2016/06/02 のログ
綾瀬音音 > ――――――今更、な話なんですけど。
何となく――何となくは解ってるんです。
自分が知っていた当たり前が当たり前、じゃないことくらいは。
私が見てきた“普通”“当たり前”って言うのは、言ってしまえば共通の価値観で出来上がったもので、そこから外れたところでは――その価値観に沿った“普通と当たり前”があるのは。
だから、それこそ、きっかけがあれば一瞬でひっくり返るんだなって。
私は“此方側”の世界の常識を与えられて、その範疇で生きてきました。

――だけど、もうそういうわけにも行かないですし
(与えられた世界、いわば此方側、の世界。
それだけがこの世界ではない事は既に知っている。
価値観、なんて簡単に変わってしまうようなものには縋るわけにはもう、行かないのだ。
確かな意志を持たないと、とも思うがその拠り所も今は曖昧で、目の前の青年の言葉を自分で噛み砕いて考えるのが精一杯だ)

……正直言えば、怖いです。凄く。
や、でも、うん。
多分――ただの通過点、なんですよね。
……すいません、ありがとうございます。
(突き放したりはしない、と言う言葉に安堵を浮かべて、小さく笑う。
多少無理したものになるのは仕方がないことだろうか。
歩くと決めたのなら、歩くしか無い。前を向いて。
少なくとも今は、暗く沈むところであっても、明かりを持ってくれる人がいる)

―――――――――――――。
それは、解ってるんですけど。
解ってるんですけど――――――。
(男の視線の先にあるもの、自身の左手薬指。
そこに指輪は相変わらずあって――その指輪にはもう既に、意味が無いのは解っているのに。
それでも外せないのは何故なのか。
幾ら自問自答したかは解らない。

だけど、この指輪は、幸せの象徴だったのだ)

(指輪を、じっと見つめる。
自身を守るものでもなんでもなく、今となっては束縛するだけのそれ。
コレがこの先重しになるのは解っているのだ。
口がからからに乾く。
だけど、水を飲む気にはなれなくて、ただ唇を噛み締めた)

もうちょっと――もうちょっとだけでいいので、時間を、下さい
(この場で、外します。
とは言えなくて。
絞りだすように、そう告げた。

顔を覆う。
泣きそうなわけではないけれど、まっすぐに目の前の男の視線を受ける勇気もない)

五代 基一郎 > 「ただの通過点ではあるけどさ」

で、あるが。それは二度と戻れない場所へ行くための扉。
その扉を開けて進めれば、もう今まで過ごしていた場所には戻れない。
決定的な通過点。

価値観は共通させる社会、共同体によって違う。
この世界には様々なそういった社会はあってそれぞれ価値観はあり
またそれぞれであり
広く見れば大変容以降、それは方々での軋轢にもなる程に泡立ち湧いて
狭く見ればこの多種多様な出身者が押し込められた島の中でさえ、方々に噴出している。

この島で言えば、日本という本土で育まれた共通の価値観がそれらに
ヴェールをしているのだろうが一枚めくれば恐ろしく単純な摂理が支配する世界が出てくる。
それはこの島で生まれたものか、最も単純な原始の世界から続くものだったのか。
綾瀬音音はそれをわかっている。わかっているが、口に出さないのだろう。
怖れているものが何かわかっているのだ。

力こそ全ての弱肉強食の世界がそこにあることを。

「ただの余計な御節介だよ。先に歩いている奴のね。」

綾瀬には何をと応えるわけでもなく。
過去も身分も名前も棄てて今ここにいる男は、やってきた店員から
注文したものを受け取りながら話す。

顔を覆う綾瀬に何事かと一瞬顔に出てただろうが、それもすぐ消えるのは
一応給金を貰っているからだろう。品物を置いたらそそくさと帰って行った。

たべたら、と薦めながら自分も匙を持つ。
過去、名前、身分……それらが有って己を助けてくれたことがあっただろうか。
寧ろ己の身を脅かす毒とはいわないが、それは苦しめるだけのものに変わっていった。

