2016/06/17 のログ
ご案内:「地下闘技場オドン」に五代 基一郎さんが現れました。
ご案内:「地下闘技場オドン」に綾瀬音音さんが現れました。
■五代 基一郎 > 落第街のとある区画、さらにその地下に存在する円形闘技場……コロッセオ。
そこは戦いを興行とする場所でもなく、より強き者達を書き編める場所でもなく。
ひどく厳粛とした空気に包まれた地下闘技場だった。
例えるならば収容所のような、冷たくそこにいるものに圧し掛かる空気がそこに満ちている場所。
そこのアンダーグラウンドの、メインステージとは隔絶された観客席に
男は黒猫とまた一人を連れて入ってきた。
観客席には誰が誰とを気に留める雰囲気はなかったが日の当たる世界の人間が
歓談しにきたという雰囲気は流れていない。
華やかなテーブル席に贅沢な食事、きらびやかな装飾……などというものはなく
簡素なテーブルと椅子が一定の感覚で並べられた観客席。人はまばら。
そんな場所が、第二回目の特別課外活動の場であった。
綾瀬には何を、ということもなく自分が適当に……だが
他の観客とは離れたているだろうと選んだ席に座り
その隣を薦めた。
■綾瀬音音 > (落第街に足を踏み入れた事がある、とは言っても数える程度のことであったし、しかもあからさまに暗部めいた場所に訪れたことはない。
噂程度に闘技場の存在は知っていたけれども。
前回もそうだが今回はそれに更に輪をかけるようにしておっかなびっくりな足取りで、先輩と黒猫の半歩後ろを歩きながら円形闘技場へと足を踏み入れた。
円形闘技場――言わば戦いの場所、そこからイメージされる荒々しさや罵声や歓声のような、言えばもっと騒がしくてもおかしくはないのでは無いかと訝しげに思いながら、後をついて歩く。
特にこちらは気にされていないのだから、こちらも気にすることは無いのだろうと思いつつ、更にはじろじろ他者を見ていいものだとも思えずに、視線は殆ど男の後頭部に向けられている。
人はまばらであったし、話し声も余り聞こえない。
冷え冷えとした空気に押しつぶされそうだ。
無意識に手が握られて、指先が冷える)
ええと――ここは……?
闘技場、みたいですけど……
(他の観客とは離れているが、声の音量は小さい。
男の隣に座りつつ、眉を不安そうに下げながら質問をまずは飛ばした)
■五代 基一郎 > 「試験場だな」
ここは正しく暗部である。
ここにいる人間に、真っ当な人間がいるのかと問えばノーとしか答えられない程度には。
実力の発揮として場の演習場を興行化したものではなく。
そこは……
「ここで戦う条件はいくつかある。いくつかあるが、重要なのは一つ。」
そこまで言えば、コロッセオから。観客席には隔たれているためか小さく……
サイレンの音が流れる。流れれば
コロッセオの床から瓦礫と化した建造物がいくつかせり上がってくる。
せり上がればそこに同じくして出てくる人影。
人間の姿をしたもの。この世界の人間であったり、異邦人であったり
はたまた別の存在であったり……
そして、そこはそれらが戦うバトルフィールドと化した。
「ここで拾う観客……雇い主に恭順することだ。」
あまりに簡素で、単純な説明を綾瀬にした。
それ以上ここでの説明はいるだろうかと。
ここにいる観客は全て、自分に恭順するそれなりに力を持つ存在を欲し
あの場所で戦う者達は、自分が恭順する広い主を欲しっている。
それだけのことだと。
「こういうプレゼンテーションで勢力を拡大するか、手ごまを得るか。
また雇い主を探すかというのが多いな。武侠映画みたく、一匹狼や
実力だけを誇示する人間が拾われたり組織に、というのは少ないのが実態だろう。」
裏社会では、と。言外に付けた補足をすれば。
デジタルに表示された掲示板では番号と名前が明記されたデータの一つが
電子音のブザーと共に明滅し消去された。即ち、戦いから脱落したことを示し。
■綾瀬音音 > 試験場、ですか……?
