2016/11/20 のログ
ご案内:「私室」に龍宮 銀さんが現れました。
■龍宮 銀 >
(夜。
お風呂から上がったら、ケータイが鳴っていた。
見れば、知らない番号からの電話。
少し迷って、通話ボタンを押して耳に当てる。)
もしもし。
――もしもし?
(電話の向こうで息を呑むような音。
それっきり、何も聞こえない。
もう一度声を掛けてみても、反応はなく。
いたずら電話だろうか、と眉を顰めたところで、)
『――間違いだ』
(その一言と共に電話は切られてしまった。
間違い電話を掛けておいて謝罪の一つも無いなんて。
思わず画面を見る。)
■龍宮 銀 >
(だけど、その声がなんとなく耳に残っている。
低い、女性の声。
何かを必死に押さえ込むような、微かに震えていたその声が、どうしても気になって。)
――うん。
(着信履歴から、今の相手に電話をかける。
彼女が誰に掛けようとしていたのかは知らないけれど、その声は助けを求めるそれだったような気がしたから。
だったら、知らないふりをするなんて出来ない。
先輩だったら、そうするでしょう?
電話のスピーカーからコール音が鳴る。
一回。
二回。
もしかして、本来掛けようとした相手に電話を掛けているのだろうか。
そう考えたところで、繋がった。)
■龍宮 銀 >
『――なんだ』
(さっきと同じ低い声。
さっきよりは、落ち着いているように聞こえた。)
あ、あの、いきなりごめんなさい。
えっと、さっきの声が、何か、思いつめていたように聞こえたので。
――あ、わ、私別に怪しいものではないですから!
(今更ながら、電話を掛けてどうしようと言うのか、と言う事に思い至る。
彼女も自分も、お互いに見知らぬ他人同士だ。
そんな人物からそんな事を聞かれたら、普通は怪しいと思うだろう。
だから思わず最後にそんな言葉を付け足してしまったが、これじゃ自分から怪しいと言っているようなものだ。)
『――ッハ』
(だけど、電話の向こうから聞こえたのは、おかしそうな笑い声だった。)
■龍宮 銀 >
『別にどうもしねェよ
――ただ、昔の知り合いに電話しようとしただけだ
もう番号変わってて、繋がらなかったけどな』
(それは、嘘だ。
彼女の事は声しか知らないけれど、それが嘘だと言う事はなんとなくわかった。
どうしてわかったのかはわからない。
けれど、それを嘘だと言わない方が良いのだろう、と言う事もなんとなく。)
そうなんですか。
えっと、――じゃあ、私と話しませんか?
(どうしてそんな事を言ったのかわからない。
困っているだろう彼女へ手を差し伸べたかったのかもしれない。
彼女がそんな嘘を吐く理由が知りたかったのかもしれない。
単純に私が彼女と話したかったのかもしれない。
電話の向こうで、息を呑む音。)
『――変なヤツだな、オマエ』
(そう言った彼女は、笑っていたのだと思う。)
■龍宮 銀 >
(その後、色々な事を話した。
最近あった面白い事とか。
図書館で読んだ本が面白かったとか。
自分の先輩がお人好しで困るとか。
お互いに自分自身の事は話さなかった。
その方が良いと思ったから。)
――あ、すみません、私そろそろ寝ないと……。
(気が付いたら日付が変わっていた。
明日も早い、名残惜しいけれど、もう寝ないといけない。)
『そうか
じゃあ早く寝ろ』
(言葉はそっけないが、声は優しいものに聞こえた。
それがなんだか嬉しくて。)
――あの!
あの、また電話しても、いいですか?
(彼女と、また話したいと思った。)
■龍宮 銀 >
『――好きにしろ
とりあえず今日はもう寝ろ』
――あの!
(そう言って彼女が電話を切ろうとする気配がした。
どうしてももう一つ聞いておきたかった事があったので、それを止めるように大きな声を出す。)
――あの、あなたのこと、なんて呼べばいいですか?
(話をするのに呼び名がないと言うのは不便だ。
名前は聞かなかった。
きっと答えてくれないだろうと思ったから。)
『――――ステラ』
(長い沈黙の後、一言だけ。
なんだかそれが嬉しくて。)
ステラさん、ですね。
それじゃあ私は――
(考える。
何がいいだろう。
自分の名前を少しもじって――)
――シルビア、って、呼んでもらって、いいです、か……?
(途中で恥ずかしくなって、尻すぼみになってしまった。)
■龍宮 銀 >
『――あァシルビア。
構わねェよ』
(それでも彼女は優しい声でそう言ってくれた。
きっと電話の向こうで優しく笑っているのだろうな、と感じさせるような声。)
――ありがとうございます。
それじゃ、おやすみなさいステラさん。
『おう、おやすみ』
(挨拶を交わして、電話を切った。
早速彼女の電話番号をアドレス帳に登録した。
なんだかそれが嬉しくて、スマホを抱いたままベッドに転がる。
理由はわからないけれど、彼女の番号がアドレス帳に並んでいるのが自然に思えて、嬉しかった。)
ご案内:「私室」から龍宮 銀さんが去りました。