改めてそのような世界に”普通”だった少女の手を引いたことを想う。
やはりそれは後悔が募る。言葉に出さなくとも、幸せだった過去がある少女を引きこんだことは。
幸せの中で、幸せが薄れた世界であっても生きていけたかもしれない未来。
果たしてそれを決めてよかったのかとも、未練がましく思ってしまうのは棄てづらかった。
自分が棄てた、諦めた未来なのだけに。その左手にあるものを知らぬ時に、外へと出たために。
綾瀬音音が元々ズレていた少女だ、ということは理屈でわかっていたとしてもである。

「おいしいね、ここの。」

綾瀬音音 > (こくり、と頷いて。
通過点、通り過ぎていくための、そのためだけの場所。
その向こうに何があるのかは、自分は解らない。
目の前の先輩は解っているのだろう。
彼と自分には決定的に差があるのは解る。
見てきたものの差、感じてきたもの差。
常識、価値観。
恐らくは沢山の常識と価値観を知っていて――その中で沢山の“何か”を見てきたのだろう。
自分は知らない世界。いや、微かにながら、知っている世界。
これから、向かおうとしている、世界。

不安がないとは言わない。
恐怖はもう自覚している。
自分の爪はまだ酷く柔いのだ、乗り越えていけるかだなんて、解りやしない。
それでも、前に進まなければ――本当に自分は、何処にも行けなくなってしまう。

それは嫌だと思った。
だったら、柔くても、たとえ後悔しか生まなくても――力が支配する、向こう側に行かなくてはならない。
震えるほどに怖い。
怖くて怖くてたまらない。
それでも、それでも。
手を差し伸べてくれた人がいた。
後悔すると解っていて、それでも手を伸ばしてくれた。

だからその通過点は――意地でも通らないと、ダメなのだ。
何よりも、自分のために)

(食べたら、の声にのろのろと手を顔からどけると、頷いて自分も細長いスプーンを持った。
余計なおせっかい、と言うのは大抵経験則だ。
自分だって、このままで良いとは思っていない。
もう待つことはない。待っているわけでもない。
だから、本当に、これは――左手の“重しは”――要らない物なのだ。
幸せな記憶は宝物入れに仕舞って、そのまま忘れてしまうような――そんなものに、なってくれればいい)

―――――先輩って優しいですよね
(余計なお節介、なんて言葉に落とし込んでくれた先輩に漸くなんとか笑って見せて。
のろのろと仕草でパフェを口に運ぶ。
彼の心中を察するすべがあるわけではないが、決してこの状況を喜ばしく思っているわけではないのは流石に知れる。
だけど、その後悔に甘えたのは、自分だ。
だから、笑おうと思った)

うー……思ったより抹茶アイス濃いですね、コレ。
贅沢……
(ううん、と満足気に唸ってみせる。
今この瞬間だけでも良いから、「美味しいモノがあれば幸せな女の子」に見えていればいい。
別に、そう言う本当の意味での“ささやかな幸せ”を捨てるつもりは――今のところ無いのだし。
暗闇の中でだって、見つけられるものはきっとある。

実際口に運んだ抹茶アイスは非常に濃厚で、それでいて確りとしたミルク感。
中々味わえるものではない)

五代 基一郎 > 「いや、俺は……」

笑う音音と対照的に一瞬、口を紡ごうとしたが噤んでしまう。
優しいはずがあろうか。先も分からぬ手を引いておいて。
彼女を暴力に放り込んで、気に掛ければ優しいとされるのだろうか。
それは許されない。少なくとも、自身の思う中での話は。

他の何よりマシだと。ズレてしまったが故に……いや
ズレていたからこそ、そのズレから戻れなく。どこへともズレて
消えてしまうぐらいならと手を差し伸べたのは完全なエゴだ。
それは対価を求める悪魔よりも醜悪な情による導きだということは忘れてはいけない。

