2018/11/25 のログ
ご案内:「廃寺院跡」に伊弦大那羅鬼神さんが現れました。
伊弦大那羅鬼神 > ━━━━━━━━かたん かたん


「………………………………グ」


細やかな物音が惰眠を妨げる。薄らとひらく目が、じと、と音の元をたどる。


みゃおう。

「…………ゥア?」

……返事を返したのは、小さな、矮小な。
三毛の毛並みの猫が一匹。

どこからか廃寺の中に迷い込んだのか。鬼を恐れもせず、古い床を踏み締めて音を立てた侵入者は、くりんとその目を向けたまま佇む。

伊弦大那羅鬼神 > 「………………………………ヴゥ」

……顰めっ面を向けてみた。威圧感はそれなりに出してるつもりらしい。
しかし、猫はそんなことわからにゃいですとばかり、むしろ鬼へと近づいていく。

……じり、と後退る鬼。にゃおー、と近づいていく猫。
後退る。ちかづく。後退る。ちかづく。

……にゃおう。


「……………………ヴゥァー……」

伊弦大那羅鬼神 > ━━━━鬼が猫に壁際まで追い詰められていた。不可思議な光景に、きっとそれを見たら誰もが顎を落として呆然とすることだろう。


「……ガゥァ」

低く声を出して、仕方なしという仕草で、猫のほうへと、傍らに転がっているもの━━━━何処からか鬼が持ってきたのだろう、木の実を出す。
茶色い葉の下に、小さな実。味はしないが、少なくとも山の獣は食べてなんら平気そうにしていたもの。
……臭いをかいで、しゃくんと食べる猫を、顰めっ面の鬼は壁に背を預け、ぼぅ、と眺める。


にゃおう。


「…………ヴゥァァァ…………」


……ため息のような声を、鬼が出す。
奇々怪々にも程がある。

伊弦大那羅鬼神 > 「……………………ゥア?」


……木の実をすっかり胃袋に収めた猫は、くあ、と伸びをして、とことこと鬼へと近づいていく。
鬼はこれ以上の逃走を諦めて、その猫の狭い額に視線を注いでいた。



ぽすん。

「……ヴゥ…………」

……襤褸の端に身を寄せるように、猫が丸くなる。温もりを求めるには大胆が過ぎる。
しかし鬼も、それを無下に払うこともなく。
少し悩むように染みと穴だらけの梁と天井を見上げた後。

そっとその小さな身体が暖まるには十分な程の襤褸の端を被せてやると、己もまた惰眠へと意識を沈ませる。



━━━━━━━そうして、猫と鬼の添い寝という不可思議な光景は、鬼が目を覚まし、身体に猫が3匹ほど増えていることに気づき、盛大に面食らったような顔をするまで続いていたとか。

ご案内:「廃寺院跡」から伊弦大那羅鬼神さんが去りました。