2018/08/20 のログ
ご案内:「とある喫茶店の個室」に美澄 蘭さんが現れました。
ご案内:「とある喫茶店の個室」に八百万 頼さんが現れました。
■美澄 蘭 > 「ごめんなさい、急に「話したいことがある」なんて言い出して」
喫茶店の個室。アイスティーのグラスに入ったストローを弄びながら、華奢な少女が申し訳なさそうに視線を落とした。
その瞳の翳りは、「少女」と括られる年齢を少しだけはみ出したようにも思わせるかもしれない。
「卒業やら入試やら、これからどうしても忙しくなっちゃうから…今以上に時間が取れなくなると、こういうことも大変になりそうだし。
私のわがままでしかないんだけど…きちんと、話が出来たら嬉しいと思って」
瞳の翳りを拭いきらぬまま、蘭は視線を上げ、相手に向けた。
■八百万 頼 > かまへんかまへん、ボクも暇してたし。
(人懐っこい笑み。
なにやら割と深刻そうな声色で電話されたときは少し驚いたが、恋人から会って話したいと言われれば了承することに何のためらいもない。)
蘭ちゃんも今年で学校卒業やもんな。
すっきりせんことあったら勉強も捗らんやろし。
(ん、と頷き、彼女の視線をまっすぐ受け止め、先を促す。
何となく、想像はつくのだけれど。)
■美澄 蘭 > 「そうなの?卒業したって話は聞いてないから、色々大変なのかと思ってたけど」
人懐っこい笑みで軽く返してくる「恋人」相手に、首を傾げて。
4年できっちり卒業し、おまけに大学入試にまで対応しようとしているがゆえに密度高めのスケジュールをこなしている自分を基準に考える傾向があったようだ。
「…勉強とか、スイッチが入れば没入出来るからいっそ楽なんだけどね。
でも、それで「大事なこと」から逃げるようになっちゃったら、本末転倒だから」
そう言って、肩を竦めて苦笑いを見せた後。
目を伏せて、静かに、深めの呼吸を1回して…
「………私…頼さんにしてもらってることとか、気持ちとかに…ちゃんと、応えられてる?」
再度頼に真っ直ぐな視線を向けて発した問いは、抽象的ながらも真剣な声音だった。
■八百万 頼 >
ボクはほら、何回目かやから。
単位は足りてんねん。
(自分は四年生を何度か繰り返している。
――と言うと、エンドレスなエイトとかタイムをリープだかに聞こえるが、別にそんなことはない。
単純にやることがあるから残っているだけだ。
大事なこと、と言う彼女を無言で見つめる。
そうして出てきた言葉を聞いて、首を傾げた。)
――応える、言うんは?
(どういうことだろうか。
何となくはわかるのだけれど、彼女と自分の認識にズレがあると困るので、尋ねてみる。)
■美澄 蘭 > 「………そう、なの」
「何回目かだから単位は足りている」。相手の言葉に、蘭は羨ましがるでも訝るでもなく、ぎこちない調子で頷いて視線を落とした。
以前明かされた言葉から、相手が異能の制御等に問題を抱えていないことは知っている。そして、その事実をあまりおおっぴらに出来ない、何らかの事情を抱えていることも。
…それらの事実を知っていることが、蘭を今日の行動に走らせたりもしたのだが。
「…えぇと、その…」
どこから、どこまで話して問うべきか。範囲を絞るのに困っているのは蘭自身でもある。
…しかし、相手がきっかけになる言葉を発してくれたのならば、それらに触れずに流してしまうわけにもいかないだろう。
「…その…頼さん、私に色々気を遣ってくれるし、私が自分の将来の目標のために島を出るって目標を立てても、応援してくれるって言ってくれたし…何より、子どもっぽい私のことも、ちゃんと受け止めてくれるし。
私、本当に幸せだと思うんだけど…でも、どうしても思っちゃうのよ。
…私にとって、一方的に都合のいい関係になってないかな、って…頼さんは頼さんで色々あるのに、私、重荷になってないかな、って。
身を引きたいとかそういう話じゃないんだけど…ただ、私に返せることっていうか、何か返せるようになるために努力出来ることって、ないのかな…って」
「押しつけるみたいで、これはこれでわがままだって、思うんだけど…」と、弱気に萎む声で付け足しながら、俯く。
