2018/02/14 のログ
ご案内:「小さな港」にイチゴウさんが現れました。
イチゴウ > 天辺が赤く点灯している大型クレーンの下、
歯車と茸が合体したような特徴的なエンブレムが
塗装された大きいコンテナを前にして
テイザーガンを携帯した一人の風紀委員と思われる姿が
両手のひらに息を吐きかけ寒さを凌いでおり
同時に島の裏側であるせいかしきりに周りを気にしている。

少ししてからその灰色の大きなコンテナの端が裂けるように開き
その奥からカツンカツンと不気味な金属音を奏でながら
四つの足を持つ機械が暗がりから徐々に姿を現すと
それは風紀委員の目の前まで来てただ見上げた後に
動作を停止する。

イチゴウ > 「ハッピーバレンタイン、風紀委員会。」

突如響いたその台詞。その声は如何にも作ったような
不快感さえ残ってしまう安っぽい合成音声。
その声は足元のロボットではなくそれを超えて
もう一度開いたはずのコンテナの中から響いてくると
追うために風紀委員の目線も徐々に上がっていく。

「お預かりしていた本機を返還いたします。
修理は完全に完了し高脅威目標<黒触姫>の戦闘データを
フィードバックし、各所の改良を行いました。
改良箇所は順に電磁装甲キャパシターの出力30%上昇、
エアスラスターを高速タイプへの置換、
動力伝達系の改良におけるパワー上昇が挙げられます。」

再度コンテナの奥から現れたのは四つの羽を持った
典型的な形の小型ドローン。
マイクロスピーカーを装備しているようで
先程の不気味な声はここから発されたもののようだ。
伝えやすさを無視したような連続的な言葉を前に
前に立つ風紀委員も理解が追いついていないようである。

イチゴウ > 「私どもはとても驚いています。
まさか機械が自己成長を行うなど我々の考えが及んでいない範囲です。」

人間性の欠片も無いような調子で紡がれ続けるその言葉、
それはもはやただ単なる感想であり相対する風紀委員と
会話しようとする意思は感じ取られない。

「この島はいわば人類と超自然存在の戦いの最前線。
ここだからこそ得られるデータはHMT-15を無限に
強くしてくれると我々は信じています。
本機はまだ試験運用の段階でしかありませんが
何時の日か量産化が成功した暁にはきっと怪物どもに奪われた
人類の世界を取り戻してくれることでしょう。」

抑揚は全く存在しないが言葉の随所に読み取れる
明らかな異能や魔術などに対する攻撃的な意思。
尖った言葉は何の罪もない風紀委員へとぶつけられ刺さってしまう。

イチゴウ > 「...時間ですね。
一時、本機が行方不明になった際は肝を冷やしましたが
皮肉にもそのお陰であなた方に試験運用を担当して頂く事が出来ています。
最後にこれからも我が社の製品をよろしくお願いいたします、それでは。」

その言葉を残すと風に揺られながら態勢を維持していた
小型ドローンは乾いた音と共に粉々に砕け散ってしまい
それを合図にするかのように今まで微動だにしていなかった
四足ロボットが港から出ていこうと歩みだしていく。
何のコミュニケーションを図ろうとしないその機械に対し
振り回されるような形で風紀委員は遅れを取りつつ
その影についていくだろう。

誰も居なくなった港に聞こえるのは打ち付ける潮の音のみ。
回り続ける灯台の灯がコンテナに描かれた
歯車と茸が絡みつくエンブレム、「Eryngii Robotics 」と描かれたソレを
不気味に照らす。
ソレらにとって製品を試してくれる風紀委員会は
都合の良いモルモット程度のようにしか感じていないのだろう。

ご案内:「小さな港」からイチゴウさんが去りました。