2016/05/29 のログ
ご案内:「書店ブックマーカー」にアマデオさんが現れました。
■アマデオ > 「ふわぁぁあぁぁぁあぁぁぁ……。」
チクタクと刻むリズムのみが響き渡る店内で突如やる気の無い、実に眠たそうな男の声がこだまする。
そんな彼こそがここの主、アマデオであった。
アマデオは目を擦りつつ辺りを見渡す。ピカピカの床、真っ白な壁、所狭しと乱雑に置かれ──いや、芸術的に配置された商品たち。
だのに。
「今日も今日とて閑古鳥がたむろする、かねぇ……。」
やれやれと頭を振ってレジカウンターに脚を乗せ、行儀悪くぐでーとダレていた。
この店主、やる気はあるのだろうか。
■アマデオ > この様子だとお隣の煎餅屋も同じに違いあるまい。いや、そうに決まっている。そうじゃないとおかしい!
アレは同類、閑古鳥の巣仲間、煎餅屋よりも居酒屋メインにすりゃいいのになどとブツブツ呟きながら永遠とも感じられる時を潰そうとしている。
客が来ないのは何も彼に商売の才能が無いからという訳ではない。
この書店がある落第街第八区画は"ゲマインシャフト"なる組織によって『戦闘行為を行わない』という暗黙の了解が生まれており、滅多なことでは荒事も起きない比較的安全が約束された区画ではあるものの落第街は落第街であった、という事だ。
「ああ、困ったなぁ……こうやって楽できるのは良いが一秒また一秒とここで眠る商品たちを見ると心が痛む……ふわぁぁぁぁぁぁ。」
■アマデオ > 「うう、あまりにも心が荒み過ぎてあくびしか出て来やしねぇや……。」
彼は一体何を言っているのだろうか。
アマデオはおもむろに立ち上がり乱雑に積み上げられた本の山から一冊抜き取った。
その瞬間グラグラ揺れ動き始める山にドクンと跳ね上がる心臓。
彼は久方ぶりのスリルを味わいつつまたレジカウンターに戻ると本を開く。
■アマデオ > 「さて、今回はどんなお話かな?」
オニと呼ばれた異形の獣に支配された国を取り戻すために奮闘した極東の英雄の話。
この物語によればオニは本能のままに人を襲う獣であるとされていた。
人間を圧倒するスペックを持つオニによって人の生活圏が侵されいずれ全てがオニに支配されるであろうこの世を憂いた英雄が立ち上がるという内容のそれをぼんやりと読み進めていく。
毎ページに挿絵がある中々にユニークな本で……まあ、いわゆる絵本である。
■アマデオ > 「……何で絵本を読まねばならんのだ。」
誰が居るでもなく一人呟くアマデオ。
一人で過ごす時間が多くなると独り言も多くなるようで、実に辛気臭い顔をしていた。
ああ、誰か客が来ないかな。商品の質なら他の店にも引けを取らないのに。
等と妙に自信のある表情でカウンターに突っ伏す店主。
■アマデオ > 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……。」
暇すぎて暇すぎて彼の精神が崩壊したのだろうか。
もはや奇声と呼ぶにふさわしい音を出して突っ伏している。
■アマデオ > 「……………………よし。」
突っ伏したまま何かを決意をする店主。
よっこいしょの掛け声で起き上がると店の出入り口へと歩き始める。
■アマデオ > 「…………。」
そのまま無言で店外へと出て、ドアに掛けられていた看板をひっくり返して隣の煎餅屋もとい居酒屋へと姿を消した。
■アマデオ > 【CLOSE】
ご案内:「書店ブックマーカー」からアマデオさんが去りました。
ご案内:「落第街廃ビル群」に五代 基一郎さんが現れました。
ご案内:「落第街廃ビル群」にレイチェルさんが現れました。
■五代 基一郎 > 春風にしては冷たくもあり、返せば生暖かさを纏った風が流れる。
ここは開発初期にあったビル群であり、また手直しをして
独自の土地経営を行おうとした落第街内部の違反組織が手を付けようとしたものの……
何がしかの抗争か、暴力か金かを纏った生臭い事柄により中断された場所。
何もかもが中途半端に、置き去りにされたその場所で……
