2016/11/20 のログ
ご案内:「私室」に龍宮 銀さんが現れました。
龍宮 銀 >  
(夜。
 お風呂から上がったら、ケータイが鳴っていた。
 見れば、知らない番号からの電話。
 少し迷って、通話ボタンを押して耳に当てる。)

もしもし。
――もしもし?

(電話の向こうで息を呑むような音。
 それっきり、何も聞こえない。
 もう一度声を掛けてみても、反応はなく。
 いたずら電話だろうか、と眉を顰めたところで、)

『――間違いだ』

(その一言と共に電話は切られてしまった。
 間違い電話を掛けておいて謝罪の一つも無いなんて。
 思わず画面を見る。)

龍宮 銀 >  
(だけど、その声がなんとなく耳に残っている。
 低い、女性の声。
 何かを必死に押さえ込むような、微かに震えていたその声が、どうしても気になって。)

――うん。

(着信履歴から、今の相手に電話をかける。
 彼女が誰に掛けようとしていたのかは知らないけれど、その声は助けを求めるそれだったような気がしたから。
 だったら、知らないふりをするなんて出来ない。
 先輩だったら、そうするでしょう?

 電話のスピーカーからコール音が鳴る。
 一回。
 二回。
 もしかして、本来掛けようとした相手に電話を掛けているのだろうか。
 そう考えたところで、繋がった。)

龍宮 銀 >  
『――なんだ』

(さっきと同じ低い声。
 さっきよりは、落ち着いているように聞こえた。)

あ、あの、いきなりごめんなさい。
えっと、さっきの声が、何か、思いつめていたように聞こえたので。
――あ、わ、私別に怪しいものではないですから!

(今更ながら、電話を掛けてどうしようと言うのか、と言う事に思い至る。
 彼女も自分も、お互いに見知らぬ他人同士だ。
 そんな人物からそんな事を聞かれたら、普通は怪しいと思うだろう。
 だから思わず最後にそんな言葉を付け足してしまったが、これじゃ自分から怪しいと言っているようなものだ。)

『――ッハ』

(だけど、電話の向こうから聞こえたのは、おかしそうな笑い声だった。)

龍宮 銀 >  
『別にどうもしねェよ
 ――ただ、昔の知り合いに電話しようとしただけだ
 もう番号変わってて、繋がらなかったけどな』

(それは、嘘だ。
 彼女の事は声しか知らないけれど、それが嘘だと言う事はなんとなくわかった。
 どうしてわかったのかはわからない。
 けれど、それを嘘だと言わない方が良いのだろう、と言う事もなんとなく。)

そうなんですか。
えっと、――じゃあ、私と話しませんか?

(どうしてそんな事を言ったのかわからない。
 困っているだろう彼女へ手を差し伸べたかったのかもしれない。
 彼女がそんな嘘を吐く理由が知りたかったのかもしれない。
 単純に私が彼女と話したかったのかもしれない。
 電話の向こうで、息を呑む音。)

『――変なヤツだな、オマエ』

(そう言った彼女は、笑っていたのだと思う。)

龍宮 銀 >  
(その後、色々な事を話した。
 最近あった面白い事とか。
 図書館で読んだ本が面白かったとか。
 自分の先輩がお人好しで困るとか。
 お互いに自分自身の事は話さなかった。
 その方が良いと思ったから。)

――あ、すみません、私そろそろ寝ないと……。

(気が付いたら日付が変わっていた。
 明日も早い、名残惜しいけれど、もう寝ないといけない。)

『そうか
 じゃあ早く寝ろ』

(言葉はそっけないが、声は優しいものに聞こえた。
 それがなんだか嬉しくて。)

――あの!
あの、また電話しても、いいですか?

(彼女と、また話したいと思った。)

龍宮 銀 >  
『――好きにしろ
 とりあえず今日はもう寝ろ』

――あの!

(そう言って彼女が電話を切ろうとする気配がした。
 どうしてももう一つ聞いておきたかった事があったので、それを止めるように大きな声を出す。)

――あの、あなたのこと、なんて呼べばいいですか?

(話をするのに呼び名がないと言うのは不便だ。
 名前は聞かなかった。
 きっと答えてくれないだろうと思ったから。)

『――――ステラ』

(長い沈黙の後、一言だけ。
 なんだかそれが嬉しくて。)

ステラさん、ですね。
それじゃあ私は――

(考える。
 何がいいだろう。
 自分の名前を少しもじって――)

――シルビア、って、呼んでもらって、いいです、か……?

(途中で恥ずかしくなって、尻すぼみになってしまった。)

龍宮 銀 >  
『――あァシルビア。
 構わねェよ』

(それでも彼女は優しい声でそう言ってくれた。
 きっと電話の向こうで優しく笑っているのだろうな、と感じさせるような声。)

――ありがとうございます。
それじゃ、おやすみなさいステラさん。

『おう、おやすみ』

(挨拶を交わして、電話を切った。
 早速彼女の電話番号をアドレス帳に登録した。
 なんだかそれが嬉しくて、スマホを抱いたままベッドに転がる。

 理由はわからないけれど、彼女の番号がアドレス帳に並んでいるのが自然に思えて、嬉しかった。)

ご案内:「私室」から龍宮 銀さんが去りました。