2016/12/18 のログ
ご案内:「路地裏・マンション地下」に阿曇留以さんが現れました。
■阿曇留以 > そこはマンションの地下一階。
ロビーから地下への扉を開け、非常階段を下り、さらに扉を開けた先。
コンクリートで覆われたそこは駐車場のような場所だった。
地下といえど、本来なら灯りがあってしかるべき場所に、しかしそこに光は無く、差し込む光もない。
空間は闇しかなく、文明を用いて光を差し込む以外にこの風景を見ることは出来ないだろう。
ご案内:「路地裏・マンション地下」に寄月 秋輝さんが現れました。
■寄月 秋輝 >
指定された建物へと超高速で飛来し、侵入する。
入った時点で気付く、闇夜よりも冷たい気配。
それに導かれるように地下へ向かう。
(……光がない……完全に暗闇だな)
暗い中で極限まで目を細め……否、眉根を寄せる。
秋輝の力は光に依存する。
一切の光も無いこの状況では異能はほぼ使えない、魔術も一部が制限される。
無策ではないものの、こんなピンポイントの状況に誘い出されるのは想定外だった。
ブーツの固い靴底で地面を鳴らしながら、ゆっくり歩いていく。
■阿曇留以 > コンクリートとブーツの底が叩き合って、暗闇の中で音が響く。
誰もいない、地下駐車場で。
その音に気付いたのか。
それとも初めからその時を狙っていたのか。
バサリ、と布が空気とこすれる音が上から聞こえ、その一瞬後、寄月を狙って何かが降り注ぎ、喰らえば精神力を削ぎ落とすかのような爆発が起こる。
■寄月 秋輝 >
物音の聞こえた瞬間に、大きく横へ飛んだ。
直撃こそ避けたものの、爆風の余波は受けてしまった。
体を倦怠感が包むが、鍛え上げた肉体と精神は、その一瞬程度では崩れない。
(……留以さんの使う退魔術符か……
つまるところ、あのメッセージは正しかった。
留以さんは既に憑依されているな)
飛んだ先で、壁に着地して状況を確認する。
冷静に、冷静に対処するのだ。
たとえ自分のトラウマを想起させるような状況であっても。
ぴたりと壁に張り付いたまま、呼吸音すらほとんど鳴らさぬように、相手の出方を伺う。
■阿曇留以 > 軽い音を立てて着地したあと、一切の物音が消える。
歩いているのか、それとも立ち止まっているのか。
布がこすりあう音も、草履の音もしない。
数秒だけ経ったあと、再度布が擦れる音。
同時に御札が飛来する。
まるで見えているかのようにお札は飛んでいき、寄月の周りに張り付き、再度爆発が起こる。
■寄月 秋輝 >
布の擦れる音が聞こえて、壁から正面に飛ぶ。
しかしそこは札の飛んでくる方向でもある。
壁面で炸裂するものはある程度回避出来たが、二枚分は直撃を受けてしまう。
(相手からはこちらが見えている……
オレは相手の姿も見えない……)
状況は芳しくない。
倦怠感と眠気がわずかに脳裏をかすめるのを、押しつぶすように舌を噛んで耐える。
今度は空中に静止し、相手の出方を伺う。
(……あと二手……三手か……)
回避行動でこちらも二度動いたものの、実際は相手の居場所を絞り込むための移動でもある。
相手が移動する音が聞こえればそれを頼りに飛べばよく、あと数回攻撃先の角度が見えれば、確実に居場所は掴める。
あとは耐え抜くことと、確実に『決める』ことだ。
■阿曇留以 > 爆発が起きた後、暗闇に溶け込むように、気配も、音も無くなる。
まるで空気になるかのように。
それからたっぷり十秒。
何かを考えていたのか、それとも何かしていたのか。
「これなら、どうかしら?」
それは女性――留以の声。
いつもと変わらない、のんびりした声と一緒に、布のこすれる音と紙が飛来する音。
三枚の御札が時間差で寄月へ飛んでいき、更に爆発を起こす。
■寄月 秋輝 >
(……意識は……)
いや、無いだろう。
こちらの魔力はともかく、霊力を察知していれば、本人ならば攻撃をやめているはずだ。
あれはおそらく、体に染み込んだしゃべり方の記憶をなぞっているに過ぎないのだろう。
「ふ……っ」
一枚目、刀で切り払う。
神性を帯びた愛刀ならば、力を抑えながら破壊出来る。
二枚目、魔力障壁で逸らすように防ぐ。
しかし光が無い状況では十全に性能が発揮できず、余波を受け。
三枚目、直撃。
しかし爆発から高速で逃れることでダメージは減らす。
それでも消耗は募る。
どんどん重く感じられるようになる体に、深まる眠気。
しかし、焦らない。焦りは敗北への最短ルートだ。
(……あと一発……)
今度は天井に着地し、攻撃の来るであろう方向を睨みつける。
その角度から札が飛んで来たら、それで確定だ。
刀を携え、一枚の霊術符を左の袖の中に仕込み、反撃の機会を待つ。
■阿曇留以 > 再度、闇に溶け込みたっぷり十数秒。
それは弾切れか、何かを狙ってか。
布がこすれる音が何度も起こり、しかし御札が飛ぶ音は少ししてから起こる。
そrめお、たった一枚の御札を、寄月に向けて飛ばす。
■寄月 秋輝 >
(……あっち!)