「それより巨大なのは、流石にのどに詰まりそうだよ」

こうして普通の少女のような……実際その、力や異能さえなければ
日常のささやかな幸せを味わう少女を見ると思う。
この募るものも、また自分のエゴなのだろうかとも。
それらの答えはまだでない。
まだその幕の外へ歩きだしてもいないのだから。


「……もう一品頼めばよかったかな」

ぜんざいは確かに餡子が濃厚だったのだが
そうこう考えているうちに味味がわからないうちに空になっていた。
元々量が少なめの椀だったのも手伝ってこれだった。

綾瀬音音 > …………ふふ。
(何かを言いかけた口元を見て、失礼ながら笑ってしまう。
自分から見てとても大人に見えた先輩の、初めて見た様子に思わず小さな漏れた笑い声)

いいんですよ、私が勝手に思ってるだけですから。
割りと思ってること口とか顔に出ちゃうほうなので、また言うかもしれませんけど
(コレってこの先どうなんでしょうかね、等と付け足しながらパフェを順調に減らしていく。
先輩がそんなことを思っていないのは、解っている。
彼がどういったエゴで手を差し伸べたのかまでは、よくは解らないけれど。

血を分け与えられた時に言われた、すまない、と言う言葉がきっと全てなのかもしれない、とは思う)

よく噛めばいいかなぁ、とかなんとか。
あー、でも白玉も美味しいなぁ、もっと早く来ればよかった
(とまあ、ごく当たり前の雑談めいた言葉を挟みつつ。
もしかすれば、普通でいられたのかもしれない。
何処かで消えてしまったのかもしれない。
彼の導きがなくとも、黄昏時へと足を踏み入れたのかもしれない。
でも結局、それは選ばれなかった過去であり、訪れることもない未来である。

自分だって答えは出ないのだ。
答えは未来で見つけるしか無い)

男性が食べるにはちょっと少ない感じですしね。
あ、よければ抹茶ミルク飲みます?
まだ口つけてませんから
(と、抹茶ミルクの湯のみをぐいっと押し出しつつ。
巨大パフェほどではないが、自身が頼んだパフェも結構大きかったのでそれなりに満足している。
此方はもうちょっとだけ、時間がかかりそうだ)

五代 基一郎 > その笑いに返されたのは渋い顔だった。

何かやりきれないとか後悔ではなく、単純に何かこう
敵わなさを感じたが為だろうか。
それは今まで話していた外の世界などではなく……
こんな普通の世界にあるような、そういったものだった。
逆にそういったものが遠かったが故の、苦手さなのだろうか。

異能を失ってから……使えなくなってから
こういった世界がとても近い。失っていた世界が白浜に押し寄せる波のように
彼岸にいたと思っていたはずの遠い世界が近くにあり、自分の足元に流れていく。
それは皮肉なのか、それとも足を攫いに来ているのか……

その世界からズレていた……ズレた少女といることで
その世界を再び見ているような気がしてしまった。

だからこれ以上それについては、考えるのをやめた。
それはきっと”異能のない世界であれば”今こうしているのも違った……
と、思ってしまいつつあったから。
根源的なソレが出てくる前に。

「それはね。甘い物って食後に、ってイメージが強くてさ。
 量をそんな頼まないんだよね。量っていうと食べ放題のスイーツキングダムがあるけど
 あそこはカレーとかパスタばっかり食べてたな……」

それじゃ遠慮なく、と綾瀬から湯呑を貰い
その抹茶ミルクに口を付けるが

「……水が欲しくなるな、これ」

感想がそれで綴られる程度には濃かった。
ミルクは入っていたが。濃厚な抹茶が喉を過ぎていく。
綾瀬音音はこれとパフェを共に食べるつもりだったのだろうか……?