(鸚鵡返しに尋ね返す。
テストの場所、だがここは授業で行うような健全なモノではないことくらいは流石に解る。
確かにテスト会場――と言うと余りに軽い言葉のような気はするが――だと思えばそれをもっと濃く煮詰めた空気のような、気もしてくる。
続いた言葉に首を傾げつつも、サイレンの音が聞こえれば自然と視線はコロッセオの方へと向けられる。
自分からしたらテレビでしか見たことのないような建造物、出てくる人影は、この学園島に暮らしていれば取り分け珍しいものではないけれど、物々しさを感じさせるのは場所のせいだろうか。
戦いが始まれば、眉を寄りそうになるのをぐっと堪える。
身体に力が入っているのが解るだろうか。
それでも今の自分に、そんなに軟でいる資格は、多分無い)
―――――。
だから、試験場……
(観客はここから選び、コロッセオで闘うものはあそこから自身をアピールする。
闘うものは観客の御眼鏡に叶えば仕事(なのだろうか)/自分が従う主を得るし、観客は自分にとって都合のいいであろう手駒を得る。
そういうもの、なのだろうと一応は理解した)
ううん……一匹狼や実力だけ、って言う人だと恭順って言うのは中々難しい気がします。
イメージですけれど。
それなら最初っから“従う気のある人、従える気のある人”同士がお互いを選べるほうがいい、ような気はします。
利害が一致すれば裏切る可能性は減りますよね。
(なるほど、試験会場とはよく言ったものだと思う。
実力を示しつつ、アピールする。
オーディションのようなものなのだ。
掲示板を見れば名前が一つ消えた。
その行く末が気にならないわけではないが、言葉は飲んだ。
場所の意味は大体解った。
然しながら、この先輩は観客席に座っているが、ここで手駒探し、と言うわけでは無いと思う。
――ちらっと、嫌な予感が過ぎったが、一旦それも飲み込んで)
■五代 基一郎 > 「そう、試験場。」
鸚鵡返しにまた返し。
そうすれば、顔を隠したこの闘技場の従業員かはたまた別のものか。
書類束を観客へ……特に伺うこともせずに作業的に渡していく。
それらは今現在闘技場で戦っている者達のデータであり、そのまま試験の評価のための資料と言えた。
渡されたそれらを開き、綾瀬に見せる。
いくつかの項目があり、記入欄があり、またメンタル面までも細かく評されたデータ束がそこにある。
「そこに場所や社会(ソーシャル)がある限り、ある程度折り合いがつけられたり
それなりの社交性は求められるからね。こう言ってはなんだが身勝手な一匹狼や
実力を尊ぶ人間はどこの場所でも歓迎されず馴染めず放置されるか、または排除せられるかというものだよ。
残念ながら如何なる存在でも生きている限りそうしたもの……一人では生きられないという部分は出てくる。
その辺りを理解している者というのは、理解させられたか理解せざる負えなかったかはさておいて
地道に何かをするか、はたまたこうした妥協か求職をする……みたいなね。
ギブアンドテイク、のように何かしら差し出すが故に対価を得るというさ。」
そうした保証が、対価を与えるとなるとそれなりの力を持つものでなければならない。
どのようなものであれ。故にここの観客席にいる人間は少ないが
その書類束はブ厚いと呼べるほどに闘技場で戦っている人間は多い。
「程度は違えど、同じとは思わないか」
それが表社会と何が違うのかと。
何かに順応しながら、力で量られる。
順応できないものは弾かれ、力のないものは……
そう。差し出すものが無いものは。
綾瀬の呑み込んだもの。
それが何かは、であるが。こうしたアンダーグラウンドの、そして観客側が
限られる場所に何も持たず、何も示さず初めて入れるような場所ではないことは
この空気への親和性が物語っている。
ここに来るまでの間、またここにいるのも自然すぎるその姿勢は、何より物語っているものだ。
「そう、だから試験場というね。」
またブザーがなり、デジタルな掲示板の数字と名前が消え
すれば何かの仕掛けか書類束の紙がいくつか消えていく。
それはブザーが鳴る度に、消えて行った。
■綾瀬音音 > (返された言葉に頷いて。
男が受け取った紙束を見せられて、それにざっと目を通す。
細かい。
一見自分では意味がわからないものから、自分が受ける授業でも見るようなものまでずらりと並ぶ。
試験なのだから当たり前だ。
評価がなければ、判断は下すことが出来ない)
あ――そうですね……。
折り合いがつけられないっていうのはすごく大変なことなのは解ります。
