2015/07/08 のログ
ご案内:「落第街路地裏」にスラッシュさんが現れました。
スラッシュ > いつか崩れた廃ビルの瓦礫に埋もれてこの世からなくなってしまいそうな
小さな行き止まり。
3方は廃ビルに囲まれて、空は薄い雲に覆われて。
わずかに届く月の光と、煙草へ向かうライターの火だけが、彼女の顔を薄く照らす。

スラッシュ > 見えるはずの無い煙を、ぼぅっと目で追う。

自分がコレを吸い始めたのは何時からか。
なんて回想にふける。

陽向は今頃あの世でどうしているのだろう、と。
あの時から自分の心に太陽が昇ることは無い。
身体と共に、夜の世界で只々惰性と共に生きてしまっている。
きっと紫煙を産み、自分の身体を蝕むコレは、彼の所へと早足で連れて行ってくれるはずだ。
そう思ったのがきっかけだったか。

スラッシュ > 人の無力を嘲笑うのは、彼を助けられなかった過去の自分を笑いたいからなのか。
今更誰も救えないと知りながら、人を蹴落としながらも金に執着するのはそんな過去の自分を見返したいからなのか。
こんな醜態を晒しておきながら、多くの人を傷つけておきながら、まだ彼に会いたいと思うのは、煙草を捨てられないのは。

静かに近づく卒業の2文字が、夜の闇に紛れて心の奥底に忍び込んでくる。
2人で這い上がって来たあの地獄の様な日々に、今度は1人で帰されてしまうのだろうか。
とうの昔に心など壊してしまったと思っていたのに。

「陽向…僕は怖いよ…」

ご案内:「落第街路地裏」にソラさんが現れました。
スラッシュ > 吸わずにいた煙草の灰が、拗ねたかのように脚へと落ちる。
鉛筆でも突き立てたかのような激痛。

――――ッ!!
声にならない悲鳴を上げ、慌てて灰を振り払う。
自分の異能の副作用でこのザマとは、相変わらずお笑いだ。

ソラ > ひょっこり。

路地裏には似つかわしくない、笑顔の少女が顔を出す。
雪のように白い服。太陽のような金色の髪。
血のように、赤い瞳。

タバコを持つ少女の姿に気づくと、
路地の片隅で首を傾げてみせた。

スラッシュ > 人の気配を感じて、躊躇い無く拳銃を抜く。
この時間、しかもこんな場所ならば、1人や2人、殺したってどうということは無い。

が、拳銃を向けた先に居たのは小さな子供。
本来なら警戒などする必要はないのだろうが、この島では別だ。
10歳程度の見た目で200オーバーなんてザラにある話だ。

「何だアンタは。」

ソラ > ぱちり、と目を瞬かせる。
拳銃を向けられても、何もしない。
無抵抗を示すことも、警戒することも、怯えることも。

拳銃を見て当たり前に笑い、踊るようにくるくると回りながら
銃を持つ少女に近づく。

仕草だけをみれば、それは危険すら知らない赤子の行動。
もちろん、この学園ではそんなことはあてにならないのだが。

スラッシュ > この街に暮らしているならばこんなに服が綺麗なまま過ごすことはできないだろう。きっと迷い子だ。

可哀相に、きっとこの子には教えてくれる人は居なかったんだろう。
無邪気に踊る少女から、銃口を背けることはしない。

「言葉がわかるなら、この街から出て行った方が良い。」
そしておもむろに引き金を引く。
街中にでも響きそうな轟音の後、少女から少し離れた廃ビルの鉄製ドアに穴が開くだろう。

巨大な薬莢を地面に落とし、警告する。
「次は無い。」

ソラ > 発砲音。
ぴたり、と足が止まる。

銃口を見つめ、穴の開いたドアを見つめ、落ちた薬莢を見つめる。
それから、また笑った。

くるりくるりと再び回り。
また少し少女に近づいて。
徐に、口を開く。

「おくすり、くださいな?」

スラッシュ > 「イヤだ。」
キッパリと断る。

拳銃をしまい、トランクから立ち上がって貴方を見下す。
「次は無いと言ったはずだ。
今のでビビッて逃げるかと思いきやコレだ。」

拳銃が効かないのだろうか、それとも死んでもいいとでも思っているのか。
前者であれば、幼子の姿を借りた人外の何かだろう。
例えそうであっても、今は子供にまで商品を売りつける気分ではない。

それに、今の発砲音で、複雑な路地の先、時間が掛かるとはいえ、風紀や公安が来てもおかしくは無い。

「取り合うつもりは無い。黙ってこの街から出て行け。」
自分はただ、この子を安全な場所に返したいだけなのに、なんて不器用なんだ。
そんな自己嫌悪を仮面で隠して、今はただ睨みつけるようにして脅す。

ソラ > 再び瞬きをして。
ちょっとだけ残念そうな顔をして。

「ごめんね。」

その言葉に何を込めたのか。
何を思ってその言葉を言ったのか。

再び笑顔を見せて、ふっと姿を消した。

ご案内:「落第街路地裏」からソラさんが去りました。
スラッシュ > 姿を消した少女を見て、コレでよかったんだと自分に言い聞かせる。
本当はこちらが謝りたい程だが、その気持ちは押し込んで隠す。

とはいえ、派手にコトを起こし過ぎた。
つい熱くなりすぎてしまったなんてレベルの話ではない。
正規の病院に行けず、弟のため死ぬ気で非合法のクスリを買っていた自分を思い出したからだろうか。
多少強引にでも止めたいと思ってしまった。

…と、そんな妄想をする暇も無く、大通りの方から幾つかの足音が聞こえる。
こうしても居られないだろう。
薬莢を拾い上げると、廃ビルの中へと消えて行った。

ご案内:「落第街路地裏」からスラッシュさんが去りました。