天井から、札の飛んでくる方向へ飛び出す。
途中来る札を刀で切り払う。
その刃を鞘に納め、左手を振るうと一枚の札。
あとはこれを叩き込まんと、一気に接近するのみ。
■阿曇留以 > 投げた一枚は最後の様子見だった。
最初と比べ、投げた札を見切りはじめていた彼を試すための一枚。
そしてその思惑は今のところ彼女の通りに進んでおり。
「剛術・一巴(つよきわざ・ひとつともえ)」
寄月の攻撃を迎え撃つように、御札を手に貼り付け、掌底を繰り出す。
■寄月 秋輝 >
(……誘われた)
そう察しても、時既に遅し。
自分の土俵に引きずり込めない、なかなかの手練れの霊のようだ。
しかしやることは変わらない。
相手を上回り、彼女を救う。
結果を導くために必要なものは、何も変わらない。
左手に出した札を手に貼り、同じように掌底を繰り出す。
「八雲流退魔術、白光 -ビャッコウ-」
それを、激突させる。
瞬間、札から炸裂するように、浄化の意思の込められたまばゆい光が迸る。
■阿曇留以 > 光がまぶしい。
それは人の目にとっても、ソレにとっても、直視できないほどに。
それでも動きは止めない。
体が覚えているその動作。
「こ、のぉ!」
がむしゃらに、狙いも何も無い、しかし最後に見た彼の姿と位置から考えて。
大きく回し蹴りを放ってみる。
■寄月 秋輝 >
相手の体……もとい相手の魂は、この光を嫌う。
だからこそ効果がある。
「んぐっ……!」
回し蹴りが飛んでくる。
こちらは天井からの襲撃という体勢、そこに放たれた回し蹴りは横っ面を捉えられる。
脳がわずかに揺れる、口の中に血の味が広がる。
だが我慢できないほどではない。
「さて、ここからは逃がさんぞ」
一瞬生まれた光を異能で確保し、膨張させる。
真っ暗闇だった地下は、先ほど生まれた光をベースに作り出した光の玉を浮かべて照らし出す。
口の端から出てくる血を吐き飛ばし、霊術と魔術を組み合わせた浄化術を組み始める。
■阿曇留以 > ソレに焦りはないものの、しかし勝てるとも思っていない。
闇が消えて光が現れた以上、優位が消えたことぐらいは分かっている。
「あらあら、寄月くんたら……。
こんなことするなんて酷いわ」
声も、顔も笑っている。
それでも、いつもの留以ではない声色ではなかった。
留以は走り出して、寄月へと近寄り今度は肘うちを放とうとする。
■寄月 秋輝 >
目を細めて見つめる。
まだ余裕があるように見える。
どういうつもりで居るのか量りかねる。
「残念ながら、人違いだな。
オレも名乗った覚えが無いんだが、そんな適当な名前をどこで聞いてきた」
正直、頭に来ている。
ここに来るまでの道のりも、彼女の今の状態も、このシチュエーションにも。
だから怒りの表情も、素の言葉遣いも隠さない。
今の偽名も否定する。
「安心しろ、もう少しひどい目に遭わせてやる」
迫りくる肘打ちに、右手首を添えるようにして逸らす。
そのまま留以の背中側に抜ける。
まだ攻撃は出来ないが、怒りの中でも冷静に対処している。
■阿曇留以 > 背中に逃げられる様子を眼で追いかける。
ソレに知性はあるものの、人間を知らないためにどういう行動をすれば良いかまでは考えておらず。
せっかくある宿主の脳も、宝の持ち腐れとなっている状況で。
「痛いのはイヤだわ。
寄月くん、なんで酷いことするの?」
その言葉は考えた結果の言葉ではなく。
留以が無意識に持っているマニュアルの、返し言葉を放っているだけでしかない。
狩りは出来ても、知性がないのだ。
相変わらずの笑みを浮かべながら、背中に回った寄月へ今度は軽く、しかし速度を重視した連撃を放っていく。
平手で頭を狙ったり、かかとでつま先を踏み潰そうとしたり、当身をしようとする。
■寄月 秋輝 >
打ち払い、逸らし、受け流し、全ての行動を読み切っていく。
速いは速いのだが、いかんせん駆け引きも何も無い、ただの連打だ。
目線と筋肉の動きをよく見ていれば、直線的な攻撃しか扱わない悪意の攻撃は、むしろ実体が無い時よりも対処がしやすかった。
