女だという意識もさほどないからな。
想像出来ないのは妥当なところだろう」
からからと、快活に笑う。そういったことについて何を思っているのかを、自分自身に対してすらひた隠しにして。
「剣士と魔法使いではあり方が違って当然だし、お互い、自分にないものが眩しく見えるのもおかしなことではないさ、きっと。
…褒め言葉は、有難く受け取っておくよ」
そう言って、柔らかく笑った。
「そうだな…たまには人と遊ぶのも悪くないんじゃないか?
多忙なはずの風紀委員だって、暇ができればそのくらいのことはしているんだ。
言葉選びも、そうしているうちに慣れるだろう。
ああ、また一緒に遊ぼう…今度は、シングの服でも見に行くか?」
そう言って、楽しげな満面の笑みとともに、快活な笑い声を発した。
■セシル > そうして、異邦人街の祭典を楽しんだ2人。
彼らは、名実共に「友人」となったと言っていいだろう。
様々な文化・文明が、人々が入り交じる街の賑わいは、まだまだ続きそうだ…。
ご案内:「異邦人街」からシング・ダングルベールさんが去りました。
ご案内:「異邦人街」からセシルさんが去りました。