綾瀬音音 > (渋い顔。

そんな顔もすることがあるんですね、なんてとは流石に言えないので、やっぱり小さく笑みを零す。
とても世間慣れした、と言うか、何かちょっと“違う”感じに見えていた先輩が、何というかそんな当たり前、とでも表現出来るような表情をするのが意外で、ああ、やっぱりこの人も当たり前に――と言ったらそれこそ失礼なんだろうけれど――人間なんだな。って思ったからだ。
案外思ったよりは、暗闇も黄昏も明るいのかもれない。
照らしてくれる人もいることだし、今はちょっとだけ楽観視していよう。

彼の抱える想いを知ることもなく)

でもホットケーキくらいならご飯になりません?
ああ、あそこも一回行ってみたいなー、って思いつつ行ってないんですよね。
でも……わ、それって凄くもったいない!
(もぐもぐとコンフレークを口に運びつつ。
甘いものの食べ放題に行ってカレーとパスタなんて冒涜的な、と対して緊迫感の無い冒涜を主張するのである。
差し出した湯のみを持つのを眺めつつ、底の方のダイスカットされた抹茶ブラウニーを口に運んだ)

そんなに濃いんです?
でも抹茶ミルクなら薄いよりは濃いほうが……
(勿論それとパフェを両方行くつもりでした。
普段は紅茶が甘味のお供だが、場合によっては甘いもの×甘いものだって全然平気である。
彼のグラスにテーブルの端に置いてあった水差しから水を注ぎ入れて)

五代 基一郎 > この島に来てからもだが

話したり、食事したり……付き合う人間は
大体にして物騒なことに慣れていたりそちら側の人間だったのだが
こうしていざそれらと無縁だった人間と向かっていると
それこそズレが出てしまう。
故にあまり、それらを出さないよう気を切り替えるように
差し出された水差しから注がれた水を受けとる。

「確かに腹にたまるものだけど三食のうちの一つにするのは……
 だからカレーやら米類があるあそこはありがたいんだけど。」

見てて楽しい場所ではあったのは確かだ。チョコレートのマウンテン?が
あったんだけど……とか行った時の様子を述べながら
そういえばあそこの甘ったるい匂いがそれこそむせかえるようなものだったし
今手から放している湯呑もまたそれらと同種の”匂い”がした。

「……飲む?」

正直言えば行儀が悪いし、そも異性にやるようなことではないのだが
パフェの方の底を掬い始めた綾瀬に向けて抹茶ミルクで未だ満たされた湯呑をずらす。
飲めないことはないが、これを喉に流して幸せかというと首を横に振らざる負えなかった。

今、とても塩気が欲しい。

綾瀬音音 > (逆に此方といえば縁遠い世界の――本来ならば特に関わることもないないような“先輩”とこうして食事なり何なりをするようになって。
その縁遠かった世界の鱗片に触れ、足を突っ込みかけている状態で。
とは言え、まだ“此方側”の世界の要素が強いので呑気に笑っているのである)

厚いホットケーキの朝ごはんって中々に優雅だと思いますけどね。
でもやっぱりそういう場所で御飯類はなんか違う気がする……!!
(甘ったるい糖質とカロリーたっぷりの脂質を取らなければならない。
そんな事を力説して、スプーンの先を振る。
チョコレートのマウンテン、と聞けばいいなぁ。と羨ましげに告げる。
たっぷりとしたパフェを殆ど食べ終えながら、である)

え、あ、じゃあ遠慮無く
(まあ半個室で誰かが見ているわけでもないし、飲む? と訊かれば同じ位置に口を付けなければいいだろう、位の気軽さで、食べ終えたパフェのグラスにスプーンを入れてから湯のみを受け取った。
それから口をつけてごく普通に飲む)

あ、確かに抹茶濃いめですね。
でも美味しい……、冷めちゃって半端な温度なのが切ないですけど
(男とは全く別の反応――美味しいですよねー、と気楽な感想が飛び出した。
甘いモノは好物なのだ。
なので幸せそうに抹茶ミルクを飲んでいるのである。
そして、あいにくと塩気のあるものはもってなかった。
一応メニューには軽食もあるにはあるが、どうするかは彼次第、だろう。
甘いモノを満足するだけ取ったので、少女的にはご満悦である)