■八百万 頼 >
(言葉のトーンが低いことに、困ったような笑み。)
――んー。
そやな……。
(彼女の問い。
きっと不安なのだろう。
彼女からすれば、貰ってばかりで何も返せていない、と思うのだろう。
今まで何度も聞いていた。
腕を組んで背もたれに身体を預ける。)
――蘭ちゃんはいくつかわかっとらんことがある。
(身体を戻し、指を一つ立てて。)
まず、ボクは蘭ちゃんと一緒に居たいからこうして一緒に居る言うこと。
次に、蘭ちゃんから何か貰いたいから色々しとる言うんやないこと。
あと、背負って潰れるほど重くない言うこと。
最後に、こうやって一緒に居るだけで返しきれんもん貰っとるいうこと。
(そうやって、指を一本ずつ立てながら。
自身が彼女と一緒にいる理由を挙げていく。)
蘭ちゃんが不安言うなら、その気持ちはわからんでもないけど。
ちゃーんと返してもらっとるよ。
■美澄 蘭 > 「………。」
腕を組んで思案する相手の返答を、どこか張り詰めた表情で待った蘭。
姿勢を戻して、一つずつ蘭に説明してくれる頼の言葉には、どこか安心したかのような、ちょっと泣きたいような、そんな微妙な表情を浮かべた。
「………そう、よね。何かもらいたくて一緒にいるとか、そういうことじゃないのは…私もそうだから…分かるんだけど…。
…ただ…自分が嬉しかったとか、受け入れてもらえて安心したとか、似たような気持ちを頼さんと分け合えたら、嬉しいな、って思ってて…。
…それに、自分の能動的な行動が伴ってないと、いまいち実感が湧かないみたいな…
………やっぱり、究極的には、私のわがままでしかないんだけど…」
やっぱりちょっと泣きたいような表情を織り交ぜたまま、ぎこちなく笑った。
■八百万 頼 >
――。
(難しい顔。
どうしたものか、とこめかみを親指で掻きながら、思案。)
――前も言ったけど、蘭ちゃんに色々隠してることはあるよ。
けど、それは――言えんのや。
ホントは隠してるいうんも言うたらアカンちゅうか、ギリギリのとこやと思う。
(出来ることなら彼女に隠し事なんかしたくないけれど、そういうわけにもいかない。
彼女に隠し事をしているのは後ろめたいし、申し訳なく思うのだが。)
ごめんなぁ。
色々、難しいトコやねん。
(困ったような、ちょっと泣きそうな笑顔。)
■美澄 蘭 > 泣きたいような歪な笑顔が、鏡合わせのように重なる。
蘭が恐れていた事態でもあったが、気持ちの近さを表すようで安堵を覚えるものでもあり…そして、後者の感情には罪悪感を覚えもした。
「………その辺は…ある程度分かった上でこうしてそばにいるから…頼さんのことを責める資格なんて、私にはないわ。
…寧ろ、そういうことが色々積み重なって重荷になってるんじゃないかって…そっちの方が、心配なくらい」
少し視線を落としながら、瞳を翳らせて首をゆるく横に振る。
「………だから、せめて苦しい時は苦しいって、言って欲しいかなって。
それで、何が出来るってわけでもないけど………頑張れば、寄り添うくらいは、出来るかもしれないから」
「わがまま、かしら?」と問う細い声が、ほのかに優しさと甘さを帯びたように響く。
■八百万 頼 >
わがままなんて、そんな。
――苦しい、ことは……いや、そうでもないかもなぁ。
(いつものように笑って否定しようとして、出来なかった。)
せやな、蘭ちゃんのこと悲しませてるかもしれんって、ちょっと辛いな。
嘘吐くの得意やと思っとったんやけど、蘭ちゃんにはかなんなぁ。
(へら、とちょっと寂しそうな、けれど少し安心した様な笑顔。
自分に嘘を吐かせない人間がいるなんて。)
■美澄 蘭 > 「…正直、不安じゃないって言ったら嘘にはなるけど…悲しい、とまでは思わないわ。
頼さんなりに、出来る範囲で向き合ってくれてるのは…今の話でも感じるから。
…だからね、私、頼さんのこと「嘘吐き」なんて思ったことないのよ」
「もしかしたら、頼さんにとっては都合悪いかもしれないけど」と、翳りの和らいだ瞳で微笑む。
「…ただ、関わってる場所も、やり方も随分ハードでしょう?