屋上の崩れた縁に足を乗せ、崖下を臨むように落第街を眺める。
相変わらずの喧噪と、渾沌とした世界に溜め息もでない。
この中で探し物をすることは、毎度のことながら面倒しかないなと
左手の腕時計で待ち合わせの時間を確認しながら思う。
この世界の”ろくでなさ”を呪うように。
■レイチェル > 落第街の喧噪の中を、風に靡く金の長い髪が通り抜けていく。
何人かはギョッとした目を向け、また何人かは憎しみを込めた目で、またある者は
――。様々な視線を掻い潜りながら、風紀委員レイチェル・ラムレイは今回の待ち合わせ場所へと向かった。
「よ、待たせちまったかな。悪ぃ悪ぃ」
屋上に現れる制服姿のレイチェルは、手を上げて目の前の男に軽く振って見せた。
《右眼》に表示されている時刻は、待ち合わせ時間ギリギリであった。
ここに来るまでに、何人かの男に絡まれて無駄な時間を喰ってしまった。
それでも、何とか集合時刻よりは前。
ふぅ、と。安堵の溜息をつきながらレイチェルは目の前の男の言葉を待つ。
艶やかな髪の毛先をくるくると指先で丸めたりなどしながら、落第街の様子を眺めてみたりしつつ。
■五代 基一郎 > 「次は少し、姿を変えてみればいい。前みたく髪を下ろすとかさ」
普段と大して変らぬ私服で待ち合わせに来ていた男がその言葉で応える、
大体において落ち着いた色であり、どこにでもいそうな服装だが。
「風紀と言えど、ここでは外の人間(アウトロー)さ。
常世社会……表社会の法律とは別のものが存在する。
今後は極力自分を消す術(スキル)を身に着けた方がいいな」
光学迷彩や技術的な装備の話ではなく、と続ける。
目立つことが全てではない。目立つことによって、所謂抑止力となるケースはある。
しかしそれが通用しない世界もあるのだ。
そういった類の者を、ある種の力でねじ伏せてきただろうレイチェルだったが
これからはまた違う世界であるのだからと諌めるように応えながら振り向く。
実際待ち合わせする度に何かしらに捕まったり絡まったり、余計なものを引っ掛けていたら
それこそ姿を消して何がしかしている連中から見れば大きな音を立てて歩いているようなものだ。
こうなっては、今日はそういった術(スキル)を教える程度になるだろうか。
■大鳥>「騒がしさはここでいえばどこも同じだ。霊素もまた、渾沌に散っている。」
しわがれた声を響かせて、怪鳥のような姿をした大鳥が降りてくる。
それは定位置のように五代の差し出した腕へと降りる。
■大鳥>「貞淑さもまた美徳だラムレイ。覚えておくといい。」
しわがれた声で嗤うように顔を突出し、レイチェルへ鳴く。
それが愉しみであるかのように二度三度、体を揺らしながら。
「先に言った通り、島の外の勢力でありその存在が確認されている
”ブラックゴースト”は基本的にその姿を現さない……非常に隠密性の高い能力を持ってここで活動している。
特異な武器である聖異物、または研究中の兵器の試験……
落第街内部に存在する違反部活へのそれらの供与等だ。
それらを排除するには、連中に悟られずに足で探す必要がある。
小数による機動力を活かさなければたどり着くのは難しい。」
■大鳥>「いつものように武器を構えて吼えれば逃げる相手ではないぞ、心せよ」
■レイチェル > 「ありゃ、見られてたか? 自分を消すスキル、ね……
まぁ、確かに今までと違って、これから関わる事に関しちゃ、そういうスキルも必要になってくる、か……」
ふむ、と口元に白い指をやり思案顔のレイチェル。
これまでの仕事――この世界に来るまでもそうだが、風紀委員の仕事でも、
そうそう姿を隠すということはしてこなかった。
性に合わない、という単純な理由からであったが。
次にどんな格好でこの男の前に現れようか。
遠目に見れば《右眼》も気にならない、とすればメガネなどかけて
変装すべきか、とか。髪型をハーフアップにしてみるか、とか。
頭の中に自分の姿を思い浮かべつつ、色々と考えるレイチェルであった。
「何だこいつ? 待て、オレが貞淑じゃねーって……?