いくら強くてもコミュニティから排除されれば出来ることは限られてきますし、それを続けていけば行き詰まります。
それでも良いって言うならば、それこそ絶対的な力で従えるか――ああ、それも一つのコミュニティの成立になるのか。
……ん、そこら辺は普通の就職活動と同じですね。
自分を雇うとこれだけのメリットが有る、自分に雇われるとこれだけのメリットが有る。
それが一方的な関係はただの支配ですし、不満も起こりやすい……。
少なくともここにいる人たちは両方共それなり以上には、自分に自信がある人でしょうし。
(ふと過ぎった影を振り払うように瞬きを一つ。
対価を与える側より対価を与えられる側のほうが立場は弱い気がするのは気のせいではないだろう。
選べる立場、の方が強いのはいつだって同じだ。
選択肢は多いに越したことはない。
少ない人間は、選ぶことすらきっと出来ないのだ)
…………………。
どこも、違いはありません。
(変わらない。
数瞬の躊躇いの後、はっきりとそう口にした。
差し出すものが無いものは、何も得られるものはないのだ。
力、時間、身体、金、その他。
それらが一つもなければ、どうなるかはたやすく知れる。
つまるところ、死だ。
――自分はこの男の横で座っているが、さて。
自分は一体何を差し出せるのだろうかと考える。
取り敢えずは健康であるし、異能――暴力装置として使えるかは解らないが、力も無いわけではない。
本来、出来るかどうかは別として自分はこの先輩の隣ではなく――正直を言えば、この先輩が“なんであるのか”は解らないのは今更ながらに気づいたのは事実なのだが――本来は向こう側、試験を受ける側の人間、だ)
因みに死んだりしますか、あそこ
(試験場、と繰り返される言葉に飲み込んだ嫌な予感がせり上がってくる。
消えていく紙束、仕掛けなど知ったところで意味は無い。
じっと、コロッセオを見た)
■五代 基一郎 > 「そこらへんは少なからず経験していただろうし、理解は早いとは思っていたけどね」
綾瀬が少なからず経験してきた、身近な話。
教訓話でもないがその行き詰まりを実際見た人間だ。
当時はうっすらとだったろうが、現在ではその輪郭線がハッキリと浮彫のように見えるだろうか。
「可視化されていないだけで、社会制度としてそう組み込まれていることが殆どだよ。
実際普通の学生というのは学費というものや、学園社会に貢献できる能力や技術を持つものがそうじゃないか。
学科や実技試験だってただの数字がどうこうという話じゃない。
その数字が学園での評価ということを証明することになる。卒業証書というのも、そうなるかな。
ただの嫌なテストではなく、それが世間や社会での評価に繋がる重要なものであるということが
どういう仕組みであるか、どうして重要なのかを考えたことがある人間なんて少ないだろうけどさ。」
コミュニティ、社会で一定の力があるものが出す証書。
それは力が能力を評価し証明するものでありなにより高価なものである
ことを考える者は少ない。
例えばここでいえば学生証明書が、身分証明書がどういった力を……効力を持っているかを知ると言う時は
それを失った時である人間の方が多いだろう。
メリット、対価という話ほど求職的な話でもないが、身分を得る
社会から得るということは対価を支払うに十分なことなのだ。
故に、表の社会では学園という……財団が実質絶対的な立場を誇るのであり。
公的な立場というのが、公権力が如何にということは言うまでもないだろう。
「差し出すものというのもあれだけど、学費という親からのであったり
自前で支払うものであったり色々だけどね。
一般化された言葉であれば社会に貢献するというもの……か」
ソーシャルか、コミニュティかはさておいて
それらに貢献するか、または綾瀬の言うように独自のコミュニティを作るか。
それがどこの世界、とでも言えないが人々の生きる場所の仕組みである。
学園社会とこうした薄暗い、アンダーグラウンドの世界。
その二つの重なった……表と裏の間を見せている男もまた、綾瀬が思う様に
試験を受けさせる側であり。そして今は……言わずとも。
試験を受けさせる前の……学ばせている段階なのだということは
そもこの活動の主たる目的でありことから察せられ
その先は最初に言葉にした黄昏時の世界なのだと。
「死ぬ人間を必要とはしないね、ここにいるのは」
直接的ではないが、それが綾瀬への答えだった。
それがつまりここでの”落第生”ということなのだ。