そういうところが、心配だったりはするかしら」
「特に、心の方がね」と、少しだけ眉を寄せた。
■八百万 頼 >
そら嬉しいな。
けどアカンで、ホントのウソツキはそう思わせるのがお仕事やからな。
(いつもの人懐っこい笑顔でそう冗談を言って見せる。)
大丈夫、ボク死んでも生き返るし。
心も、大丈夫――とは言い切れんけど、蘭ちゃんがおるなら平気や。
(アレで結構その辺のケアもしっかりしてるし、と笑って見せて。)
■美澄 蘭 > 「『ホントのウソツキ』なら、最初の私の話のところで何か要求してるとこだと思うけどね」
こちらも、こう返してくすくすと笑ってみせた。
「色々と危うい感情を吐露している」という自覚は、一応あったらしい。
「「死んでも生き返る」…って言っても、その過程の痛みとかまでなかったことにはならないでしょう?
だから心配になるのよ…私がいるなら平気、って言ってくれるのは嬉しいけど、これから忙しくなっちゃうし、ましてや卒業したら島を離れるつもりでいるわけだから。
…頼さんが会いに来てくれるって言ったみたいに、私も出来るだけのことはしたいと思うけどね」
そう言って、肩をすくめて苦笑いを浮かべると…すっかり汗をかいてしまったアイスティーに、ようやく口をつけた。
■八百万 頼 >
そこで食いつくようなんは二流や。
一流はそこでそれっぽいこと言って安心さすんよ。
気付いた時にはもう全部かっさらわれた後や。
(気ぃ付けなあかんでぇ、なんて笑いながら手をわきわきわきと動かす。
いやらしい感じに。)
これ言うたら蘭ちゃん悲しんでまうやろけど、もう慣れてしもたからな。
まぁでも死なんようにする手はいくらでもあるし、蘭ちゃん悲しますのも嫌やから。
出来るだけ怪我もせんようにするわ。
(自分が良くても彼女が良い顔をしないであろうことは容易に想像が付く。
だからその意見を尊重することにした。
こちらもコーヒーを一口。)
■美澄 蘭 > 「もう、そういう言い方しないでよ」
困ったように眉を寄せて苦笑い。
「卒業したら島の外で高等教育を受ける」という進路を否定されなかった辺りで、「全部かっさら」われる心配はあまりしていないのだ。
…が、「もう慣れてしまった」という趣旨の言葉には、その苦笑いも消えてしまって。
「…何回も4年生をやってる間に…私の知らないところで、どれだけのことがあったのかは分からないけど…「慣れる」って、相当よね。色々あった、っていうか…。
私も治癒の魔術は覚えてるけど…やっぱり、そういう事態にならないに、越したことはないと思うし。
だから…そう言ってもらえると、嬉しいわ。どうしようもない事態はあるにしても、やっぱり、頼さん自身も、大事にして欲しいから」
そこまで言って、やっと弱々しい笑みを取り戻す。