……いや、まぁ否定はしねーが、鳥に言われるとちょっとへこむぜ」
肩を竦めながら、ふっと軽い自嘲気味の笑みを飛ばすレイチェル。
「ま、そうだよなー。仕方ねぇ、性に合わねーが先輩には従うとするぜ。
変装すりゃいいんだろ、変装。大丈夫だ、経験が全くの0って訳じゃねー
からさ。……あ、言っとくがそこの鳥に従う気はねーからな!」
大鳥の一言に、むっと柳眉を逆立て指を突きつけるレイチェルであった。
■五代 基一郎 > 「こいつ……サマエルの見ていたものを通して俺も見ている」
■サマエル>「よろしく。レイチェル・ラムレイ。話を聞くまでもなく、君のことは知っている。」
そう笑いながら赤き蛇の名を持つ大鳥は嗤うように鳴きながら
ゆっくりと目を動かしながら、レイチェルを書き留めるように眺めていく。
「単純に言えば、今までやっていたことが表で通用してはいたが
裏では……別の場所ではまた、別のやり方が必要ということさ」
■サマエル>「自己満足で済ませていた程度の仕事ではなくなるということだ。
自分の性分が通じる都合のいい相手だけが全てではないぞ」
実際の話、歯に布を着せぬいい方となると、今までのレイチェルに対して
そういった場所から見ればそれが妥当であると言えた。
顔が知れ渡り、正攻法や正々堂々……正面から。
そういったお手本通り、誰もがわかりやすい単純さは確かに強さでもある。
しかし、レイチェルの性分からすればそも会わないがいずれにしても壁となる者達
見えない、手を伸ばせない者達の存在……
その性分を知った者、大人特有の賢さを持った邪悪と戦うには必要なことだ。
「何時の時代も目に見えてわかる存在なんて、物事の表層的な部分でしかない。
闇に潜み、闇から手を伸ばしてくる者こそ本当に断たねばならない連中なんだよ」
■サマエル>「未だ知らずと見えるからな。闇と同化するのが知るに速い。」
大手を挙げて、自分の存在を誇示して闇を探し歩けば
闇の中にいる闇は溶け込むように消えて……退いていくだろう。
実際レイチェルはここに来るまで絡まれていたようだが、本当に関わりたくない者達というのは
その存在が確認された時点で姿をくらますものだ。
「変装すればいいってわけじゃないんだが……まぁ、ここと同化するような技術かな。
こう……そう単純な話じゃなくてさ」
■サマエル>「遊んでいて面白いなこのラムレイは。他の女共ではなくこの娘に当てたのは感謝するぞ」
そういうつもりではないし、ここで出す話でもないだろうと言ったところで
サマエルはその翼を大きく広げ、強引に五代を掴んだまま滑らせるように羽ばたいた。
刹那、鋭利な煌めく何かが二人めがけて放たれた。
建材のコンクリートへスポンジのようにその翆の刃は刺し込まれる。
■レイチェル > 「使い魔《ファミリア》か? そーいう視覚共有は便利でいいよな」
と、五代に返しつつ、自分のことを既に知っているというサマエルに対しては、
あからさまに不機嫌な口調になり。
「まー、先輩に免じてよろしくしてやるよ。感謝しろよ」
半ば睨みつけるような流し目で、鳴くサマエルを見るレイチェル。
「そりゃま、氷山の一角を叩いた所で、事態が何も変わらないのは分かっちゃいる……
分かっちゃいるがよ……」
真に断たねばならないのは、裏で糸を引いている者達であり、使役される人形共ではない。
理解は出来るのだが……。
「同化、同化ねぇ。光学迷彩じゃねーってんなら、何か魔術でも使うのか?