しかし退魔術、霊術とはいえど、多少の肉体的ダメージはある。
どこに打ち込めば、彼女の体に流れる衝撃をゼロに近付けられるか。
中に居る悪意、霊体を引きはがしながら、彼女の精神に後遺症を残さずに済むか。
考えながら、どんどん術を練り込む。
時間をかけて、魔術をも組み合わせて、最上級の退魔術を組み上げる。
それは光による浄化、悪意たる存在のみを焼き尽す神の光。
専門の術士ならば、これを上手く開放出来るのだろうが、今の『八雲亜輝』の技術では直接叩き込むことしか出来ない。
どこへ打ち込むか真剣に考えながら、隙を伺うように払い続けていく。
■阿曇留以 > ソレにある行動原理は唯一つ。
どうやったらこの女を殺せるかだった。
殺すといっても、肉体面で殺すのではなく、精神を嬲ってだった。
ゆっくりと体にもぐりこみ、胃液で溶かすようにじっくりと嬲っていこうとした矢先、男が現れた。
今はこの女で手一杯なので、男を殺すのはまた後にしようと、無力化しようとしたが、まるで問題外だといわんばかりに相手にされない。
「――天津神、国津神等。我が為す業を御覧(みそな)わせ!」
ならばもう、殺そうと。
この女が自分達にしたことをしようと。
残っていた御札十数枚を全て展開し、言霊を放つ。
御札十数枚が言霊に反応し、一気にその霊力を膨張させ周囲を爆破しようとする。
■寄月 秋輝 >
「甘いんだよ」
想定内だ。
人質を取った犯人が、追い詰められてやること。
それは一人でも道連れを作ることだ。
浄化術の合間に、もう一つの術を展開してある。
「守護結界」
一つ目。留以の体と札の間に、魔力結界を展開する。
爆風はそれで、本人までは及ぶまい。
結界は同時に二枚までは作れないため、自分にはあっさりと爆風が届くのだが。
「シールド」
二つ目。結界とは少し違う、単純な魔力盾を構築する術式。
それで直撃を避け、回り込んできた爆風だけにダメージを抑える。
「アルシオーネ流巫術……陽神の浄槍」
三つ目。残りの術符を使い切り、最大限の術を放った瞬間に訪れる隙。
そこを逃さず、霊術と魔術を組み合わせた、巫術を解放する。
秋輝にとって特別な力、自分では発揮するのにいくつものテンポを置かなければならない究極の退魔術。
留以の胴周りほどの太さを持つそれを、正面から胸を貫くように打ち出した。
着弾しても肉体へのダメージは非常に小さい、悪しき魂のみを焼き尽くす浄化の巫術。
■阿曇留以 > 大爆発が起こる。
ただの爆発ではないためにマンションに与える影響はない。
が、周りの霊的存在、それに連なるもの、関係するものへ、ダメージを与えようとする。
与えようとするけれど、二つの結界に阻まれ、その意味はなくなり。
「――」
そして、油断した隙に、槍が音も無く胸を貫く。
叫び声はなく。
ただ、声をあげているかのように口をあけながら、貫かれた反動で地面を転がる留以。
それから、起き上がることは無く。
しかし、すやすやと眠っていた。
■寄月 秋輝 >
「……ふぅ……」
なんとかなったらしい。
十分な手ごたえはあった。
過去のトラウマの払拭、教わった技術の昇華が実感できた。
これ以上清々しい『勝利』は、きっと生まれて初めてだろう。
周囲に残っていたかもしれない悪意たちはきっと、今の留以の術で吹き飛んだだろう。
疲労と眠気、それに痛みを上げる頬のせいで、自分もダウンしたくなるが。
「……こんなところで寝かせておけるか」
切れた口の中を舐め、痛みでもう一度覚醒する。
疲れた体を引きずり、眠る留以を抱き上げ、もう一度だけ浄化術を体に巡らせることで二重に保険をかけてから。
「……やっぱり、一人で動かさせたらダメだな……」
結局この状況に到ってしまった。
今後は自分も付き合おう、と考えながら、マンションを出て夜の空へと飛んでいった。
ご案内:「路地裏・マンション地下」から阿曇留以さんが去りました。
ご案内:「路地裏・マンション地下」から寄月 秋輝さんが去りました。