2018/11/12 のログ
ご案内:「スラムの廃マンション」に神代理央さんが現れました。
神代理央 > 「…やれやれ。久し振りに外での任務だと思えば、さながら蟻塚を相手にしている気分だな」

違反部活の拠点を複数同時に襲撃するという野心的な作戦。
人員不足の中、中々思い切った事をするものだと感心していたのがつい3時間程前。
そして、自分が当然の様にその任務に割り振られており、少人数で襲撃するに面倒な場所を見事に押し付けられていた事を理解したのが2時間前。

「全く…。確かに拠点と言えば拠点なのだろうが…有象無象の連中ばかり押し付けるのは勘弁して欲しいものだ」

マンションの窓や廊下から断続的に銃声が響き、壁として召喚した大盾の異形であるスクトゥムからカンカンと甲高い金属音が響く。
前方では、召喚した異形達が背中から生やした砲塔を轟音と共に震わせて砲撃を行っているが、防御系の魔術使いがいるのか建造物の崩落には至っていない。
そこかしこから火の手が上がり、瓦礫をばら撒きながら尚も銃声を響かせる廃マンションそのものが一つの生命体のようだな、と場違いな感心を覚えていた。

神代理央 > 「…いつもの様に適当に数で押しても良いんだが、芸が無いな。…いや、最初から器用な事が出来る能力でも無いか」

僅かに溜息を吐き出しつつ、イメージを組み立てて異形を召喚。現れたのは、実弾では無く魔力を撃ち出す歪な砲塔を背負った異形。

「数だけは多い様だし、さぞ良い花火の火薬になってくれるだろう。――…収奪せよ。"Gutsherrschaft"」

淡々と魔術を発動すれば、己の身体に刻まれた魔術が起動する。
それは収奪と施しの魔術。支配者が持つ収奪と施しの権利を具現化したモノ。起動した魔術は、燃え盛りながらも抵抗を続けるマンションを覆い尽くし、先ず周囲の草木を。屍肉をつついていた動物達を。そして、能力を持たない者達の生命力を奪い去り、魔力へと変換する。

その魔力は、そのまま己を通して異形へと流れ込み、膨大な魔力が異形の砲身へと集積して――

「…こういう時は、アーメンとでも言えば良いのかな。いや、奴等の信仰する神も様々か。まあ、勝手に祈っていれば良い」

緩く右手を振り下ろした瞬間、その膨大な魔力は光の奔流となってマンションに放たれた。
未だ魔術の防壁は健在だったが、その防壁ごと魔力の津波が押し潰し、押し流す。
僅かに上方に逸れる様に放たれた魔力の砲撃は、廃マンションを下階部分の構造物のみ残した瓦礫のオブジェへと変換してその奔流を止めた。
既に、銃声も砲声も無く、抵抗する者も動くモノもいなかった。

神代理央 > 「……やり過ぎた、というよりは立てこもっていた敵の数が予想以上に多かったと見るべきか。非戦闘員も潜んでいたのならさもありなんと言ったところか」

2階から上が綺麗に消え去ったマンションだった物を眺めながら、僅かに肩を竦める。
使用した魔術は命を奪うほど生命力を収奪していない……筈なので、一応生き残りがいないかスクトゥムを動かして偵察させる。

「後は、他の部隊が制圧に成功していれば万事良し、といったところだが…まあ、同僚諸氏の健闘を祈るとしよう」

元々居住区の襲撃とあって、此方に幹部クラスの構成員が少数なのは織り込み済み。流石にマンション全体を防御する程の魔術師がいるとは予想していなかったが。
となれば、敵の主力と戦闘しているだろう同僚達の英雄譚を待つばかり。戦況はどうなっているだろうかと、鼻歌混じりに通信端末を起動し現在の戦況と報告を眺めていた。