……って、あん?」
と、腕を組みながら返すレイチェルは、煌めく何かに対して、
反射的にクロークの内に手を滑らせる。理屈などない。すっかり身に染み込んでいる
動きであるが故に。
■五代 基一郎 > 放たれたそれらを迎え撃つことが出来るのならばい迎え撃てるだろう。
異能者、というより異邦人であり戦いに慣れたレイチェルならば
避け続けることも可能だ。
ただし、先日言った通りにいくら怪鳥の支えがあるとしても
戦闘力がないと言った五代には限界があるのだが。
サマエルにより幾分か避けたものの、迎え撃つということは出来ず
コンクリートに刺さったそれらがさらに煌めくと、萌芽が湧き立つように
堅牢な植物の幹が生え立ち、絡め取るように五代を拘束した。
■声>「染みの一滴というのは目立つもんだ。異物というのは特にな。
いるだけで騒がしい異邦人なら尚更ってヤツだ。」
空間を剥がすように、何がしかの視覚的な迷彩を解いてその人物は現れた。
風に漂う白いローブ。顔は骸骨の紋様が入った目出し帽”バラクラバ”
右手には翆の長剣が鈍く煌めいていた。
■剣士>「何を連れてきたかと思えば、流石に舐められているとしか思えねぇな。
素人連れてきて殺されにきたか101”ワン・ゼロ・ワン”よ」
「言葉もないな」
ギリギリと両腕を締め上げるように拘束されていても、呻かずに返した。
サマエルは既にそれらから離れ、壊れたパラボラアンテナの上に降り立っていた。
捕まるわけにはいかない、というように。
■レイチェル > 「ちッ――」
クロークの内から閃くように繰り出された、ビル街の暗闇よりも更に深い漆黒の鉄が豪速で弧を描く。
一つ。二つ。瞬く間に。
甲高い音と共にそれらは右へ左へ――レイチェルの後方へと弾かれていく。
マグナムと並ぶレイチェルの昔からの相棒、魔剣『切り札《イレギュラー》』。
彼女の手にはそれが握られていた。
「おいおい先輩、大丈夫か? って、植物の幹……こいつは――」
目の前に現れた謎の人物に対して隙を見せぬよう一瞬だけ五代に目をやり、そこで植物の幹を確認するレイチェル。つい先日に見た惨状が脳裏を過る。
「……好き勝手仕掛けてきやがって! 素人呼ばわりとは、オレの方こそ甘く見られたもんだぜ」
そう吐きながら、魔剣を構えるレイチェル。
だが、奇襲に対して五代まで守りきれなかったのは確かである。
心の内で舌打ちしながら、レイチェルはただ眼前の人物を睨みつける。
■五代 基一郎 > 「向うから出て来てくれたのはありがたいが、流石にこれは辛いな」
そのうち吊り上げられるように高速され、十字架に磔にされるが如き姿勢となった。
流石にここまでされると何も身動きが取れなくなる。
■翆の剣士>「”好き勝手仕掛けられるような”隙を作ったのはお前だぜ」
弾かれたその翆の刃が煌めく砂のように消え去り、星の風の如く舞う。
漆黒の闇が煌砂の風を流せば、また華やかな夜景のようにそれは一瞬色を宿す。
■翆の剣士>「喧嘩の上手下手で語るってんならそれこそ素人でもない、ガキだぜ有名人。
異邦人の試し斬り”アグレッサー”を探していたが、こりゃハズレだな。
オボコ相手にしても経験になりゃしねぇ……戻りな」
そういえばゆっくりと五代に仕掛けられた植物の拘束が解かれ、倒れる形で地に落とされた。
コンクリートに刺さっていた翆の刃は、また先程レイチェルが弾いたもののように砂となって消えていく。
■翆の剣士>「別のヤツ探すことにするわ。もう帰っていいぞ。」
溜め息一つ。翆の長剣もまた消えていた。
首を鳴らすように、体を動かしレイチェルへ背を向ける。