五代 基一郎 > 「じゃぁ、まぁ次はそこにしようか」

そんなに行きたいのならば……と提案がこぼれ出た。
あそこ予約しないとすぐ埋まるんだよね、と言いつつも
いやしかしこの力説具合から考えればいざこの子を連れ立って行くとなれば
中々に落ち着かない時間になりそうだと気づくが
そこはもう色々諦めるしかないだろう。どれもほどほどに食べればいい話であるし。
それとも先に食事済ませてからくるかとも考えなければならないだろうか。
しかし冒涜とは……一体……


「そう……」

美味しかったのならよかった、のだが。
なにかこう、それこそ別の価値観が存在するのではというものを
今目の前で見せられているような気分である。
男と女、人という種でありながら別の生き物であると誰かから聞いた覚えがある。
おそらく彼女からすればそれこそスイーツ食べ放題のあの場所は楽園なのだろうか。

自分の頭は今なら塩大福の塩気ですら恋しいと思っているが。
テーブルソルトがあれば舐めているぐらいに。

「いや、うんそうだな。次回はそこにしよう」

頭を切り替えたいのか、胃を切り替えたいのか。
食事の気分を切り替えたいのか……とにかく何か、今の気分を切り替えたい。
そんな感じで伝票を手にする。特に追加注文が無ければ、お会計しようかとも。
大体話す目的は終わっていたののだから、とも……

ここで軽食頼むよりどこぞで蕎麦かうどんか肉を入れたい気分を殺しつつ。
お互い……というより綾瀬が幸せな顔のまま今日は終えようと。

綾瀬音音 > え、いいんですか?
(瞬き二つ。
予約が必要な上に1人でバイキングに行くのは中々にハードルが高いものだったので、いいんですか、とと言うかける風を装いながらも実際は行きます、と言っていると同じ反応であり目の輝きである。
――とは言え、一緒に行っても甘味のゴリ押しはしないはずだ。
もったいなーいと連呼することはあったとしても、である。
流石に人によって好みがあることくらいは重々承知している)

はい。
(頷く。
甘いものに渋い紅茶や苦いコーヒーも捨てがたいが、甘いものに甘いものだって悪くはない。
基本的に美味しいものがあればそれでそこそこは幸せになれる人種なのである。
ちょっと今回は甘味に大分と言うかかなり傾いているが)

はーい、じゃあ、楽しみにしてますね?
(なんて本当に甘いモノをたらふく取った後だというのに、心底楽しみにしている、と言う少女。
今正に先輩が価値観の違いに直面しているとは気づかず、なんとも平和に笑っているのである。
追加も無いので、行きますか、と言って伝票はヒョイッと先に持ってしまいたい心持ち。
いつも奢ってもらっているお礼も兼ねて、と今日は此方が支払いを持ちたいと。

――中間の重い空気が嘘のように、明るい調子で店をでればではまた、と笑っていうのだろう。
彼が塩気を求めていることはついぞ知らず)

五代 基一郎 > 何食べようといいじゃないの……

そんな言葉が今から出そうにもなるが
まぁ、きっと綾瀬音音が言うようなものがあの場所に相応しいのだろう。
大体カレーとパスタとピラフにサラダばかり食べていたのも
また場所を考えれば異質であったのは思い出せばなんとなく場違いでもあった。
あったが天秤を中間に戻したい様なものが働くこともあるのだと。
何がしかに訴えたくなるようなこともあれば……

それはまさしく今もなのだが。

大なり小なり幸せであり、それがよりよければいいのだと。
何かしらの納得を張りつつ会計は綾瀬に任せた。
となれば次は、というのにもなるだろう。
店の予約もあるのだろうし。

また、日常に戻っていく綾瀬を見送りながら足は塩気へ向くが。
店での会話と、先までの空気。この日常と非日常の混同する時間……黄昏時は
綾瀬の思うよりずっと、近くに存在していることは
本人も気づかない程に隣”そこ”に存在するのだと……
また彼女の思ういつもの日々に戻る後姿を、見送りながら確信するのであった。

ご案内:「甘味処 冨喜庵 」から五代 基一郎さんが去りました。
ご案内:「甘味処 冨喜庵 」から綾瀬音音さんが去りました。