2017/06/21 のログ
ご案内:「某病院・来客用食堂/正午」に楊柳一見さんが現れました。
■楊柳一見 > 千客万来と言う訳でもない――むしろそれはそれで周辺の安全が疑問視される――病院、の来客用食堂。
それでも昼時となれば、見舞客がちらほら見受けられる。
で、それに混じってお膳かっこんでる奴。
「…んー、このシャケええ塩効いとるわー」
塩鮭定食にほくほくと現を抜かす現在入院中の一名である。
だらけたあまりお国言葉まで出ているが、咎める者はいないので問題ない。
…むしろ咎められるとしたらもっと別の要因があるんだが。
■楊柳一見 > 「部屋でもこんぐらい味のしっかりしたの出してくれりゃあさあ…」
大人しく寝ててやるんだけど、などと上から目線なセリフをぽそり。
まあ、正味傷の方は骨や主要神経を“運よく”損じていなかったし、
縫合も暴力沙汰の絶えない(!?)学園の附属施設だけあって確かな手腕だ。
化膿はもちろんであるが、組織の引き攣れもほとんど起こしていない。
後はこのまま安静にしていれば、早期に退院も叶うだろう。
そうしたら――
「……鍛え直し、かなあ」
なめこ汁をずぞぞと啜って、唸るような呟き。
ほとんどこちらの手管の通じなかった、かの絡新婦の像が虚空に結ばれる。
心なしか汁の塩気が苦みを増したような気がして、顔を知らず顰めた。
■楊柳一見 > ――でも、別に妖物倒すためにここにいる訳でもないし。
昔日の癖か。
あの時、巣糸の罠を張られたと感得するや否や、反射的に攻撃してしまったが。
もっと上手い対処法はあったのではないか。
それにその時の自分は、まるきり風の異能に頼り切っていた。
閉鎖空間の上に罠が張り巡らされた魔所で、己程度の風繰りが果たしてどれだけ動き遂せるか。
「――……」
その答えが、右肩と左手の負傷である。
――それとてあくまで、外傷に限ればの話だ。
「……《テング》がマジに天狗になってたってねえ……」
笑い話にもなりゃしない。
旧い名を揶揄混じりに口に載せ、またなめこ汁に口を付ける。
「あっちち」
今度はちっと焦って飲み過ぎた。
さっさと本調子に戻りたいもんだ、とかぶりを振る。
■楊柳一見 > そんな事していれば、
『楊柳さん!』
後ろからぴしゃりと掛かった、太い女性の声に動きを一瞬固め。
ギギギと音の立ちそうなぎこちない動きで、そちらを振り返ると、ふとっちy――もといふくよかな看護婦さんが、
腰に手を当てこちらをフォーカスしてました。
「うわ」
やべえ、見つかった。
あたふたと席を立って、反対側の扉へ駆け出そうとするも、
『もう、これで3回目ですよ! さあ病室へ戻りましょう!』
「ぅえ、ちょっ――」
最初見た距離では明らかに届かない間合いだったのに、腰をホールドされて軽々と抱き上げられました。
――ファッキン! 縮地でも使ったか!?
さすが常世島。社会にも異能者が溶け込んでると来た。
こりゃ下手ないたずらとか出来ないね。クソッ! なんて時代だ!
■楊柳一見 > 「ああっ待って、アタシのごはんっ」
それももう手の届かないものになりつつある。
…どころか、既に心得たものか、厨房の人が片付けに入っていた。
「や、やめろぉ! お米一粒には七柱の神様がおるんやー! 粗末にしたらあかんねやー!」
看護婦の剛腕の中でジタバタもがきながら、往生際の悪い繰り言を垂れる。
もはやお国言葉全開である辺り、恥も外聞もないらしい。
『あらら、それじゃ病室のお食事残しちゃう楊柳さんは、バチが当たっちゃいますねぇ』
寸鉄の如き看護婦さんの一言。
「うぐ」
ぐっさりとクリティカルを喰らって、とうとう黙る。
後は看護婦さんによって、そのまま元の病室へ運ばれて行くだろう。
…味の濃いごはんが恋しい日々が、もう少しだけ続きそうだ。
ご案内:「某病院・来客用食堂/正午」から楊柳一見さんが去りました。